魔族の大陸
お待たせしました。
2章開始となります。
※※※※※
『はーはっはっは! はっはっは!』
……何だ?
突然子供の高笑いが響いたかと思えば、俺はどこか見覚えのある場所に立っていた。
何故こんな所にいるのかと疑問は浮かぶが、この場所に見覚えがある理由はすぐに判明した。
何せ向こうに見えるのは、俺がかつて過ごしていた孤児院だし、隣には幼いレイアの姿もある。
つまりこれは……夢なのだ。
あの装置で目覚めてから初めて見る夢に首を傾げていると、先程と同じ高笑いが再び響いたのである。
『何だ? 誰が笑っている?』
『お兄! あっちに誰かいるよ!』
レイアが指した先へ視線を向けてみれば、小高い崖の上でこちらを見下ろしている一人の少年がいた。胸を張りながら両腕を組んでおり、随分と偉そうな態度だ。
頭部に角がある点から魔族の少年であり、随分と身綺麗な格好だなと考えていると、笑っていた少年が掛け声と共に飛んだのである。
そして無駄に空中で回転しつつ俺たちの前に着地したわけだが、何故か姿勢を低くしたまま動こうとしない。ああ……子供からすれば結構高い崖だからな。着地の衝撃で足が痛かったようだ。
何か声を掛け辛いので黙って様子を見ていると、ようやく痛みが引いた少年は顔を上げ、先程と同じポーズを取りつつ俺たちを見た。
『ふ、ふふ……やるじゃないか!』
『いや、何もしていないが?』
『お兄、この子誰? 知らない子だけど……』
『さあ? 町の子供かな?』
『ふ、俺様を知らないのか? なら、教えてやる! 俺様はあのカイザー家の次期当主である……フレム・カイザー様だ!』
※※※※※
「……フレム?」
その呟きと共に目が覚め、俺はベッドから身を起こした。
ここは……ああ、そうだった。
俺が目覚めたベッドは船の寝室であり、俺たちは魔族の大陸へ向かう船に乗っているんだった。
天族の大陸から出発した大型船に揺られてすでに数日が経ち、船員からそろそろ到着すると聞いていたので、甲板に出れば大陸くらい見えるかもしれないな。
大きく伸びをしながら部屋を出て甲板へと出てみれば、部屋にいなかったユキナとルルの姿を発見した。なにやら船のへりに体を預けつつ、二人で何やら話しているようだ。
『……だからなのよ!』
「へぇ……言われてみればそうだね」
精霊に性別というものがあるかわからないが、ルルはおそらく女性と考えてもいいと思う。
そのせいでお互いに話しやすいのか、二人が仲良くなるのは早かった。
今も随分と会話が弾んでいるようだが、一体何を話しているのかと考えながら二人に近づいていると、向こうが俺に気付いて手を振ってきた。
「おはよう、クエスさん」
『もう、何時まで寝てるのよ!』
「そんな文句を言うなって。起きていてもやる事も少ないし、景色もここまで変わらないとな……」
地平線しか見えない海の景色は美しいとは思うが、数日も続けばさすがに飽きてくるものだ。
そう答えながら二人の横に並んだところで、二人は何を話していたのかと聞いてみた。
「ルルから他の大陸について聞いていたの。獣族の大陸には祭りの時だけ出る丸焼き料理とか、食べると一時的に声が変わる不思議な果実があるんだって」
『ふふん、私は精霊だもん。色々知って当然なんだから!』
「……食べ物の事ばかりだけどね」
以前、ルルから魔族の大陸について聞いては見たが、食べ物関係以外は忘れたとか抜かしたからな。こう……町の様子とか、人々や風習とか色々と面白そうなものがあるだろうに。ユキナが苦笑するのも当然である。
