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蒼の交わり、戻らない日常

~魔界~


城内の一角で地面が光り、そこから左腕の無い男が現れる。


「はぁ…片方の腕が失くなるのは案外不便ですね」

その男、リベラリムは右手で左の肩を擦り、表情を変えることは無いが、困ったように息を吐いた。すると前方からドスドスという足音が聞こえてくる。


「カカカカッ 誰かと思ったら、リベラリムじゃねぇか! おうおう、何してきたのカと思えば、カカッ 左腕失くなってんじゃねぇかよ。ダセェナァ! 魔界でNo.2がそんなんじゃあ、お前も終わりだナァ」

前からやって来た男がリベラリムを挑発するような言葉を発していた。体つきはゴツく大きな体、ボサボサの髪、野生に溢れる雰囲気はまさしく野獣のようだった。


「フフ、確かに失態と言われればそうかもしれないが、私は良い出会いをした。あれほど興奮したのは久方ぶりだったよ。まあエテキス、貴方にはわからないかもしれないがな」

エテキスと呼ばれた男にリベラリムは、まるで新しい玩具を見つけたような喜びに満ちた顔で話し始める。


「ケッ! 澄ましやがって、ン? お前その匂い…人とヤりヤがったのか… ナンで俺を連れてかねぇンだよ! 俺はあいつらにデケぇ借りがあンだよ。俺を侮辱して、俺を傷付けた事忘れてねぇぞ、あのヤろうどもぉぉ!」

エテキスは何かを思い出し、怒りに満ちた表情で咆哮した。


「心配せずとも、もう少しでまた戦えますよ。必ずね。ギルヴァス様が目覚められた今、我ら魔族に敗北はありません。そして勝利の為には準備が必要です。くれぐれも勝手な真似は控えなさい」

リベラリムはエテキスを宥めるように話し出すが、最後にエテキスに釘を指すように威圧する。エテキスは一度身震いし、舌打ちしながらその場を立ち去った。


「では私もギルヴァス様に報告しに行きましょうか」

リベラリムはそういうと自身も移動を始め、目的の場所へ到着した。扉をノックすると中から反応が会ったのでリベラリムは扉を開けた。


「ギルヴァス様、リベラリム帰還致しました」


「うむ…む? リベラリム、貴様中々良い者と出会ったようだな。片腕をくれてやるとは…報告が楽しみだ。ではリベラリムよ。此度の報告をせよ」


「はっ!」

リベラリムはギルヴァスにお辞儀をし、ギリアスは、リベラリムの状態を見て笑い、まるで楽しいことを待つ子供のように報告を待っていた。リベラリムは自身が今回得た情報と出会った者がどのような者であったかの詳細を報告した。


「ほう…人族の魔装騎士以外にもそのような者が居るのか、今の人界は楽しめそうだな。やはり我直々に見に行きたいものだ」


「ダメに決まっているでしょう。何のために私が出たと思うんですか…それに私の行った場所以外の二ヶ所は直属の部下に見させましたが、魔装騎士の力も上がっているようです。少なくとも1対1であれば負けることはないでしょうが油断は出来ません。あとユウヤという人の子はその後生きているかは知りませんが、もし生き残ることができているのでしたら、私の獲物ですので如何にギルヴァス様でもこればかりはご容赦ください」

ギルヴァスの相変わらずの言葉にリベラリムは溜め息を溢しながら、話を続ける。ギルヴァスは不機嫌そうな顔をするが、こういうことに関してリベラリムは五月蝿いので渋々了承したようだ。


「リベラリムよ。その腕はどうするつもりだ? シャムレシュルムに言えば腕くらい再生出来るだろう?」


「そうですね。今後の事を私の立場で考えるのであれば、その方がよろしいとは思いますが、人の身で私の体を傷付けた事、そして私自身の罰とけじめがありますので、このままでよろしいです」


「そうか、ならば我からは何も言わないでおこう」

ギルヴァスの問いに対しリベラリムは自身の考えを答え、ギルヴァスは目を瞑り、小さく頷いた。


「ギルヴァス様、それでは今後の我らの動きについて、お話をしたいと思います」

リベラリムはそう話すとギルヴァスは短く答え、話し合いが始まった。この場で行われている魔界の今後について、その内容は世界を揺るがしかねない戦いの火蓋となるのだろうか……



ーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「セリエ? 大丈夫?」

特騎科のクラス内で自身の場所に座り、上の空のセリエに、アリサは心配そうな声をしながら声を掛けていた。


「あっごめん…大丈夫だよ」

セリエは誰が見てもわかるような無理に作った笑顔で、アリサに答えた。


「そろそろ集会が始まる時間になるから移動しないと」

セリエの元気がない理由はわかっている。だが、自分が下手な心配をするわけにもいかなく、声を掛けた理由を話した。


「ごめん…ボーッとしてて気づかなかったよ。ありがと」


「大丈夫。行こっか」

セリエはクラスを見回し、生徒がほとんど居ないことに気づいた。トール、リース、ケイメンも席を立ち移動を始めるようだが、どうやらトールも何か考え事をしているようで、いつもの様子と違っていた。セリエはアリサに感謝を述べ席を立ち、アリサと一緒に移動を始めた。歩いている時も会話はなく、ただ静かに歩を進めていた。


