神話奇譚〜桃太郎さん〜
よく読むと複雑。
ある所にお爺様とお婆様がいました。
お爺様は山でシヴァ狩りに行き、お婆様は川へ命の洗濯をしに行きました。
お婆様が川上を見るとそこに桃の木が生えていることに気づきました。
不審に思い近づくと、木陰から血臭を漂わせた鋭い目の男が出てきました。
男が刀を抜くやいなや、お婆様は袖袋に隠し持っていた包丁で、唐竹割りにしました。
男は切り裂かれながら笑った。
男は2つに分かれると巨大な桃に変わり、桃の木は男の赤子に変わりました。
お婆様は男の赤子を見て、敵意は無しと判断すると、桃と一緒に連れ帰りました。
血だらけになって帰ってきたお爺様は男の赤子を見て、ただの人ではないと判断し、育てて戦えば面白かろうとお婆様に言いました。
こうして男の赤子はお爺様とお婆様の家に引き取られました。
男の赤子は桃太郎と名づけられ、お婆様の作る料理を食べ、お爺様と一緒に行動し、大層強く育ちました。
それでもお爺様やお婆様には到底勝てませんでした。
ある日のこと、お爺様とお婆様が何かを食べているのを桃太郎は見ました。
その食べ物の匂いは懐かしい香りがしました。
甘く、芳醇な香りは桃の香りに似ていました。
それからしばらくしてお爺様とお婆様が隠れて何かを作っているのを見かけました。
お爺様とお婆様が何やら穀物を粉にしていました。
そこに桃の香りに似た匂いを漂わせる白い粉を混ぜていました。
それを団子状にするとお爺様とお婆様は木の虚にしまい、隠しました。
桃太郎はそれを密かに食べてみました。
そして桃太郎はそれが何なのか理解しました。
桃太郎はその団子を集め、1人泣きました。
桃太郎はお爺様とお婆様の家を出て戻りませんでした。
今はまだ敵わぬ、必ずやその命を奪ってみせると誓いました。
桃太郎が各地を放浪していると赤い火を吐く巨大な山狗に襲われました。
山狗は懐にある物を狙っているようでした。
桃太郎は狙いが分かるやその行動を誘導し、お爺様直伝の格闘術で調伏しました。
戯れに団子を食べさせると山狗は言葉を話せるようになりました。
桃太郎は山狗がそれまでよりも豊かな知性を持つようになったことに気づきました。
その後冷気を纏うキジや雷を伴う攻撃をしてくるイワザルを調伏し、団子を食べさせ、仲間に加えました。
仲間を作り、各地で敵なしになった桃太郎はお爺様とお婆様に宣戦布告しました。
軽くはねのけられました。
諦めのつかない桃太郎は何度もお爺様とお婆様を襲いますが、お爺様の格闘術とお婆様の包丁捌きにより、気付けば気を失っていました。
ある日、お爺様とお婆様が屋根裏に何かを置いたことに気付きました。
隠れごとをするにしても気配が大き過ぎて気づくのが容易でした。
桃太郎は人目を盗んでそれを取りました。
それは桃の香りがする書簡でした。
お爺様とお婆様が書簡の紛失に気づく前に、桃太郎は書簡を読みました。
そこには仙人の世界を無数の鬼達が襲っていると書いてありました。
桃太郎が読みふけっていると、お爺様が背後から近寄り書簡を奪いました。
桃太郎はお爺様に尋ねました。
その戦装束は何か。
その書簡は何かと。
お爺様は答えませんでした。
桃太郎はお爺様に殴りかかるも、気づけば寝かされていて、お爺様とお婆様の姿がありませんでした。
桃太郎は山狗に跨り、お爺様とお婆様を追わせました。
キジとイワザルも一緒に行動しました。
お爺様とお婆様を追いかけると、不思議な感覚を桃太郎は覚えました。
気づくと周囲から華の香りや桃の香りが漂っていました。
お爺様とお婆様の姿はまだ見えませんでした。
山狗は匂いが分からなくなったと言いました。
桃太郎は辺りを散策しました。
そこに1人の鬼がいました。
その鬼は桃を食べていました。
周囲に破壊の跡と血が残っていました。
