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白銀のスコール  作者: 九朗
第三章『砂漠の華』
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第25節

なかなか話が進まない。

あと十節経っても、《風竜走》が始まる気がしない。




第25節


 ―――何が起きたのか。分からない。


 事態の危険度は、ルルが姿を消している事からも容易に判断できる。あいつは、守銭奴の現実主義者だが、だからこそ自分でなんとか出来る事は自分で成し遂げてしまう。

 そのルルが、俺に何も言わずに逃げ出したのだ。笑い事では済まされない”何か”が起きていたのは間違いない。


 コクリと、杯に満たされた清酒をあおる。普段の安酒とは比べ物にならない程透きとおった喉越しと、その飲み易さからは想像もつかないような強い酒気が臓腑を程良くく。

 つまみも欲しい所だが、今は思考に集中する為に、腕を酒樽と唇の間で行き来させる以上の行動はしたくない。


 だが、いくら思索に没頭しようとも解を得る事は無かった。


 宿のバルコニーから、日が落ち灯りが点在する街を見る。その一つ一つに、命を持つ人間がいるのだと思うと、なにやら不思議な気持ちになるのだ。

 彼らは知っているのだろうか。今日と云う、『世界の終りの日』でも『月狼の復活』でも邪悪な秘密結社が侵略行為テロリズムをしようとしたわけでもないこの日に、この街が灰燼に帰す一歩手前に在った事を。

