表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
神域超越の継承者  作者: ネコ光一
1章 天族
18/18

次の世界へ

 本日は2話連続投稿となります。

 こちらは後の話となりますので、順番のお間違えに気をつけてくださいませ。


 ※※※※※




『お兄! 目を閉じないで、頑張ってお兄!』

『くそ! 本当にあれで兄者を治せるのかよ!』

『わからん。だが……このまま諦めるなんて出来るか!』

『あった! 早くここに!』

『わかってるよ! 何だよ、蓋が閉じねえぞ!』

『落ち着け! 確かアンちゃんはここに何か……そう、素材を入れるって言っていたな』

『私の天力がって言ってた! なら光翼で……』

『……動かねえ。消えちまったけどどうなってんだ?』

『もっと強い……素材のような塊じゃないと駄目なのか? なら……』

『『…………』』

『……考える事は、一緒みたいだな』

『うん。お兄が助かる可能性があるなら、光翼の一つや二つ何て事ない!』

『だな! 戦う事しか出来ねえ俺なんかより、兄者が生き返る方が世界の為ってもんだ』

『ああ、アンちゃんは俺の右腕になる男だ。惜しくないさ』




 ※※※※※




『……何時までもこうしてはいられんな。応急処置も限界だし、一旦帰ろう』

『俺は嫌だ! 兄者が出て来るまで動かねえぞ!』

『俺たちは何時までもここにいるわけにはいかない。奴が復活するまでに備えておかねばならんのだ!』

『でも……』

『アンちゃんなら、自分の心配より、やるべき事をやれって言うさ。目覚めた時に怒られたいのか?』

『けどよ、こんな所に兄者を置いて行くなんて……』

『そうだよ。お兄がここから出た時、私たちがいなかったら……』

『俺たちのアンちゃんだぞ? 大丈夫だ! 俺たちは……やるべき事をしよう』


『お兄……』

『アンちゃん……』

『兄者……』



『待ってるからね!』

『待っているぞ!』

『待ってるからな!』




 ※※※※※




『おーい……起きてる? どうしちゃったの?』


 ……顔を叩かれる感触に、意識が目覚めゆっくりと目を開く。


「ん……何だ? まだ早いのに、何で起こすんだよ?」

『だって、ほら……』


 ルルに言われて目元を触れてみれば、自分が泣いている事に気付く。

 また夢を見たのか?

