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高貴なドロドロ?  作者: 花ゆき
本編
9/13

高貴なるドロドロへの道は険しく厳しいのです!

 それから――



 春日くんと女生徒が親しそうに話していますわ! わたくしというものがありながら! ……そうだわ! これは昼ドラのチャンスではなくって!?


「わたくしの春日さんに手を出すなんて、いい度胸ですわね!」

「麗華さん、誤解だ!」

「きゃあ! 生の伊集院様! 今日も素敵です。握手してください!」


 睨みつけるわたくしの眼光にすくむことなく、春日くんと話していた彼女は握手を求めてきたではありませんか。あっけにとられたまま握手をして、気づいたら春日くんしかいませんでした。なんてことですの!? ここからがいいところではありませんか!


「ヒロインがいませんわね。どうしましょう」

「僕がヒロインをやってもいいよ」

「春日くんがやると、また姑に迫るではありませんか! それでは意味がありませんわ!」

「よく分かったね」

「それはもう」


 何回もそういう目にあえば、人は学ぶというものです。ええ。


「麗華さんがヒロインでいいじゃないか。ねぇ、いつになったら名前で呼んでくれるの?」

「わたくしは悪役がやりたいのですわ。それに、その……、あなたが私をヒロインと思ってくれているのなら、それで十分ですもの……」

「可愛いこと言ってもだめ。ねぇ、呼んで?」

「は、離してくださいまし!」


 抱きしめる力が強くなり、無駄だと分かります。ため息をついて、彼の腕の中、見上げました。


「雅さん」

「うん、何? 麗華さん」

「あ、明日は昼ドラを頑張りましょうね」

「そうだね」


 頬にキスが落とされました。こんな彼の笑顔を見られるなら、恥ずかしい名前呼びもいいかもしれませんわね。





 伊集院さんだけ、知らないことがある。伊集院劇場はこの学園の娯楽となっており、今やヒロインが順番待ちになっている。その順番は春日くんを応援する会により、管理されていた。


「春日くん、明日は隣のクラスの子だから」

「あぁ、わかったよ」






「雅さん、気がついたことがありますわ!」


 ある日、隣に座っている彼女は言った。思い悩む様子から、どうも深刻な話らしい。彼はそう判断して、彼女のDVD『昼ドラコレクション』の再生を止めた。彼女の自室には、昼ドラの参考書がDVDや本という形で山積みになっている。


「姑になるには、子どもがいなければ無理ですわ! あぁ、なんてことでしょう」

「え、今頃気づいたの?」

「残念ですわ……」

「大丈夫だよ」


 視界が彼でいっぱいになったことに気づき、彼女は頭をひねった。


「あら? どうしてわたくし転がっているのかしら?」

「姑になるために、必要なことがあるからだよ」

「そうでしたの。わたくし、まだまだ知らないことばかりですわ」

「僕が教えてあげるから」


 後日、なぜか彼女は姑になりたいと口に出さなくなった。代わりに悪役になりたいと言うようになった。そう言うと決まって彼がクスクスと笑う。そして、彼が「姑になりたいんじゃないの?」と聞いた時には赤面していた。何があったのか、二人だけが知っている。

感想欄や拍手にて言葉をいただき、続きを書きたくなった話でした。

ありがとうございました。

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