表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/4

オフ会再び

「なんだか全然久しぶりって感じがしない・・・」

「まぁお前は前回アイコンチャットの方で来てたもんな」

「それにしても今日は楽しみだな!」


僕とタモリそしてサナトスは今日8月29日にオフ会が開催される会場の前にやって来ていた。

ちなみにタモリとサナトスはリア友なので一緒にここまでやって来た。

同じリア友の陸戦方にも声は掛けたが最近全然タウンの方に行けていないのでというわけでオフ会には参加しなかった。


それにしてもこの前りんごと一緒に来たときよりは緊張はしていないけどそれでも多少は緊張する。

しかもここに来たのはつい10日ほど前なのに・・・・。


「それじゃあ行くぞ」

「そうだなー、皆待たすわけにもいけないしな」


この二人は緊張なんてしてないのだろうか・・・。

そんなことを思いながらも二人と一緒に会場の中へと入っていった。

前回は色々とあって会場内を見渡す暇なんてなかったが意外と会場の中は広かった。

というより高校生が食事などをするのには十分すぎるほどの会場だ。



会場を見回りながらも受付で名前を言い確認されたら前回と同じく受付の人に部屋を案内された。

その部屋の前まで案内されると襖が閉まっており中からは人の気配がした。



「なんか前回と見事に一緒だな・・・」

「なにぶつくさ言ってるんだよ、さっさと部屋に入るぞ」


タモリは襖を一気に開けた。


部屋のの中にはすでにたくさんの人たちが集まっていた。


「うぃーっす、サナトスだ」

「俺がタモリです」

「えっと、くろあです」


僕たちは簡単に挨拶をして部屋の中へと入っていった。


「おぉーそういえばお前らってリア友同士だったな」


一人の男性が僕たちを見ながら話しかけてきた。確かこいつは・・・


「君はきらだよね?」

「なんだよ、くろあもう忘れたってのか?相変わらずの奴だな」


やっぱり僕が思ってるとおりきらだった。

そしてきらの隣に居る女性に目がいった。


「もこもオフ会に来れたのか」

「きらがしつこく言ってね・・・。それにきらを抑えられるの私ぐらいしかいないでしょ?」


確かに。もこが居てくれて助かるのかも。

僕は二人と話した後まわりを見渡してみるとアイツの姿が見当たらない。

集合時間はもう過ぎてるけどもしかして遅れてきているのかな?


あいつのことを考えていると急に僕の目の前が真っ暗になった。


「うわぁっ!なんだ!?」

「だ~れだ?」


どうやら手で目を覆われたようだ。しかもこの声は・・・。


「むらぁだろ?」

「えへへ~せいか~い♪」


僕は忘れもしないアイツの声を当ててみせた。

手が離れていき少しずつ視界がはっきりとしてきた。


「くろあ、久しぶりだね~」


僕の目の前にはむらぁが居た。


「そうでもないだろ。前回からまだ1か月も経ってないんだぞ」

「それでも私としては久しぶりなの!ほんとは毎日会いたいぐらいなんだよ!」


相変わらずの恥ずかしいセリフを言いながらもむらぁは僕の手を握ってきた。


「お、おぃ皆が見てるだろ!?」

「いいじゃんいいじゃん♪私たち仲いいんだから」


でも、なんだろうか言葉には出せないけど悪い気もしない・・・。


「おいお前ら!なにそんなところでいちゃついてるんだ!!さっさと座れ!俺ともこたんもまだいちゃついてないというのに!!」

「うるさいわよ、きら・・・」

「そうだな、僕たちも早く座ろう・・」

「むーっ、まだ足りないんだけどなぁ。まぁいいや後でいっぱいしたいこともあるし」


なにかむらぁが呟いていたが僕は聞かなかったことにして座ることにした。

一番奥の方にむらぁと一緒に座った。座った横には僕よりは少し年下に見えて小柄な女性が座っていた


「初めましてだね、くろあ」


そしてその女性は僕に声を掛けてきた。


「そうだけど、君は?」

「私、キキだよ」

「えっ!キキなの!?」


キキといえば昔僕に告白をしてきたのだけれど僕が断った相手でつい最近タウンに復活していた。


「くろあ驚きすぎだよ~」

「そりゃ驚くよ!まさか今日は会うとは思ってもみなかったし」

「もこさんに誘ってもらって来たんだよ」

「そうだったんだ・・・」


なんだろう。キキと話していると緊張が半端ない。やっぱり昔色々あったからだろうか・・・




「おーい、それじゃあ皆も揃ったことだしそろそろオフ会始めるとするかぁ!」


僕が緊張しながらキキと会話をしているとタイミングが良いのかきらが皆に向かって喋りだした



「その前にやっぱり自己紹介からだな!誰が誰かわからないだろうしな。ちなみに俺様はこのオフ会の主催者きら様だ!今日はよろしく頼むぜ!!それともこたんに手を出した奴は誰であっても許さないぞ!」


きらは緊張もしないで悠々と自己紹介を終わらした。というより相変わらずの奴だな。


「もこです。こういうオフ会は2回目ですけど今回のオフ会も楽しく過ごしたいと思っていますので皆さんよろしくお願いします。ちなみに今さっききらが言ったことは気にしないでください」


もこも前回のアイコンチャットのオフ会といっしょで簡単に自己紹介を終わらせた。


「皆さん初めましてーって言うのもおかしいかな?いちごでーす。今日は楽しい一日にしましょう!」


元気に挨拶をした女性はいちごだった。いちごの外見とその元気さでなぜかりんごのことを頭に浮かべてしまった。少し似ているような気がする・・・。

そしてこの後いちごを始めいちごのリア友の咲月とはちみつが自己紹介をした。

ちなみにタウンで咲月とはちみつはタモリとサナトスの配偶者でもある。


「ファイナルアサシンだ。今日は色々とよろしくな!」


身長のすらっと高い男性はファイナルアサシンだった。というよりファイナルアサシンは僕より2つほど年下のはずなのだが僕よりもずっと年上のように見えた。僕が幼いだけなのだろうか・・・。


「キキです。最近タウンの方には復活しました。今日はよろしくお願いしますね」


キキはすらすらと自己紹介を終わらした。まさか本当に今日ここでキキと会うとはな・・・。


「タモリだ。今日はよろしく頼む」

「サナトスだぜ。楽しくしていこうぜ!」

「りょっちです。こういうことは初めてなので緊張していますが今日はよろしくお願いします」

「ろすけです。自己紹介は今さらという感じなのですがとりあえずよろしくです」


次にタモリとサナトスとりょっちさんとろすけさんが自己紹介をした。タモリとサナトスはリア友なのでわかるがりょっちさんはリアルでも真面目そうな人物でろすけさんもタウンと一緒で優しそうな感じのする男性だった。


「めぐです。今日という日を楽しみに待っていました。皆さん今日は楽しくやっていきましょう」


めぐさんはまだ中学生なのに大人の女性のように見えた。しかもオシャレで化粧もあって凄く美人のように見える。なんだか配偶者として鼻が高い。後でめぐさんに話しかけてみようかな。


「マリです。最近タウンへの出現率がめっきり減っちゃっていましたけどちゃっかりオフ会には来ちゃいました。改めてよろしくお願いしますね」


マリさんは見た目はお淑やかな女性という感じだ。確かにマリさんはタウンへの出現率が減っていたけどマリさんがオフ会に来れてよかった。


そしてついに自己紹介が僕の番に回ってきた。


「え~っとくろあです。オフ会も2度目なのですが相変わらず緊張しています。今日一日よろしくお願いします」


かなりドキドキしたがなんとか終わらすことができた。というより自己紹介簡単にしすぎたのかもしれない。


「羅夢で~す。あ、ちなみにアイコンチャットではむらぁって名乗ってます。今日のオフ会をずっと楽しみにまってました!少しきらには感謝ね。というわけで皆よろしくね~」


むらぁはアイコンチャットと同じでお気楽に自己紹介をすませた。まぁ彼女の性格上全然緊張もしてないのだろう。


これでここに居る全員の自己紹介が終わった。



「全員の自己紹介は済んだようだな。さぁここで俺からのサプライズだ!」


サプライズ?きらはまたなにか仕出かそうとしているのだろうか?