 けど、今回は何も覚えていない。

 凄く大事な夢だったような気がするのだが……。


「駄目か。仕方がない、次に期待だな」


 とりあえず思い出すのは諦め、気持ちを切り替えて俺はベッドから起き上がる。

 窓から外を眺めながら伸びをするが、もう体に痛みは全くない。数日間の療養により体の調子は万全だ。


「空も快晴だし、出発日和だな」


 遂に旅立ちの日を迎えたので、慣れ親しんだこの部屋ともお別れだ。

 館の主からは、すでにお前の部屋だと言われているのだが、次は何時戻れるのかわからないし、部屋での思い出をしっかりと心に刻んでおこう。




 そして準備を整え、エルドラ家の正門へとやってきた俺とユキナは、アイラやエイジ、そしてエルドラ家の使用人たちから見送られていた。


「本当に二人だけで大丈夫か? 何だったら、港町まで俺が護衛しても……」

「別の大陸までついて来るわけにもいかないでしょう? お気持ちだけいただきます」


 護衛を用意すると思っていたのだが、ユキナに旅の経験をさせるというアイラからの要望もあり、魔族の大陸には俺とユキナの二人だけで行く事となった。

 旅の心得については思い出しているし、ユキナもお嬢様ではあるが外での演習や野営といった泥臭い事には経験がある。その辺りについてはあまり苦労する事はなさそうだ。


「お嬢様、いってらっしゃいませ!」

「ご武運を、ユキナ様」

「忘れ物はございませんか? もう少し、着替えも持たれた方が」

「だ、大丈夫だって。これ以上は荷物が多過ぎるから」


 ユキナは大勢の使用人に囲まれており、激励や別れの挨拶を次々と掛けられていた。

 主の娘だからではなくユキナ本人を慕っているのがよくわかり、見ていると心が温かくなる光景である。

 そういえば、俺とユキナが旅に出ると決めた後、あの中の多くが……いや、ほぼ全員がユキナを頼むと俺に話し掛けてきたな。

 中には親し気でも目が笑っていない者もいて、この子に何かあったらわかるよね? と、言わんばかりの圧に恐怖を覚えた時もあった。

 そんな使用人たちの中、一際目立っているのが……。


「ユキ姉! 次に帰ってくる時は、私がユキ姉の専属になるからね!」

「こ、こら! 申し訳ございません、ユキナお嬢様。うちの娘が……」

「あはは、大丈夫ですよ。うん、楽しみにしているよ。私も頑張るから、メリルちゃんも頑張ってね」


 気付けばエルドラ家で住み込み従者となっている、メリルとその母親である。

 母娘共に健康そのもので、使用人の教育に苦労はしているようだが、二人とも幸せそうで何よりだ。

 そして、早朝から正門で待っていたエルカの姿もあり、どこか目を赤くしながらユキナの前に立っていた。


「ユキナさん! 私たちが鍛えた盾の技、世界に見せてやってくださいませ!」

「もちろんです! エルカさんと……友達と高め合った技ですから」

「っ!? え、ええ! 友と書いて、好敵手ライバルと呼びますものね! おっほっほ!」


 ……何かもう、残念としか言えないな。

 言葉とは裏腹に、涙で顔がぐしゃぐしゃなエルカが離れたところで、最後にアイラが娘の前に立った。


「ユキナよ。様々な経験をして強くなれ。そしてその光翼を使いこなし、曾祖母様のようにお前の名を世界へ知らしめるのだ」

「そんなつもりはないんだけど……」

「いや、そうなってもらわなければならんのだ。お前にはいつか『天王器』を使ってもらわなければならないからな」

「天王器って……私が?」


 話で聞いただけだが、天王器とは神人とは一切関係ない、神から授けられたと言われる武具らしい。

 天族の大陸にある聖都にて厳重に封印されており、噂によると一振りで海を割き、決して砕ける事も朽ちる事もない天族最強の武器だとか。

 そんな立派な武器があったのに、百年前のあの時は神人を甘く見ていた者たちのせいで、天王器の封印は解かれる事はなかった。もし、レイアが天王器を使えていたら……未来は変わっていたのだろうか?

 だが、今はあの時と大きく違う。

 神人の危険性を理解しているアイラが天王器を使えるようにと、天族全体を巻き込みながら聖都へと圧力を掛けているそうだ。


「お前がそんな体たらくでは、天王器は私が使う事になる。しっかりと励むのだぞ」

「別に母さんが使っても……」

「馬鹿者が! そのような気持ちでどうする。私から奪う気持ちで鍛えぬか!」


 俺もアイラの方がと思ったが、何か叩かれそうな気がしたので黙っておいた。仲良くなったからこそ、愛ある拳骨とか平然と落としてきそうなんだよな。

 そして一通り挨拶も終わり、そろそろ出発しようとしたところでアイラが最後の言葉を伝えながら……。


「ユキナ、お前には曾祖母様が……レイア様が見守っている。だから思うように生き、そしてやり遂げなさい。私は何時でも、お前の帰りを待っているぞ」


 愛しき娘をそっと抱き締めていた。


「……うん! 行ってきます、母さん!」




 町を出た後、貰った二頭ケティールに乗って街道を進んでいる途中、町を見下ろせる丘で俺たちは一度足を止めた。


「ユキナ、ここなら町を見下ろせるぞ」

「あはは、大丈夫だよ。でも、うん……ちょっとだけ時間をちょうだい」


 彼女は故郷を眺めながら、何を想っているのだろう?

 もちろん寂しさは感じてはいるようだが、その横顔からは希望……いや、やる気に満ち溢れる笑みも見えた。

 彼女はきっと大丈夫だ。

 頼もしい仲間が出来た事に喜んでいると、不意に髪の毛を引っ張られる感触を覚え、俺は溜息を吐きつつ掌をユキナへと向けた。


「ユキナ。こんな時になんだが、紹介したい奴がいるんだ」

「紹介? 誰もいませんけど……あっ!?」

『じゃじゃーん!』


 そんな気の抜けるような声と共に、ルルは俺の手の上でユキナに姿を見せた。

 呆気に取られるユキナであるが、すぐにルルが何者なのか理解したのだろう。驚きながらも軽く会釈をしていた。


「もしかして、精霊ですか? まさか姿を見られるなんて。えっと、初めまして。私はユキナと申します」

『私はルルだよ! 見ての通り精霊で、今はクエスの保護者みたいなものかな?』

「保護者?」


 俺の顔を窺うユキナだが、こちらの表情を見て色々と察したのだろう。苦笑しつつも、ルルへと指先を伸ばして握手をしていた。


「精霊と一緒にいたなんて、やっぱりクエスさんって凄い人だね。ルルさん、よろしくお願いします」

『駄目駄目! さん付けとか、そんな言い方も何か嫌! 私の事はルルって可愛く呼んでちょうだい』

「わかりー……わかった。ルル、よろしくね」

『よろしい! クエスだけじゃなく、貴方の保護者にもなってあげるから、どーんとこの私を頼りなさい!』

「あ、あはは……」


 ユキナは空気を読む側か。突っ込み要員としては期待しない方が良さそうだ。


「そっか。最近、屋敷で精霊の悪戯が多かったのは、ルルの仕業だったんだね」

『えへへ、ごめんね。貴方の家には美味しい物ばかりだったからさ』

「私も母さんも気にしていないけど、屋敷の料理長は怒っていたよ? 一粒とはいえ、希少な実がなくなったってさ。精霊とか関係ないって、よく包丁を研いでいた覚えが……」

『それは私じゃなくて、別の精霊だよ』


 お前、以前それっぽい実を美味そうに食べていなかったか?

 もう突っ込む気力も湧かず、その後も仲良く語り合う二人を眺めている内に、ふと懐かしい感覚を覚える。

 そうだ……あの時も、あいつ等とこんな風に笑い合いながら旅をしていたっけ。

 今は隣にいる人も、時間も全く変わってしまったが、この温かい感覚だけは、時がいくら経とうと変わる事はない。


「二人とも、話すなら進みながらでも出来るだろう。そろそろ行こうか」

「あ、うん! 行こう!」

『はーい!』


 こちらへ振り返る二人の笑顔に心を満たされながら、俺たちは出発するのだった。



 今回の投稿で、書き溜めた分は終わりとなります。

 続きはまだほとんど手につけておらず、続きの更新は不明ですので、気長にお待ちいただけたらと思います。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