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白銀のスコール  作者: 九朗
第二章『東雲の少女』
48/115

第9節

 たった数日書いて無かっただけなのに、なんか上手く書けない…。


 また今日から毎日頑張ります。


 あと、メインヒロインとか決めて無いですよ?


第9節


 ユウキ=カッツィオを『狂流くるい』による低酸素状態に『酔眼すいがん』による三半規管の狂いからくる酩酊状態のコンボで昏睡させた俺は自分の部屋に戻って来た。とりあえず、彼は明日の朝まで目が覚めないだろう。覚めたら覚めたで酷い二日酔いに見舞われるだろうが。


「今度こそ寝よう…」


 自分に言い聞かせるように呟くアキト。実際精神的疲労は半端無かった。ベットに腰を降ろし、頭の上のシノを起こさないように、そっと抱き降ろす。


 しかし、そんなアキトを呼び止めたのは、先に眠ってしまったと思っていたシノだった。


「アキト!アキト!」


「ん?起しちゃったか?」


 シノを起こさないように静かに、かつ速やかにユウキを昏倒させたつもりだったが…。いや、この場合は抱き降ろしたのが問題か。


 しかし、シノは首をふるふると左右に振って否定する。


「ん~ん。起きてたの」


「何でまた…」


 そう、既にいつもならシノはおねむの時間だ。眠れないのだろうか?

 訝しむ俺に、シノはそのまなじりを下げて嬉しそうに言う。


「えへへ~。アキトに見せたい物が有るんだ!」


「見せたい物?」


「うん!えへへ~」


 さっきからやたら顔がにやけている。尻尾もパタパタと嬉しそうに振られている。何か良い事でも有ったのだろうか?


「で、見せたい物って何かな?」


「えへへ~、えへへ~」


「………」


 さっきからシノは『えへへ~』しか言ってない。何か悪い物でも食べたのだろうか?ハッ!もしかして…。


「シノ!あれほどお酒は飲んじゃダメって言ったのに!!」


「違うもん!飲んでないもん!!」


 違うらしい。


「じゃあ、何?」


 ちょっと面倒臭くなってきた。正直早く寝たい。

 シノも俺のそんな様子が分かったのだろう、慌てて話を進める。


「見せるから!ちょっと待って!」


 そう言って、抱きかかえた俺の腕から這い出ると、客室の絨毯が敷かれた床に降り立つ。


「ちゃんと見ててね!」


「はいはい」


 俺がちゃんと見ている事を確認したシノは、鈴を転がすような可愛らしい声音で歌うように唱える。


ことわりの裡に、世の裡に、人の裡に――――我の姿を人世に留めん」


 シノを中心に部屋がほのかな白金の光に照らされる。どこか俺の放つ白銀の光に似たそれ。幻想的な光景にしばし俺は見惚れてしまう。

 ボーっと俺が見ている内に光が晴れていく。そして、それまでシノが居た場所に立っていたのは…


「ヤタッ!成功だよ!」


 人間の女の子だった。


 ………。 


 うん、まあ途中で大体の事には気付いていたけれど。というか、ナギが人の姿をしているのを見た時から、こうなるんじゃないかなとは思っていたけど。


 それでも、まあテンプレとしてこう言っておこう。


「シノ…なのか?」


「うん!そうだよ!」


 どうやら俺の反応に満足してくれたらしい。天使のような笑顔を浮かべてくれる。


 そんな彼女を改めて見やる。


 歳の頃は10歳前後だろうか?ちょうど幼女から少女への転換期にあたる時期に見える。

 彼女を象徴するプラチナブロンドの髪が薄暗い部屋の中にあってほんのりと輝いているようだ。

 顔の造形も半端無く良い。元々の猫っぽい印象と、好奇心旺盛な黒い瞳はそのままに、年頃の少女らしいすっと通った鼻と細い顎が愛らしい、どこか幼い印象を受けるプニプニの頬っぺたも魅力的だ。要は天使だった。実際は神様なのだけれど。

 しかし発育はお世辞にも良いとは言えない。幼い外見そのままの、いまだ少女とも少年とも見分けが付かない体格は、ヒカルのグレープフルーツやナギのメロンとは比べようもない。


 ちなみに、その天使は『真っ裸』だった。真っ裸で俺の部屋に降臨なされていた。そして、その無い胸を得意気にそらしているのだった。


 俺は何だか微笑ましい気持ちになって、こう言うのだった。


「うん。とりあえず服着ようか」


 そう言って、俺は魔法の鞄(マジックバック)からヒカルの愛用のマントを取り出し、シノに手渡した。


――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


 シノはこの姿にまだ慣れていないようで、着替えるのにも四苦八苦してしまう。マントに顔を覆われて視界を奪われ、部屋をうろうろし始めたので慌てて駆け寄ってマントをきちんと頭から通してやる。


