008
大きな扉は本当に大きくて全貌が全く分からない、まるで自分が、蟻の様に小さくなってしまったのではないかと思う程だった。
「うぁ、大きいドア。こんな大きいと誰がどんな事をしても開かないよ・・・」
秀人はゆっくり扉に近づくと、1枚の注意事項が書かれている看板が立っている事に気がついた。
それを読んでみると、#ここから先はドリームワールド内です。どんな世界を体験したいかを考えてください。今から体験する事は決して他人に言わないでください。言えば罰が与えられます。ではチケットを拝見します。#
そう書かれた文字の下に矢印があり、切符が入るくらいの小さな投函口を指していた。
「ここにチケット入れるのかなぁ・・・でも僕チケット持ってないけど・・・」
と言った時、左手に紙の感触がした。
まさか、と左手を開いて見て秀人は驚いた。
「あっ?あの紙!!」
確かにさっきまで何も持っていなかった左手にはあの黄色い紙が握られていた。
すると今度は、看板に書いてある文字がぐにゃりと歪んで先程の内容のものとは変わっていた。
「えっ?字が・・・動いてる・・・?」
出来上がった文面を読んでみると、#チケットの確認を完了しましたら、右側にあるドアが開くのでまっすぐすすんで後ろを振り返らないでください。#
秀人はごくりと生つばをのんで、チケットを投函口に軽く差し込むと、勢いよくチケットが吸い込まれた。
まるで掃除機に吸われたような感覚だ。
「わぁっ!!」
ドア全体が煌々と光って、ドアが開く、ずずず・・・と重たい音がした。
まぶしくて目を開ける事も出来なかったが、何が起こっているのか見たい好奇心から、目の前で手をかざしうっすら目を開けて見ると、大きな扉は開いておらず、秀人の期待は裏切られた。ではいったい何が開いた音だったのだろうかと、扉に近づいてみると、大きな扉の右隅側に秀人の背にぴったり合うくらいの大きさのドアがあり、それが開いていた。
秀人はそのドアの方に近づいて中を覗いてみるとだだっ広い緑の空間があった。
「この中をまっすぐ進んで行けばいいのかな・・・なんか緊張するな・・・」
秀人はこのまま行こうか止めておこうかしばらく考えたが、この先には何があるのか興味が湧いて出てきた、秀人は一見おとなしそうに見えるが、心に決めた事は行動出来る男らしい所がある。
「よし」勇気を出してドアの内側へその1歩を踏み出した。
続けて2歩3歩と進んだ。
後ろを振り向いたらいけないという禁止事項を思い出すと余計に振り向きたくなったが、これを破ると何か大変な事が起こるのではないかと思って振り向きたい気持ちを必死に抑え、歩き続けた。
「どれくらい歩けばいいのかなぁ」
自分の周りはとにかく緑一色、景色が変わらないので歩いていると変な感じがした。地面もまた緑色になっている為、歩いている感触はあるが、ちゃんと地面を蹴っているのかも分からなくなってくる。
それから5分ほど歩くとなにやら出口の様なものが見えてきた。
それは入ってきた時のドアと同じくらいのもので、秀人の背にぴったり合うものだった。
ドアに手をかけ開くと見覚えのある部屋に出た。
置いてあるものは違うけど窓の位置や壁紙が同じなので自分の部屋と気付いた。
「僕の、部屋?」
歩いてきた空間からドアをまたいで部屋に足を踏み入れたその瞬間に体がじりじりと熱くなって息苦しくなってその場にしゃがみこんだ。
「はぁっな、にこれっ!あっつい!」