018
美和子は家に帰り自分の部屋に入るとすぐに買って来たガムの包装を開け始めた。
「ない、ない」
剥き出しになったガムはクッキーの入っていたアルミ缶の中に放り込んで行く。
「これも違う、これも」
美和子はぶつぶつと言いながらガムの包装紙を剥き続けた。
半分を超えて30個目にさしかかった時、美和子の目が瞬いた。
「あった」
美和子はついに見つけた紙を蛍光灯にかざす。
「同じだ、あの紙に書いてあった事と」
美和子は2週間前に、ガムの包装を開けたら緑の紙が出てきた、何の紙か分からないのでとりあえず自分の母親に聞いてみた。
美和子の母親は「なぁに、コレ?」という反応だった。
「ん~やっぱり、わからないか~」
美和子はまぁいいか、とその紙をゴミ箱の中にヒラッと捨てた。
その後いつも通りに夕御飯を食べて、毎週見ているドラマを1時間見て自分の部屋に戻った。
「月曜日の準備しよう」
ランドセルを開けて月曜日の時間割の教科書とノートを入れ替えていく。
準備も終わってもう寝ようとベッドの上に座ると枕の横でふわっと揺れたものが視界に入り美和子はその揺れたものを見た。
「あれっ」
それを手に取る。
「これ確か捨てなかったっけ?」
さっき確かにゴミ箱に捨てたはずの緑の紙、美和子はゴミ箱を覗いた。
「おかしいな、ゴミ箱に入ってない」
不思議な顔をして美和子はなんとなしに紙を天井に向けて顔を上げた。
「んっ?何か書いてある?」
目を細めて見てみるが小さすぎて見えにくい。
「う~、何か書いてあるっぽいんだけどなぁ、小さすぎて見えない」
紙を掲げたまま部屋の中を歩き回る。
「あっ!見えた!」
ルームライトの下に来たらよく見えなかったものが読めるくらいの濃い字になった。
美和子はさらによく見える様にベッドの上に乗って腕を伸ばしてルームライトの光に透かした。
「えっと、なになに?」
美和子は無意識に口に出してそこに書いている文章を読み上げた。
「#このチケットを枕の下に置いて寝ること。二、番人にこのチケットを見せること。三、このチケットは1回しか使えない。四、他人に言わない。#」
美和子は首をかしげてどういう事なのかを考えたが、こんな事が初めてなので興味から、とりあえず書いてある通りにしてみようと紙を枕の下に置いた。通常だったら怖くてこんな事はできなかったかもしれない。
「捨てたのにここにあるってことは、何か意味がありそうだもんね、書いてある事が嘘でもいいや、やってみよう」
美和子は枕に横向きになり頭を乗せて目をつむった。