調理するドロドロ?
本日2回目の更新です。
Twitterで「自分の好きなキャラクターにカレー作らせると楽しい」という呟きを見て、考えてしまいました。伊集院さんと春日くんにカレーを作ってもらいます。
調理実習でカレーを作ることになりました。これって、昼ドラをするチャンスですわね!? そう、例えば――
『あら、雅さん。こんなこともできませんの? 我が伊集院家にはふさわしくありませんわ』
『そんなっ、お義母様!』
これですわ! 昼ドラの嫁いびりは定番でしょう。早速いきます!
「おーほっほっほ! 雅さん、こんなこともできませんの? 我が伊集院家にはふさわしくありませんわね。わたくしの包丁さばきで驚くといいわ!」
高笑いする伊集院さんに、クラスメイトは伊集院劇場が始まったんだなと理解する。伊集院劇場に慣れきった春日くんは、自分の配役を察した。
「そんなっ、お義母様! あー……、うん。別の意味で驚いた」
包丁でじゃがいもの皮を剥いているのですけれど、雅さんの反応がおかしいですわ。家で練習しましたのに、どうしてかしら? 何故か、彼にピーラーをそっと渡されました。
「包丁は危なっかしいから、ピーラーを使いなよ」
「うっ、雅さんの方が上手だなんて!」
見ると彼の包丁はするするとじゃがいもの皮を剥いていました。なんて鮮やかですの!? そのショックのあまり、包丁でわたくしの指を切ってしまいました。傷は軽いようですが、切り傷って意外とピリッときますのね。少し血がにじみます。雅さんの方が上手いですし、包丁で指は切りますし、落ち込んでしまいますわ。
「よそ見しちゃだめだよ――って、遅かったか。僕のことを見てたからっていう理由は可愛いけど、怪我しちゃダメでしょ」
彼が口に指先を含みます。暖かい口内の感触に思わず赤面してしまいました。それよりも、雅さんが言ったことで脳内がいっぱいです。
「なななな!?」
「包丁没収。ピーラーどうぞ」
くっ、これは戦略的撤退ですからね! 決して皮むきで負けたわけでは……、あら、ピーラーって便利ですのね。
先程は失敗しましたが、次こそは! 昼ドラで、姑はねちっこくヒロインをいじめ抜きます。ですから、わたくしがここで引き下がるわけにはいきません!
「いよいよ、カレー完成ですわね。ですが、伊集院家には秘密の隠し味があって、それがなくてはカレーとは認めませんのよ」
この後『我が家にふさわしくない味ですわね、おーほっほっほ!』で完璧ですわ! 心の中で拳を握って、勝利を確信しながら味見しましたの。すると、慣れ親しんだ味が舌を刺激して、思わず目を見開きました。
「あ、蜂蜜のこと? もう入れたから」
「なぜ、知って」
「麗華さんのお母さんから聞いたんだ。聞きに行ったら、将来安泰ねって言われたよ」
お母様!? なんてことを! そして外堀が埋められてるような気がするのは、気のせいかしら。
「これで認めてもらえた? だから、麗華さん安心してね?」
「今は昼ドラやっていますのに、距離が、その……!」
「ほら、あーんして」
雅さんをヒロインにするとやっかいだと分かっていたはずなのに、失敗ですわ! わたくしのお馬鹿! 雅さんは笑顔でわたくしの口元からスプーンを動かしません。これって、食べるまで下げないつもりですの!? じっと彼を見つめたものの、期待に満ちた目で待っているから居心地が悪いですわ。仕方なくスプーンから食べると、雅さんが甘ったるく微笑みます。今ならどんな辛いカレーも食べれそうですわ、と思ってしまいました。
「麗華さん、次の分」
「いや、もう十分でしょう!?」
「まだ沢山残ってるよ。口開けて」
「いや、もうかまいませんから……ふぐっ!」
口が開いた瞬間を狙ったかのように、雅さんのスプーンが入ってきましたわ。抗議するために急いで口の中を空にします。
「雅さん、わたくし一人で食べれますから」
「あーん」
「話を聞いてくださいな! っ……口の中に勝手にいれないで下さい」
その後、平らげられた皿と机に羞恥で突っ伏した伊集院さんが発見された。春日くんはそんな彼女をニコニコと見つめていた。