「こいつを見て驚きやがれ!!」


きらがそう言うと急に襖が勢いよくガラッと開いて一人の男性が姿を現した。

男性は見るからに僕より年上で髪の色は金髪と目立っていた。

というかこの人誰なんだろう?今日のオフ会のメンバーはこれで全員のはずなのに


男性は部屋の中へ入ってきて口を開いた


「どうも、皆さんリアルでは初めまして。私は交流の街TOWNの管理人のあるふぁです」

「えっ!あるふぁさん!?」


まさかオフ会にあるふぁさんが来るとは思わなかった。

どうやら皆も知らなかったようで驚いた顔をしている。



「はっはっはっ!さすがに皆驚いているようだな」

「いや、そりゃ驚くだろ。それにしてもまさかあるふぁさんがここに来てくれるとは・・・」

「きらさんに誘われましてね。それに管理人としてタウンのオフ会に興味を持ちましたし」

「というわけらしいぞ。さぁさぁあるふぁさんどうぞ座ってください」


きらに手招かれあるふぁさんはきらの横に座った。


「さぁて、今度こそ全員揃ったしそろそろ始めるか!あるふぁさん号令よろしくお願いします!」


「了解しました。まずは皆さん交流の街TOWNを今日のこの日まで使ってくれてありがとうございます。まさかここまで楽しく使ってくれるとは思ってもなかったです。それにこんなオフ会まで開くなんて想像もしていませんでした。そして管理人としてタウンを作って本当によかったと思っています。これからも交流の街TOWNをよろしくお願いします」


あるふぁさんは言い終わるとグラスをその場にあるジュースの入っているグラスを手に取った。

それを見た僕たちもその場にあるグラスを持った。



「それでは皆さん今日という日を祝って乾杯ーーー!!」

「「「乾杯ーー!!」」」


こうして第1回交流の街TOWNのオフ会は始まった。



テーブルにはたくさんのおいしそうな料理が広げられていた。ちなみに前回と全く違う料理である。

それにしてもこんなに食べられるだろうか?


「あれ?くろあ食べないの?」


目の前の料理のことを考えていると横からむらぁが話しかけてきた


「いや、食べるけど料理豪華だなぁと思ってさ」

「そうだねぇ。でもせっかくお金払ってるんだからさいっぱい食べないともったいないよ」

そう言いむらぁは料理をおいしそうに食べ始めた。

僕もむらぁにつられて料理を食べたがやっぱり見た目どおりにおいしかった。







「へぇ、この人がくろあの彼女なんだねー!」


料理を一通り食べ終わった後僕とむらぁの元にいちご達がやってきた。


「えっといちごだったよね?それに咲月にはちみつ?」

名前を言うと3人ともうなづいたのでどうやら正解のようだった。


「どうも~くろあの彼女のむらぁでーす。いつもくろあがお世話になってます」

「なに言ってんだよむらぁ・・・」

「えーだって彼女としては皆にちゃんと挨拶しておかないといけないし~」

「それが挨拶なのかよ・・・」

「アハハふたりとも面白いね、お似合いだよ!」

「ありがとね、いちごちゃん♪」

別に笑うところでもないと思うのだが・・・。

というかすっかりいちごとむらぁは意気投合したようだな。


「早速尻に敷かれてるね、くろあ」

僕たちの様子を見てはちみつはこんなことを言ってきた。でも確かにそうかもしれない・・・。

そういえば前回のオフ会の時もてるとこのような会話したような気がする。


「そういえばふたりはタモリとサナトスと話はしてきたの?」

「ううん。まだだよ。この後行こうと思っててね」

「それになんか緊張しちゃっててね」

「そうか。でもまぁあの二人悪い奴じゃないからリアルの方でも仲良くしてあげてね」

「わかってるよー。私たち一応タウン内で結婚してるんだから」


そうだった。まぁこのふたりならなにも問題ないだろう。

逆にあのタモリとサナトスのことが心配だ。




「それじゃあそろそろ行くね。また後でね~」

「この後も楽しんでね」

そう言い咲月とはちみつはタモリとサナトスの方へと向かっていった。

後ろをみるとまだむらぁといちごは話が続いており意外と盛り上がっている。

しばらくふたりの話は続きそうなので僕は少し移動することにした。



「ろすけさん、マリさんどうもです」

「あ、くろあさんこんにちは」

「どうも~」


僕はろすけさんとマリさんが一緒に居たのを見かけ挨拶をしにきた


「お二人とも楽しんでますか?」

「えぇ、楽しいですよ~」

「最初は緊張してましたけどみんなと話してるとだんだん楽しくなってきましたよ」


どうやらふたりともオフ会を楽しんでいるようだった。


「でもここに来る前本当に私がここに来ていいのかなって思っちゃってたんだよね」

「あ、僕もマリさんと同じこと考えてました」

「どうしてですか?」

「最初自己紹介で言った通り最近タウンへの出現率減ってきたでしょ?それがあってね」

「そうですよね、僕も全く同じです・・・」


どうやらふたりは最近タウンへ来れていないという理由があり気にしていたらしい。

まぁ確かにマリさんとろすけさんはタウンで見ることあまりなくなったな・・・。


「でも僕にとってろすけさんとマリさんはタウンにとって必要な人だと思いますよ。なんていったってタウンで一番先輩なんだしそれにどんなに出現率が減ったとしてもタウンへの好きという気持ちはふたりとも持ってるわけなんですし」


ふたりとはタウンでの付き合いは長い。だからふたりがどれだけタウンへの想いがあるかは僕は知っている。


「そういえばそうだね・・・。私とろすけさんってタウンではだいぶ先輩なんですよね」

「はい。それに僕たちのタウンに対する気持ち・・・。ありがとうございます、くろあさん。あなたのおかげでタウンへの気持ち再確認できた気がします」

「いや、僕は。別に・・・」

「ありがとうね、くろあ君」


特になにかしたというわけじゃないのだけれどこの二人にお礼を言われると照れてしまう。


「マリさんにろすけさんこれからもよろしくお願いします」

「こちらこそ。よろしくね、くろあ君」

「改めてよろしくお願いします、くろあさん」


ふたりと一通り話終えると僕は自分の席に戻ることにした


「くろあ、楽しんでる?」


席に戻ると横に居たキキが話しかけてきた。


「うん、楽しんでるよ」

「それはよかった。私もオフ会初めてだけどこんなに楽しいとは思ってなかったよ」


キキはどうやらオフ会を楽しんでいるようだった。

そんな楽しんでいるキキに僕はどうしても言っておかないといけないことがあった。


「ねぇ、キキ」

「どうしたの?」

「ありがとうね、アイコンチャットでのこと、あの時色々とアドバイスくれたじゃないか。それに応援もしてくれていたし。だから君に感謝してる」


前回あったアイコンチャットでの事件の時、田村やとりでが応援してくれてそしてキキが応援してくれた。だから今ここにむらぁと共に居られるのは皆のおかげでそしてここにいるキキに凄く助けられた。


