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高貴なドロドロ?  作者: 花ゆき
番外編
12/13

しかけるドロドロ?

恋人「麗華さんの好きなところ:恥ずかしいと目をそらすところ・ジョークのセンス、麗華さんへの要望:この前のこと、ありがとう。またしてくれたら嬉しいな」 http://shindanmaker.com/130916


書きたくなりましたので、書きます。

「そう言えば、春日くんはわたくしのどこが好きですの?」


 唐突に麗華さんが僕に聞いてきた。以前言っただろうにまた聞いてくる彼女を、盛大に恥ずかしがらせたいと思う。


「麗華さんの好きなところは、恥ずかしいと目をそらすところ、ジョークのセンス、夢見がちなところ、いつも一生懸命なところ、純粋なところ、素直なところ、昼ドラを話している時のキラキラと輝く目、僕のことを呼ぶ声、優しいところ、鈍感なところ、……要は全部好きかな」


 思った通り、顔から湯気が出そうな勢いで照れている。だが、そこで何かひっかかることがあったらしい。突然僕をじっと見た。


「ジョークのセンスって何ですの? わたくし、ジョークを言った覚えがありませんわ」

「そうだよね、麗華さんはいつも全力だもんね……」

「どうして遠い目をしてますの?」


 いつでも全身全霊で昼ドラごっこに挑む彼女は、すごくまっすぐな人だ。もし自分が女顔でなければ、彼女に女と勘違いされてヒロイン扱いされなかったかもしれない。そんな彼女が僕を好きになってくれて、本当によかったと思う。


「それより、麗華さん呼び方戻ってるよ。この前は下の名前で呼んでくれて嬉しかったのにな」

「ご、ごめんなさい。やっぱり、照れてしまいますの……」

「許さないよ。これからはちゃんと下の名前で呼んで。それとお詫びとして、麗華さんから口にキスをすること」

「なんですって!? 要求が増えてますわ!」


 彼女の良心を揺さぶるため、悲しそうに見えるように目を伏せる。


「そっか。無理なお願いだったね。ごめん」

「嫌だなんて言ってませんわ!」

「じゃあ、出来るよね? してくれたら嬉しいな」


 獲物が見事にかかった。後はどう料理するかを楽しむだけ。




「がんばって、もう少し」

「む、無理ですわ」


 麗華さんが、僕の顔が近づくと恥ずかしさに耐えかねて、顔をそらしてしまう。


「あーあ、また目そらしちゃったね」

「だから無理だって言ってますのに」

「今日誕生日なんだけどな。でも、そんなに嫌なら仕方ないよね」

「ですから! 嫌だとは言ってませんわ!」


 こんなに素直じゃ、これからが心配だね。今まで無事でいられたのがおかしいくらいだ。でも、そこが可愛くて仕方ないんだけれど。これからも、彼女のこんなところが好きなんだろうな。


「嫌いじゃなくて、その、恥ずかしいのよ」

「なんでもするって言ったよね」

「言いましたわ。あぁ、なぜわたくしは言ってしまったのでしょう」

「前は頬で許してあげたよ」

「ですから、今回も頬でいいではありませんか」


 僕はそんな彼女の唇を、指でなぞった。弾力が指先に伝わる。この唇をいつも味わっていたのだと思うと、ゾクッとこみ上げてくるものがある。その気持ちを抱えたまま、彼女に懇願する。


「お願い」


 彼女が、うっと困った顔をした。優しい彼女のことだ。お願いされると弱いのだろう。


「せめて、目は閉じてくださいな」

「いいよ」


 一生懸命、目を閉じたまま唇を寄せてくる。その必死な様子を彼は薄目で見ていた。緊張して息を詰める。距離が近づいてくるほど、衝動に負けて唇を奪ってしまいたいと何度も思った。そして唇が触れた。僕の顎に。思わず、プッと笑ってしまう。


 抑えきれない笑い声に、彼女はおかしいと思って目を開けた。視界に広がる彼の顎に、キスしてしまった場所が顎だということに気づく。思わず、穴があるなら入ってしまいたいと頭を抱える。だが、彼女は違和感に気づいた。すでに彼が笑っているということは……。


「まさか、全部見てましたのね!?」


 彼はギクリと眉を動かした。やばいと思った時の癖である。それを彼女は見過ごさなかった。


「酷いですわ! そん――」


 彼女の息を奪う。ずるいと言われてしまうだろうけれど、彼女からのキスを大切に記憶しておきたかった。照れた顔も、感触も、香りも。


「ごめん。一瞬一瞬を見ておきたくて」


 口を金魚のようにパクパクとする麗華さんの顔は、何も取り繕っていない素の顔だ。昼ドラが大好きで、悪役の道を極めようとがんばっていても、やっぱり僕の大切なヒロインだ。彼女のこめかみに、軽くキスをする。


「うん、可愛い」


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