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017

そっと後ろのドアを開けて気がつかれないようにそろっと教室に入っていった。後ろの席の生徒たちはさすがに秀人に気がついてジェスチャーで早く座れと言われた。早く自分の席に行きたいのだが、秀人の席は窓際だ、前から3番目、後ろからも3番目の位置になる。


 机の間で背を低くして通るが周りの生徒がクスクス先生に聞こえないくらいの笑い声をあげる。


 秀人が無事に席まで辿り着き静かに椅子に座ると、黒板に字を書いていた先生がくるりと振り返りゆっくりと秀人に近付く、秀人の頭にポンッとその大きな手を置いて、「145ページ、読んでおく様に」と言った。


 「はい・・・・」


 今日は優しいな、と思っていたら「後から職員室に来るように」と言葉を添えられ、がっくりと肩を下した。


 着席してランドセルから教科書を取り出す。


 (145ページ145ページっと)


 パラパラとページをめくっていると、右隣のクラスメイトからノートの切れ端を四つ折りにしたものがまわってきた、開いて中に書いてある事を読んでみると、それには「ねぼうか?」と一言書かれていた、名前も書いていないものだったが、この字は見慣れている為すぐに送り主が分かった。


 秀人は斜め後ろにいる将也を見てうなずく。


 将也からの手紙。


 秀人は夢の事を誰にも話すつもりはなかった、すぐに夢の内容なんて忘れるだろうと思ったから。


 「岡安―読んだか?次の質問当てるぞ」と先生が声を張り上げる。


 学校の帰りに同じクラスの男子達が通学路にある駄菓子屋へ入って行くのを見た。


 「あっあいつら!」


 真由美は真面目だ、学校帰りに買い食いなんてとんでもない、そう思って注意をしにその男子達に近付いた。


 「ちょっと!男子!学校帰りに道草はいけないのよ!明日先生にいうからね!」


 「げっ!日野!?」


 「げっ、て何よ、げって」


 「先生には黙っといて!なっ!」


 「黙りまーせーんー、私、学級委員だからルールを守ってもらわないと困るのよ」

 

 そんな真由美と男子達のやりとりを美和子はじっと見ていた、男子達の手に持っている物は10円で買えるガムだった。


 美和子は先週そのガムの箱を1ケース母親にお願いして買ってもらっていた。このガムが美味しくて好きだから買ってもらったのではない。自分の部屋で全ての包装紙を1ケース一気に開けた。


 けれども、目当てのソレは出てこなかった。ガムもこんなにいらないと、包装紙を取られたむき出しのガムをそのままゴミ箱へ捨てた。


 目当てのものがどうしても欲しい。だから昨日もう一度、母親を説得してもう1ケースを買ってもらった。


 お店のおじさんは困ったような顔をしながらも売ってくれた。


 母親からは怒られたがそんなことは気にならなかった。


 「今回で最後だからね、他の子達が買えなくなるでしょう?」


 「わかった、ケースで買うのはこれで最後にするから」

 

 美和子が袋に入れた箱を持ってレジ台に背を向けると駄菓子屋のおじさんは軽くため息をついて胸ポケットから煙草を取り出して火を灯した。


 煙を天井に向けて吐き出すと美和子の後ろ姿をじっと眺めていた。


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