『それで、これから私たちは王都で売られている『王の晩餐』って料理を食べに行くんでしょ?』
「違うから」
正直気になる料理だが、俺たちの目的はそうじゃないので、ルルに改めて説明する事となった。
人々を粛清すると語り、世界に宣戦布告してきた『神人』と、神人の使徒と名乗った『エルガンテ』とその一味。
世界中の人々と種族に喧嘩を売るという、冗談としか思えない宣言だったのだが、実際に神人の使徒による襲撃が全世界で行われた事により、決して侮れない存在だと人々に知らしめた。
そしていずれ訪れるであろう神人たちとの決戦に向け、俺は未だ思い出せない記憶を取り戻す必要があり、その為にもかつての仲間の子孫へ会いに魔族の大陸へ向かっているわけだ。
そんな内容を大雑把に説明し終えたところで、ルルはようやく思い出したかのように手を叩いていた。
『あー……そうそう、そうだったね。でもその後で食べに行くんでしょ?』
「余裕があればな」
「あはは。私も何か気になるし、皆で食べに行こうよ」
そこで一旦会話が途切れ、俺たちは並んだまま海の景色をぼんやりと眺めていたのだが、ふとユキナの表情が妙に晴れやかというか、どこか楽しそうに見えるのが気になった。
「なあ、ユキナ。随分と楽しそうに見えるが、何かあったのか?」
「あはは……実は大陸の外に出た事がなかったから、少しだけ外の世界が楽しみなの」
初対面では世間知らずのお嬢様という感じだったが、外の世界に恐れを持っていないし、泥臭い事や野営にも抵抗がないので旅慣れてもいる。普段は控え目なユキナであるが、見た目以上に逞しい女性なんだと、ここ数日の旅でよく理解出来た。
「それにね、レイア様が書いた本の主人公たちもこんな風に色んな世界を旅していたから、ちょっと旅に憧れてもいたんだ」
「そうか。何にしろ、ユキナが楽しそうで何よりだ」
「あ……でも、今は色々大変な時だもんね。あまりはしゃぐのも不味いかなぁ」
『別にいいんじゃない? 楽しい事ばかりの方がいいもん!』
本能のままに生きる精霊に言われるのもあれだが、ルルの言う事は間違いではない。
曇りかけたユキナの表情が再び明るくなったところで、俺は話題を変えようとユキナへと向き直る。
「さて、まだ到着しないなら、いつものやつでもやるか。ユキナ、今日も頼むよ」
「任せて! じゃあ、まずは基本からね」
俺の中にあるレイアの力が目覚めた事により、俺は天族のみが発現出来る光翼を生み出せるようになった。
同時に体内の天力を操れるようになり、天族と同じく身体強化だけでなく、風や光を生み出す奇跡も使えるようになったのだ。
しかし、元が人族である俺には奇跡の使い方がわからなかったので、ここ数日はユキナから奇跡を教わるのが日課になっていた。
「ふぅ……はっ!」
ユキナに見守られながら、指先から光の弾を飛ばす『光弾』を海に目掛けて放てば、一筋の光がしばらく飛んでから海の上で消えた。
『へぇ、以前のへろへろな光弾に比べたら上手になったねぇ』
「大分形にはなってきたが、実戦で使うにはまだまだって感じだな」
「でも、こんな短期間で凄いと思うよ。何も知らなかった状態からー……あっ!?」
褒めようとしてくれたユキナが何かを見つけたので俺もその方角へ視線を向けてみれば、地平線しか見えなかった海に新たな風景が見えたのである。
「もしかして、あれって……」
「ああ、魔族の大陸だな」
『やっと到着だね! あの大陸に美味しい物が待ってるんだよ!』
