第18節
竜の秘密が少し明らかに。
俺、この回が終わったら、シノ回を書くんだ…。
待っててくれよな、皆…。
…という事で、(アキト君の)死亡フラグを立ててみる。
第18節
冒険者のランク。
ゴールドからプラチナへのカラー昇格条件。
様々な実績に加え、厳正な実力審査、人格等が考慮される。
そして、他の何よりも外せない条件。
それが――――『竜の単独撃破』。
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「なっ!?」
俺は声を失ってしまう。ちょっと待て、おかしくないかそれ?と云う声が出せない。
それを察したのか、ヒカルは話を続ける。
「…貴方が言いたい事は大体分かる。でも、だからこそ、今この大陸にはプラチナの冒険者は存在しないの」
それは、そうだろう。竜はこの世界の人間にとって神様みたいな物であるのだから。
冒険者ギルドはあくまで国や教会から公認されていない、非公式な組織なのだ。
そこに所属する人間が竜を殺したとなれば、即刻ギルドはおとり潰し。プラチナになった途端そいつは食いぶちを失うのだ。誰だって、そんな危険を冒してまで竜を殺そうとは思わないだろう。
そもそも――――
「そもそも、竜は永遠存在ってやつじゃ無かったのか!?」
「そう、彼らは永遠存在。でも、不死存在ではない。彼らを殺す方法はいくつか存在する」
「それは?」
「まず、竜の幼体。彼らも産まれたばかりでは力も弱く、普通の冒険者程度でも、簡単に殺す事が出来る」
その言葉に、シノを見る。初めて会った時、肩に怪我をしていたのは、もしかして…。
俺の眉間に寄るしわが深くなる。
その様子に気付かず、ヒカルは話を続ける。
「けれど、竜の生態は謎に包まれていて、彼らの幼体が見つかる事はまず無い。見つかったとしても、すぐ傍に親が居るから簡単には手を出せないけど」
シノの近くには親らしき存在は居なかった。そもそもシノ自体この世界にはもう存在しないと言われていた竜だ。何故あんな所で死にかけていたのか全く分からない。
「次に、竜の成体。実は彼らも死ぬ事がある」
「成体も?」
「ああ。彼らは唯一、人間の手で負わされた傷は治りが遅いらしい。そして、それが致命傷だった場合、彼らは永遠存在では無くなる」
「何で人間に負わされた傷だけ!?」
「それは、依然として謎だ。ただ、私の仮説では、彼ら竜と人間が等しく『太陽竜』によって創造されたから、だと考えている」
『太陽竜』、か…。
「『太陽竜』によって創造された両者は、根源的に同一であると云える。そこに何らかのヒントが隠されているとは思うが、依然として研究中だ」
他にも、いくつか例はあるが、どれも特殊過ぎるので省く、といってヒカルは一旦言葉を切った。
「俺は竜の成体を見た事が無いけど、竜の成体はやっぱり強いんだろう?」
俺は念の為に聞いておく。
「ああ。簡単に言うなら、竜一体を討伐するのに何万人という犠牲が出る。彼らはそう云う存在なのだ。単独撃破など、お伽噺に出てくる英雄ですら夢のまた夢。ましてや、竜は人間の守護者でもあるのだ。自分で自分の首を絞める馬鹿は居ないよ」
だからこそ、プラチナは居ない。
そう云う事なのだろう。
俺はヒカルに問う。
「ヒカルはプラチナになりたいのか?」
その問いにヒカルは目を丸くした後、こちらを睨んで来る。
「いくら貴方と言えど、それは私を侮辱している。私は彼らを良く知りたいだけだ。むしろ死んでもらっては困る。せっかく、貴方という通訳を見つけたのだから。そもそも、私が欲しいのは知識と力であって、ギルドのランクなどでは無い。だからこそ、シルバーなのだから」
「そっか。悪かった」
流石に本気で聞いているとは思ってないのだろう。俺が謝ると、ヒカルはすぐに相好を崩す。
その顔が年相応に見えて、不覚にもドキリとしてしまう。
俺は慌てて話題を変える。
「ともあれ、明日は騎士の皆を護衛しながら火竜の国へ向かうんだ。早く寝てしまおう」
「…ん、そうだな。もう夜も遅い」
眠そうに瞳をこするヒカル。
その仕草が、まるきり猫で吹き出してしまう。
しかし、それは失敗だったとすぐさま気付かされる。
何故なら――――
「…人の顔を見て笑うとは、良い度胸をしているな?」
虎が居た。
おそらく、竜の成体より恐ろしい。少なくとも今の俺にとっては。
「ぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
これからしばらく俺は、夢で虎に貪り食われる悪夢を見る事になるのだが、それは別のお話。
「う~ん。う~ん」
「なんだ?うなされているのか」
「うぅっ…」(ポロポロ)
「泣いているのか…。今日の事を思い出しているのかも知れんな…」(なでなで)
「…帰りたい……」(ボソッ)
「元の世界の夢を見ているのか…。ホームシックとは可愛い所も有るじゃないか」(なでなで)
「虎が…、虎がぁ…」
「…ん?」(ピタッ)
「ヒカルが借りて来た猫みたいに大人しかったあの頃へ、帰りたい…」(ぶつぶつ)
「………」
――――――――――――
「ぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」