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終わる為、始まる為


現在会議中のギルド室内にいるノイルと魔装騎士達は、急に発生した耳鳴りに反応し、現状を確かめるために動こうとしていた。その時、扉が焦りの混ざったノックの音が鳴り響く。


「失礼致します。マスター、緊急事態です!突如空に変化がありました!」

ギルドの職員が慌てたように早口で状況の説明を始める。その説明から先程の耳鳴りと何か関係性があると感じた彼らは急ぎギルドの入口へ移動を始めた。

彼らは外に出て空を見上げると、黒い円のような物がまるで何かを飲み込むように大きな口を開けていた。


「"多くの人界の皆様初めまして、私は魔界を統べる王に仕えるリベラリムと申します。以後お見知りおきを"」

黒い円から映像のように現れたリベラリムが丁寧な挨拶とともに話を始めていた。


「あれはあん時の! ふざけた真似しやがって!」

声を上げたのは雷皇だった。他の魔装騎士を見れば蒼帝と光姫が拳を握り締め敵意を剥き出しにしながら空を見上げていた。


「であればあれが主らの言っていた魔族のことか……なるほど」

雷皇、蒼帝、光姫の態度を見て風鬼がそう言い、リベラリムを見て感じることに納得していた。


「"今私は、貴方方で言うところの映晶石を使用してお伝えしております。あまり時間も無いので先ずは今回の用件をお伝え致します。我々は魔界の全てを持って、貴方方人界へ宣戦布告をさせて頂きます」

リベラリムの語り出す言葉に"やはりか"という反応を各々見せる魔装騎士の面々だが、その周囲や聞こえる音、声は無く静かであった。

しかし次第に何を言われていたのか理解し始めた者達は徐々に声を上げだし、騒ぎ始めていた。


「"日にちは貴方方人界で言う"仮初めの日"本日から一週間後の日。我々が敗北し、初めて人界が勝利した我々にとって屈辱的な日です。我々はこの日の為に準備をしてきました。今度こそ勝利するために……我々は………ギルヴァス様は貴方方との全力を出し切る殺し合いを所望しております。故にこのような宣戦布告などという事をしているのですが………まあいいでしょう。場所は貴方方人界の民が勝利した場所、"ライイング平原"にて。そして我々は人界で最も重要なカルディーク皇国へ進行致します。どう戦おうとお任せ致しますが、他の国の方々も油断なさらぬことです。それでは人界に住む全ての人族に告げます。我々この戦争に勝ち、我々は人界の全てを滅ぼし、我々は新たな世界を作るとここに宣言いたしましょう! ………では人界の民よ、貴方方の健闘を心よりお待ちしております………"」

リベラリムは語り終えると映像が途切れ、空に現れた黒い円もまるで何も無かったかのように消失した。


「健闘を……か……まるで始めから勝利する事が決まっているかのような言い方をするものだな。それに勝利までの行程で如何に自分達が楽しむかのようにも聞こえる。不愉快だな」

闇牢の仮面越しから聞こえる声は不快さと怒りが滲み出ており、それは他の者達も感じているようだ。


「えぇ…ですが今俺達が……人界の全てがかかった戦争が始まってしまうという事実は変えようが無いようです。突然このような出来事があった。それを知った民達の混乱は避けられず、それにもう手遅れでしょう。今は現状を纏め、準備しなけれぱいけません。俺達に残された時間は少ない。この混乱を静める為にも直ぐに行動しましょう」

蒼帝は他の魔装騎士とギルドマスターに対してそう言い、付近のギルド隊員への指示をし、一度ギルド内へ戻って行くのだった


ーーーーーーーーーーーーーーーー


~カルディーク剣騎学園 訓練場~


リベラリムが語り終えた後の学園は、生徒達の騒々しい声で溢れていた。そして勇夜達の居る訓練場も例外ではなかった。特殊編成部隊の面々は騒ぐこと無くどうすべきか思案しているようだ。ただ勇夜とセリエはそのまま空を見上げていた。セリエは歯を食い縛り、その瞳は怒りに満ちていた。対して勇夜は拳を握り締め、何かを改めて決意するかのような顔をしていた。


「オラス教官」

ラルクは隣に居るオラスの名を呼び、オラスは頷く。


「すぅぅ………っ! 落ち着けぇぇぇぇぇぇ!」

ラルクは深く息を吸うと、普段出すことない覇気を込められた大きな声で周囲の雰囲気を一変させる。それを聞いた殆どの生徒は肩を震わせ、先程の騒ぎが嘘のように静かになり、その視線はラルクに向けられていた。


「はぁぁ………ったく、余計な力使わせるな……一月分のやる気は使い果たしたぞ」

ラルクはさっきのような覇気を微塵も感じさせないいつもの雰囲気に戻り、誰が見ても怠そうだと思わせるような顔になっていた。そして冷静になった生徒達が思っていたのは"これで一月分のやる気無くなったのかい!"だった。呑気に思えるかもしれないが、今冷静になるためには良い薬になったようだ。