「え、いやだなぁくろあ。なんか照れるよ。それに私応援はしてたけどそこまで役にたったってわけでもないんだし・・・」

「そんなことないよ、本当に助かったんだから・・・」

「あはは~くろあにそう言われるとやっぱり照れちゃうな」

キキは本当に照れたように僕から目をそらした。


「まぁでもむらぁさんと仲良くしてね。私これからもふたりのこと応援してるからさ」

「うん、ありがとう」

「ちょっと、くろあ今さっきからお礼言いすぎー」

「はは、そうかもね」


僕とキキはこんな感じのやり取りでこの後も会話をしていた。

こうやってキキとまた喋れることができてよかったかもしれない。



「あれー、ちょっとなんかいい感じの雰囲気じゃない?」


キキと会話をしているとむらぁがやってきた


「むらぁさんどうもです」

「キキちゃんいつもくろあがお世話になってます」


またむらぁはいちご達の時と同じく保護者の様にキキにあいさつをした。

勘弁してほしいのだが・・・。


「それにしてもくろあ。ちょっと私妬けちゃうんだけどー」

「え、なにが?」

「だってーキキちゃんとばっかり楽しそうにして~。それに他の人たちとも楽しそうに喋ってたしー」


やけちゃうってそういうことか・・・。ヤキモチってことね。


「そう言われても・・・。むらぁいちごと話してたから邪魔するわけにもいかなかったし」

「声ぐらいかけてよね~」


むらぁはわざとらしく頬をふくらませていた。口には出せないが少し可愛い・・・。


「ふふ、ふたりとも本当に仲良いんですね」

「いやいや、これを見てどこが仲いいように見えるんだよ・・・」

「むらぁさん、くろあをお返ししますね」


そう言うとキキは立ち上がって他の人たちのところへと移動していった


「少し悪いことしちゃったかな~・・・」

「どうして?」

「だって、キキちゃんもっとくろあと話したそうな感じがしてたもん」

「そうかな?別に普通じゃなかったか?」

「絶対そうだよ。全くくろあは相変わらずニブチンなんだから」


ニブチンって・・・。というか相変わらずって僕そんなに鈍感のように思われてたんだろうか?


「でも、せっかくこうやってむらぁと二人になれたんだから少しキキに感謝かな・・・」

「くろあ・・・。恥ずかしい台詞がこんなに普通に言えるようになってるなんて、レベルが上がったね」


今さっき言った言葉に恥ずかしいとこあっただろうか?というかレベルって一体なんなんだ?

そんなことを思っているとむらぁは急に僕の腕をつかんできた。


「じゃあゆっくり二人きりで話したいしちょっとエントランスのほうでも行こうよ!」

「それもそうだね。それじゃ行こうか」


僕とむらぁは部屋から出て行きエントランスの方へと向かっていった。







「なんだろう、デジャヴだ・・・」

「どうしたのくろあ?」

「いや、なんでもない」


前回もこんな感じでしかも一緒の場所で会話をしていたような。


「それより、むらぁ。ちょっと距離近くないか・・・」


僕とむらぁは横に並んで座っているのだが肩と肩が触れ合いそう・・・というよりもう既に触れている距離で座っていた。


「え~いいじゃん。私たちにはこの距離がぴったりだよ~」

「だけど、そのこれはまずいような」

「私たち恋人同士なんだからいいの!」

「はい・・・」


むらぁに押し切られるような感じで僕は納得してしまった。


「こうやってくろあとふたりきりで居るの久しぶりだね~」

「あ、あぁそうだな・・・」


むらぁとの距離が近すぎるせいで僕の喋り方は少しぎこちない感じになっていた


「くろあ~、ちゃんと顔見て喋ってよ~」

「いや、だから距離が近すぎてさぁ・・・」


やっぱり相手がむらぁとしてもこれほどの距離で会話をするのは緊張する。

それよりむらぁは全然僕と喋っててなにも思わないんだろうか


「んもう!しょうがないなぁっ。」

「ちょっ!むらぁ、なにをっ!」


むらぁは急に僕の頬を両手で包み込み何故か力を入れてきた


「イタっ、、痛いって!なにするんだよ、むらぁ!!」

「くろあがこっち見て話してくれないから、顔をこっちに向けてるの!」


やばい、むらぁって結構かわいい顔してるのにこんなに力があったなんて。



結局僕はむらぁの力に負けてしまいむらぁの方へと顔を向けられた。


「全く~手を焼かせるんだから~」

「あの、そろそろ手離してくれないかな・・・」


ちなみにまだ僕は頬を両手で包みこまれたままだ。


「ダメ!手離したらまた顔合わせようとしなくなるから」

「そんなぁ、少しぐらい信じてよ」

「それにしてもくろあって本当に可愛い顔してるよねぇ。確かアレなんて言うんだっけ・・・?え~っと・・・あ、思い出した!童顔だ!!」


僕の言葉をスルーして意味のわからないことを言ってるし・・・。


「おぃ、近いってむらぁ!」

気づけば今さっきよりむらぁとの顔の距離が近くなっている気がする。というより近い!

普通に息がかかる距離だし。


「ねぇ、くろあ。この前のオフ会の時に屋上で言ったでしょ。続きはまた今度って」


今思い出したら恥ずかしいのだが確かにむらぁは言っていたような気がする。


「だから、ね?」


どんどんとむらぁの顔が僕に近づいてくる。

そしてむらぁは目を瞑った。

というよりまだ僕心の準備が・・・。



「あっれー、お前らなにやってるんだ?」


むらぁともう少しで唇が重なりそうになりそうな時、急に横から声が聞こえてきた。

その声に驚いて僕はむらぁから急いで離れた。


「き、きら!お前なにしてるんだよ!?」

「何してるって、もこたんが居なくなったから探してるところさ。お前たちは何してたんだ」

「ぼ・・・僕たちは話してただけだよ・・・」


かなり動揺していたが何とか説明することができた。

それにしても、きらが来てくれたのはタイミングが良かったのか悪いのか微妙だな。


「ほぅ、なるほど。それじゃあお前らのいちゃいちゃしてるのを邪魔するのも悪いし俺様はもこたんを探しにいくとするか。じゃあなー」

そんなことを言いきらは去って行った。


「もう!きらのやつ空気読まないんだから!」

「あはは・・・」

僕の横ではむらぁが怒っていたが僕は苦笑いをするしかなかった。


「それじゃあ皆も心配するしそろそろ部屋に戻ろう」

「えー!これからが大切な時なのにー!まぁでも今日はまだ長いしこれからだよね!」


「今日はまだ長い」という言葉に少し疑問を抱いたが僕はこの場を凌げたのでなにも問わないことにした

そして僕とむらぁは部屋に戻ることにした。




部屋に戻っている途中に廊下でもこが歩いてどこかへ向かっている姿を見かけた。


「ごめん、むらぁ。先に部屋に帰っててよ」

「ん、どこか行くの?」

「ちょっと、トイレ行くの忘れててさ」

「わかったー。じゃあ先戻っておくね」


むらぁにもこを追う理由は告げずに僕は少し気になったのでもこを追いかけてみることにした。




もこを追いかけてみるとどうやらもこは自動ドアを抜けて外に出て行ったようだ。

僕も外へと行ってみるともこが自動ドアから出たすぐのところに居た。


「もこ、こんな所でなにしてんの?」

僕はこのまま隠れてもこを見続けているのもどうかなと思ったのでもこに声をかけた。


「あれ、くろあなんでここに?というよりくろあこそなにしてんの?」

「いやぁ、その・・・。ちょっと部屋戻ってる時にもこが外に出ていくの見えて気になって追ってきたっていうか・・」

「ふ~ん。でも、私友達から電話かかってきたから外に出て電話してただけなんだよね~」

「そうなんだ」


どうやらもこは電話のために外まで出たようだ。でもわざわざ外に出なくても廊下とかですればいいのに・・・。


「それよりもくろあ。むらぁとどうなの?」

「いや、どうなのって聞かれてもな・・・」

「もったいぶらず教えてよー。もしかしてキスのところまでいったとか!」

「キス!?」


僕はキスと言う単語を聞いただけで凄く取り乱していた。

それもそのはず、つい今さっきまでむらぁとそういう展開になったばかりなのだから。


「なに顔真っ赤にしてるの?まさか本当にキスを・・・」

「な、なに言ってるんだよ!それより、もここそきらとはどうなんだよ!」

「私はいつもと変わらないよ。それに私ときらは付き合ってるわけじゃないし」

もこはこう言ってるけどたぶんきらは付き合ってると一方的に思っているんだろうな。


「それにしても・・・ふふっ」


もこが何か言おうとしたとき何故か急にもこは笑い出した。


「いきなりどうしたんだよ、笑ったりして?」


「あはは、ごめん。なんかさ、私達似た者同士だと思って」


「似た者同士?なんで?」

どこか僕ともこの似たようなところなんかあっただろうか?