そして乗船者と港への合図である船の鐘が響き渡ると、乗組員が上陸準備の為に慌ただしく動き始めた。
「ちょっと早いが、降りる準備でも始めるか」
「うん」
『はーい』
部屋に戻ろうとするユキナとルルの後に続いたが、俺はもう一度振り返り魔族の大陸を見た。
「まだお前の事をよく思い出せないが、会いに来たぞ……フレム」
船が着港し、町へと降り立った俺たちの前に飛び込んできたのは、通りを行き交う大勢の魔族たちだ。
まあ魔族の大陸なので魔族ばかりなのは当然であるが、数日前まで周囲は天族ばかりだったので、違う大陸に来たんだなと改めて思い知らされる。
「港があるだけあって大きい町だね。それにしても……こんなにも魔族の人たちが集まる光景は初めてかな」
「まあ天族の大陸じゃ見られない光景だろうしな。それにしても……」
人と物が集まる港だけあって随分と賑わっているのだが、町全体に妙な緊張感が漂っているのが気になる。
その不穏な空気をルルも感じているようで、俺の頭の上でつまらなさそうに呟いた。
『うわぁ……なーんか嫌な感じ。何かあったとしか思えないよね?』
周囲に目を光らせる魔族がそこかしこに見られ、まるで非常警戒でも発せられたかのような物々しさである。
その理由に心当たりがあるのか、ユキナは周囲を見渡しながら呟く。
「あの侵攻で、この辺りの被害は大きかったのかな。でもそれにしては……」
神人の使徒による世界規模の襲撃で警戒するのはわかるが、あれからもう半月くらいは過ぎているのだ。
さすがにその混乱が未だに続いているとは思えず、何か他の理由があるのかと周囲の魔族から話を聞こうとしたところで、警備をしていると思われる魔族が俺たちに気付いて声を掛けて来た。
「そこのお前! どこへ行くつもりだ!」
「え? 俺たちはー……」
「どの船に乗るつもりだ? 預けている荷物があれば改めさせてもらうぞ!」
勘違いされているので訂正したいのだが、口を挟む余裕もない勢いである。
俺たちが天族や人族だからか?
そう思ったが、他の場所でも魔族が問い詰められており、とにかく手当たり次第に聞き回る苛立ちや焦りのようなものも見られた。
とにかく俺たちは大陸に来たばかりだと説明しようとしたところで、一人の男が俺たちの間に割り込んできたのである。
「ちょ、ちょっとお待ちください! この方たちは私の待ち人でして……」
「何だお前は!」
現れたのは魔族の男のようだが、その男を見てまず気になったのは、魔族の象徴である角が半ばで折れている点だった。
確か……魔族にとって角は誇りであり、その角が折れた者は下に見られてしまうものだと聞いた……いや、思い出したと言うべきか。
そんな事を考えている間も、男は警備の魔族に怯みながらも必死に語り掛けていた。
「お二人はここにやってきたばかりですから、聞いたところでー……」
「うるさい、それを決めるのはこちらだ。角折れ如きが邪魔をするな!」
「そうは言われても、ちょっとお耳を拝借……」
あんな牙が剥き出しな警備員相手に、男は辛うじて踏み止まりながら説得を続けている。
急な問い詰めに動揺していたユキナであるが、少し落ち着いたのか俺に小声で語り掛けて来る。
「ねえ、私たちの事を待ち人とか言っていたけど、この人が母さんの言っていた人かな?」
「少なくとも敵じゃない……とは思う」
この大陸へ渡る前、ユキナの母親であるアイラが魔族の知り合いに話を通しておくと言っていたが、その知り合いが彼なのだろうか?
