主人公は文字がわからないようです!
なんだかんだこの小説は短いですね
暇つぶしとして見ていただけるとありがたいです
1時間が過ぎた頃、クイナは様々な装備を施した人々が行列を作り、ある巨大な建物の中に入っていくのを見た
「あれは何なんだ?」
「あぁ、あれはダンジョンです!」
「ダンジョン?なんか楽しそうだな」
「そうでもないですよ」
するとユリスの表情は突然変化し、その目はとても悲しそうに見えた。
「ダンジョンについて教えてもらえないか?」
「はい、わかりました」
するとユリスの表情は数秒の間を置いて明るくなり、そして語り出した
「まず、ダンジョンは三年前に突如として出現しました、その中には様々な財宝が眠っていると言われています。
ダンジョンはそれぞれ階層で分かれていて、現在19階層まで攻略されているそうです。
ダンジョン攻略に行く者は冒険者と呼ばれ、その冒険者の集団をパーティーと言います。
そして、それぞれの階層には沢山の財宝と資源、土地があり、階層の攻略とは即ち私達の国の発展にも繋がるわけです、それに、ちょうど三年前、この国は土地が不足しており、食糧難が続いていました。つまりダンジョンの出現により、ある意味この国は助かったんです
ダンジョンの階層のうち、安全階層と呼ばれる階層が私達の居住区となっており、都市となっています。ですから、ダンジョン攻略に行く者は後を絶ちません
ですが…ある伝説によるとダンジョンはこの国を覆う魔法の核となっており、ダンジョンが完全に攻略されるとこの国を覆う魔法が解け、この国は様々な危機に見舞われてしまうと言われてるんです。それに、ダンジョンは危険です…沢山のモンスターなどがいて、毎回帰還する度に、多数の死者を出しています……」
「ほほう、なんだか面白そうだな」
「何を言ってるんですか主様っ!!私の話ちゃんと聞いてたんですか!?」
ユリスが強張った顔で言った
「聞いてたさ。でも、このままこの国にいてもラチがあかない、今の内に力をつけて、早くこの国を出ないと」
「え、こ、ここここの国を出るって、私とですか…!?」
「あぁそうさ、そんで、この世界についてももっと知らないとね」
(それに、もしかしたら他にも俺以外のプレイヤーがいるかもしれないし、強くなって名前が広がれば誰かが気付いてくれるかもしれない、元の世界に戻る方法も探さなきゃだし)
「ーーーっ!」
ユリスはまるで熱があるかのように顔を真っ赤にしていた
「まあ、まずは何から始めればいいんだ?」
そう尋ねるとユリスは慌てて言った
「あ!あぁはい!え、えーとですね…ま、まずはギルド会館で冒険者として名前を登録しないといけません!」
「お、なるほど、じゃあ、まずはそのギルド会館だな、さぁ行こうか!」
「はい!」
そして二人はギルド会館へと向かった
そこに着くと、序盤に見た大聖堂ほどではなかったが大きい建物があった、壁は石でできており、入り口の扉には細かい彫刻が彫られていた
「これがギルド会館かぁ」
そこでは様々な装備を身につけた者たちが出入りしている、まさに独特の空気がそこにはあった
出入り口の上にある看板には意味のわからない文字が書かれていたが、それは恐らくギルド会館と書かれているのだろう
「んじゃ、早速入るか!」
そういって大きな扉を開きギルド会館に入る。
レストランの時のように視線の上部に『地上・ギルド会館』という文字が浮かび上がり、そして消える
そこには様々な設備が整っていた、独特な空気が漂い、カウンターらしき所には美しい女性達が受付をしていた。
木でできたテーブルの周りでは4人の者達が会話をしており、別のテーブルでは別の二人が話し合いをしていた、他にも様々な人が居た
ユリスはクイナの手を掴み、小さくスキップしながらカウンターの方へとクイナを連れて行く
カウンターの前に着くと受付の女性が笑顔で言った
「こんにちは!あ、初めての方ですね!もしかして、名前の登録でしょうか?」
「は、はい、そうです、でも何でわかったんです?」
すると女性は微笑みながら、クイナの服を軽く指差して言った
「だってその装備を見れば誰でもわかりますよ」
皆様の顔を覚えてるんです!というような返事を心の奥で期待していたが、それは見事にハズれてしまう
そしてクイナは自分の装備している服を見ると、自分の服が周りの人から見て明らかに凄まじい初心者感を醸し出していることに気づいた
所々傷んだ茶色のシャツ、まさに何処にでもあるような一般的な剣、シャツよりは破けてないものの使い古されたかのような黒色のズボン、黒色のブーツも新品とは程遠いものだった
「あ、あぁそうだったんですか」
クイナは笑いながら右手で後頭部を軽く撫でて言った
(うわハズカシーーーー!!こんな服で来たらそりゃわかるわ!てか俺でもわかるわ!!!)
クイナは恥ずかしさで空へと飛んで行きたいのを必死に堪えながら微笑み、さっと話を続けた
「で、では話を戻しましょうか、今回は名前の登録できました」
「やはりそうでしたか!では早速…」
女性は一度席を外れ、様々な文字が書かれている紙を持ってきた
「これです、この登録書に名前や職業などを記入すれば、貴方も晴れて冒険者の仲間入りです!」
それを受け取り、その文字を見ると、クイナは自分がこの世界の文字がわからないということを思い出した
(これどうしよう……あ、そうだ、ユリスがいたんだった)
クイナは登録書を手に取り、ユリスへその登録書を向けて満面な笑みで言った
「これなんて書いてるのか教えてください」