006
「おじさん昨日のつけ分払うね~」
レジ台に120円出して自分達専用のつけノートにサインした。
秀人はさっきの持ってきてしまったガムの事を話し、10円をおじさんに差し出した。
「持って行っちゃってごめんなさい」
おじさんは驚いた顔をしたものの、にっこり笑ってこう言った。
「君はいい子だね、でも、あれはある意味当たりなんだからお金はいいよ、今回だけサービスって事で」
おじさんは秀人の頭に大きな手をポンと乗せて言った。
「本当に?」
「本当に」
「ありがとうございます」
秀人はおじさんに頭を下げてお礼をした。
もう店から出ている圭吾が店の中にいる秀人に向けて大きな声で叫んだ。
「岡安――!行くぞー!」
「いま行く!」
秀人は走って店から出て圭吾達のいるところまで急いだ。
駄菓子屋から出て4人は公園の茂みに隠してあった野球ボールとバット・グローブで野球を始めた。
毎日の様に公園で遊んでいるので、バットとボールを持ってくることが面倒くさいと言い出した一志が「ここに隠しちゃえ」と、隠し置いた事から始まり、圭吾はサッカーボールまで持ってきて置いてある。
他の子供たちが見つけて使いそうなものだけども、今のところはその心配はなさそうだ。
ピッチャーは秀人、4人の中でも1番コントロールがいいからだ。ここで遊ぶようになってから、投げ方も本を読んで勉強した。
その甲斐あってか、スピードだって上がってきている。中学の部活は野球部にでも入ろうかと思うほどだ。
ポジションをローテーションして何回目かの秀人のピッチャーで、5時のチャイムがなった。
まだ陽は高い、4人はもう少しだけ暗くなるまで遊び続けた。
時間は6時半になっていた。
「そろそろ帰るかぁ~、腹減った」
一志がみんなに言うと、「おー、そうするかぁ!」と3人が答えてから、道具を元の隠し場所に置いて公園をあとにした。秀人と圭吾は途中まで一緒の方向なので、今日、担任の先生に怒られた内容で「思い出し怒りきた」と圭吾の不満爆発し、夕方だというのに大きな声で話しながら歩く。少しするとあの分岐路がやってきて「また、明日」と、それぞれ帰路に着く。