桃太郎は鬼に向かって尋ねました。
それは何かと。
鬼は笑いました。
これは仙人の死体だと。
鬼は笑い、その匂いは仙人だな、と言いました。
桃太郎は知らぬと言いました。
鬼は言いました。
そうか、では死ね。
鬼は立てかけていた金棒を振るい、地面を擦りました。
地面は抉れ、桃太郎に向かって土塊が吹き飛んできました。
桃太郎は山狗に跨り高く跳躍すると、土塊を蹴り鬼に向かって突進しました。
鬼は笑いながら、返す金棒で再び土塊を飛ばしました。
山狗が火を吐いて、キジが冷気を浴びせ、イワザルが雷を込めた拳で土塊を殴り破壊しました。
粉々になった土塊が土煙りとなり、鬼の視界を封じました。
鬼は目に土が入ったのか、目を一瞬閉じました。
桃太郎はその隙を逃さず鬼から金棒を奪い取り、その勢いのまま鬼を殴り飛ばしました。
鬼は肋骨が折れて内臓に刺さったのか血を吐きました。
この仙人共め、このままで済むと思うなよ。
お前らは世界を乱す害悪なのだ。
鬼はそう言うと血を勢いよく吐き、柿に変わりました。
桃太郎は柿を拾うとイワザルに投げました。
イワザルはつい食べてしまいました。
吐きました。
柿は渋柿だったのでした。
イワザルは怒り、桃太郎の胸元をつかみました。
桃太郎はイワザルの頭を撫でてなだめました。
口直しに団子をあげると喜んで小躍りしていました。
桃太郎はその後歩き続けると、大きな建物が見えました。
そこではお爺様とお婆様が冠を被る誰かに土下座させている様子が見えました。
話が聞こえてきました。
何でもお爺様とお婆様にその人は刺客を送りつけることがあったらしいのでした。
お婆様はその人の母親であるらしく、伴侶であるお爺様は強大な力を持つ不穏分子ということになりました。
お爺様は強過ぎるので、まずお婆様を始末し、権力を失くそうと計っていたけれど、お婆様の力は強く並大抵の刺客は戻ってこなかったようでした。
桃太郎は父親がこの人からの刺客であり、お爺様とお婆様が悪くないことを知りました。
むしろ刺客の子供であったのにもかかわらず育ててくれた恩人だと理解しました。
桃太郎は各地を転々と武者修行をした際、世界の厳しさを知っていました。
家族の子供を育てるのに手一杯で、孤児は見捨てられて当然、桃太郎が生きて成長出来たのは奇跡だったということも知っていました。
桃太郎は自分を単なる孤児だと思っていましたが、命を狙ってきた刺客を親に持つ孤児だとは思っていませんでした。
そんな経緯がありながらそんなことをまるで気にせずに育ててくれた恩人に刃を向けていたことに桃太郎は自己嫌悪に陥り、お爺様とお婆様に何か出来ないかと考え始めました。
お婆様は言いました。
関わるなと。それだけのことをなぜ守れない?
刺客を送りつける程の相手になぜ要請する?
そしてお婆様はその人を踏みつけ、地面に押し込みました。
仕方ない。ここが滅ぶのは見てられぬ。
鬼を退治しに参ろう。
お婆様はお爺様に言いました。
お爺様は頷き、背後に振り返り、桃太郎を見ました。
お前も少しは強くなったようだ。
手数が欲しい。
力を貸してくれぬか?
桃太郎は泣きました。
一緒の戦場に立てると認められたのだと思ったからでした。
そして恩人達の役に立てることに。
桃太郎は頷き、どこに向かえばいいかと聞きました。
お爺様はお婆様と一緒に川を下っていけ。と言いました。
桃太郎は頷きながら少し不満でした。
1人では戦力と認められないのかと。
お爺様は言いました。
お婆様は少し老いた。
お爺様はお婆様に殴られました。
雷の落ちるような凄まじい音がしました。
お爺様は構わず言いました。
少し継戦能力が昔よりも低いのでお前が守ってくれ。
お爺様は付け足しました。
俺の可愛い嫁さんに傷つけるんじゃねぇよ?