「お互い自分のパートナーに振り回されてるなぁって思ってね」


お互いのパートナー。確かに僕はむらぁに結構振り回されてるのかもしれない。いや、絶対振り回されてる。

もこもきらになんだかんだで振り回されてるし・・・。

というかもこは付き合ってるわけじゃないと言ったがパートナーとしての自覚はあるんだな。


「はは、それもそうだな」

「でしょ?でもくろあの場合は尻に敷かれるって言った方がいいのかな?」

「それは・・・。でも否定はできない・・・」

「まぁくろあもいざって時オトコを見せないとだめだよー」

「努力はするよ」


そう言っても相手があのむらぁだからそういう時は来ないと思うが・・・。


「とりあえず、似た者同士がんばろ!」

「あぁ、そうだな」

まさかこんなところでもこと気が合うとは思わなかった。そして今回この場で面と向かってもこと話せてよかった。









「ちょっと、くろあー!もこと2人きりで何話してたのよー!」

「おい、くろあ!俺様のもこたんを横取りしようとでも思ってんのか!?もこたんこんな奴に騙されるなよ!」

部屋にもこと一緒に帰るといきなりむらぁときらが物凄い勢いで僕に詰め寄ってきた。



「お互い苦労するわね・・・」

「ほんとにね・・・」







この後僕はなんとかもこの協力のもとふたりの誤解を解いてもとの席へと戻って残りの料理を再び食べ始めた。

一通り料理を食べて最後のデザートに手を伸ばそうとしているときひとりの女性が僕のところへとやってきた。


「おいしそうに食べてますね、くろあさん」

「あはは、今さっき色々あって精神的に疲れてね・・・。それでお腹減っちゃって」


僕のところへ来た女性はめぐさんだった。タウンの配偶者ということもあって少し喋っているときに照れてしまうがやっぱり一番は中学生とも思えないその綺麗で整った顔を見て喋るのに照れていた。

そういえば僕はまだオフ会に来てめぐさんと一回も喋っていなかった。


「それにしてもくろあさんとむらぁさんって本当に仲いいですよね」

「はは、そうかな?」

「そうですよ~。やっぱり配偶者としてなんか妬けちゃうなぁ」


そういえばめぐさんこの前もタウンで同じようなこと言っていたな。


「なんとも言いにくいんだけど、もし僕とめぐさんの立場が逆だったら僕もめぐさんと同じ気持ちだったかもしれないよ」

「えー、嘘ですよー!」

「ほんとだよ。例えタウンでの配偶者だとしてもやっぱり普通のネット友達とは違って特別な感じするし」

「確かに。私もくろあさんは普通の友達とは特別な存在ですし」

「そうでしょ?だからそういうことさ」

「そうですか・・・。えへへ、なんか嬉しいです」


めぐさんは照れたようにはにかんでいた。でもやきもちというかこんな風に思っててもらえるなんてやっぱりどこか嬉しいな・・・。



「ちょっとーくろあ色々とフラグ立てすぎじゃない?」


めぐさんといい感じで話をしているとまたもむらぁが僕のところへとやってきた。


「フラグって・・・。別にそういうわけじゃ」

「立ててるじゃなーい。キキちゃんにもこ、それに今だってめぐちゃんを落とそうとして・・・」

「いやいや、落とすとかそういうことじゃなくてただ単に話をだな・・・」

「やっぱり仲いいですね、ふたりとも。でもむらぁさん私たちは本当に普通の話をしてただけですよ」

「え~・・・。まぁでもめぐちゃんがそう言うなら信じるけど」

「最初から信じてくれよな」

「ふふ。まぁよかったじゃないですかくろあさん。それじゃあ私はここら辺で・・・」


そう言うとめぐは自分の席へと戻って行った。僕としてはもう少しめぐさんと話していたかったのだけどいつでもタウンで話せる。お互い友達と言うより本当に違った意味の特別な関係なんだから。


