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心臓ひとつ、ココロはふたつ!? 魔力暴走の果てに見習い白魔導士男子、女魔王様と半分ずつ融合してしまいまして……  作者: 冬馬
第一章 見習い白魔導士男子、女魔王様と半分ずつ融合してしまいまして……
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第二十二話 両雄激突!!

 忘れ去られた迷宮の最深部。

 床一面に刻まれた巨大な魔法陣が、黒い心臓のように脈動していた。

 クロノスは杖を構え、魔力の流れを読み取る。


「……やはりここか。この魔法陣が迷宮全体の結界を維持している」


 魔法陣は生き物のように脈打ち、闇の魔力を迷宮全域へ送り続けていた。

 クロノスが破壊の魔力を練り始めた、その瞬間――


 ヒュヒュヒュヒュッ!!


 背後から、黒い尖ったものが無数に飛来する。

 クロノスは振り返りもせず、杖を軽く振った。


守護防壁ディフェンシブ・ウォール


 透明な結界が展開し、攻撃はすべて弾かれた。

 そして、闇の中から姿を現したのは、黒衣をまとい、冷たい瞳をした魔族。

 クロノスは眉をひそめる。


「……誰だ、お前は」


 魔族は薄く笑い、わざわざ丁寧に一礼した。


「これは失礼。私はメルク。この迷宮の『管理者』です」


 クロノスは目を細めた。


「……メルク。耳にしない名だな」


 メルクは肩をすくめる。


「あなたに知られていないのは光栄ですよ。私は表に出るタイプではありませんので」


 クロノスは杖を構えたまま、静かに問いかける。


「メルク。お前たち魔族は、なぜ再び人間界へ進出しようとしている? 目的は何だ」


 メルクは薄く笑った。


「わざわざ敵に語るほど、私はおしゃべりではありませんよ」

「……そうか」


 クロノスは目を細め一言だけ返す。

 メルクは逆に問い返した。


「では、今度はあなたに聞きましょう。なぜ我々の邪魔をする? 人間界の魔導士が、魔族の動きに干渉する理由は?」


 クロノスは迷いなく答える。


「30年前の戦争を繰り返させないためだ」

「……先代魔王の、ですか」

「そうだ。あの戦争でどれだけの者が死んだか……お前たち魔族も、理解しているはずだ」


 メルクは冷たく笑った。


「理解しているからこそ……我々は再び動くのですよ」


 クロノスの表情が険しくなる。


「ならば、止めるしかないな」


 メルクが指を鳴らす。


大釘連撃スパイク・コンボ


 先ほどクロノスを襲った、黒い釘が十数本、空間に展開される。

 クロノスは即座に詠唱。


火炎爆発ファイア・バースト!!」


 炎の爆発が黒釘を焼き払い、衝撃波が最深部を揺らす。

 メルクは続けざまに魔法を重ねる。


暗影束縛シャドウ・バインド暗黒球体ダーク・スフィア魔素排出マナ・ドレイン


 影が足元から伸び、黒球が空間を歪ませ、魔力を吸い取る術式が同時展開される。

 クロノスも負けていない。


稲妻投槍ライトニング・ジャベリン! 魔素破壊マナ・ブレイク! 守護防壁ディフェンシブ・ウォール!」


 雷槍が影を貫き、魔力吸収を打ち消し、多属性の防御壁が展開される。

 二人の魔法は、同時に三つ、四つと重なり合い、最深部の空間を光と闇で満たしていく。

 メルクは舌打ちした。


「……さすがは大魔導士。老いてなお、この魔力量……!」


 クロノスは不満げに言い返す。


「お前のよう若造に、負けるつもりはない」

「はて、どちらが年下かな……本気で殺しに行きますよ、クロノス」

「望むところだ」


 クロノスとメルクの魔法が激突し、最深部の空間は光と闇の奔流で満たされていた。

 炎が渦を巻き、雷が空間を裂き、影が触手のように伸びる。

 互いの魔法がぶつかり合い、爆発が何度も空間を揺らす。


 その最中、メルクの眉がピクリと動いた。


「……っ!」


 クロノスはその変化を見逃さない。


「どうした? 動きが鈍ったぞ」


 メルクは歯を食いしばる。


(……ラーレスが……消えた……?)


 使い魔の死は、主に瞬時に伝わる。

 メルクの脳裏に、ラーレスの最期の「断片的な視界」が流れ込む。

 アーテー。

 マケ。

 そして――アレスの胸奥に宿る、黒い魔力。


(……エリス……? なぜ……人間の中に……? アーテーと使い魔まで……裏切った……?)


 メルクの胸に、久しく感じたことのない感情が走る。


(……まずい……この状況は……想定外だ……! 今すぐ対処しなければ……)


 だが――

 目の前には大魔導士クロノス。


(……くそ……! 今は……この老人にかかりきりで……動けん……!)


 クロノスは、その焦りからできたメルクの隙を見逃さなかった。

 クロノスは杖を高く掲げ、魔力が一気に膨れ上がる。


三種混撃トリプル・エレメント・アタック!!」


 炎、雷、氷。

 三属性の魔力が同時に放たれ、巨大な三重の奔流となってメルクへ襲いかかる。


「なっ……!」


 メルクは急いで防御魔法を展開する。


煙状防壁スモークバリア!」


 闇の煙幕が立ち上がるが、クロノスの三重魔法はそれを粉砕した。


「ぐっ……!」


 メルクの身体が大きく吹き飛び、最深部の壁に叩きつけられる。

 クロノスは静かに語り掛ける。


「どうした、メルク。先ほどまでの余裕はどこへ行った?」


 メルクは血を吐きながらも睨み返す。


(……ラーレスが……やられた……アーテーとニケが……エリスに呼応して……? このままでは……指令が……!)


 クロノスは淡々と告げる。


「一瞬の隙が、勝敗を決める」


 メルクは歯を食いしばり、再び魔力を練り上げる。


「……まだだ……! まだ終わらん……!」


 メルクの魔力が、魔法陣へと流れ込む。

 結界魔法陣が脈動を速め、赤黒い光を放ち始める。

 クロノスの目が細くなる。


「……何をする気だ」


 メルクは低く呟いた。


「この魔法陣は、本来『迷宮を操るためのもの……だが、魔力を逆流させれば――『爆心地』になる」

 

 魔法陣が悲鳴のような音を立て、空間が歪み始める。

 魔力の流れが逆転し、魔法陣の中心に膨大な魔力が集まり始める。

 クロノスは即座に防御魔法を重ねて展開する。


守護防壁ディフェンシブ・ウォール!」


 だが、メルクの魔力は止まらない。


「……この迷宮ごと……貴様を消し去る……!」


 魔法陣が赤黒く輝き、空間が震える。

 メルクの身体は魔力に包まれ、その輪郭が崩れ始める。


(……これで……少なくとも、クロノスの動きは……止まる……あとは)


 メルクが指をパチンと鳴らすと、小さな黒色の塊が螺旋を描きながら彼方へ飛んで行った。

 クロノスは杖を強く握りしめた。


「……愚かな……!」


 魔法陣が爆ぜる寸前、メルクの瞳が最後に光る。


「――枢核崩壊コア・ブレイク!!」

 

 轟音。

 閃光。

 そして――闇の咆哮。

 忘れ去られた迷宮は最深部から崩壊し、坑外の上空まで一挙に魔力が帯となって噴出した。

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