記憶を求めて
『●●! やっと見つけたよ、●●!』
……●●?
何だ……●●って……よく聞こえないが……俺の事か?
『どうしたの? 何かぼーっとしているけど、もしかして●●、私たちの事を忘れちゃったの?」
忘れた?
ああ……確かに俺は……忘れている。
なら、誰だ……君は?
『うん! 久しぶり……●●!』
君は……そうだ……。
※※※※※
『どりゃーっ!』
「ぐふっ!?」
腹部に衝撃を受けて意識が覚醒し、目を開いてみればお腹の上で仁王立ちするルルの姿があった。どうやら俺を起こそうと飛び乗ってきたらしい。
大して痛みはないが、無防備な状態への衝撃で肉体が大きく驚いたらしく、眠気は綺麗さっぱり吹き飛んでいた。
「何をする……ルル」
『ん? 何かうなされていたからさ。後、お腹空いたから早く朝食行こうよ!』
俺を心配したと言うより、腹が減った理由の方が強そうだ。とりあえずこの起き方は体に悪そうなので、ルルに二度とやらないように言い聞かせておかないとな。
それにしても、さっき夢で見た女性……あれは誰だったのだろうか?
話し方から他人とは思えなかったので、間違いなく俺の記憶に関する相手であり、どこかで見たような感覚が……。
『あれ、まだ寝惚けているの? よーし、ならもう一発……』
「起きてるって。だからもう止めろ」
全く、先に朝食を食べないと落ち着いて考える暇はなさそうだ。
ルルを腹の上から追い払い、ベッドから起き上がった俺は着替えを済ませ、窓を開けて部屋に空気を取り込む。
「ふぅ……早いものだな」
ユキナとの出会いと、ギルドの初依頼の達成から三日が経過し、この特殊な状況に随分と慣れてきたようだ。
ギルドで依頼を受けては日銭を稼ぎ、生活の安定の為に慌ただしい日々を過ごしていたが、気付けばこの宿の一室も随分と居心地良く感じるようになっていた。
今日もギルドで仕事をするので、手早く準備を済ませた俺は宿の食堂へと向かう。
「おはようさん、クエス。寝癖があるから、後で直しておきなよ」
「おう、来たなクエス。なあ、お前さんが言った通りに生地を全力でこねたんだが、中々いい感じだったぜ」
朝の挨拶をしてくれる宿の女将さんや料理長である親父さんとも仲良くなり、今では料理について語り合うのが朝の日課になっていた。
前に教えたスープに入れる麺の作り方が上手くいったようで、親父さんもご機嫌である。
「本来は生地を踏んで練るんですけど、親父さんの力なら行けると思いましたよ。後は、寝かせる時間も大事ですね」
「寝かせる……つまり熟成させる時間か。どれくらいだ?」
「あー……決まった時間はわかりませんが、他の料理を作り終えたくらいで十分じゃないかと」
「なるほどな。そうだ、前に言ってたあの料理についてだが……」
「ほらほら、その辺にして食っちまいな」
料理の情報提供という事で、少しだけサービスしてもらった朝食をいただいてから、今日も冒険者ギルドへとやってきた。
「あ、クエスさん。この時間に来たって事は、例の依頼を受けに来たんですね?」
「はい。個人的に気になる素材でもあるので、ぱぱっと行ってきますよ」
俺が受けた依頼は、とある花に咲く実の採取である。
特に珍しい物でもない素材の採取だが、実が付いた花は朝方にしか咲かないので、早い時間から探さないと発見が少し面倒なのだ。
報酬も少ない上に細かい作業が多いという事で、余裕がある者や新人とかじゃないと受けない不人気な依頼でもある。
「うーん……こちらとしてはこの手の依頼が消化出来て嬉しいんですけど、クエスさんの実力ならやっぱり討伐系の方が良いのでは? ほら、特に最近は魔物の被害が増えてきていますから」
以前ユキナから聞いた、魔物が活発化している話が町全体に知れ渡っており、ギルドでも冒険者に注意するようになったようだ。
