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第二十五話 魔導術専門学校の入学試験

 ガレッシア共和国の首都エースターの郊外、少し離れた森の入口。

 そこに、国内最高峰の魔導士育成機関――国立エースター魔導術専門学校マジクラフトがそびえ立っている。

 巨大な結界に守られた敷地。

 空に複数浮かぶ魔導塔。

 常に魔法の光が走る訓練場。

 そして、国内外から集まる才能ある若者たち。

 ここは、魔導士を志す者たちの登竜門であると同時に、魔法研究の最前線でもある。


「試験が終わるころに迎えに来るからな」


 そう言い残すと、クロノスはすぐに飛行移動フライト・トランジットで戻っていった。 

 アレスは、校門前で深呼吸をひとつしてからキャンパスへ足を踏み入れた。

 石畳の道の両脇には魔力を帯びた街灯が並び、空には浮遊魔導塔がゆっくりと自転している。

 胸の奥から、エリスの声が弾んだ。


(ほぉ……これは見事な魔導施設じゃな。あの塔、魔力再循環式の浮遊構造か?)

(エリスさん、テンション高い……)

(当然じゃ。魔法関連の施設は大好物じゃからな)


 アレスは苦笑しつつ試験会場へ向かうが、その途中、突然。


「おーい! そこの金髪の君!!」


 アレスはびくっと振り返った。

 そこには、青髪で快活そうな少年が全力で手を振っていた。


「やっぱり君だ! 受験生だろ? 俺もだ! 名前はネプト・オットー! よろしくな!」


 アレスは圧倒されつつも返す。


「あ、アレス……よろしく」


 ネプトはアレスの手をがっしり握り、そのまま勢いよく振り回す。


「君やぁ、緊張するよな! でも俺、水魔法は得意なんだ! 特に水流操作! 試験は実技もあるって聞いたし、燃えるよな!」

(……なんじゃこのテンションの高さは??)


 エリスが呆れた声を漏らす。


(アレス、気をつけよ。こういう猪突猛進型は扱いが難しいぞ)

(僕に言われても……)


 ネプトはアレスの返事も待たず、勝手に話を続ける。


「そういえば君、魔力の流れが綺麗だな! 君も得意なのか? どんな系統? あ、もしかして光? いや火も? それとも――」

「ネプト。あなた、また知らない人に絡んでいるの?」


 澄んだ声が響いた。

 アレスとネプトが振り向くと、そこには長い銀髪を揺らす少女が立っていた。

 整った顔立ち、冷たいほどの美貌。

 制服のような白いワンピースに、月を模したブローチが輝いている。


「ディアナ……!」


 ネプトが目を輝かせた。


「うわぁ……今日も綺麗だなぁ……!」

「あなたの感想は聞いていません。試験前に騒がしいのはやめてくれる?」


 ディアナはまたか、とばかりにため息をつく。

 アレスは思わずエリスと心の中で同時に呟いた。


((テンプレのお嬢様キャラだ……))


 ディアナはアレスに視線を向ける。


「申し遅れました、わたくしはディアナ・ルーナと申します。あなたも受験生? ネプトに絡まれて大変だったでしょう」

「あ、いや……その……」


 ネプトは胸を張って宣言した。


「ディアナ! 俺は君に惚れてる!! だから今日も声をかけに来た!!」

「……はぁ?」


 ディアナだけでなく、アレスもエリスも同時に固まった。


((いきなり惚れた宣言!?))


 ネプトは満面の笑み。


「だって好きなんだもん!」

「……あなた、本当にどうかしてるわね」


 アレスは思わず苦笑した。


「君とはまた会える気がするよ!」


 そう言い残し、ネプトは関わりたくなさそうに去っていくディアナを追いかけていった。


(この学校……受験生から濃い人たちばかりだ……)

(ふむ……アレス。どうやらここは、退屈せん場所になりそうじゃな)


 エリスもやや呆れながらも、内心では楽しそうだった。


 ◆


 アレスたちは、程なくして筆記試験が行われる大講堂前に到着し、他の受験生たちの流れに混じって試験会場へ向かった。

 胸の奥では、エリスが落ち着かない様子で囁く。


(お主が入学した暁には、キャンパスツアーへと繰り出してみたいのう)

(エリスさん……)

(わかっておる。じゃが、魔法施設は魅力的じゃからな)


 アレスは苦笑しつつ、指定された受験番号の張られた席に座った。

 試験官の合図とともに、一斉に紙がめくられる。

 アレスは問題をざっと見渡し、すぐにペンを走らせた。

 魔力理論の基礎。

 魔法陣の構造。

 属性相性の計算。

 魔力回路の安全基準。

 どれも、アレスにとっては馴染みのある内容だった。


(うん、いつも勉強してたやつだ)


 アレスは義務教育の学校でも成績は良かった。

 さらにもともと本の虫でもあり、魔法の基礎知識はクロノスに入門する前から、進んで読み漁っていた。

 

(アレス、よいぞ。その調子でどんどん解いてしまえ)

(エリスさん、試験中に話しかけないで……)

(すまぬ、つい応援したくなっての)


 アレスは苦言を呈しながらも、問題を次々と解き進めていく。

 

「そこまで! 筆記試験終了!」

 

 試験官の声が響く。

 アレスは深く息を吐いた。


「……できた。たぶん、かなりいい線いってる」

(うむ。わらわもそう思うぞ。お主の知識量は、すでに見習いの域を超えておる)


 アレスは少し照れながら席を立った。


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