お爺様はそういうと自分は鬼の頭領と戦いに行きました。
お爺様は範囲攻撃が強いので、周囲に味方がいると巻き込む恐れがあり、1人で戦いをしなければ本気を出せませんでした。
桃太郎とお婆様は川を下って、鬼の副頭領に挑みに行きました。
鬼は常に襲いかかり、次第に密度が濃くなり、ついには囲まれました。
お婆様は100を超える鬼を包丁で屠り、桃太郎はまだ10も倒せませんでした。
しかし、お婆様の息は徐々に上がり、ついには肩で息をし始めました。
数が多過ぎるとお婆様は言いました。
この侵攻は何か原因があるのではと言いました。
桃太郎は金棒を振るい、鬼を殴り飛ばしていくものの、致命傷を与えられる確率は高いものではありませんでした。
お婆様の包丁捌きは始め一撃必殺でしたが、今では狙いがズレてしまい、大した傷にもならず反撃する敵も出ました。
桃太郎はお婆様に言いました。
少し休んでください。その間、俺が盾になります。
お婆様はその言葉に理があると判断しました。
そこまで言うなら任せます。少し待っていてくだされ。
桃太郎は金棒を振るい地面を擦りました。
鬼の真似っこです。
鬼達は味方を巻き込む恐れがあり使えない技を桃太郎は使いました。
鬼達は土塊に巻き込まれ生き埋めになる者が多く、生き埋めにならなくても傷を多く負いました。
鬼達は怒りに沸き立ち、なおも執念深く桃太郎に向かっていきましたが、桃太郎の攻撃は鬼の集団を蹂躙しました。
鬼の多くが傷つくと1人の細身の鬼が出てきました。
鬼は黒い着流し姿で額に1本の短い角が生えていました。
鬼は鬼達から彼岸様と呼ばれていました。
鬼達の幹部なのだろう。
あれがここの副頭領か。
桃太郎はそう思いました。
彼岸様と呼ばれた鬼は桃太郎に告げました。
そこの法を犯せし一族よ。汝ら、禁忌の力を用いて世界を乱す害悪。
その力を捨てることを主は望むか?
桃太郎は何を言っているのかがわかりませんでした。
わかりませんでしたが、力を捨てろと言われている事は理解しました。
桃太郎はこの力を苦労して手に入れました。
それを捨てろと言われても納得出来ません。
桃太郎は相手の話を聞かないことに決めました。
鬼は仕方あるまいと呟くと、桃太郎が振るう金棒をつかみ取り奪いました。
鬼は仲間の武器をしげしげ見つめるとお経を短く唱えた。
桃太郎はこの鬼が今までの鬼とは比べ物にならない程の強敵であることを知りました。
けれどそれはもう遅かったのでした。
武器がなくなった桃太郎を周囲にいた鬼の集団が見過ごすはずがありませんでした。
桃太郎は鬼達に金棒で袋叩きにされ、1つの桃に変わりました。
桃は鬼の幹部が懐にしまいました。
返せ。
お婆様は言いました。
その言葉が放たれる直前、鬼の首に向けその包丁は振るわれました。
鬼は指で包丁を白刃取りしました。
貴女は同類喰らいですね。
禁忌の中の禁忌を犯しています。
処罰は重いですよ。
鬼とはそう言いながら、お婆様に向かって手を振るいました。
お婆様は間一髪でその腕を躱すことが出来ました。
しかしお婆様の包丁は鬼の手の内にありました。
お婆様は鬼に向けて手を向けました。
これは疲れる。
お婆様はそういいながら稲光りを放ちました。
稲光りは鬼の集団を駆け巡ったのでした。
鬼の幹部は稲光りを受けてもまだ立ち上がりました。
思い出しました。貴女は伊邪那美命さんですね。
堕ちた神、伊邪那美命。
その身体は腐り、そして八柱の雷の神を作り出した。
どうやって蘇りましたか?
鬼の幹部は呟きました。
夫の愛。
お婆様は胸を張りました。
え、逃げられたって話を聞きましたよ?