人だけでなく、畑を襲う魔物の討伐依頼も出ているらしく、こちらの方が稼げると受付からお勧めされたのだが……。
「すいません、俺はこっちの方が性に合っているんですよ」
「勿体ない気がするんですけど、わかりました。では気をつけてくださいね」
そんなやり取りをしながら依頼の手続きを済ませ、依頼の花の姿を思い出しながらギルドの建物を出ようとしたところで、テーブルで作戦会議や依頼を受けに来た他のパーティーから声を掛けられた。
「よう、クエス。今日は早いじゃねえか」
「あ、クエスさん。良かったら、これから僕たちと討伐依頼に行きませんか?」
「……ふん。しぶとい野郎だ」
「ああ。人族の癖に生意気な」
まだ人族を下に見たり厳しい目を向ける者もいるが、一部からは認められて親し気に声を掛けてくれる者がいた。
先日とある依頼で他の冒険者パーティーと組む事になり、治療薬や虫除け香の用意といった裏方面で貢献していたら認められたのである。
その評判が広がったのか、周囲からの厳しい目は大分軽減されたと思う。
ありがたい事に前と同じパーティーから依頼に誘われたが、丁重に断ってから俺は建物を出て町の外へと向かった。
『で、何で朝から急いでいるの? お昼までに戻るつもりとか言っていたけどさ』
「作りたい物があってな。朝の内に材料を調達して、昼からは作業にする予定なんだ」
戦闘は基本的に避ける俺だが、一応剣でも拳でも戦えるし、先日のオウガみたいな強敵でなければ大体の対処は出来ると思う。
しかし他の種族と違い特殊な能力が俺にはないので、使える手札……つまり道具を用意して色々と備えておくべきだと思っているのだ。
本当は遅いくらいなのだが、ようやく生活が安定してきたので、そろそろ本格的に準備を始めようと思ったわけである。
そして面倒な花の実の採取を終え、ギルドへ納品してから宿に戻ってきた俺は、予定通り自室のテーブルにて作業をしていた。
さっき余分に採ってきた実を潰して絞り、落ちた液体をとある粉末に入れてゆっくりと掻き混ぜれば、次第に固まり始め粘土のようになってくる。
最後にそれを爪サイズ丸く固めていると、外を散歩していたルルが苦虫を噛んだかのような表情で戻ってきた。
『くぅ……悔しい! せっかく良いお昼寝場所を見つけたと思ったのに……あのネコめぇ!』
「精霊がネコと縄張り争いをするなよ……」
『次は負けないんだから! ところで、何を作っているの?』
机に散乱している物を見たルルは、興味津々とばかりにテーブルへと着地する。
「ああ、ちょっとした試作品をな。今から実験するが、危ないから少しだけ目を閉じていろよ」
『はいはーい!』
ルルが手で目を覆ったのを確認した後、俺は黒い布を片手に先程固めた素材にとある液体を垂らし、そのまま二秒程待つ。
すると、小さな破裂音と共に目が潰れる程の閃光を発し、部屋全体を一瞬だけ白く染めた。
『うきゃああああぁぁぁ――っ!?』
「ああもう、だから閉じていろと言ったのに、何で見てしまうんだお前は?」
『だってだってーっ!』
俺は黒い布で防いでいたので何ともないが、直視したルルは目を押さえながら机の上を転がっていた。
まあこれは試作品であり、威力は弱めにしていたから大した事はないだろう。しかし本来なら耳を潰す為の大きな音が出ていた気がするのだが、素材の問題だろうか? この辺りは要検証だな。
それにしても、物理的な干渉が出来ない精霊でも閃光は効くのか。何か無駄な知識が増えたような気はするが、覚えていて損はなさそうである。
『うぅ……酷い目に遭った。何なのよ、それ?』
「閃光弾ってやつだ。お前が体験した通り、光で相手の目を一時的に潰す道具だよ」
『へぇ、面白いね。でも何でこんなに凄く光るの?』
「さっき採ってきた実の中にある成分と、この鉱石の粉末によって化学反応が起こって光るのさ」
