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白銀のスコール  作者: 九朗
第二章『東雲の少女』
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第33節

 早く、早く三章に行きたい…。


 正直ここら辺は完全に予定外なのでどう書けばいいのか分からない…。




第33節


「ほふぉほふぉおふぃえふぇふふぇふぇふぉひひふぇふぉ?」


「シノ、口に食べ物入れたまま喋らない」


 王宮に通された俺達はミズキの勧めで食事を取っていた。例によってあの山のような肉料理だ。

 まあ、秘義を使うと凄いお腹が減るのでありがたいと言えばありがたい。


 シノが口いっぱいに肉を詰め込み、どこぞのハサミ星人のごとき言語で俺に質問してきたのはその時だった。


 俺にたしなめられたシノは慌てて口の中の肉を咀嚼すると、もう一度今度はちゃんとした共通言語で聞いて来る。


「そろそろ教えてくれてもいいでしょ?」


「?」


 首を傾げる。そろそろ教えてもいい?はて、何をだろうか。


「これの事だよ!」


 そう言って、シノが取り出したのはあの首輪だ。よく見るとあちこちが歪んでしまっている。


「ああ、これか…。ごめんごめん。予定では俺の首を持っていかれるはずだったんだけど、奴らもそれは流石にショッキングだと思ったらしく、首輪を持って行かれちゃったんだよね~」


 まるで世間話でもするかのような軽い調子。

 だが、シノが聞きたいのはそう云う事ではないらしい。頬を膨らませて言葉を続ける。


「そうじゃなくて、って言うかそんな予定だったの!?首輪で良かった…。じゃなくて!!これを見て、私アキトが死んじゃったと思ったんだよ!?」


 どうやら、死んでしまった筈の俺がどうして生きているのか知りたいらしい。

 俺もその内話すつもりだったし、隠す気も無いのだが今この場にナギが居ない為、少しばかり悩んでしまう。


「その事を説明するのにはナギが居てくれた方が助かるんだけど…」


「お呼びですかご主人様?」


「えぇ!?」


 いつの間にか俺の後ろにナギがいた。

 驚く俺にミズキがしたり顔で説明してくれる。


「うむ、さっきカッツィオ家に使いをやって連れて来てもらったのじゃ。ほとぼりが冷めるまでしばらく掛かりそうじゃからな」


「いや、まあそりゃそうかもしれないが…」


 ナギがいつこの食堂に入って来てのかさっぱり分からなかった。

 俺はこれでも眼と耳と鼻には自信が有ったんだが…。ユウキと言い、ナギと言い、俺の索敵スキルを超える奴が最近多い。そして共通点は『変態』と言う事だった。なにか?『変態』という職業ジョブには索敵無効のスキルでも付いているのだろうか。


 まあ、それはさておき。


「ナギ、『あの事』について説明しても良いか?」


「はい、構いません。シノ様は言わずもがな、ヒカル様も事情を知っておられますし、ミズキ様は大水竜様とお知り合いのようですから。それ以外の方には遠慮していただく事になりますが」


「分かった。ミズキ、人払いしてもらえるか?」


「ん?良いぞ。皆下がっておれ」


 ミズキのその一言で召使達は食堂から退室していった。広い食堂に俺達5人だけが取り残される。


「これで良いか?」


「ええ。ありがとうございます」


 ナギがミズキに礼を言うと、皆の視線が俺に集まる。


 俺は咳払いを一つすると、話を始めた。


――――――――――――――――――――――――――――――――――――


 今回アキトがやったのは、要約すると『人狼になって再生した』。これだけだ。


 彼は人狼の姿であるならば、どんな怪我も致命傷すら治してしまう。それを利用すれば首を刎ねられようと再生は可能だ。


 だがその力をもってしても今回アキトの提案した作戦を成功させる為には二つばかり問題が有った。


 一つ、一度は完全に(例えば首刎ねられる等)殺されなければならなかった事。


 二つ、そこまで完全に殺されてしまうと、自分の力では人狼になれない事。


 この二点だ。


 一点目は大した問題では無い。ただ、相手が納得するまで攻撃を受け続ければいいだけだ。殺害された後、その証拠を持って立ち去ってくれるのを待てばいい。


 だが、そうなると二点目が問題になってくる。


 彼が人狼になるには『秘義』を使わなければならない。

 しかし、殺されてしまってはそれを行える訳が無い。


 つまり、このどちらかを解決しなければこの作戦は成立しないのだ。


 そして、彼が選んだのは二点目の解決。


 自分が完全に殺されても、他の誰かに『秘義』を使ってもらい人狼へと変身し、再生するという計画だった。


 だが当然この世界には彼以外の『拝』は居ない。『拝』がいなければ、当然『秘義』を使える者は存在しないはずだった(・・・・・)