「いいなぁ。タウンの配偶者かぁ。私もくろあの配偶者になりたかったな・・・」

「しょうがないだろ、むらぁはしばらくタウンだってアイコンチャットだって来れてなかったんだから」

「でもぉ・・・。今から配偶者作っちゃおうかな」

「おぃおぃ・・・それは僕が困るんだが・・・」

「あはは、嘘だよ~。それに今はリアルでこんないい人がいるんだからね!」


またしてもむらぁは悪戯っ子みたいな顔をして笑いながら僕の腕に自分の腕を絡めてきた。

正直腕に柔らかな感触があったがそこはなんとかこらえて僕は平静を装っていた。

別に悪いことじゃないからいいんだが、やっぱりまだむらぁのこんな行動には慣れないな・・・・。



最初は緊張していたけどタウンのメンバー皆とも打ち解けて残りのオフ会の時間を楽しく過ごすことができた



そして時間は経つのは早いものでいつの間にか18時を回ってた。


「ここまで楽しいものとは思わなかったなぁ」


僕達タウンのメンバーは会場を後にして今は外に出ていた。


「さてと、この後皆はどうするんだ?」

「もちろん俺様はもこたんと2人きりで朝まで盛り上がるぜぇぇ!!」

「ちょっと勝手に決めないでよきら!?」

どうやらきらともこはどこか遊びに行くようだ。きらが一方的に言ってるだけなのだが。


「俺たちはこの後街に行ってくる。こんな機会あまりないからな」

「残り少ない夏休みめいいっぱい遊びまくるぜ!」

「というわけだから私たちは二次会けってーい!」

タモリ、サナトス、りょっちさん、いちご、咲月、はちみつは二次会をするらしい。


「私たちは今日帰りますね」

「大学の方のサークルにも行かないといけないし」

「夏休みといっても部活はありますからね・・・」

あるふぁさんろすけさんマリさんは部活などのため今日中には帰るみたいだ。


「私も今日中には帰らないと・・・」

「おぅ。親が心配するしな」

「そういうわけだから、私たちも帰るねくろあ」

めぐさん、ファイナルアサシン、キキもマリさん達と一緒に帰るようだ。

この3人はまだ中学生だし親が心配するだろうししょうがないな。


「もちろん私はくろあと一緒だよ!」

まだ僕は何も聞いてないのに隣のむらぁがこんな事を言ってきた。

「一緒ってなんだよ?」

「え~わかってるくせに~」

正直むらぁの言いたいことはわかっていたが前回のオフ会の後のむらぁと二人きりの時は色々とやばかったからな・・・。


「それじゃ善は急げだよ!いっくよくろあー!」

そう言うとむらぁは僕の手を取り走り出した


「お、おぃちょっと待ってよまだ皆に挨拶が・・・」

むらぁには声が届かないのかおもいっきり引っ張られ引きずられるような形でむらぁに連れて行かれた。

引きずられながら皆の方を見ると何故か笑っていた。もこに関しては「やれやれ」といったような顔だったが何故かビシッと親指を立てていた。








「お、おぃむらぁ一体どこ行くんだよ!?」

いつの間にか僕たちは前回と一緒の街のところまで来ていた。


「う~ん、特に目的はないんだけどくろあと一緒ならどこでもいいかな?」

嬉しいことを言ってくれているんだが目的がないってことが色々と不安なんだが・・・。


「せっかくだし何処か落ち着ける場所を探そうか。こんな所に居るのもなんだし」

「うん!」

むらぁは元気よく返事をすると再び手を繋ぎなおしてきた。僕はいつの間にかそんな行動にも慣れていて何も言わずそのままむらぁと歩き出した。


歩いていると一軒のバイキングスタイルの店を見つけ特に行くところもないので俺とむらぁはそこに入る事にした。

店に入ると冷房が効いていてとても涼しかった。今さっきまでの暑さが嘘のようだった。

僕たちは今さっきまで食べていてお腹もあまり空いていなかったのでドリンクバーだけ頼んで店でしばらく過ごすことにした。



「それにしても夏休みももう終わりだな」

「そうだね。今年の夏休みは楽しかったなぁ」

「色々とあったからなぁ」

アイコンチャットでの事件からオフ会、そしてそのオフ会で事件は終わりむらぁと付き合うことになった。やっぱりこの出来事は大きかったよな。そして今日タウンでのオフ会。

まさか2回もオフ会をするとは思ってもいなかったしな・・・。


「今までの人生で一番楽しかった夏休みだよ」

「おぃおぃそれは言いすぎじゃないか?」

「だって本当のことだもーん」

でも確かにむらぁの言うとおり僕もこの人生の中で一番有意義な夏休みだったかもしれない。

そんな事を話しているとポケットに入れていた携帯が鳴りだした。

携帯を見てみるとりんごから電話が掛かってきていた。


「ちょっと、ごめん」

むらぁに詫びを入れて電話を出ることにした。


「もしもし」

「あ、やっと出た!ちょっとー遅いわよ」

「あぁごめん。それより何か用?」

「そうそう、明日空いてる?」

「明日?なんで?」

「いや~夏休みももうすぐ終わりでしょ?せっかくだから遊びに行こうと思ってさー。だから暇そうなくろあを相手に選んであげたわけ」

暇そうって・・・こいつにだけは言われたくないんだが・・・。


「あのさぁ、りんご実は明日は・・・」

「もちろん暇なんでしょ!?」

どうしてりんごは僕を暇だと決めつけるんだろうか。

僕がりんごの返答に困っていると前に居るむらぁが僕に向けて手を出してきた。

もしかしてこれは携帯を貸せという意味なのだろうか?

でもここで携帯を貸してもいいのだろうか?ここでむらぁに携帯を貸してしまえば絶対めんどくさいことになってしまうだろう。これは携帯を渡さない方が・・・。


「おーいくろあ聞いてる?何かしてるの?」

やばい、そろそろりんごが怪しんできている。なんとかしないと・・・。

なんとか打開策を考えていると今さっきまで手を出していたむらぁがいつの間にか僕の隣に移動してきてそして携帯を奪ってしまった。


「ちょっと、むらぁ!」

「やっほーりんごちゃん」

むらぁは僕の言葉を聞かずにそのまま携帯に喋りだしてしまった。

そしてそのままむらぁはりんごと電話をしていた。電話のりんごの声は聞こえないので何を話しているのか分からなかったがむらぁはなにか楽しそうに会話をしていた。

一通り喋り終わったのかむらぁはやっと僕に電話を返してくれた。


「ちょっとーむらぁちゃんが居たなら言いなさいよー」

「なんか、ごめん」

とりあえず僕は何も言えないので謝ることにした。


「別にいいんだけどなんか私も悪かったわね、デート中に」

「デートって・・・」

「まぁ明日は許してあげるよ」

「うん、ありがとう。そうしてもらえると助かる」

「でもいつかきっと埋め合わせはしてもらうわよ」

こいつの埋め合わせっていったら絶対大変なことになるんだよな・・・。


「あ、それとむらぁちゃんにも言ったけどこの後絶対チャットに来なさいよ」

「は?なんで?」

「そういうことだからー。じゃあね~」

「お、おい!ちょっと!」

りんごは一方的に電話を切ってしまった。というかなんでチャットに行かないといけないんだ。


「ごめん、待たせちゃって」

「くろあは彼女が一緒に居るのに目の前で他の女の子と電話しちゃうんだ~」

「え?」


何故だろうむらぁの顔が笑ってない気がする。


「やっぱりくろあは私なんかよりりんごちゃんの方がいいのかな~?」

これは明らかに怒っている。理由はわかっているのだが、これはどうすれば・・・。

いや、なんとかしないと。


「えっとむらぁ言っておくけど断じてそういうわけじゃないからな」

「本当かな~?楽しそうに話してたし」

「いやいや全然楽しそうになんかしてなかっただろ!?」

「うーん、ほんと~?」

むらぁはじっと僕の顔を見つめてきた。というか顔近い。それになんか可愛い・・・。

いやそんなこと思ってる場合じゃなくて!僕は何も怪しいことはないんだ、潔白だ。



「なーんてね」

そう言うとむらぁは近づけていた顔を引込めた。

「どういうこと?」

「だって私くろあの事信じてるし。それに相手がりんごちゃんだからね」

「その通りだよ!その、ありがとうむらぁ信じてくれて」

「アハハ変なくろあ。自分の彼氏を信じるのは当たり前じゃない」

「そ、そうだよな」


「でも、もし本当に浮気なんてした時は・・・」

むらぁは今さっきまで喋ってた時の顔とは違い今度は本気の顔になっていた


「その時は?」

「うふふ~な~いしょ♪」

本気の顔になっていたと思ったらまたすぐにいつものあの笑顔に戻った。

でもむらぁが何を言おうとしていたかわからないがたぶん本気で何か思っているのだろう。


「それよりもさ、むらぁはりんごと何話してたの?」

「ん~特にこれといった話はしてないけど今くろあと居るっていうことを伝えただけだよ。あとはこの後くろあと一緒にアイコンチャットに来てって言われたよ」

「そうか・・・・。僕も言われたんだよねチャットに来いって」

「じゃあさこの後ネットカフェ行ってチャット行こうよ!」

「いや、それはちょっと待ってくれないか」

「どうしてよ~?」


僕がネットカフェに行くのを拒む理由。それは前回むらぁと一緒にネットカフェに行ったときのことだ。

僕とむらぁはあの時一緒に部屋で過ごていた。今思えばあれは相当緊張していた。そしてなにか色々と間違いを犯しそうで心配で心配でしょうがなかった。

いや、結局何もしなかったが・・・。というかできるわけない。


それよりここでネットカフェを行くとなったらたぶんというか絶対むらぁは一緒の部屋にしようとするだろう。それだけはなんとかしなければならない。


「そのぉネットカフェに行くってことは今夜はそこに泊まるってことだろ?ちょっとあそこで寝泊まりするのは窮屈じゃないか?」

「私は別に気にしないよ?それに前泊まったじゃない」

「え~っと・・・それにさ、ネットカフェじゃなくても泊まれるところとか他にもいっぱいあるじゃない?それにチャットだって携帯からすればいいし」

「泊まれるところいっぱいあるって・・・。もしかしてくろあ・・・」

むらぁの顔を見ると何故か顔がほんのり顔が赤くなっていた。どうしたのだろうか?


「ちょっと~くろあ気が早いよ~・・・。でも私たち付き合ってるんだし問題ないんだろうけど・・・・。それにくろあだったら私は・・・。でもでもやっぱり恥ずかしいし~」

「むらぁ何言ってるんだ?」

「だってくろあ他の泊まれるところって、ホテルの事を・・・」

むらぁが言った「ホテル」という言葉で僕は自分が言ったことの重大さを知った。

だからむらぁは今さっきからあんなことを・・・。


「いやいや、ごめん!そういうことじゃなくて!」

「じゃあどういうことなのよ~?」

「そ、それはだね・・・。とにかくネットカフェとホテル以外の所に泊まろう!」

「えー!それだったら野宿ってことになっちゃうよ~」


確かにそうだ。それにもしホテルだとしても余計にお金がかかってしまう。

ただでさえ今月金がないというのにそれはさすがにやばいだろう。


「ほら、やっぱりなにもないでしょ。ネットカフェにけってーい!ちなみに今回も私と一緒の部屋だからね♪」

「ちょっとそれは・・・」

「何?もしかしてくろあは私と一緒は嫌?」

むらぁは瞳を潤ませながら上目づかいで聞いてきた。これは反則だろう・・・。


「嫌じゃありません・・・」

「決まりだね!素直なくろあは好きだよ。それじゃネットカフェにレッツゴー!」


こうして僕たちはネットカフェへと行くことになった。

自分で言うのもなんだがやっぱり僕はむらぁに尻に敷かれているのかもしれない。









ネットカフェに着くとむらぁが勝手に受付で全て済ませてさっさと部屋へとむかっていった。僕はただそのむらぁについていくだけだった。

それにしても部屋が前回と一緒の所とは・・・。前回の事を色々と思い出すな。


「さぁさぁくろあ。パソコンは任せるよ!私は携帯からチャットに行くからさ」

「本当にやるのか・・・」


僕は嫌々ながらも電源を入れてアイコンチャットに行くことにした。

アイコンチャットに行ってみると入室者の名前には奈々、ムロウ、マジック、りんご、疾風、てるといういつものメンバーが揃っていた。


管理人:くろあさんが入室しました

管理人:むらぁさんが入室しました

タイミングを見計らったようにむらぁが僕と同時に入室してきた。


むらぁ:皆やっほー!