本来ならその人物の名前とか特徴を聞いておくべきなのに、今後は様々な人物や種族と会わなければならないので、相手を見極める目を養う為にもアイラは碌な情報をくれなかったのだ。
会話からアイラの伝手だと思うのだが、まだ碌に話していないので信頼するのは早計だろう。
そんな内容をこっそり話している間に向こうの話は着いたのか、男が同意を求めるように俺へと振り向く。
「……というわけなんです。お二人も、迎えが来ると聞いていたんですよね?」
「その通りです。中々迎えが来ないから俺たちも探していたんですよ」
「遅れて申し訳ありませんでした。というわけで、彼等は私が引き受けますので……」
「……ふん、今回だけだぞ。紛らわしい真似はするなと、そいつ等によく言っておけ!」
捨て台詞を吐きながら去って行く警備の男だが、逃げたように見えるのは気のせいじゃないだろう。俺が話を合わせたというより、男が耳元で伝えた内容を恐れたのかもしれない。
怪しさが増してきたなと警戒を強めていると、男が深い安堵の息を漏らしつつ俺たちに頭を下げて来た。
「お手を煩わせて申し訳ありませんでした。というわけで行きましょうか。早く連れて行かないとー……」
「ちょ、ちょっと待ってください。あの……貴方は一体?」
「あ!? し、失礼しました! 貴方たちはエルドラ家……アイラ様からのお客様で間違いありませんよね? だって手紙に書かれていた通りの組み合わせですし」
「ええっと、はい。私はエルドラ家のー……」
「ごほん! そうです、俺たちはアイラ様の使いですよ」
「良かった。なら主の下へ案内しますので、ついてきてください!」
アイラの名前が出て来たって事は彼女の知り合いか関係者だとは思うが、まだこの男の正体が不明な上に何より見知らぬ土地だからな。最低限の警戒くらいはしておくべきだろう。
つい娘だと口に出しそうになったユキナが申し訳なさそうな視線を向ける中、俺は気にするなと目で返してから男の後に続くのだった。
そしてやってきたのは、町の中心から少し外れた所にある屋敷だった。
男の説明によると、この屋敷の主は町を取り仕切っている者でもあるらしく、それを現すように屋敷の正門には厳格そうな門番の姿も見られ、軽々しく近づけない雰囲気を醸し出している。
そんな館に武器を持ったままでもあっさりと入れてもらえたのだが、案内された部屋に少し戸惑いを覚えていた。
「客間……じゃないよな?」
「だよね? どちらかと言えば私室と言うか……」
『うわぁ……お酒臭い! でも椅子が凄く柔らかい!」
客人なら普通は客間とかに案内されると思うのだが、大きい机の上に食いかけの骨付き肉が乗せられた皿とか、あちこちに酒の容器といったゴミが散らばっていたのである。
壁には柄の長い斧……ハルバードのような立派な武器が幾つも飾られており、とにかく生活感溢れる部屋なのである。つまりユキナが言った通り、誰かの私室としか思えなかった。
ここがどこかと聞きたくても案内してくれた男はいつの間にか消えてしまったので、本当にここでいいのかとユキナと顔を見合わせていると、部屋の扉が勢いよく開かれて魔族の女性が入ってきたのである。
「いやー、出迎えられなくてすまなかったね。ちょっと野暮用があってさ」
そう言いつつも全く悪びれる様子が見られない魔族の女性は、部屋内の豪華な椅子に座ってから俺たちを興味深そうに観察してきた。
それならばこちらも観察させていただいたわけだが、彼女の第一印象は……飢えた獣だった。
眼帯をしているので片目ではあるが、その目は獲物を狙う魔物のように鋭く、下手に関われば一瞬で真っ二つにさせられそうな……そう、まるで抜き身の刃みたいな女性である。気の小さい者は近づくどころか全力で逃げるだろうな。
思わず目を逸らしたくなるが、それで機嫌を損ねたら困るので何とか堪えていると、こちらを見ていた女性はにやりと笑みを浮かべてから自分の膝を軽く叩いた。
「なるほどね。ユキナと……あんたがクエスかい。あいつが言った通り、面白そうじゃないか」
「貴方がアイラ様が仰っていた知り合い……という事で間違いないでしょうか?」
「そうさ。あたしの名前は『シェリル』。アイラとは喧嘩仲間というか、まあちょっとした腐れ縁ってやつだよ」