 いや、もちろん知っていたら大騒ぎなのだろうが。


 そんな場所で、相棒の隠していたヘソクリで買った高級酒一樽を暢気にあおっているのだと考えると、なんとも言えない気分になるのだ。

 例えるならば、荒廃した古代の遺跡を眺めながら一杯やるような感じだろうか。それを人気の多い街中で感じると云うのが、激しく違和感を励起させる。


「感慨に浸っても、分からんものは分からん…」


 現実逃避(・・・・)もそこそこに、思考を元に戻す。


「とりあえず、見た物をもう一度整理してみるか」


 誰にともなく呟いて、昼の記憶を呼び覚ました。昨日の今日どころか、昼の夜だ。さほど苦労することもなく思い出す事が出来た。

 彼に見えたのは、巨大な砂嵐。これだけだ。


 内部に居たアキトやカインの様子どころか、彼がどのようにして竜巻を消し去ったのかすら見る事は出来なかった。

 一応、白い線のような物も見えてはいたが、それが何なのかレオには分かっていなかった。巨大な何かの一部分を見ただけでは、その全体像が把握しにくいように。


 記憶をいくら精査しても、何も掴めない苛立ちに、いつの間にか空になってた杯に酒を並々と掬い、口に運ぶ。


 ヒカルの話が正しいのだとすると、そもそもあの竜巻は人の手でどうにかできる代物では無かったはずだ。

 人が人の領分を超えた『何か』を為そうとする時、そこにはどうしても魔力・魔術の必要性が大きくなる。


 だが暴走状態に在ったあの竜巻は、魔力を喰らっていたそうだ。つまり、魔術的な方法策では火に油を注ぐ事に他ならない。


 では、あの時アキトという少年は何をやったのか。


 答えはやはり、―――「分からない」。


 ふと、レオは先ほど感じた違和感とは別の違和感に気付いた。杯を持っていない方の手を額に当て、嘆くように天を仰ぎ、呟く。


「分かんねー事をいつまでもうじうじ考えるなんて、俺らしくねー…」


 自嘲を込めた一言だった。いつもならば、『畜生、分かるか!』で済ませているはず。しかし、今はそうして自分を笑っても『畜生、分かるか』で済ませられそうにない。


「俺は何にこだわってるんだか…」


 単純に好奇心から?この場合、『好奇心』と云うより『怖いもの見たさ』と言った方が適切な気もするが。

 それとも『壁』としての奴に、だろうか。


 答えはやはり、―――「分からない」。


 レオは珍しく眉根にしわを寄せ、いつまでも慣れない思考に溺れ続けたのだった。


 この後、逃げ出したルルが帰って来て、失われたへそくりについて一悶着ひともんちゃく有ったのだが、それは割愛させてもらう。


―――――――――――――――――――――――――――――――――――――


「あっ、そこいい…」


 シノが悦楽えつらくで完全に垂れきった声を上げる。それに応え、より深い場所に在るしこりを捉えるべく、力の加減を変えながら行為を続行する。


「あの、アキトさん…」


 そうしていると、横からフーカが焦れた声を上げる。


「その…、まだでしょうか…?」


 何かを期待するような、ともすれば怯えているような上目遣いでこちらを見ている。力無く座り込み、自身を抱くように両手を左右の二の腕に回している。よく見れば身体は小刻みに震えており、我慢も限界であることを告げている。

 しかし、自分から動く事はできないのだろう。彼女の控えめな性格から言って、自分から強く求めることも。


 それに俺は苦笑いで返す。


「ごめんな。片腕だから、ちょっと時間がかかってるんだ」


 そう言って、包帯で固定された左腕を見せる。フーカにはカインとの私闘の折、怪我を負ったのだと説明したが、実際には《秘義》の為に自ら引き千切ったのだ。

 それをカインを担ぎこんだ診療所で包帯と固定具を分けて貰い、自分で処置した。流石に普通の医者に、完全に裂かれた手首を繋げてくれ、とは言えない。

 何も無ければ、二三日でくっつくだろう。普通はくっつかないが、俺はくっつく。何か文句が?


 とにかく、片手が使えない俺は今のこの行為に少々手間取っていた。

 そのせいで、フーカは色々切羽詰まっているようだ。彼女が息も絶え絶えに懇願する。


「アキトさん…、もう駄目です。私、我慢できません…」


 彼女の瞳は潤み切り、心なしか頬は上気している。彼女の外見は幼いが、色気という点では十分だろう。

 なにやら、背景がピンクや紫に変わりそうな雰囲気と言動ではあるが、現実はそうではない。


 彼女が我慢できないと言っているのは、俺ではなく――――。


「お願いします。早く鎮めてください…、この筋肉痛(・・・)……」


 そう、『筋肉痛』。

 彼女が力無く座り込んでいるのも、上目遣いなのも、身体を抱きしめているのも、震えているのも、瞳が潤んでいるのも、頬が上気しているのも全部――――、


 『筋肉痛』のせいだ。


 昼間の事を覚えているだろうか。フーカとシノが炎天の下、砂漠で走り回っていたのを。しかも、俺と同じ速度で、だ。

 虚弱、軟弱を絵に描いたような二人が、だ。


 もちろんタネは有った。二人には《拝無神流》の身体強化技法を施していた。筋肉だけでなく、血の巡りやら体内環境やらを尽く調整したので熱射病の予防にもなる。

 だが当然、彼女達の身体には許容を遥かに超過した負荷が掛けられている。術の効果が切れれば筋肉痛になるのも当然の帰結と言えよう。以前言ったように、凄く痛い。


 そこで、《拝流整体術》の出番だ。

 筋肉痛を緩和しながら、正しい筋肉のつき方を補助する。もっぱら、彼女達にとっては痛みを和らげてくれる効能の方が重要だったようだが。

 整体術自体がそれなりに気持ち良い事は、現在それを受けているシノの弛み切った様子からも窺える。

 最初の数日は嫌々といった調子だったが、どうやらこれが気に入ったらしい。訓練の終わりに何本かダッシュをさせるのだが、二人はどちらが先に施術してもらえるか賭けているらしい。