りんご:遅いよ、くろあ!

ムロウ:来たな、バカップル!

奈々:待ってたよ、くろあ、むらぁちゃんw

マジック:まさに今回の主人公とヒロインだなw

疾風:待ちくたびれたぜw

てる:なんというかがんばれくろあ・・・。


絶対てる以外皆何かを期待しているような気がするのだが気のせいなのだろうか・・・?


くろあ:あのさ、何でわざわざ僕たちここに呼ばれたんだ?

りんご:そんなの!実況中継してもらうためじゃない!

くろあ:実況中継ってなんのことだよ・・・・。

ムロウ:お前らのバカップルっぷりを中継ということに決まってるじゃないか!

マジック:その通りだな。お前らバカップルに期待だぜw

むらぁ:やだなぁ皆~バカップルだなんて~w


むらぁはどうやら照れているみたいだがリアルで僕の後ろに居るむらぁを見てみると本当に照れていたようでずっと携帯を見ながらニヤニヤしていた。


奈々:いいなぁ。むらぁちゃん幸せそうw

むらぁ:えへへ~本当に幸せなんだもんww

疾風:くっそぉうらやましすぎるw


やばい、今さっきからまともに発言ができない。むらぁもリアルで一緒に居るせいもあるんだがこの皆の会話にどう入ればいいんだ・・・。


てる:あ~その、なんだ。くろあ達は今回でオフ会だったんだよな?


僕がどうしようかと困っているその時てるが救いの手を差し伸べてくれた。

やっぱりてるはいいやつだ・・・。


くろあ:うん、交流の街TOWNのオフ会でね。

むらぁ:しかもきら主催のだよw

疾風:きらなのかwオフ会かぁいいなwこの前のオフ会楽しかったからなw

ムロウ:そうだなwまぁまた近いうちに開こうぜ!今度はもっと人呼んでさ!

奈々:そうだね!次回が楽しみだよ~


近いうちにオフ会が開かれるのはいいことなのだが僕のポケットマネーがそろそろやばい・・・。

本気でバイトをやらないといけないかもしれない。


マジック:そういえばくろあ達もまだまだ気になるがきら達はどうなんだ?

くろあ:どうってどういうこと?

マジック:きらともこの仲の進展具合さ。

奈々:あ~私も気になる!

むらぁ:私は今回見た限りふたりに進展は感じられなかったんだけど。。くろあはどうだった?


きらともこの進展具合か。前回となにも変わってない気がするけど。

今日もこと話して分かったのは意外にもこはきらの事をパートナーと認めていることかな?


くろあ:異常なきらの想いは相変わらずだけど意外ともこはきらのこと信頼してると思うよ。

りんご:それは両想いと捉えていいの?

くろあ:うーん、、それは言いにくいけど・・・。まぁあのふたりはあれでうまくいってるからいいんじゃないのかな?

ムロウ:あいつらのいつものコントは仲の良さの表現なのかもな。

てる:喧嘩するほど仲がいいって言うしねw

疾風:それもそうだなw


あのふたりはたぶんこれからもあのやりとりは続いていくんだろうな。


りんご:でも、くろあもきらみたいにもうちょっと積極的だったらねぇw

ムロウ:全くだな。くろあは少しきらを見習ったほうがいいのかもなw

てる:きらまではさすがにダメだろ。でも、もう少しくろあは積極的になってもいいかもな。

マジック:とりあえずくろあは積極性に欠けるってことだな。

疾風:そうだな少しくろあは変わるべきかもな。


確かに皆の言うとおりだけどこいつら言いたい放題だな・・・。

そんな事を考えているといつの間にか後ろに居たむらぁがいつの間にか僕の横に来ていた。


「ねぇ、くろあ。皆もこう言ってるしもう少し狼さんになってみるのはどうかな?」

「狼さん?なんだそれ?」

「んもぉ!気づいてるくせにぃ!今私たちこんな狭い部屋にふたりきりなんだよ。普通なにかするでしょ?」


むらぁは少し顔を赤くして体をくねくねしながら変なことを言っている。

彼女の言っている意味は分かるが一体僕にどうしろというのだ・・・。確かにむらぁの言っている通りこんな狭い部屋に若い男女ふたりが居たらそんな事を考えてもおかしくないだろう。

けれど僕にはそんな事をする積極性は全然ない・・・。むしろこんなところでやばいだろうという気持ちの方が強かった。



奈々:でも私はくろあは今まで通りでいいと思うけどな。


僕は困りながらふとチャットを見てみると奈々が発言をしていた。


ムロウ:待て待て奈々。それはマジで思ってるのか?

奈々:本当だよ。ちょっと頼りないけど一緒に居て楽しくてそれに何より優しいのがくろあでしょ?


奈々のこの発言僕は一度聞いたことがある

それはあのアイコンチャットでのオフ会の時の奈々が僕に告白した時だ。

あの時は凄く緊張していてあまり思わなかったが、改めてこの発言のことを思ってみると純粋に嬉しかった。


奈々:積極的なくろあはくろあなんかじゃないよ。今のこのくろあが本当のくろあだと私は思うな~。

マジック:言われてみればそうだな・・・。

てる:うん、そうだね。くろあはそのままがいいよね。

疾風:いきなりキャラ変えろって言われても無理だろうしなw

ムロウ:奈々が言ってるんじゃ仕方ないな・・・。

りんご:リア友の私としてはくろあが優しいってのは認めたくないけど奈々ちゃんがそう言うなら。


奈々のおかげでなんとか皆納得してくれたようだ。

なんとか終わってホッとしているとまたしてもむらぁが僕の横へとやってきた。


「くろあごめんね。なんか無理強いみたいなことしちゃって」

「いいよ。僕だって積極性ないって思ってたし。それにむらぁに、その・・・求められるのは悪い気なんて全然しなくて、むしろ嬉しいぐらいだし・・・。」

「くろあ・・・。嬉しいこといってくれるじゃなーい!」

むらぁは満面の笑顔で嬉しそうに肘で僕をつついてきた。

一通りそのようなやりとりをした後むらぁは再び携帯に目を戻して文字を入力し始めた。


むらぁ:奈々ちゃんの言ってる通り私はそんなくろあだからこそ好きになったんだよねwありがとう奈々ちゃん。改めて気づくことができたよw

くろあ:なんていうか、ありがとう奈々。助かったよw

奈々:やだな~ふたりともw

くろあ:なんだかいつも奈々に助けてもらってばかりのような気がするよ。

奈々:照れちゃうよwでも好きな人を助けるのは当たり前でしょ~


僕のキーボードを打とうとしている指は奈々のこの発言を見て止まってしまった。


マジック:おぉw奈々大胆発言w

りんご:なんか波乱の予感ww

ムロウ:くろあテメー!!またしても!!


皆が盛り上がってるようだけど僕は全然盛り上がれないのだが・・・。

ふと僕は何か視線を感じたのでむらぁの方を見てみるとむらぁがおもいっきりこっちを睨んできていた。


「あの、むらぁさん?」

むらぁに恐る恐る声をかけてみたが見事にむらぁはそれをスルーして携帯をうちはじめた


むらぁ:ちょ、ちょっと!奈々ちゃんどういうこと!?

奈々:どういうことって?むらぁちゃん私がくろあの事好きなの知ってるでしょ?