鬼の幹部は言いました。
お婆様の目が輝きました。
その時は穢れを背負えない身分だったから。
引退してからきてくれたわ。
お婆様ははしゃいだ声で言いました。
兄妹の近親婚で蘇り。全部禁忌ですよ。
鬼の幹部は言いました。
お婆様は言いました。
関係ありません。
稲光りにより満足に身体を動かすことができない鬼の幹部からお婆様は包丁を取り返し、その首を切り落としました。
鬼の幹部の懐に入っていた桃をつかむと、お婆様は力を込めました。
桃は1度白く光ると桃太郎になりました。
ここは終わり、お婆様は桃太郎に声をかけると1人お爺様のところに向いました。
桃太郎は鬼に殺された記憶がありました。
そしていつも気を失った時と同じように目を覚ましました。
桃太郎は気づきました。
お爺様とお婆様に挑む度、毎回死んでいたのだと。
桃太郎はお婆様の後を慌てて追いかけるとそこには巨大な地割れ。
地割れの先は巨大な音とともに激しい振動が続き、地割れを隔てて異界を形成していた。
お爺様はこれを1人で行ったということだろうか。
地割れを覗くと遙か遠くに紅いものが見えた。
あまりの深さに桃太郎は腰が抜けかけた。
しかし意を決して山狗に跨ると猿と雉とともに地割れの先へと進む。
先に進むといくつもの柿が転がり、先に行くほど増えていった。
柿が多く転がっている方へと歩みを進ませる。
ところどころに巨大な岩山が転がり、各所に地割れが広がっていた。
山狗の背で桃太郎とイワザルはそれらを飛び越し先へと進む。
行く手に雷が迸る。
雷の出元を探るとそこにはお婆様がいた。
お婆様が雷を飛ばした行方には巨大な人影。
その人影はぷすぷすと異臭を放ちながら崩れ落ちた。
そしてそこにはお爺様もいました。
見慣れぬ鉾を肩に乗せ、お爺様はその巨大な人を踏み潰し、柿へと変えました。
また襲われるのはめんどうだ。
これを最後に関わる連中を全て倒してしまうとしよう。
お爺様はそういうと肩に担いだ鉾を地面に突き刺しぐるりと、地面をまるで水の如く扱い、渦巻きを作り上げる。
渦巻きは辺り一面に広がり、桃太郎は雉に捕まり空を舞う。
そして風景は地割れだらけ岩山だらけの荒れ地から緑溢れる里山へと変貌した。
お爺様の側には1つの引戸があった。
お爺様が手招きをしているので桃太郎はお爺様の近くに寄るとお爺様が言った。
お婆様を命懸けで守ってくれたようだな。
お前は俺の自慢の息子だ。
ここから先はさらに厳しくなるだろう。
来るか?
桃太郎は即答した。
行くに決まっていると。
お爺様は桃太郎の頭を乱暴に撫でると、カッカッカッと笑い、じゃあ、ついてこい、と言い、引戸の向こうへと足を運んだ。
お婆様もお爺様についていき、遅れまいと桃太郎もついていく。
桃太郎とそのお共が引戸を抜けると、お爺様は引戸を閉めた。
引戸は宙へと搔き消えた。
桃太郎はもはや後戻りは出来ぬと覚悟を決めて2人についていく。
お爺様は先頭に立ち行く手に現れる鬼を鉾で叩いていく。
鬼は何も出来ず柿へと変わっていく。
鬼を騒がせることなく処理していくためか、大きな集団に出会うことがなかった。
お爺様はあまりに迷いなく進んでいく。
お婆様は通路につ並んでいる灯籠を懐かしそうに目を細め先へと進む。
行く手に大きな城が見えた。
門番がいたものの、一瞬のうちに間合いを詰めたお爺様にあを言う暇もなく、柿へと変えられた。
お爺様が城門に鉾を突き刺すと渦巻き水面の如く変わりそして大きな穴が開いた。
お爺様は迷いなく進む。
出会う鬼は徐々に服装を上質にしていく。
やがて1つの広間へとたどり着く。
お爺様がまたも扉を強引に開け先へと進むとそこには身の丈数十町はあろうか巨人がいた。
巨人は大きな譜面を机に載せ筆を使っていた。
巨人はお爺様を見つめると言った。
罪人か。わざわざ地獄へ、それも裁きの間に来るとはな。よかろう、お前の罪を数えてやろう。
人の身で職員を倒す力を身につけたのはいいが、その力を使い職員を喰らい、自身を人でなくしたのはいただけぬ。
その上その鉾を奪っていく始末だ。
妹に職員の屍を食わせその身を人の身でなくす。
その上娶り子供をなし、子供の1人が妹を死へと追いやると、地獄に向かい、1度は帰るも最後には連れ帰る。
子供がさらに子供をなす、近親相姦の元凶。
代を重ねる毎に力は弱まっていくようではあるが、歪な力を身につけた子供らは人間の世に干渉し、文化の発展を妨げる。
我らを鬼と称しその性を邪と呼ぶこともいただけぬ。
お主の様々な悪業は微細も含めればまだまだ数え切れぬ。
その身をどうしてくれようか?