 そして、今日はシノの勝利だったようだ。


 そこで計算外だったのは、俺が片腕だったことだろう。いつもならば、両手でやっている事を片手でやるのだ。単純計算で二倍の時間がかかることになる。

 シノにしてみれば、至福の時間が長引くと云う意味なのかもしれないが、フーカにとってみれば、酷い筋肉痛に耐える時間が延長される事に他ならない。


 案の定のギブアップ宣言に、しかし俺はどうしてやりようも無い。譲歩案を提案してみるも―――、


痛覚つうかくなくすだけならすぐ出来るが」


「……なんだか怖いのでいいです…」


 断わられてしまった。

 まあ実際、身体に良い物でも無いし。


「先に風呂を頂いたぞ」


 そんな事を考えていると、風呂上がりのヒカルが声をかけてくる。実は《風竜走》に出ると決めてから、フーカの家で厄介になっていた。食費なんかは全部こっち持ちだが。


「ん?まだやっていたのか。それなら、私も後でやってもらおうか。最近、肩こりが酷くてな」


 ヒカルの肩こりの原因は、彼女の体躯の割に大きな胸部のせいだと思われる。

 しかし、アキトは若干憮然として答えた。


「いいよ~?あらぬ所まで揉みしだいて良いってんなら、是非ともやらせていただきますとも」


 その答えにヒカルは訝しむように顔を歪める。


「どうしたんだ?君はそう云う”露骨な事”は言わない奴だと思っていたが…」


「露骨な嫌味(・・)の一つも言いたくなるわい!!」


「なんだ、昼間の事をまだ怒っているのか?」


 昼間の事…というのは、俺をていの良い厄介払いに利用したことだ。彼女もそれなりに後ろめたいと思っていたらしく、若干逃げ腰になる。

 それは良い。ヒカルは俺にとって大事な人である事に間違いは無いし、悪い虫から彼女達を護るのは俺の役目だろう。

 まあ、あまりの理不尽さには一言二言、言っておきたい所ではあるが、それは良い。

 それは良いのだが…。


「何故今度は俺があいつに付きまとわれなくちゃいけないんだよ!?」


 叫ぶように吐露した。


―――――――――――――――――――――――――――――――――――――


 時は少々遡って、アキトがカインを病院に担ぎ込んだ所から。


 カインはアキトが自分の左腕の処置をしている間に、目を覚ました。話を聞くに、どうやら急激に魔力を失ったことによるショック症状のような物だったらしい。

 つまり、魔力が回復すれば、特に後遺症も無いらしい。


 だが、目を覚ましたカインは随分としょげていた。ヒカルがやって来ても、それは一向に晴れる気配が無かった。

 どうやら、自分の魔術を暴走させてしまうのは未熟の証のような物だそうだ。それをゴールドランクの冒険者である自分がやったとなれば、沈鬱な表情になるのも無理は無いのかもしれない。


「ふ、ふふ、ふふふ…。自分の魔術すらぎょしきれないなんて、無価値どころか三流以下だったなんて…。これで”最高位ゴールドランク”なんて笑っちゃうよね…」


 全く愉快そうではない笑みを浮かべて、力無く笑い続けるカイン。

 その姿に、流石のヒカルも同情を禁じ得なかったらしく、


「そう気落ちするな」


 と慰める程だった。


「それに、悪いことばかりでは無いだろう?君は自分の力の及ばぬ存在を知った。言い換えればそれは、『私』など必要としなくても自身の大きさを証明する方法を得た、ということだ。自身で自分の価値を定める方策を得たと云う事だろう」


 おそらく、さっさと彼の標的を自分からずらそうとしたが故の言葉だったのだろう。だが、それは彼にとってクリティカルヒットだった。

 その言葉に、カインはハッと顔を上げる。


「…そうか。僕は『負けた』。アキト君には届かなかった…。僕はその程度の存在でしかない―――逆に言えば、それだけの『価値』が最低限保証されたのか!!」


 自分の価値が分からない。それはすなわち、自身を測るものさしを持たないという意味だ。

 しかし、この時カインはそれを見つけた。それがアキトだ。


「アキト君!僕はこれからも君に挑み続けるよ!!どこかの『誰か』に、僕の価値を認めて貰う為では無く、僕が僕を認められるように、君と云う超えられない存在に挑み続けるよ!!」