これが証拠だと言わんばかりに、近くに置いてあった手紙をこちらへ放ってきた。
反射的に掴んで確認してみたところ、封には間違いなくエルドラ家の印がされていたので、彼女……シェリルはアイラが言っていた知り合いで間違いなさそうだ。というかこんな強そうな人、アイラ並の実力者でなければ真っ当に相手出来ない気がする。
名乗ってすらいないのに俺たちの名前を知っていたのも、あの手紙を読んで俺たちの事情は知っていると考えていいだろう。未だ恐ろしく感じる相手だが、味方だとわかったなら少し気が抜けそうだ。
「この忙しい時に面倒事を増やすなと言いたいところだが、あいつには借りがあるからね。手紙に書かれていた通り、この私が協力してやろうじゃないか」
「ありがとうございます!」
ユキナの屈託ない笑顔に、シェリルもまた獰猛な笑みを返している。その相反する笑顔に、お姫様と獣の物語みたいだと思ってしまった。
「ふ……それにしても久しぶりだねぇ、ユキナ。大きくなったもんだ」
「えっ!? あの……申し訳ありません。私、全く覚えがなくて……」
「そりゃあ当然さ。あんたはまだ産まれて間もない頃だったからね」
懐かしそうに語るシェリルの話によると、過去に一度だけアイラの屋敷に押し掛けた事があったらしく、その時に赤ん坊のユキナと出会ったらしい。
「あんたのおしめを変えてやったのも懐かしいもんだ。あたしを見ても怖がるどころか笑っていたし、あいつの娘なんだなって感心したもんだよ」
「うぅ……それは言わなくても……」
知り合って間もない相手に強く言い返す事も出来ず、ユキナが恥ずかしそうに悶えている。
「まあ、ユキナはあいつの娘だからわかるが、あんたも興味深いね。喧嘩を売る以外で私の前に立つ奴は目を逸らすか、もっと怖がったりするもんだが、あんたみたいに堂々とあたしを見返せる奴は珍しい。どんな経験をしてきたんだい?」
「ま、まあ色々とありまして……」
いや、こっちは顔の表情を固定するのに必死なだけで、そんな高い評価されても困るんだが。
寧ろユキナはこの圧を受けて何で平気なんだ? さすがはアイラ……武闘派の娘と言うべきか。
「まあ、そんな世間話は後にしてだ。まずは用件を済ませるとしようか。庭に用意してあるから、ついてきな」
案内してやるとばかりに立ち上がったシェリルであるが、徐に壁のハルバードを手に取ったかと思えば……。
「っ!? クエスさん!」
これから食事でもするかという気軽さで、俺へ目掛けてハルバードを振り下ろしてきたのである。
殺気が微塵もないので完全に反応が遅れた俺であるが、小型の盾を構えたユキナが咄嗟に割り込んできた御蔭か、シェリルのハルバードは盾に当たる直前で止まった。
「……ふっ、まあ及第点だね。ちゃんと守ろうとして偉いじゃないか」
「試すにしてはちょっと酷いと思います!」
ユキナが非難するような視線を向けるが、全く通じていないのかシェリルは豪快に笑いながらハルバードを手にしたまま部屋を出て行く。
そこでようやく緊張が解け、俺は息を吐きながらユキナへと礼を言う。
「ふぅ……助かったよ。ユキナはよく反応出来たな」
「さっきのシェリルさん、母さんと同じ匂いを感じたから」
本気じゃなかったようだが、ユキナが守ってくれなかったら真っ二つにされていてもおかしくなかった気がする。そう思わせる凄みが彼女にはあった。
気を抜いたつもりはなかったのだが、油断し過ぎだと自分を密かに戒めていると、気付けば俺の頭に乗っていたルルが情けないとばかりに笑っていた。
『全くもう! ユキナに比べて情けないったらありゃしないんだから!』
「お前だけには言われたくないなぁ」
さっきからルルが妙に静かだったのは、シェリルの圧が怖くて俺の背中に隠れていたからである。
『だって、怖いんだもん!』
「攻撃が当たらないくせに怖がる理由はないだろうが。それに比べて、ユキナはいつも通りだったな」
「うん、たぶんシェリルさんが母さんに似ているからだと思う。こう……厳しさの中に見える優しさとか」
「似てる……優しい?」
いやいや……優しさとは無縁な、とにかく豪快な女性としか思えなかったんだが、ユキナには何かが見えるらしい。
俺の観察力もまだまだってわけか。もっと精進しないとな。
もう少し先を書き溜めていますが、次の更新は数日先になります。