むらぁ:そ、それはそうだけど・・・。でも・・・

奈々:あはは、安心してよむらぁちゃん。くろあとむらぁちゃんを邪魔するようなことはしないから。

むらぁ:そんな、邪魔だなんて、、

奈々:くろあにフラれちゃったけどでも私はやっぱりくろあが好きだよwだから少しだけでも片思いでいさせてほしいなw


まさかまだ奈々が僕の事を好きでいたとは思わなかった。あんなにおもいっきりフッたというのに・・・。

なんだかここまで想われていることが凄く嬉しい。


「ねぇ、くろあ。なんでそんなににやけてるのかなぁ?」

何時の間にかむらぁが僕の顔をじろじろと見ていた。

どうやら僕は知らない内に顔が緩んでいたらしい。


「べ、別ににやけてなんかいないさ!」

僕は慌てながらも急ぎながらパソコンの画面へと顔を戻した。


りんご:三角関係ね・・・。そういう展開嫌いじゃないけどねw

てる:そういう展開ってどういうことだよ・・・。

むらぁ:でもリアルでくろあ凄く顔にやけてたし。。私奈々ちゃんに負けないようがんばる!!

奈々:うんw私としてもそうしてもらわないと困るんだけどねw


なんだろう。半端なく会話に入りづらい・・・。


むらぁ:というわけだからね、くろあ!くろあも色々と覚悟しておいてよ!


チャットのむらぁの発言と同時にリアルでもむらぁは僕向けて同じことを言ってきた。

色々と覚悟ってどういうことだよ。


くろあ:がんばります・・・。

奈々:がんばってね、くろあ!

むらぁ:うんうん!さてとひと段落ついたことだし私はそろそろ寝ようかな~。


どうやらむらぁは眠くなってきたらしい。それにいつの間にか時間も23時過ぎだった。


てる:俺もそろそろ落ちようかな。

マジック:最後にいいもん見せてもらったしなw

ムロウ:俺はまだ納得しきれてないんだが・・・。

むらぁ:私は一足先に落ちるねw皆お疲れ様。


「くろあ、私先に寝るね」


携帯を閉じたむらぁは畳にごろんと横になって寝る体制に入っていた。


「わかった。僕はもう少ししたら寝るよ」

「うん。くれぐれも言っとくけど私がチャットに居ないからって奈々ちゃんといちゃいちゃしないでよ!彼女は私なんだからね!」

「わかってるよ。ていうかそんなことするわけないだろ・・・」

「それならいいんだけど・・・。じゃあくろあおやすみー」

そう言うとむらぁは目を閉じていった。

僕はそれを見てから再びチャットへと戻っていった。


くろあ:ふぅ、やっとむらぁ寝たよ。

奈々:お疲れ様~

くろあ:あれ?皆もしかして退室しちゃった?

奈々:今さっきねw


何時の間にか僕と奈々以外は退室をしていた。

それにしてもこの奈々とふたりきりって前回と一緒なような気がする


奈々:それにしてもくろあったらむらぁちゃんに愛されてるよねw

くろあ:そうかな?

奈々:そうだよ~。相変わらずにぶちんなんだからw


まぁ愛されてなかったらむらぁが今日してきた様々な行為はなかっただろうな。


奈々:にぶんちんのままじゃいつかむらぁちゃんに捨てられちゃうかもよw

くろあ:それだけは勘弁してほしいなw

奈々:もし、くろあが捨てられちゃったなら私が拾ってあげるよw

くろあ:捨てられたらって・・・。でもありがとうwその気持ちだけで十分だよ

奈々:気持ちだけか~。まぁむらぁちゃんと仲良くしてねw私くろあとむらぁちゃんのこと応援してるから!