ふん、知らぬ。
俺は俺の為したいように為すまで。
俺の邪魔を為すお前など葬り去ってやる。
この後に及んでまだ罪を重ねるか。
御託を聞いてみたが大したことではなかったな。
さっさと終わらせてやろう。
言ってくれる。
であえ、であえ!
無法者を征伐せよ!
巨人が一声吼えるとその背後から数多の鬼が出てくる。
鬼は背後の扉からも出てきた。
お婆様を守れよ?
お爺様は一声かけると巨人へと向かう。
鬼の多くは徒手空拳。
中には短刀などの近接戦闘に向いた装備をしているものもいる。
明らかに屋内での戦闘を想定された装備だ。
お婆様は手を振るい雷を飛ばす。
片手にはあの渋い柿があり時折それを食べている。
苦そうに顔をしかめているが顔色はいい。
不味い。不味い。
食わなきゃ撃てぬからしょうがないとはいえ、不味い!
お婆様はそう吼えた。
その声が聞こえたのか、見るからに鬼達は先程までよりも意気込みが違う。
ふと見るとイワザルの拳は輝きを増し一撃で鬼を処理していた。
その様子を見てか、山狗や雉も近くの柿を喰らい、その口から漏れ出る炎や吹雪を強めた。
桃太郎も意を決して柿を食らう。
胸の内が熱くなり力は増した。
殴れば鬼が砕け、蹴れば鬼を数十とまとめてなぎ倒す。
桃太郎はあふれ出る力を使い鬼に向かう。
お爺様は巨人の足元に鉾を突き刺し巨大な流砂を作り上げる。
巨人の足は沈み込むが縁に手をつくと抜け出してしまう。
巨人の近くにいた鬼は流砂に飲まれ消えていく。
お爺様は宙へと鉾を突き立てると極小の太陽が生まれ辺り一面を焼きつくす。
お爺様はそれを巨人へと投げ巨人の目をくらますと、お爺様は巨人の足にその鉾を突き立てる。
お爺様はそこらの柿を喰らいさらに力を身につけると、巨人の足を酒に変えていく。
鉾の干渉が胴に届く前に巨人は跳ねた。
しかし足は膝まで酒に変わり、寸断された部分からは血が垂れていく。
巨人は思わず足を押さえて呻いた。
お爺様はそんな巨人の頭へ鉾を突き立て、巨人は大きな柿へと姿を変えた。
鬼達は悲鳴や叫び声をあげ逃げ出した。
何人かの鬼達は残ってお爺様に飛びかかったが、その鉾で見る間に伸され柿へと姿を変えた。
そして戦闘は終わった。
鬼の居城には食料や財宝があり、お爺様とお婆様は食料を手に外に出た。
近くの村や里に配り宴会を開いて遊んでいた。
桃太郎は釈然としないながら鬼の言っていたことを考えていた。
結局、お爺様とお婆様は悪い人なのだろうか?
目の前には人々と酒を呑み比べしているお爺様の楽しそうな姿。
それを傍目に談笑しているお婆様の嬉しそうな横顔。
分からない、そう思いながら酒をあおり、桃太郎は青い空を見上げた。
文学フリマ短編小説賞に応募しました。
少し内容を足しました。