二つの素材を組み合わせる事でマグネシウムと似た素材となり、別の液体と反応する事によって光を生み出しながら爆散するわけだ。
後は各素材の量の調節と、ピンを外したら爆発する容器について説明しようとしたところで、欠伸をしていたルルが話を遮った。
『難しくてわかんない!』
「そうだな、だと思ったよ」
『でもさ、何でそんなに詳しいの? 記憶がなくなる前は、何か発明している人だったのかな?』
「……どうなんだろうな」
こうして己の出来る事が次々と判明していくが、知れば知る程に謎が増えていく気がする。
剣と槍、そして体術でも戦える戦闘技術に始まり、交渉や雑用と言ったサポート面に明るく、自作出来るくらい道具に関する知識がある。
一見万能そうに見えても、飛び抜けたものはないので中途半端とも言える存在なわけだが、不思議なのは己の能力に違和感を覚えている点だ。
俺は本当に、こんな事が出来たのだろうか……と。
記憶を積極的に取り戻そうとしているわけではないが、さすがにそろそろ本格的に探し始める時期かもしれない。
そうなると、この数日間で最も手掛かりになりそうな事と言えば……。
「ユキナ……か」
確かに年も近く魅力的な女性ではあったが、ユキナと初めて会った時に感じたあれは恋心とかそういうものではないと思う。
ならばユキナの何を感じてー……いや、待てよ?
色々あって考えるのを放置していたが、今朝の夢に出ていた女性……見覚えがあるかと思ったら、どことなくユキナに似ているのだ。
髪の長さも、性格も違うので別人なのは間違いないだろうが、親族とか関係者の可能性が高いかもしれない。
時間的に昼を少し過ぎた程度なので、今から外に出ても問題はないか。
「どこにいるんだろうな、あの子は?」
あの日、オウガの討伐報告を済ませ、串肉を奢ってもらった後に別れてからユキナとは会っていないのだ。
普段何をしているとか、住んでいる場所とかでも聞いておけばと後悔しているが、ユキナは己の事や家庭事情を語るのを嫌がっていたから聞けず仕舞いだった。
そうなると、彼女と関りがある人と言えば……。
「ルル、外に行くがお前も来るか?」
『んー? お昼寝しようと思っていたからなぁ……』
「あの串肉の店にも行くんだがー……」
『出発! 早く行こう!』
串肉と聞くなり、速攻で俺の頭に陣取るルルに苦笑しつつ、俺は自室を後にした。
店へ向かう途中、目的はユキナの親友であるメリルを探す為だとルルに説明をしたのだが、当然の疑問がぶつけられた。
『別にあの女の子を探さなくても、ユキナって子について聞いて回ればいいんじゃない?』
「下手に聞き回ると、向こうを警戒させそうな気がしてな」
はっきり言って、ユキナは庶民ではなく天族の中で位の高そうな家の者だろう。上質な装備に立ち振る舞い、そしてどこか世間知らずっぽい雰囲気等と根拠は色々とある。
そんな彼女について聞き回り、怪しい人物が探っていると向こうに伝わってしまえば面倒事になりかねない。
だからまずはメリルから情報を得ようと探しているわけだが、彼女はおそらく貧困層が住まう区画にいると思うので、まずはそちらからー……。
『どっち行くの! まずはお肉からだよ!』
「ああ、わかったわかった。だから髪を引っ張るなっての」
仕方がない。ルルが騒がしいので先に串肉店へとやってきたわけだが、そんな都合良くいるわけが……。
「あ、お兄さん!」
都合良く……いてくれた。
まあ手間が省けたので良しとしつつ、メリルに話があると伝えながら串肉を二本買い、一本をメリルへと渡して近くの公園へとやってきた。
「本当に貰っていいの?」
「ああ、ちょっと話が聞きたくてな。俺も少し稼げるようになったから、気にせず食べるといい」
「ありがとう!」