この場に居る生徒達の騒ぎが落ち着いた所でラルクとオラスはそれぞれのクラスの生徒達を集め、状況の確認を始めた。


「あれがお前らの会った魔族って奴かよ。………ちっ! 言い方は悪いがお前ら良く生きてたな」

グローザは口元を吊り上げ、額から頬に汗が垂れる。先程の映像で何か威圧するようなものは無かったが、グローザだけではなくエアルもリベラリムに対して何か感じるものがあったらしく、その表情は優れなかった。


「運が良かった………というか勇夜とトールのおかげですよ。俺もアリサが居なかったらここには居なかったですし……………セリ?」

ヴィルのグローザの問いに答え、苦笑しながら周りの面々を見渡す。だがその中で勇夜とセリエの様子がおかしいと気付いた。勇夜の雰囲気は静かであったが、セリエの放つ雰囲気が良くないものに感じ、ヴィルはセリエの名前を呼んだ。


「アイツはっ! 村の人達を殺した!あの子達を殺したんだ!! 何の理由もなく、明るく過ごしてた皆を殺してっ!私は!……私はアイツを許さない!絶対に私が仇をとるんだ!」

セリエの瞳には怒りと憎しみを映し、涙を浮かべながら想いを吐き出した。セリエの急な叫びに周囲は驚き、身を引いていた。そんなセリエにヴィルは近付いていった。


「セリ……セリだけじゃない、俺も皆も同じ気持ちだ………だからそんな顔しないでくれ。1人で抱えてたらセリの心がもたなくなる。アイツを憎むのも仇をとりたいのも分かってる………でもそれはセリだけに背負わせるものじゃない。だからこれからどうなるか、どうするのかわからない……でもだからこそ一緒に考えよう…一緒に居よう…皆と……俺と」

ヴィルは少し眉尻を下げ、セリエに優しく話し掛ける。ヴィルは周りの目を気にすることもなくセリエの両肩に手を乗せ、見詰め合うような形をとった。


「………うん……」

セリエは下を向きヴィルから顔が見えなくなるが、強ばっていた体から力が抜けていくのを感じ手を離すと、そのままセリエがヴィルの胸に頭をそっと寄せる。

周りの生徒達はそのやり取りを見ていたが、彼らの心中を察してか何かを言う事はなかった。2人雰囲気に入れないといった方が正しいかもしれないが……ヴィル達はそのままで動かないと感じたラルクらは他の生徒達に一度クラスに戻るように指示を出し、編成部隊の彼らに"あまり遅れないように"と伝え、安全の為引率しながら移動を始めた。グローザとエアルは"また後でと"2年の生徒達と移動し、トールはヴィル達を見て鼻を鳴らすと訓練場の出口に歩き、リースはその後ろを付いていった。


「私達も行こっか?」


「………ああ、そうだな」

アリサは勇夜に近付き話をする。勇夜は何か考えていたようだがアリサの声に反応し答える。歩き出す前に勇夜は握り締めた拳に違和感を感じて手を開いた。勇夜が手の平を見ると無意識にずっと強く握っていたせいか、指先の当たっていた部分に爪が食い込み赤くなっていた。


「勇夜君それっ?! 大丈夫?!」

アリサは手を見る勇夜が気になり、同じように勇夜の手の平を見た。勇夜自身は特に痛み等は感じていないようだが、端から見れば痛々しく見えたのだろう。アリサは心配し、両手をそれぞれ勇夜の手に起き、治癒魔法を発動した。


「ごめん……ありがとう」


「気にしないでいいよ」

淡く光る両手に乗せられたアリサの手を見て、勇夜は申し訳なさそうに話す。アリサは集中しているのか視線は手に向け、言葉だけ返した。アリサの治癒しているなかで、勇夜は申し訳なさを感じながらも両手から伝わる温かさとは別に、自身の胸に温かい気持ちが宿っているのを感じていた。


"今の状況で不謹慎なのかもしれない。国が…世界がこれから始まってしまう戦争という波に飲み込まれようという中で、自身の気持ちを優先させるべきではないのかもしれない………きっとこの気持ちを知らなかったら今でもそう考えていたと思う。でもこの気持ちを知ったから……この気持ちが嘘じゃないと気付いたからこんなにも……こんな状況でも胸が温かい……だから俺はアリサに伝えたい……今だから言える俺の正直な気持ちを……"

勇夜は心の中で覚悟を決めていた。たとえどうなろうと正直に気持ちを伝えようと


「もう大丈夫だよ」

勇夜の整理がついた頃にアリサの治癒が終わり手が離れる。アリサは一歩下がり勇夜を見てそう言った。


「ありがとう、………アリサ…良かったら今日俺に時間をくれないか?」


「? 私自身は特に予定は無いけど、この後どうなるのかわからないよ?」

勇夜はアリサにお礼を伝え、目を合わせたまま話し出す。アリサは疑問を感じながらそれに答えた。


「ああ、わかってる。もし時間が出来たら行きたいところがあるんだ」


「?……わかった。いいよ」

アリサの疑問は解けないようだったが、勇夜の話に頷いた。とりあえずこのままという訳にもいかないので、勇夜達はヴィル達に声をかけ、セリエが落ち着いたのをヴィルは確認して4人は移動を始めた。


残りの時間は長くない………終わる為の戦いか……それとも始まる為の戦いか……どちらにしても最後に残るのは一つの道だ

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