しかけるドロドロ?
恋人「麗華さんの好きなところ:恥ずかしいと目をそらすところ・ジョークのセンス、麗華さんへの要望:この前のこと、ありがとう。またしてくれたら嬉しいな」 http://shindanmaker.com/130916
書きたくなりましたので、書きます。
「そう言えば、春日くんはわたくしのどこが好きですの?」
唐突に麗華さんが僕に聞いてきた。以前言っただろうにまた聞いてくる彼女を、盛大に恥ずかしがらせたいと思う。
「麗華さんの好きなところは、恥ずかしいと目をそらすところ、ジョークのセンス、夢見がちなところ、いつも一生懸命なところ、純粋なところ、素直なところ、昼ドラを話している時のキラキラと輝く目、僕のことを呼ぶ声、優しいところ、鈍感なところ、……要は全部好きかな」
思った通り、顔から湯気が出そうな勢いで照れている。だが、そこで何かひっかかることがあったらしい。突然僕をじっと見た。
「ジョークのセンスって何ですの? わたくし、ジョークを言った覚えがありませんわ」
「そうだよね、麗華さんはいつも全力だもんね……」
「どうして遠い目をしてますの?」
いつでも全身全霊で昼ドラごっこに挑む彼女は、すごくまっすぐな人だ。もし自分が女顔でなければ、彼女に女と勘違いされてヒロイン扱いされなかったかもしれない。そんな彼女が僕を好きになってくれて、本当によかったと思う。
「それより、麗華さん呼び方戻ってるよ。この前は下の名前で呼んでくれて嬉しかったのにな」
「ご、ごめんなさい。やっぱり、照れてしまいますの……」
「許さないよ。これからはちゃんと下の名前で呼んで。それとお詫びとして、麗華さんから口にキスをすること」
「なんですって!? 要求が増えてますわ!」
彼女の良心を揺さぶるため、悲しそうに見えるように目を伏せる。
「そっか。無理なお願いだったね。ごめん」
「嫌だなんて言ってませんわ!」
「じゃあ、出来るよね? してくれたら嬉しいな」
獲物が見事にかかった。後はどう料理するかを楽しむだけ。
「がんばって、もう少し」
「む、無理ですわ」
麗華さんが、僕の顔が近づくと恥ずかしさに耐えかねて、顔をそらしてしまう。
「あーあ、また目そらしちゃったね」
「だから無理だって言ってますのに」
「今日誕生日なんだけどな。でも、そんなに嫌なら仕方ないよね」
「ですから! 嫌だとは言ってませんわ!」
こんなに素直じゃ、これからが心配だね。今まで無事でいられたのがおかしいくらいだ。でも、そこが可愛くて仕方ないんだけれど。これからも、彼女のこんなところが好きなんだろうな。
「嫌いじゃなくて、その、恥ずかしいのよ」
「なんでもするって言ったよね」
「言いましたわ。あぁ、なぜわたくしは言ってしまったのでしょう」
「前は頬で許してあげたよ」
「ですから、今回も頬でいいではありませんか」
僕はそんな彼女の唇を、指でなぞった。弾力が指先に伝わる。この唇をいつも味わっていたのだと思うと、ゾクッとこみ上げてくるものがある。その気持ちを抱えたまま、彼女に懇願する。
「お願い」
彼女が、うっと困った顔をした。優しい彼女のことだ。お願いされると弱いのだろう。
「せめて、目は閉じてくださいな」
「いいよ」
一生懸命、目を閉じたまま唇を寄せてくる。その必死な様子を彼は薄目で見ていた。緊張して息を詰める。距離が近づいてくるほど、衝動に負けて唇を奪ってしまいたいと何度も思った。そして唇が触れた。僕の顎に。思わず、プッと笑ってしまう。
抑えきれない笑い声に、彼女はおかしいと思って目を開けた。視界に広がる彼の顎に、キスしてしまった場所が顎だということに気づく。思わず、穴があるなら入ってしまいたいと頭を抱える。だが、彼女は違和感に気づいた。すでに彼が笑っているということは……。
「まさか、全部見てましたのね!?」
彼はギクリと眉を動かした。やばいと思った時の癖である。それを彼女は見過ごさなかった。
「酷いですわ! そん――」
彼女の息を奪う。ずるいと言われてしまうだろうけれど、彼女からのキスを大切に記憶しておきたかった。照れた顔も、感触も、香りも。
「ごめん。一瞬一瞬を見ておきたくて」
口を金魚のようにパクパクとする麗華さんの顔は、何も取り繕っていない素の顔だ。昼ドラが大好きで、悪役の道を極めようとがんばっていても、やっぱり僕の大切なヒロインだ。彼女のこめかみに、軽くキスをする。
「うん、可愛い」