~剣騎学園 集会場~

この場所は全校生徒が集まることができる建物であり、何らかの式を行ったり、重要な報告がある時は使用される場所である。

そして、現在クラス及び学年毎に並び、指示を待つ生徒達はガヤガヤと話しており、各々何の集会なのか等の会話をしていた。集会場の扉が開き、生徒が静かになる。集会場に現れた女性は、静寂の中コツコツと歩き出し、背中まである薄いクリーム色の髪を揺らしていた。壇上に立ち、同じクリーム色の瞳で集まった生徒を一度見渡し、その瞳は温和な印象を受けるが縁のある眼鏡をしているためキリッとして見えていた。彼女は学園の学園長 "ルミルス・リーゼス" である。こういった集会の場や式や行事には顔を出すが、基本的には学園に居ることは少なく、普段何をしているかよく分からない人でもある。彼女…ルミルスは軽く咳払いをすると、生徒達に話し始めた。


「皆さん、本来であれば実地任務研修の途中のはずですが、今回集まっていただいたことに疑問を持たれていると思います。ですがまずは今日、全生徒が揃うことは叶いませんでしたが、無事にここに戻ってくれたことに感謝します」

生徒達は突然の言葉に困惑しているようだが話が続くようなので、話し声が上がることはなかった。実地任務研修を行っていた生徒もこれから向かおうとしていた生徒も何故集まらなければいけなかったのか、それを聞くために真剣になっていた。


「詳しい話は伏せられているために、詳細を伝えることは出来ませんが、今回ある実地任務研修中に事故が発生し、生徒に被害が出ました。その危険性から今回は、生徒への被害防止の為にギルド及び騎士団の決定で実地任務研修を中止することになりました。研修に設けられていた期間の過ごし方ですが、詳しくは各担当教官に話していただきますが、明日から通常通り学園へ来るようにお願いします」

一度話の区切りがついたのか、ルミルスの言葉が止まる。すると生徒達のざわめきが大きくなり、"マジかよ" "えぇ"等の落胆と驚きの声で溢れていた。そんな生徒達を教官達は止めず、学園長の次の話を待っていた。そんな中ある生徒が騒ぎに紛れて、ヒソヒソと話をし始めた。


「"マジかよ、俺任務中だったのに急に戻された挙げ句に中止?! せっかくアピールできるチャンスなのによー"」

ある箇所の生徒が悔しがり、声をあげていた。その隣の生徒が肩を叩きボソッと話し掛けていた。


「"なあなあ、俺の兄貴ギルドにいるんだけどよ。こっそり聞いたんだよ今回の件。そしたら何かあったのって特騎科のグラッドの組らしいぜ。どうやらグラッドとあの欠陥がやられたんだと"」


「"マジか、あいつらマジで余計な事しやがったな。大方欠陥が出過ぎたことして、グラッドが巻き添え喰らったんだろうぜ"」


「"あるある、最近あいつ調子にのってたし、自業自得だよな。なんか兄貴の同期も死んだらしいし、本当にクズな野郎だな"」

その生徒達はクスクスと笑っており、勇夜達の心配はおろか、馬鹿にするような言動をしていた。その発言をルミルスは聞こえていたかどうかは定かではないが、その生徒を威圧し、周辺にいた者達は本能的に広がった。そしてルミルスが口を開こうとしたときに話していた生徒に近づいていた者がいた。


「貴方達は!!」

セリエは怒りの形相をしながら近づき、感情に任せたかのように拳を振り上げた。鈍い音と共に殴られた生徒とその隣にいた生徒は少し飛ばされ、尻餅をついた。周囲の生徒達はその中心から離れていたため、被害はなかった。

