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白銀のスコール  作者: 九朗
第一章『アキト=オガミ』
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第4節

 上手く竜の魅力が書けていればいいな…。




第4章


 今俺の膝の上で、猫のような尻尾を犬のごとく振りまくっているこの生き物は少なくとも人と同じ声域を持ち、ついでに俺の言葉を反復するだけの知性が存在するらしい。


 それもオウムや九官鳥が何度も繰り返し言葉を掛け、少なからぬ時間を掛けて成し遂げることを、俺が一度発した言葉に対して行った。


 ここでまた、推理ロジックだ。


 以上の事柄に対して2つの仮定が成立する。


 1.この子は人と接することがあり、この言語能力はその時に獲得した。


 2.この子は何の予備知識も無いまま、俺が発した言葉を反復した。


 ―――――の2つだ。


 1ならばまだ分かる。

 否、何故日本語なのか?とか、どこで?とか疑問はいくつか残るが、それこそ時間を掛ければオウムや九官鳥にも似たようなことはできるだろう。常識で説明できない範疇ではない。

 ただ、そういう生物なのだ、というだけで。


 だが、2だとしたら。

 もしそうだとしたら、それは脅威的なことだ。

 言われたことに対してそれを反復するだけの知性、たったそれだけの事と思うかもしれないが、それだけの知性を持つのは人間でいうなら少なくとも3歳以上の年齢が必要だろう。

 つまり、目の前の生き物は人間の3歳児以上の知性を持っていることになる。


 それがどれだけ凄いことか。日常的に言葉を操る我々には想像しづらいが、言語というものはそう簡単に操れるものではない。日本人が英語をいきなり喋らされるのと同じだ。知識に無い言葉はその発音を聞き分けるのすら難しい。


 しかし、1も2も仮定は仮定に過ぎない。

 仮定は実験によって証明するしかないのだ。


 と、いうことで。


 さっそくこの子の言語能力、及び記憶能力について検証したいと思うよ?


 とりあえず、挨拶の意味も込めて名前を名乗る事にする。

 クリクリとした瞳を正面から覗き込み、ゆっくりと語りかける。


 「俺の名前は拝 暁人≪オガミ アキト≫。わかるか?ア・キ・ト」


 「アキト?」


 すごいな…、一発か。首を傾げながらではあったが、発音もきちんと出来ている。予想以上の結果に驚いてしまう。

 ついでに可愛かったので頭をなでてやる。気持ち良さそうに目を細めてされるがままになっている所をみると、まんざらでもないらしい。


 そのまま質問を続ける。


 「そそ、俺の名前はアキト。じゃ、君の名前は?」


 この質問に答えられれば、それは単純な言語の反復ではなく、さらに上位の言語能力「会話」を行う事ができるということである。どことも知れないここの情報が思わぬ形で手に入るかもしれないし、何より話し相手が出来るのは嬉しい。


 若干ワクワクドキドキしながら返答を待つと―――


 「アキト!」


 と、元気いっぱいに返された。


 「いや、それは俺の名前であって、聞きたいのは君の名――」


 「アキト!アキト!アキト♪」


 どうやら、「アキト」と言えば頭を撫でてもらえる―と学習したようだ。


 いや、可愛いからいいですケドね?


 だが、いまのでこの子が単純な反復を行っているだけ、ということが分かった。


 その後もいくつかの質問をくりかえしたが、


 「アキト♪」


 と言うだけで、まったく要領を得ず、結論としては仮説1とも2とも判断できず終いだった。


 収穫といえば鱗のさわり心地がとてつもなく良いことを確認したことと、懐かれたことだろうか。


 結局、この子が何者なのか?ここが異世界なのか元居た世界なのか?という疑問に決定的な答えを見出せぬままとなってしまった。


 といってもいつまでもここで座り込んでいる訳にもいかず、俺はこの子を連れて立ち上がり、目の前の小川の流れに沿ってゆっくりと歩き出した。


 「とりあえず、会話のできる人を探さないとな~」


 「アキト?」


 不思議そうに頭を傾げる竜を撫でてやりながら、先行きに少しばかりの不安を抱くアキトだった。


 「ま、なんとかするか」


 森は深く、先の見通しも悪い。それでも、ここで野垂れ死にしたくなければ歩くしかないのだから。


 次回はほとんど閑話みたいなものです。

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