「は?」


「ああ、なんて晴々しい気分なんだ!!まるで曇っていた空が晴れたようだ!!」


「いや、ちょっと待て」


「今の僕は『アキト君に負ける程度の僕』でしかないけれど、いつか『アキト君に勝てない程度の僕』になれるように頑張るよ!!」


 その二つにはどれほどの違いがあるのか。否、そうではなく――――、


「俺の意志とかは関係無いのか?」


 何故俺が、お前のものさしになってやらなくてはいけないのか、と云う気持ちを込めて問う。

 だがしかし、カインは一向に意に介した様子も無く。こう答える。


「?? 何故君の意志が関係してくるんだい?これは()の為にやることであって、君の意志は一切関係無いじゃないか?」


「駄目だこいつ…。色々とねじが吹き飛んでやがる…」


 その後、いくら言葉を費やしても、カインが『俺の迷惑になる』と云う事を理解してくれる事は無く、最後に。


『次は《風竜走》で勝負だね!ハハハハ!!』


 と、朗らかに言われたのだった。


―――――――――――――――――――――――――――――――――――――


 二人分の整体を終え、最後に俺は湯船に浸っていた。

 正直今日は面倒な事が多すぎた。それらを忘我の彼方へと追いやる為にも。


「風呂って、もしかすると人類最高の発明かもしれん…」


 ついつい長大な溜息を吐いてしまいそうになるのを堪えながら、明日からの事に思いを馳せる。


 この一週間、二人の身体強化に努めてきた。その甲斐有って、二人とも万全とは言えないが十分な体力をを着けることが出来ただろう。

 明日からは、とうとう操船の訓練へと移る予定だ。


 《風竜走》まで、あと二週間ほどであることを考えると、遅すぎる気もする。

 しかし、二人の強化は必須課題だったし、今更文句を言っても始まらない。


 明日からの操船の訓練は、ナギが担当してくれる手筈になっている。彼女の事だ、そこまで心配はしていない。


 そんな事を考えていたから、という訳でも無いのだろうが、風呂場に続く扉が開かれナギが入って来る。


「ご主人様。片手が使えないのは不便でしょうから、お背中を流しに参りました」


 ここは風呂場だ、当然一糸まとわぬ姿で。確かに、左腕が動かせないので着替えるのも一苦労だった事を考えると、彼女の申し出はありがたい。


 それに、今更彼女の裸に慌てふためく俺では無い。彼女とはあんな事やこんな事までした仲なのだ。

 むしろ、露出癖を持つ彼女が入浴という至極真っ当な理由で、裸になっているという事実に、妙に感心してしまった程だ。


 光源が蝋燭一本という状況下でも、やはり彼女は美しい。


 仄暗い、薄明るい風呂場の中で見る彼女の姿態は、朧気な風情も相まって見惚れてしまうほどだった。

 身体は柔らかな曲線を描き、彫刻のように整っている。しかし、芸術品にはあるまじき妖艶さを備えているのだ。


 湯船から上がった俺は、そんな彼女に背中を差し出しながら問う。


「明日からの事だけど。任せきりにしておいてなんだが、大丈夫なのか?」


 そんな俺の背中を、優しく拭きながらナギが答える。


「ええ、お任せ下さい。必ず一週間で仕上げてみせますわ。その代わり、少々厳しくなってしまうのは了承くださいましね」


「そりゃ、まあ構わないけど…」


 ま、操船に関して完全な素人たる俺が口出ししても仕様が無いだろう。

 それよりも、彼女にお願いしておかなければならない事が有る。


「一つ、頼みが有るんだけど、良いか?」


「ご主人様の頼みならば、何なりと」


 そう言ってくれる彼女を頼もしく思いながら、告げた。


「ヘルムスマン…だったかな。それをフーカに任せてみたいんだ」


「それは――構いませんが…、何故か理由と根拠を聞かせていただいても?」


 ヘルムスマン――つまり操舵師であり、同時に艇長を指す言葉だ。『物事の舵を取る』という言葉が有るように、操船において操舵がどれほど重要なのかは、素人の俺でも分かる。