 この問題への解決法は思わぬ所に存在していたのだ。


――――――――――――――――――――――――――――――――――――


「『血の盟約』?」


 ヒカルが疑問を投げかける。彼女はその言葉の意味を知らないはずだし、知っていたとしてもどうしてここでその名前が出て来るのかは、きっと誰にも分からないだろう。


「そう、『血の盟約』。これは竜が人に自分の力を貸し与える為の契約だ。これを結んだ人間は、一部とはいえ竜の強大な力を扱う事が出来る。身体能力の上昇以外にも、例えば水竜なら水系の魔術を操る事が出来るようになるらしい(・・・)


「らしい?アキトはその『血の盟約』をナギと結んでいるんじゃないのか?」


 俺のどこか他人事のような説明をヒカルが指摘する。俺はそれの指摘に苦笑するしかない。


「いや、ナギの説明によるとそうらしいんだが、俺には一切そんな力が備わった感じが無いから、ナギに聞いてみたんだ」


「はい、本来であれば貸与たいよされる魔術を意のままに操る事ができるはずです。ですが、ご主人様の場合は少々事情が違いました」


 あの夜。ナギがアキトと『血の盟約』を正式に交わしたあの夜が明けて、もう一度詳しい説明をナギから受けたアキトは疑問を持った。


 そこで、ナギに問うてみると。


「どうやら、ご主人様の力が大き過ぎて、私の方に逆流しているようです」


 そう、この契約は本来『普通の人間』と交わされる物のはずだった。

 しかし、人狼の力を持つアキトは『普通の人間』と言うにはあまりに規格外に過ぎたのだ。

 結果、契約によって出来たナギとアキトのパイプを通して、アキトの力が逆流してしまったのだった。


 あの夜、ナギが突然欲情してしまったのは、彼女の背景もあっただろうが、同時にこの力の逆流も関係していたのだ。


 それに気付いたナギは契約を解いてもらいましょう、と言ってくれたが、このままの方が何かと便利なのでそのままにしておいたのだ。

 よもやそれがこのような形で功を奏するとは、思いもよらなかったが。


 そして、アキトの力が逆流していると言う事は、


「あの白銀の光も操れる、という事か…」


 ヒカルが顎に手を当てながら唸る。

 そう、結局彼がやったのは、種も仕掛けも無い、イレギュラーなバグを使ったチート技だったのだ。


「ま、そういう事だね」


 うんうんと頷くアキト、一方ヒカルは俯いてしまった。顔は影になっていて表情は読み取れないが、その後ろには怒気のせいで空間が歪んで見える。『ドドドドドド』という擬音が聞こえてきそうだ。


 そして、ヒカルの口から怒りを押し殺したような、低く起伏の乏しい声が聞こえてくる。


「…なら、何故私に秘密にしていたんだ?」


「え?それは…その…」


 その問いにしどろもどろになりながら、目を逸らすアキト。そんなアキトにヒカルが今度こそ明確な怒りを込めて問いただす。


「全員に話す訳にはいかなかったのは分かったが、私は事情を知っているんだから話してくれても良かっただろう!?」


「こういうのは知ってる人間は少ない方が良いし、敵を騙すには味方からって言うじゃない?」


「私がどれだけ心配したと思ってる!!」


 ヒカルの怒声がビリビリと食堂を震わせる。まるで今まで溜まりに溜まった鬱憤うっぷんが噴き出してくるようだった。

 我慢強い彼女だが、それ故にそれが爆発する時の威力も凄まじい。


「大体アキトは、私が騙すなと言ってるのにどうして言う事を聞かないんだ!!アキトがそう来るなら私にも考えが有るんだぞ!こうなったら徹底的に調教してやる!!その身体に私を騙すとどうなるか教えてやるぞ!!」