僕は前回のオフ会で奈々をフったというのに奈々はそんなこと関係なしで僕たちのことを応援してくれる。

奈々らしいというか・・・。いや、本当にいい友達を僕は持ったな。


くろあ;ありがとう奈々。

奈々:あははwだから別にお礼なんかいいって~

くろあ:でもやっぱり奈々には色々と助けられてるからさw

奈々:そうかな~?あ、それより私そろそろ落ちるね。むらぁちゃんも妬いちゃうかもしれないしねw

くろあ:妬くってなぁ・・・。でも僕もそろそろ落ちるかなw微妙に眠たくなってきたし。

奈々:うんwじゃあねくろあ~。また今度w

くろあ:ああ。また今度


そう言って俺と奈々はチャットから退室をした。

僕は少し眠たくなってきたのでチャットを終えた後僕はパソコンの電源を切った。

僕の後ろでは少しだけ寝息をたてながらむらぁは眠っていた。

あれだけはしゃいでいたからさすがに疲れたのだろう。


今回もむらぁの横ではさすがに眠れないのでキーボードを少しどけてうつむく感じで僕は目を閉じた。

目を閉じてからしばらくするとだんだんとうつらうつらとし始めてきて、いつの間にか僕は眠りについていた













―――――翌日


「くーろあ」

僕が眠っているすぐ傍からささやき声のようなものが聞こえてきた。それを聞くと僕は重たい目をゆっくりと開けた。


「やっと、起きたよ~。だいぶ起こしたんだよ~」

「むらぁ、おはよう・・・。それにしても一体何時何だ?」

「んっと8時だね~」

「前回と一緒で早いね・・・」

「だって時間は限られてるんだよ~。そうでしょ?」


今日むらぁと別れたらまたしばらくむらぁと会えなくなる。

チャットやメール、電話はできるがしばらくの間こうやって実際に会うことはできなくなってしまうのだ。


「そうだな。じゃあ準備して出るとするか」

「うん!」


僕とむらぁは準備をしてネットカフェを出る前にネットカフェの中にある食事をできるバイキング的なコーナーで軽くパンとコーヒーをいただいてからネットカフェを出た。



「さてと、出たのはいいけどこれからどうするよ?」

「ん~それは私も考えてなかったよ」


なんか僕たちって行き当たりばったりみたいな感じだな・・・。

ちなみに前回はむらぁと水族館に行ったが、さすがに前回と一緒で水族館はないだろう。


「むらぁは今回行きたいところとかないのか?」

「う~んそうだなぁ。私はくろあと一緒だったらどこでもいいんだけどね♪」


恥ずかしいセリフなんだけど普通に僕としては嬉しいセリフだ。


「そういうくろあは行きたいところとかないの?」

「え・・・そうだな・・・」


行きたいところ・・・。正直ここらへんのこと全くわからない。

なので僕は適当に思いつくことをむらぁに言ってみることにした。


「遊園地とか・・・?」

「おぉ!遊園地いいね!それじゃ、いこ!」

「え、ちょ、ちょっとマジで?」

「マジだよ。それにくろあが言ったんじゃない」

「いや、そうなんだけど。俺場所知らないんだけど・・・」

「大丈夫!私は知ってるから。オフ会来る前にここの事調べておいたんだ~」

「準備いいな・・・」

「えっへん!それよりちゃっちゃといくよ~」

「お、おぃ引っ張るなよー!」


むらぁは僕の手を無理やり握って引っ張るように走り出した。

というか毎回こんな感じだな。








「なんとか着いたな・・・」

電車に乗ってやってきたのだが電車を降りた後ここまで来る間何回迷ったことか。

それに何時の間にか10時になってるし。


「さーて、くろあ最初は何乗ろうか!?」

「僕は何でもいいけど」

「なんでもいいか・・・。じゃあジェットコースター乗ろう!」


「ぇ、最初からジェットコースターなのか?」

「何?もしかしてくろあ絶叫系苦手とか!?」


絶対乗れないまではいかないが正直いうと絶叫系はめちゃくちゃ苦手だ。でもむらぁの前ではさすがにこうは言えない。

ここは腹をくくるしかない。


「別にそんなんじゃ・・・。いいよ最初はジェットコースターに行こう」

「さすがそれでこそ男の子!それじゃ早速行こ~」



僕たちはジェットコースターのある場所へと移動した。

意外と空いていたんで早くも乗る順番が僕たちへと回ってきた。



「なぁ、やっぱり別のところ行かないか・・・?」

「なにいまさら行ってるの、さぁ乗るよ!」



そして僕たちはジェットコースターに乗り、ついにジェットコースターは発車した。




そして・・・








「いや~、ジェットコースター楽しかったね。ね、くろあ!?」

「・・・・・・」

「あの、くろあやっぱり絶叫系苦手なの?」


「なっ、なに言ってるんだよ!?僕は大丈夫さ!さぁ次のところ行くぞ!」

「ふ~ん。大丈夫なんだぁ?じゃあ次の乗り物に行こうか」





この後僕とむらぁは様々な絶叫マシーンに乗った。いや、むらぁに乗らされた。



「う~ん、やっぱり絶叫系は最高だね!」

「そ、そうだな・・・」


まさかここまでむらぁが絶叫系の乗り物好きだとは思わなかった・・・。


「なぁむらぁ。そろそろ飯にしないか?」

何時の間にか時間は昼を越していた。午前中はほとんど絶叫系の乗り物で時間を使ったな。


「うん、お腹も空いたしね~」



遊園地内にあるレストランに入り食事をとることにした



「そういえばさ、くろあ。昨日は約束守ってくれたんだね」

「約束?」

「チャットで奈々ちゃんといちゃいちゃしないってことだよ~」

「あれって約束だったのか・・・」

「約束だよ~。くろあと奈々ちゃんって本当に仲がいいから私心配なんだよ。それに奈々ちゃんはくろあの事まだ好きみたいだし」


まぁ確かにむらぁを除いて他のチャットのメンバーと比べたら特別に奈々とは仲がいいとは思うしそれに奈々の気持ちは嬉しい。


「あはは、そうなんだ・・・」

「笑いごとじゃないよ~!全くくろあは・・・」

「でもさ、僕が前回水族館で言ったように僕は君のことが一番大切だよ。だからそのぉ・・・彼氏のことは少しは信じてくれると嬉しいんだけどな・・・」

「くろあ・・・。そうだね、ごめん。でも私はちゃんとくろあのこと信じてるから」

「うん、ありがとう」


どうやらむらぁは僕の事を信じてくれていたようだった。

僕たちは少しずつだけど恋人の関係として前に進んでいっているのかもしれない。



この後は料理が来たので僕たちは食べることにした。

食べている間も昨日のオフ会のことやチャットのことを話していた。


こうやってなんでもないことでもむらぁと食事をしながら会話をするのは楽しい。

彼女だからだろうか?普通の友達とは違う楽しさで食事をすることができた。



食事を終ったあと僕たちは時間もそこまでないので最後に乗る乗り物を考えていた。


「最後はやっぱりアレだよね~」

「アレ?」


むらぁが指を差した先には大きな観覧車があった。


「観覧車かぁ。最後にはもってこいの乗りもだな」

「うん!じゃあ行くよ!」


僕たちは観覧車の方へとむかっていった。








「うわぁ、くろあ見てよ!凄い眺めいいよ!」

「本当だな・・・」

外を見るといつの間にか結構な距離で上がって来ていた。

そして外は遊園地一面を見渡せることができた。



「ねぇ、くろあ。今日は楽しかった?」

「ああ、楽しかったよ。むらぁはどうなんだ?」

「私も凄い楽しかった!前水族館一緒に行った時と同じくらい・・・ううん前よりずっと楽しかったよ」


むらぁはそう笑顔で答えた。僕もむらぁと全く同じ気持ちだったので言葉じゃなく笑顔で返した。


「でも、ひとつだけ満足できてないことがあるんだよね」

「満足できてないこと?」

オフ会をしてむらぁとデートをして僕としては凄い満足しているのだが何かむらぁにとって欠けていたことがあったのだろうか?


「だから今ここでその満足してないこと果たしちゃうね♪」

そう言うとむらぁは目を瞑った。

これって、もしかして・・・。


「あの時は、きらが邪魔してできなかったけどここなら大丈夫だよ。だからくろあ・・・」

そしてむらぁは徐々に唇を僕へと近づけてきた。

もうこのやり取りは3回目になるが僕としては慣れない・・・。しかも2回とも失敗に終わっている。


でも、ここでしないと男じゃないだろう。


僕は少しだけ気合を入れるとむらぁの肩をつかんだ。

むらぁの肩をつかんだとき僕は少し驚いた。むらぁの肩は震えていた。

いつもあんなにはしゃいでいるむらぁが震えているなんて・・・・。


だけどそんなギャップが彼女の存在を愛おしく感じさせた。





僕はゆっくりとむらぁとの距離を縮ませていき、僕たちはキスをした。






むらぁの唇は少し濡れていた。逆に僕の唇は緊張のあまり乾ききっていた。

キスをする事態初めてなのでわからないがむらぁとのキスはとても優しい感じがした。



そして僕たちはゆっくりと離れていった。

何分何秒キスをしていたかわからないが長いようで短かった気がする。



むらぁを見ると笑顔だった。だがその笑顔はいつもの笑顔と違いどこか照れているような笑顔だった。

これが照れ笑いってやつなのかな?


キスをした後はしばらく無言が続いたが先に口を開いたのはむらぁの方だった。



「キス・・・もう一回いいかな・・・?」

沈黙のあとにまさかキスのおねだりがくるとは思わなかった。



だが僕は全く拒否もせず今度は自然とむらぁにキスをした。












観覧車から降りると時間は15時となっていた。

意外と観覧車は長かった。まぁ観覧車に乗っている間のむらぁとのキスの方も長かったのだけれども。

まさかあそこまでむらぁがおねだりをしてくるとはな・・・。



「あはは~、くろあがあそこまでキスが上手だなんて思わなかったよ」

「いや、僕キスとか初めてなんだけど・・・。それに、その・・・むらぁとのキス悪くなかったし」

「私もくろあとのキスよかったよ。それにファーストキスの相手がくろあでよかったよ」


どうやらむらぁの方もファーストキスだったようだ。僕としてはそれはそれで嬉しいのだけれど。



「時間もあれだし、そろそろ駅の方へと行こうか」

「そうだね。名残惜しいけど仕方ないよね」


時間も時間なので俺とむらぁは手を繋ぎ遊園地から出て駅へとむかっていった。


ちなみにまだキスをした照れがあったのか僕とむらぁは少しだけ会話がぎこちなかった。










駅まではまた電車に乗ってと距離が結構あったのだが僕にとっては駅に着くまでの時間が凄く短く感じた。


「駅に着いちゃったね」

「そうだな。むらぁは特急だからもうすぐか・・・」

「うん。確かくろあはバスだよね?」

「ああ。バスまでは少し時間あるけどね」

「そっか、そっか」


この後バス停ではタモリとサナトスと待ち合わせをしている。


「くろあ、ちゃんとメールと電話それにチャットしてよね」

「わかってるよ。電話は・・・その、がんばってみる」

「約束だよぉ!もちろん私からも毎日するからね!」


しばらくまた遠距離恋愛となる。そしてまたしばらくむらぁと会えなくなる。

そう思うだけで胸が苦しくなった。


「さてと、そろそろ行かなきゃ」

「もうそんな時間か」

「ねぇ、くろあ最後にお願いがあるんだけど聞いてくれる?」

「お願い?僕にできることなら大丈夫だよ」

「ありがとう。じゃあ目瞑ってくれる?」

「目を?こうか?」


僕はむらぁに言われ目を瞑った。正直なんか怖いのだが・・・。




「くろあ、大好きだよ」


何か柔らかく暖かい物が僕の唇に触れた。

僕はそっと目を開いてるみるとむらぁの顔が僕の目の前にありむらぁは僕にキスをしていた。



キスが終わるとむらぁは僕からゆっくりと離れていった。


「む、むらぁ・・・なにをっ・・・・」

「えへへ、やっぱりキスっていいね!」


むらぁはそう言って改札口の方へと走って行った。

そして改札口の方でむらぁは僕の方へ一回振り返った。



「くろあ!次はもっと濃厚なの期待してるよー!」


むらぁはいつもの悪戯っ子のような笑顔でそう言い改札口の方を抜けていった。



相変わらずだなあいつの笑顔。それより濃厚なのって・・・。



むらぁが最後に言った言葉が気になって僕はしばらくその場で呆然と立ち尽くしていた。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