 だが、それでも俺は彼女にその役を任せたかった。


「根拠は…、確証の無い事だから省くけれど、理由なら有る」


「それは?」


 いつしか、彼女の手が止まっているのに気付きながら、俺は答える。


「俺はあの娘に、なるべく重い物を背負わせたいんだ」


「それだけですか?」


「ああ」


 理由らしい理由は、本当にそれだけ。

 けれど、今日のカインを見ていて思ったのだ。彼が自分を無価値だと思っていたように、フーカもまた自身を無価値…どころか否定している節が有る。


「出来る、出来ない。務まる、務まらないは別にして、彼女はそうするべきだと思うし、そうする事で見えてくる物も有るんじゃないかと思って」


 俺に言わせれば、彼女はあまりに背負わな過ぎる。以前、ヒカルが言っていた事も馬鹿に出来ない。

 フーカは、祖父の事も、船の事も、《風竜走》の事も、その大部分を背負っていない。

 それは背負えない、と思っているせいなのだろう。


 だからこそ、無理矢理にでも負荷をかけてやる。少しずつ成功を修めていくやり方では遅すぎる。

 彼女の祖父は亡くなり、彼が隠し続けた真相が明らかになるのも時間の問題だ。今日や明日にも、黙っているのに耐えきれなくなった街の人間によって告げられてしまうかもしれないのだ。


 悠長に彼女の成長を待っている余裕は無い。

 少々荒療治だが、まず彼女の思い込みを正す所から始めなければならない。


 その為に、重役を彼女に押し付ける(・・・・・)

 ヘルムスマンは船の頭脳であり、意志決定をする役職だ。他者に意志を下すには、まず自身を信じなければならない。

 そしてそれは、『自分には何も出来ない』というネガティブな信用では駄目なのだ。


 最初に、『金貨十枚で誰かを雇って《風竜走》に参加する』と言ったフーカに『俺達で参加しよう』と言ったのもこの為だ。


 俺の話を聞き、ナギはしばらく黙して考えていたが、視界の外で一つ頷く気配がした。


「ご主人様のお考えは理解しました。難しい注文ですが、なんとか致しましょう」


「ありがとう」


 その答えに礼を言った。やはりナギは頼りになる。

 背中の手が動きを再開したのを感じながら、内心で安堵の溜息を吐く。こればかりは、ナギの協力が必要だった。


「では、ご主人様?」


「うん?」


わたくしも、”役得”が欲しいのですが」


「役得?」


 背中の手の動きが妖しくなっているのに、寒い物を感じながら尋ねる。


「ええ。シノ様は毎日のようにご主人様に気持ち良くしてもらい―――」


「誤解を招くような言い方は止めなさい!」


「ヒカル様はヒカル様で、彼女を取り合って決闘までされたではありませんか」


「どちらかと云うと、俺は巻き込まれただけな気がしているんだが!!」


わたくしも………ねえ?」


 そこに甘えるような、ねだるような響きを感じ取り、全てを察する。


「で?何をすれば良いんでしょうか?」


 なかば答えを予想しながらも、そう聞く。

 返ってきた答えは、甘く優しく妖艶に。


「この街に来てから、随分とご無沙汰でしたでしょう?」


 何が、とは聞かない。この街に来てから、俺はずっとフーカの家に居た為、出来なかった事だ。


「ここは他所様よそさまの家だぞ。自粛しなさい」


 常識と良識をふりかざし、全力回避。しかし―――、


「ふふ…、皆様はお疲れのようでしたから、既にお休みになられていますよ?今宵は静かな夜ですから、くお眠りになられるでしょうし」


「………なんか盛ったのか…?」


 夕食は俺の腕が使えなかったので、ナギが作ったのだった。

 背筋が少し寒くなる。


「『盛った』などと、人聞きの悪い…。少し、皆さまの安眠を手助けしただけですわ」


「つまり、盛ったんだな」


「………。否定はしません」


 溜息を一つ。さきほどの『頼み』。どうやら高くつきそうだった。

なんとか頑張って、早めの更新を続けたいと思いますよ。

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