「ぷあっ!」


 大き過ぎるマントを着ているため、幼い印象がより強くなった。だぼだぼなマントに何度か蹴躓きそうになるシノを抱えて、ベットに座らせて俺もその隣に腰を降ろす。

 すると、シノはいつものように俺の膝上に乗って来る。まあ、別に断る理由も無いのだが…。


「暑くないのか?」


 そう、季節は既に夏だ。いくら夜とはいえ、既に気温も大分上がっているうえに、シノは肌の上からとはいえ少々季節はずれのマントを着ているのだ。暑いのではないのだろうか?というか、俺が暑い。竜状態のシノならともかく、人の姿だとよけいに暑く感じる。


「ん~ん。アキトの膝、落ち着く」


 なんか既視感デジャビュだった。


 ともあれ、シノが良いと言うなら別に良い。

 それよりも、話を続けたい。


「シノ。その姿は、やっぱり大水竜の所に行った時に?」


「うん!そうだよ!」


 あの時のやたら長い『お話』はそういう事だったのか…。色々と納得したが、その代わり疑問も一つ。


「大水竜の所に行ってからちょっと経つけど、どうして今になってその姿になったの?」


「練習してたから。実はちゃんとこの姿になれたのは昨日だったの」


 そういう事らしい。というか練習が必要なのか…。ここ最近、ナギと一緒に何かしていると思ったら、そんな事をしていたらしい。


「この姿、変だった?」


 シノが心配そうにこちらを見上げる。シノの瞳と俺の瞳がぶつかり、少しだけ心臓がドキッとはねる。それほどまでにシノの姿は可愛らしかった。勿論、竜の姿も可愛らしかったが。


「いや、全然変じゃ無い。むしろ、可愛らしいぞ?」


「っ!えへへ~」


 心からの称賛。その言葉にシノも嬉しそうに破顔してくれる。その頭のふわふわなプラチナブロンドを撫でてやりながらシノに言ってやる。


「じゃあ、明日はシノの服を買いに行かないとな。ヒカルとナギに頼んでおこう」


 いつまでもこのマントを着せておく訳にもいかないし。ヒカルの服ならばギリギリこの子でも着られるだろうから、一着借りて街に出てみよう。

 そんな俺の言葉にシノはさらに相貌を崩して喜んでくれる。


「わ~い!じゃあ、早く寝よ寝よ!」


 服の買い物でここまで喜べるとは、やはり女の子なのだな…と妙な所に感心しつつ、俺は重大な事に気付く。


「シノの部屋を用意してもらわないといけないな…」


 そうなのだ。竜の時は特に気にならなかったが、それでも人の姿のシノと同じ部屋というのは色々問題が有る。ユウキに言って、部屋を用意してもらう必要が有りそうだ。あ、彼は今グッタリ寝ているからタケシに、か。


 しかし、そんな俺の言葉にシノはきょとんとした表情でこう言うのだった。


「え?なんで?」


 どうやらシノは竜の時と同じ感覚でいるらしかった。そう言えばさっき真っ裸でも羞恥を感じていなかったような気がする。ナギがやたら脱ごうとするのもそういう理由なのかもしれない。絶対違うと思うけど。


 とにかく、シノは幼いとはいえ女の子の姿なのだから俺と一緒の部屋に寝泊まりするのは危険だ。俺が危険だ。

 手を出すとかそういう事では無くて、他の人達から見たら俺は幼女と寝泊まりしているように見えるだろう。


 これがヒカルやナギだったら、以前の宿屋のように『昨夜はお楽しみでしたね』的視線を浴びるのだが、シノの場合『昨夜は…うん、何も言うまい』的な視線に晒されること請け合いだ。


 どっちも嫌だが、後者は激しく意味合いが違って来る。


 それだけは何とか避けたいのだが…。


「なんで?なんで?シノ何かした?」


 そんな風にシノが涙目で見詰めて来る。まるで子供が自分のあずかり知らぬ事で叱られた時のような切なくなるような声音に幼い外見も相まって、破壊力が半端無い。まさに雨に濡れる子猫のごとし。

 しかし、それに負ける訳にはいかない。しどろもどろになりながら、なんとか言い返す。


「いや、そういう訳では無いのだけれど…。ほら、ベットも二人で使うには少々手狭だろ?」


 それに暑いし。


 しかし、そんな俺の言葉とは裏腹に、シノはその顔を曇らせて行く。


「前まではそんな事言わなかったのに…」


 前の貴女は竜の姿だったじゃありませんか。猫程度の大きさと見た目だったじゃありませんか。


 当然そんな俺の心の声が聞こえる訳も無く、シノはどんどん暴走していく。


「嫌いになっちゃったんだ…」


「え?」


 なにか酷い勘違いをされたような気が…。


 そう思っていると、シノが叫ぶように言う。


「アキトはシノが嫌いになっちゃったんだ!!」


 そう言ってポロポロと涙を流し始める。ああ、最近女の子の涙にやたら縁があるらしい。全然ありがたくないけれど。


 それにしても、だ。一つだけ言わせて欲しい。


 えー!?何この状況?なんで俺が泣かせたみたいになってんの?


