意外に勝ちゲーだったようです!
そういえば、なんだかんだR18の方も伸びてますね
総PVたった200ですけどね(白目
『ダンジョン・第13階層』
「ミカ!ヒール頼む!」
リコの声がダンジョン内に響く
ダンジョン内は比較的広い、所々が光る鉱石によって照らされていた
今回は援護をする魔法役が一番後ろに立ち、それをガーディアンのアルフレッドが守る。
そして前衛であるクイナとリコがモンスターを倒すというものだ
敵の数は2体、たった2体でも油断してはならない。敵はワイルダーヴォルフ
目が赤く光り、その鋭い牙は人間の肉など容易く貫通してしまうほどだ。
狼に似ているが、大きさはクイナの胸ほどまであり、凶暴な性格を持ち知能も少しだが備えている
「う、うんわかった!」
ミカが詠唱を始め、仲間を回復させる
「ユリス、炎属性魔法!」
クイナがユリスへ指示を送る
「は、はいぃ!」
そういうとユリスは手帳を見ながら詠唱を始めた
詠唱に合わせて魔法陣に様々な文字が描かれて行く
クイナ達とモンスターはお互いの動きを探るかのように睨み合っている
リコはモンスターとの目を離さず、笑みを浮かべながら言った
「アル!ちゃんと守ってくれよな!」
「だ、大丈夫!」
「クイナ!魔法援護が来たら右の犬は俺がやる!左を頼む!」
「了解」
「……ファルア ヴルソフィア!」
ユリスが詠唱を完了するとユリスの周囲に二つの魔法陣が完成し、魔法陣から出てきた火花のような一点に炎が吸い込まれるかの様に集まると二つの火球が現れた。
火球はバスケットボール程の大きさになる
「火球」
ユリスがそう言うと火球は敵の元へと炎の軌跡を描いて飛んでいき2体の凶狼にその燃え盛る火球が直撃した。敵が怯み、リコの合図とともにクイナが切り掛かる
クイナは地面を強く蹴って走り出し、敵に近づいたと同時に剣を下に下げる
クイナと対峙している敵は火球が顔に直撃した事により物を視認することが出来なくなり、生き残った嗅覚と聴覚に意識を集中させていた
そして凶狼は人間の独特な匂いと、雑音によって微かにしか聞こえない足音を頼りに目の前に食らいついた
クイナは左足で地面を強く蹴り横へと回りこむと右足を着地点に押し付けて全ての反動を受け止める、そしてその剣をモンスターの首元へと下から強く斬り込んだ
ズシャという肉の断たれる音が響き、獣の首が宙に舞った、その首から溢れ出る大量の血の朱がクイナの服に浸潤する、首は見事に血を吹きながら舞い、バサと鈍い音をたてて地面に落ちた。
「クイナ!後ろ!」
もう1匹はリコが殺りそびれたようだ、ワイルダーヴォルフは背を向けているクイナの元へと駆け出し、赤く怒りに満ちたその眼はクイナの首を狙っていた、そして一定の距離に近づくと高く跳躍し、背後からクイナの喉元に飛び込む
クイナはそのまま背を向けて立っていた
ーー解る、やはりこの世界に来てから俺の感覚は鋭くなった様だ、背後に獣の音、足音から匂いまでハッキリと感じ取ることができる
これは…振り向かなくてもいける
クイナは脳内で自分がどれ程であるかを理解し始めていた
「クイナさん!」
ユリスが慌てて叫ぶ
凶狼の鋭い牙がクイナの喉元に触れようとしたその瞬間、クイナは地面に向けていた剣を片手で逆手持ちにすると背を向けたまま背後の敵の腹を突き刺した
跳んだ時の反動によってその剣は見事に凶狼の腹を深く貫通し
そしてクイナは素早く振り返る
自らの腹を貫ぬいたその剣と、そして目の前のその剣の持ち主から逃れようともがくその獣をクイナは地面に深く押し付け、足に隠していた短剣を取り出し流れるように獣の喉元を切り裂いた、凶狼は血を流しながら、まるでさっきまでの勢いが嘘だったかのようにグッタリとその場に倒れた、クイナの服は2体のワイルダーヴォルフの返り血に染まる
やっぱり、足にあったこの違和感は剣だったか、それにしても物騒なところに隠してるなぁ…
そしてクイナが大きな息をつく、するとミカが叫んだ
「リコ!」
その方向を見るとリコの背後にもう1匹のワイルダーヴォルフが現れ
リコはまるで蛇に睨まれたカエルのようにのようにその場に立ち尽くしていた
死を覚悟し、目を瞑った瞬間
リコは自身の体に何者かが触れるのを感じ、それと同時に体が傾きそして目を開けると、気付けばリコはクイナに抱き抱えられていた