相変わらず眩しいくらいの純粋な笑顔に心が温かくなる中、俺も串肉を食べようとしたのだが、やはりというかすでに先端の肉がルルに奪われていた。
「あれ? お兄さんのお肉……」
「いや、これはー……」
精霊が見えないメリルには肉が突然消失したように見えたので、さすがに不味いと焦る俺であるが、何故かメリルは嬉しそうにしていた。
「精霊の悪戯だ! お兄さん、良かったね!」
「……悪戯?」
「うん。食べていないのに、目の前で食べ物が消えちゃう事だよ。精霊が食べちゃって消えるから、そう言うんだって」
「それって勝手に持っていくんだろ? 悪戯で済む話なのか?」
「ほんのちょっとだけだし、精霊は良い事を運んでくれるって言われているから、これからお兄さんに良い事があると思うよ」
他にも精霊が食べる程に美味しいから人気店になった……という風に、とにかく精霊は幸運の象徴みたいな存在らしい。
確かにルルの導きにより、メリルとすぐに会えたから良い事は起こっているな。
『……ふぅ、美味しかった。でも今日はもう一個行けそうだから、貰ってもいい?』
だが、すでに精霊の本性を知っている俺にとっては、有難みなんて一切感じない。
メリルから見えないよう串肉をルルへ差し出しながら、今回の本題へと入った。
「実はユキナを探しているんだが、どこへ行けば会えるかな?」
一見すると無垢な子供を串肉で釣って騙そうとする男だが、メリルは特に気にした様子も見せず首を傾げていた。
「ユキ姉から聞いていないの?」
「詳しく聞いてほしくなさそうな雰囲気でな。その辺りについては聞かないで別れちゃったんだよ」
「ふーん、あの後に何があったの?」
子供は本能的に大人の嘘を見抜くものである。
だから下手な嘘は吐かず、依頼の為にユキナと森へ向かった内容を話してみたところ、メリルはじっと俺の顔を見てから笑いかけてくれた。
「ユキ姉ってさ、優しいけど知らない人に自分から声を掛けたりしないんだよね。だから一緒に森へ行こうって言ったお兄さんの事が好きなんじゃないかな?」
「そうだと……いいな。理由はよくわからないが」
「きっとそうだよ! そんなお兄さんなら、ユキ姉の事を話してもいいかな? ユキ姉に会いたいなら、この町の学園に行くといいよ。ユキ姉はそこの生徒さんだから」
「学園……あれの事か?」
この町……アークティアの中心である高台に建つ『アルカ学園』。
多くの生徒が入学しており、将来に向けた様々な技術や知識を教えているという、天族で最も大きい教育機関だとギルドで聞いた事がある。
ユキナがその学園の生徒だと判明したが、関係のない俺が学園に入れるだろうか?
そうなると、家に直接赴く事も考えるべきかもしれない。
「彼女の家とかは知らないかな?」
「それは……聞いていない。行きたくなっちゃうから」
「ん? 友達なら家へ遊びに行きたいって思うだろう?」
「友達だから嫌なの。ユキ姉は優しいから、私なんかが家に行っちゃったら迷惑になるもん」
確かにユキナならば、この子に色々と世話を焼こうとするだろう。しかしメリルが遠慮して断ってしまうので、助けたくても助けられないというユキナの葛藤が目に浮かぶ。
それにしても、無邪気に見えてどこか妙に大人びている子である。おそらくそれだけ苦労をしており、精神が大人にならざるを得なかったのかもしれない。
かつての俺のような……俺の? いや、今はメリルの事だな。
気付けば随分と落ち込んでしまったので、少し話を変えた方がいいか。
「そういえば、ユキナとはどういう出会いだったんだ? まさか俺と同じようにぶつかったとかじゃないよな?」
「違うよー。えーと、一年くらい前かな? 私が困っていたところをユキ姉が助けてくれたんだよ。そこはお兄さんの時と同じかな?」
俺の時は勘違いだったが、素行の悪い冒険者に絡まれていたところをユキナが助けてくれたのが切っ掛けらしい。