 俺が泣きたかった。


 しかし、シノを泣かせたままには出来ない。それは精神衛生上よろしくない。まるで子供をあやすように頭を撫でながら言葉を紡ぐ。


「違うよ。俺がシノを嫌いになる訳ないだろ?ただ、シノは人の姿になったんだから人として振る舞わなければいけないんだ」


 分かるね?と、言い聞かせるようにシノの頭を優しく撫でる。

 しかし、シノはいやいやをするように首を左右に振る。


「分かんないもん!シノはシノだもん!竜とか人とか関係無いもん!!」


「………」


 そのあまりに幼い物言いに、胸の虚を突かれる。


 シノはシノ、か。


 その言葉に思い出すのは今から少し前。

 ヒカル達に自分が『人狼バケモノ』だと言う事がバレて、それでも彼女達はこう言ってくれたのだ。『貴方は人間だ』と。姿形が重要なのでは無く、自分が自分である事が重要なのだと。そう認めてもらえる事への歓喜。

 あの時、胸に宿った喜びは確かな『真実ほんとう』としてここに在る。


 それはシノだって同じなのだろう。おそらく自覚は無いのだろうが彼女も姿を変えて、不安なのだ。今までと違う、その事がどんな影響を及ぼすのか分からず怯えているのだ。

 

 シノはシノ。俺はそれをちゃんと認めてあげないといけない。認めてあげたい。


 だから、姿形が変わったからと言って、シノの扱いを本人が望んでもいないのに変えるのはその『真実ほんとう』に反する行いだ。


「ふう…」


 そっと溜息を吐くと、俺は覚悟を決める。確かにロリコンの称号は恐ろしいけれど、それは結局客観的な評価でしか無い。

 他人からの評価というのは確かに大切だ。しかし、それは目の前の大切な子の表情を曇らせてまで護る事に意味があるとは思えない。それに実際は手を出していないのだし。


「分かった。シノが嫌だって言うなら仕方ない、今まで通りにしよう」


「ホント!?」


 パッとシノの顔が華やぐ。そんなに嬉しいのか。嬉しいのだろう。俺もあの時は泣きそうな程嬉しかったのだから。

 そんなシノに笑いかけながら、注意を言っておく。


「でも、自分の部屋が欲しくなったらすぐに言うんだぞ?シノは可愛いから、いつ俺が襲いかかるか分からないぞ?知っての通り俺は『狼』だからな」


 冗談半分…いや、冗談全部で言った俺の言葉。


 しかし…。


「…うん。いいよ?」


「………は?」


 そう言って、頬を染めるシノ。

 え?この子今何て言った?イイヨ?


「はぁ!?」


「ひゃっ!?」


 突然の大声にシノが可愛らしい悲鳴を上げる。そんなシノの身体をこちらに向けさせて、その肩を掴んで問う。


「なあ、シノ。俺の言葉の意味を分かって言ってる?」


「え?う、うん。ナギが『ご主人様との明るい家庭計画』って言いながら教えてくれた」


 そう言って、もじもじしている。確実に意味を理解しているようだ。分かって言っているならなお悪い。しかも元凶はナギときた。


 ………。


 あのアマには今度制裁を加えよう。シノに何を吹き込んでくれているのだろうか。あの子は存在自体がシノの教育によろしく無い。シノが露出癖に目覚めない内になんとかしないといけないようだ。

 そんな事を考えて、頭を抱えてうずくまってしまいたくなる。


 そんな俺に、シノがさらに追い打ちを掛けて来る。


「それにね、アキト言ってたでしょ?」


「?」


 この状況で『言っていた』となると…。何だろうか?分からない。

 混乱する俺を尻目に、シノは言葉を続ける。嬉しそうに。


「『シノが人間だったら嫁に欲しい』って」


「………グハッ!」


 もう、死にたくなって来た。確かにそんな事言ってたね!皆は自分の発言をする前にきちんと考えて発言しようね。アキトお兄さんとの約束だ!


 なんとか否定したいが否定しようにも、した瞬間にシノが涙目になるのが目に見えている。そうなればこちらに勝算は無い。完全に墓穴にはまっていた。しかも自分で掘った墓穴だ。えらく深い所まで掘り進んでいたなと自分でも感心してしまう。負の方向に。


 しかも、恥じらいながらそう言うシノは本当に愛らしくて、その姿の前に俺はもう為す術も無くこう言うしか無いのだった。


「シノがもっと大人になったらね…」


「うん!頑張る!」


 頑張る?頑張って大人には…。


「あ」


 その時俺は思い出してしまったのだ。以前大水竜と会話した時の事を。

 あの時の大水竜の言葉によれば、竜が人の姿を取る時、その外見は精神的な年齢に比例するのだ。

 つまり、竜は『頑張れば大人になれる』のだ。名実共に『身も心も』。


 墓穴は既に脱出不可能なほどに深くなっていた。勿論、自分で掘ったのだが。

「おはよ…」


「おはようございます、ご主人様!」


「………」


「な、なんですか?その『変質者』を見るような眼は?」


「………」


「そんな眼で見られると…」


「………」


「興奮してしまうじゃありませんか!」


「ホントもう勘弁して下さい」

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