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汝、救国せよ2

 「でもそれって、よく考えたら強く願えば、大抵のことは叶ってしまうって事ですよね?」

眉間をもみながら、聞くと目玉が上下した。どうやら肯定の意味らしかった。

「・・・人殺しに、心理操作に、天変地異。なんでもありじゃないですか」

飛ばされた世界は、思った以上にハードなところのようだ。

「いやー。でもねえ、一応人それぞれ程度の差こそあれ、抵抗値みたいなのがあってだね、そんなに容易くは、魔法で云々できないよお。もちろん、桁はずれて力の強い人間はどの国も抱えているけどね」

実生活の中に、祈りの力は浸透しいるが、それを自在に操ることができるものとなると、かなり限られてくるらしい。


 「まあ、そういう奇跡を起こす人っていうのは、神様に見初められていることがほとんどなのねー。ありていに言うと、僕ら、神様から加護をもらわないと、奇跡はおこせないの」

君が、僕に見初められたようにね。と、目玉はご丁寧に付け加えた。強く願ったとしても、神様にコンタクトの回線が繋がりますってだけで、声が届いても、聞き入れてくれるかは、運次第なのだそうで、神様のほうが気に入らなければ、いわゆる居留守状態を使われることもあるらしい。

「大体ねー、力の強い神様って大概もう、守護者や使徒がわんさかいるから、新たに布教することはしないんだよねえ」

よっぽど暇だとか、何か理由がないとポッ沸いて出た願いなんか聞いてくれないのだそうで・・・。


 「だから、葉子はすっごく運がよかったよ!この僕に見初められたんだからねえ」

自信満々に、目玉は力説するが、そのようなポジティブな捉え方はできなかった。命が助かったのは確かなのだが、これから神様からこき使われることがほぼ決定しているこの状況。どう考えても、運がよかったとは捉えられない。

いやいや、ちょっとまてよ?葉子は目玉との会話の中で、情報を整理する半ばで、原点に回帰した。

『もしかして、強く願えば私このままこの世界とおさらばできるんじゃないの??』

膨らんだ、思いにまた眉間をもむと、目玉がまた震えた。


 「あ、だめだよお。普通、界渡りなんて無茶なこと、よっぽど酔狂なやつじゃないと、聞き入れてくれないよ?この世界で、そこまで暇してる神様なんて、僕くらいしかいないんじゃないかなあ。ま、今のままじゃどの道無理ですけどねー!」

「・・・人の心を、勝手に読むのをやめていただけませんかね」

「しょうがないよ、僕神様だもの。それに葉子とは、もう繋がってるから、心はだだもれだよ」

なんか、すごく気持ち悪いことをさらりと、言われた。

「・・・え、じゃなかったら、どうして口のない僕と、君が話せてると思うの?」

そうですね。あなたが目玉の時点で、もういろいろと想定外なことを忘れていました。


 「命を助けて、安全に異界に渡らせてあげて、その上、あのちびっ子たちまで一緒に助けてあげてるんだから、割って入って君と新規で契約したい神様なんて、いないよお。僕との契約破棄させるって事は、君が僕に払う報いをそいつが支払う事になるしい。そんな面倒くさいこと、好んでするやつがいるとは思えないね」

なんか、知らないうちにすごく高額な布団を買わされて、クーリングオフはありませんと、宣言されている気持ちだった。


 「要するに、あなたの鎖から、逃れる方法はないと」

「あ、うん。そうとも言うねえ。もちろん、僕に報いをくれる他の神様を探してもいいよ~。それはそれで面白そうだからさあ」

外道だな。声にしなかったが、神様にはばっちり伝わっているだろう。それでもかまわないと思った。むしろ伝われ。寸分のちがいなく、この気持ちよ伝われ。

「大丈夫だよ、ちゃんと僕の望みを叶えてくれたら、君の世界に戻してあげるからさ」

・・・とは言うものの、葉子はそこまで、自分がなんとしてでもあちらに帰りたいかと問われたら、肯定できない。葉子は肉親の縁が薄いのか、父母は当の昔に鬼籍に入り、唯一の肉親であるところの、祖母も昨年他界している。師事する憧れの教授たちから考古学のノウハウをもう学べないのは残念だが、こちらの世界にもきっと同じような仕事や学問はあるだろう。まったく知らぬ文化を持つこの世界ならば、今まで以上に面白いことが葉子を、待っている可能性もある。


 否、面白くないわけがない。


 「あ、ところで私あのちびっ子たちのこと助けてくださいって頼んでないんで、そのぶん報いの難易度下げてください。それと、別に私元の世界に、帰らなくてもいいんで、その分も」

「えぇっ。あの状況でそれを言うの?さすがに、僕も引いちゃうなあ」

外道、といわれても痛くもかゆくもない。葉子は本気だった。いわゆる典型的な日本人特有の思考、思想をもつ葉子だが、ただ一つ当てはまらないものがある。つまりは、ノーといえる日本人なのだ。己の利益は己の才覚で守る。辛酸を舐めた、幼い頃の体験から形成された彼女の合理的で打算的な面は、今ここに発揮された。非情?くそくらえだ馬鹿やろう!自分で守れるものの大きさくらい、きちんと把握できています。

 

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