「でね、ユキ姉がこのリボンをくれたの! 他にも……」
「へぇ、ユキナらしいな」
その後も雑談しながら色々聞いてみたのだが、ユキナの居場所に関した情報は学園の生徒という点だけだった。
まあ、何もわからなかった状況に比べたら遥かにマシだ。とにかくアルカ学園とやらに行ってみようと思うが、その前に……。
「ありがとう、メリル。俺はそろそろ行くが、色々教えてくれた礼にこれをあげるよ」
取り出したのは小さな丸薬が入った小袋で、その中身を確認するなりメリルは遠慮するように首を横に振った。
「これ、何かの薬? そんなのいいってば。この串肉貰ったから十分だって」
「こいつは薬じゃなくて、食べ物なんだ。どこでもすぐに食べられるよう、俺が作ったんだよ」
先日の依頼であったように、旅の間は落ち着いて料理の準備が出来ず、立ったまま食べなきゃいけない時もあるからな。
しかし干し肉やドライフルーツだけでは栄養が偏るので、様々な食材と薬草を調理して濃縮させた、丸薬タイプの携帯食料を作ったのである。
「味は最悪だが、俺の予想では数粒で一日食べなくても何とかなる……と思う」
「ええ!? そんなわけないよ!」
「まあ、それは言い過ぎかもしれないが、とにかく体に悪くないか試しているんだ。もちろん俺も試してはいるが、要は実験に付き合ってくれって意味さ」
薬や食料を分けると遠慮が出るが、試供品なら受け取りやすいだろう。
そもそも、先程の雑談でこの子の母親について聞けたのだが、どうも栄養不足による衰弱の可能性が高そうなのだ。串肉を半分持ち帰るくらいなので、食事の量が足りていないのは明らかだしな。
とりあえず目の前で一粒だけ食べて、口に入れても平気だと見せてやればようやく受け取ってくれた。気休めだとしても、ただの自己満足だとしても、やらないよりはいい。
袋と串肉を手に笑顔で去って行くメリルを見送ったところで、苦い表情を浮かべたルルが溜息を吐いていた。
『はぁ……酷いねぇ。あれをあげちゃうなんて』
「体に害のある物は入っていないから大丈夫だよ。それにしても、お前が食べた時は見事な吹き出しっぷりだったな」
『煩いよ! 私はあの時の怒りを絶対忘れないんだから!』
「勝手に食べたお前が悪い」
『むきーっ!』
「はいはい、行くぞ」
人の頭部で暴れ散らかしているが、子猫がじゃれていると思えば気が楽である。
気付けばルルの扱いに随分慣れたものだと思いつつ、俺はアルカ学園へと向かうのだった。
続きは、明日の17時投稿予定です。
おまけ
ある日、道具を作ろうと調合をしていると、部屋の窓から隣の家の屋根にいるルルの姿を確認出来た。
「……何をやっているんだ、あいつは?」
何となく気になり注目してみると、ルルの前に唸り声を上げるネコの姿があったのである。
『今日こそ! そこのお昼寝ポイントは私のものだからね!』
ああ……縄張り争い中か。
仮にも世界で目撃例の少ない希少な精霊だというのに、ネコとタイマンとか……実に平和だ。
というか、やろうと思えば己に触れられないんだから、精霊がネコに負ける要素なんて皆無だと思うんだが……何故か正々堂々と勝負しているようである。
譲れない何かがあるんだろうなと思いつつ、ルルから意識を外し、作業へと戻り数分後……ネコの唸り声が聞こえなくなったので、再び窓へ視線を向けて見れば……。
『ふ……ふふ……やるじゃない! 私の好敵手に任命してあげるわ!』
ネコと一緒に、屋根の上で仲良く川の字になって倒れているルルの姿があった。
何か青春とでも言いたげな光景であるが、そもそもルルは小さいんだから昼寝スペースがなくなるわけじゃないし、最初から仲良く昼寝すればいいのでは……と、考えるのは無粋なのだろうか?
うん……やっぱり平和だ。