 そう言いながらヒカルは目いっぱいに涙を浮かべて睨んでくる。

 そして立ち上がったヒカルはアキトの首根っこを掴むと、そのままテーブルから引きはがし食堂の出口へとひきずって行く。


「わっ!?ちょっ、ヒカルさん!?まだ、食事中…」


「うるさい!聞く耳持たん!!」


 まるで駄々っ子のようなヒカル。


「横暴過ぎる!?」


 どうやらとっくの昔に堪忍袋の緒は切れていたらしい。アキトの言う事を全く聞こうとしない。


「ナギ!!お前も共犯者だろ!?助けて!?」


 仕方なくナギに助けを求める。ナギはそれに一つ頷くと、ヒカルに制止の声を掛ける。


「ヒカル様!それはいけませんわ!!」


 だが、それが失策だと気付いたのはそのすぐ後。ナギの言葉の続きを聞いてからだ。


「ご主人様を調教するのでしたらわたくしも混ぜていただかないと!!」


「え、ちょ、おま!?」


 そう言って、ヒカルと一緒になってアキトをひきずり始めるナギ。

 むしろ状況が悪化した。


「ご主人様?約束は守っていただきますからね?」


 そう言ってニッコリ笑うナギは大変可愛らしい…じゃなくて。


「シノ!そう、せめてシノの居ない時に…」


 シノの情操教育を理由に逃げようとする。


「あら?シノ様はもう子供ではありませんわよ、ねえ?」


「うん!シノも頑張る!!」


 だが当のシノが既に俺を引きずっていた。いつの間に掴まれていたのだろうか。さっきまでシノは自分の席で肉料理にかぶりついていたはずだが。


「いや、あのですね皆さん。俺も嫌という訳では無くてですね、ただこう云うのはもっと段階とか手順とかそう云うのをもっと踏んでからと言いますか、心構えとか他の準備が有ってですね…」


「うるさい黙れ。アキトは黙って私達に躾けられてれば良いんだ」


 一蹴されてしまった。ヒカルの眼が完全に据わっている。涙を浮かべてはいるが、真剣マジだ、真剣マジの眼だ。以前、自分の『すべて』を差し出すと言った時と同じ眼だ。


「ご主人様?ちゃんと言ったはずですよ?『あの眼は捕食者の眼だった』と。ついでに『止まらないでしょうね』とも言いましたよ?」


 わたくしも捕食する側だと言っておきましたよね?、とナギが自分の唇を妖艶にペロリと舐める。

 そして、アキトの耳元に息を吹きかけるように囁く。


「ご主人様、ここは観念して男らしく『俺に任せときなベイベー』くらい言ったらどうですか?」


「それはそれで言いたくない台詞だな…」


 アキトとしても嫌な訳では無く、本当は嬉しいのだが、彼は彼なりに『こういうのは男の方からもっとロマンチックな感じで』という、一種の乙女心ならぬ乙男おとめん心からくる信念が有るのだった。


 少なくとも食事中に女性に首根っこを掴まれて無理矢理引きずられて、というのは何か違う。何か、というか全部違う。


「ちょっと待って!ホントに待って!?ここはカッツィオ家じゃないんだから、お部屋が有るわけ…」


「客室までなら余が案内あないするぞ?」


 そういう事なら、と席を立ち先頭に立って案内を始めるミズキ。それを恨めしそうに眺めるアキト。


「………」


「なんじゃその眼は。不満か?なら、この王宮で一番良い客室と大浴場をいつでも使えるようにしておいてやろう!」


「いえ、そういう不満じゃないんですが」


「なに!?よもや余にまで寝台を共にせよ、という訳ではあるまいな!?余は一国の女王じゃ、そう簡単に肌を許す訳にはいかぬぞ!」


 そう言って、自身を腕で抱きしめる仕草をするミズキ。


「誰もそんな事言ってません…」


 敗戦ムード濃厚、撤退も不可。白旗を上げたとしても、何も変わるまい。


 ならば、ならばせめて。


「俺を簡単に躾けられると思うなよ!?」


 捨て台詞を吐くくらいしか出来なかった。


「身の程を教えてやろう」


「ええ、存分に反抗し私たちにも牙を突き立ててくださいまし」


「大人しくしてね、アキト♪」


 その捨て台詞を最後に、アキトはドナドナされてしまったのだった。

 うおぉぉぉぉ!!上手く書けない!!


 三章入る前に、ちょっと勉強しなくちゃいけないな…。

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