そして鈍い音はセリエから発せられた音ではなく、セリエが殴る前にトールが割り込みその生徒を殴り飛ばしていた。


「トールなんで貴方が…」

セリエはトールを見上げながら問い出す。その顔に先程迄の怒りは感じられず、困惑しているようだった。


「別に君のためでも、そこにいるもう1人のためでもないさ。……ただ……」


「ってぇ! なにすんっ…ひっ!」

トールはセリエに振り向かずに答えた。殴った生徒を見下ろすその表情に感情はないように見えるが、トールの纏った雰囲気は冷たく殺気に溢れていた。


「俺はこいつらの耳障りな声が気にくわないだけだ。 …なあ…貴様らは本当の戦いを知っているか? 目の前の圧倒的な存在に死の恐怖を感じたことがあるか?」

トールはその生徒に質問するように言葉を発していたが、トール自身はその答えを聞きたいわけではなさそうで、そのまま言葉を続けた。


「俺は有ったよ。つい数日前にな。俺は動けなかった。目の前にある死の存在に…初めて感じた自分のちっぽけさも無力も全て理解し、死を待つだけの恐怖を… グラッドがやられるまで何も出来なかった…グラッドは自分の大切な人を助けるために命を掛けた。自分が命を失いそうになっても…欠陥も…あいつも戦ったんだ。あの存在に…誰かを助けるために、守るために! 最後は結局あいつが全て背負った…自らを犠牲にしても… だから…だから!俺は!俺はあいつらの…あいつの決意も覚悟も貴様らごときが…いやこの場の誰だろうと侮辱することは許さない! もしそれでも、あいつらを侮辱し陥れようとするなら、俺は貴様らを…」

トールの感情の入った言葉に辺りが支配される中、トールの言葉は最後まで言うことは出来なかった。


「ケネデリス君」

トールに支配されたような雰囲気が一変し、静かながらも覇気のある言葉で、壇上にいるルミルスがトールの言葉を強制的に止めさせた、恐らくトールが言おうとしたことは、この場で最も言ってはならないことだからかもしれない。


「っ…ふぅ…申し訳ありませんでした。自分自身が何をしたかわかっていますので処罰は受けます」

トールは冷静になり一呼吸し、謝罪をした。


「…わかっているようですので多くは言いませんが、"如何なる理由があれど、戦闘場以外での戦闘及びそれに準ずる行動を禁止"がルールにあります。なのでケネデリス君はそれを破りました。理由が理由ですので、少なくとも反省文はあると思ってください。後のことは貴方の教官から聞くようにしてください」

ルミルスの言葉にトールは頷く。ルミルスは一息つくと、"さて"と意識を切り替え、尻餅をついている生徒を向く。


「貴方方も処罰を受けてもらいます。理由は、事実を知らずに悪戯に情報を出し、あまつさえ同じ学園の生徒に対する不適切な言葉を発したことです。内容は追って教官から話をするようにします。それとそこの貴方、先程ギルドの隊員から聞いたと言いましたね。ギルドでは確証が取れるまで外部への情報を漏らすことを固く禁じられたそうですが。貴方はこの後私のところでその隊員の事を詳しく話してください。相応の罰が下されるでしょうから」

ルミルスは有無を言わせぬ威圧を放ち、その生徒は頷く事しか出来なかった。ルミルスはそれを見届けると生徒と各教官を見渡す。


「今出た情報について、現在は確証は出ていません。なので悪戯に情報を広めることは固く禁じます。 以上です。では皆さんは各クラスに戻り、教官の指示を聞くようにしてください」

ルミルスはそう言うと教官達に目配せをし、この場からの退出を指示した。ぞろぞろと生徒が動くなかで、誰もが何か言いたげであったが、その場で話す者は居なかった。


~特騎科クラス~


集会が終わりクラスには全員が戻っていた。正確には2人を除く全員となる。

クラスの雰囲気は悪く。主にトールの周辺は、トールの機嫌が悪いこともあり、落ち着かないようだった。セリエもトールを気にしているようでタイミングを見て話しかけようと視線を向けていた。クラスの扉が開き、入ってきたのがラルクだったことでクラスのほとんどが安堵の溜め息をついていた。ただ、ラルクの雰囲気がいつもよりくたびれ、疲れが全面に出ていた。


「はぁぁぁ~…… とりあえず集会お疲れさん…」

大きな溜め息を隠すことなく吐き、自身の教壇に肘を付きながら話を始めた。


「教官大丈夫ですか?」

クラスの最前列の生徒が心配そうに声を掛けていた。


「大丈夫なわけないだろう…今回の件でやること多すぎんのに、また厄介ごと増やされて、もうクタクタなんだよ~…」

ラルクは教壇で力無く項垂れ、愚痴を溢していた。


「まあいいや… お前らに報告がある。こんな時なのにまた転入生だ。とりあえず呼ぶからな。入ってくれ!」

ラルクは気を取り直し、体を起こした後に言葉を放つ。クラスの扉が再び開き、その転入生がクラスに入ってきた。性別は男、髪と瞳は黒く、髪は首筋まで伸ばしたショートカットで第一印象は爽やかという単語が良く似合う容姿だった。


「初めまして、今日から転入しました "アゼル・ベルライト" と言います。これからよろしくお願いします。」

アゼルから放たれる爽やかな笑顔は女生徒達には威力が高かったらしく。そのほとんどは顔を赤らめていた。だがアゼルの視線は一部の生徒に当てられていた。それはトールとセリエ、アリサそして空席になった2つの席であった。視線を向けられた彼らは疑問に感じていたが、その意味はまだわからなかった。


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