「大丈夫?」
クイナはリコを安心させるようにそっと軽く微笑む
リコは心臓が強く脈打ち、自身の体の奥が熱くなるのを感じた。
ワイルダーヴォルフはこちらの出方を探っている
「立てる?」
リコは何も言わないまま赤くなった顔で頷き
そしてクイナはリコを支えながら立たせる
ワイルダーヴォルフはこちらを睨んだまま動かない
どうやら特殊スキルの《殺気》が効いてるみたいだな、このワイルダーヴォルフのレベルは10、さっきのは11だったから、10Lv以下のモンスターには使えると言うことか
特殊スキル
《殺気》
魔剣士やアサシンなどの職業のみが扱うことのできる特殊スキル
モンスターに対して中程度の殺気を放つ、知能を持つモンスターや獣系のモンスターに対しては有効だが、それ以外や敵のレベルが自分を大きく上回っている場合は意味を持たない
剣はさっきの奴の腹に刺さったままだ…この短剣で勝てるとは思えないし……
クイナは手元の短剣に目をやる
血を浴びた粗末な短剣、特に飾りや刻印が彫られているわけでもなく、様々な細工が施されていた、刃渡りは20cm程、持ち手には滑り止めのための滑らかな凹凸があり、端には指が一本入る程の穴が空いている、刃は少し前に逸れており、まさにそれは、何かを"掻き切る"ために造られたものだった。何を切る為のものかは形からして明白、効率性を重視したその形状は見る者に異様な恐怖を与える
リコのを借りるか…と言ってもあの距離まで行けるかどうか…………
獣とクイナは距離にして6メートル程離れており、リコの剣はその獣の足元にあった
............やるしかない
「《部位強化》」
するとクイナの左足の先に小さな魔法陣が現れた
「戦技……!?(※魔法です)」
アルフレッドが驚きで声を漏らす、ミカやユリスも驚いている様だった
クイナは短剣を片手に走り出し、ワイルダーヴォルフもそれに合わせてクイナの元へと駆ける
左足には魔法陣が展開されたままだ、そしてクイナとワイルダーヴォルフが残り数メートルにまで接近した瞬間
クイナは小さく跳ね、着地と同時に勢いをつけて左回りで回転した、回転と同時に左足を突き出す
「《ブースト》」
クイナが小さく言葉を発すると、左足の先にあった魔法陣が破裂しその瞬間左足が破壊的な速度で敵の顔を粉砕した
煙が軌跡を描く様に舞い、ドンという重い音が響く
………あれ?
ワイルダーヴォルフの頭は砕け、そしてその巨体は大きく吹き飛んだ、数十メートルを飛ぶと凶狼の体は壁に打ち付けられ、ドサと鈍い音を立ててその場に落ちる
一気にその場が静かになった…
もしかしてとは思ってたけど………戦技と魔法の威力上がってる?
クイナは驚いていた
確かにそう考えると出血攻撃であんなに大量の血が出たのも頷けるし…結構レベル差有るのに敵が弱いのも……
ブーストなんかゲームの頃に使った時はほんの少し早くなるだけだったのにあんなに速くなってたし……
ま、まあとにかく!
敵の強さも大体分かってきたし、一応今の所はこの感覚の鋭さとレベル3になった時に覚えた出血攻撃のダメージボーナスで充分補える
戦技を使う度に少しづつだが体が怠くなるのを感じる、恐らく戦技を使った時に何かを消費しているのだろう、何となくだがそれも分かる、これに気を付けつつ戦わないと
周りの皆は唖然としてクイナを見つめている
「はぁ、慣れないな」
クイナが溜息をつきながら言うとリコが不思議そうな顔で言った
「………ん?剣の腕は結構いいと…思うぞ?」
「いやさ、ちょっと血がね…」
「あぁ、それか、そりゃしゃあないな!まあ安全階層に着いたら風呂にでも行こうぜ!」
リコはその場の空気を変えるように笑いながら言った、そして周りもそれに合わせて苦笑する
そう言う意味じゃないんだけど………
「そうだね」
ここがゲームじゃなくなったって事を改めて実感する。
グロ要素バンバンじゃないか…あとは俺の精神が耐えれるかどうかだな……実はこれでも地味に来てるんですけど…お腹に結構来てるんですけども…
クイナは冷静を保ちながらも
敵の血を見るたびに自身の腹から湧き出るものを必死に抑えていた
「なんでこんなに遅れちゃったのぉ?」
クマ「…………………」