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心臓ひとつ、ココロはふたつ!? 魔力暴走の果てに見習い白魔導士男子、女魔王様と半分ずつ融合してしまいまして……  作者: 冬馬
第一章 見習い白魔導士男子、女魔王様と半分ずつ融合してしまいまして……
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第十七話 魔界の者たち、動く

 パーンがエリスの一撃で霧散してから二か月。

 その間、メルクは一度も姿を見せなかった。

 だが、ただ潜伏していたわけではない。

 彼は人知れず情報を集め、同時に、とある場所へ拠点を築き始めていた。

 そこは、山深いにもかかわらず弱小モンスターばかりで、宝も取りつくされ、冒険者がほとんど寄りつかない、通称「忘れ去られた迷宮」。

 その名の通り人々からは半ば放置されたような環境で、モンスターの邪魔も入らず、潜伏するには最適な場所だった。

 メルクはその奥の一角に魔力を流し込み、罠を張り、魔物を従え、少しずつ戦力の蓄積を進めていた。


「……大魔導士クロノス。人間があそこまで迅速に動くとは……先を越された。……ここまでとは、厄介な……」


 声は低く抑えられているが、その奥には確かな焦りがあった。

 ソル村とその周辺は、クロノスによる急ピッチな魔族対策によって、完全に封鎖されてしまった。

 結界は三重に強化され、侵入者感知魔法は常時稼働。

 魔力の揺らぎひとつで警報が鳴る。

 本来なら、メルクはソル村周辺で潜伏し、気配を消しつつ機会を伺うはずだった。

 だが今は――自分も、使い魔も、村に近づくことができない。


「完全に封じられたか……これでは、エリスの追跡が困難になる」


 しかし、すぐに冷静さを取り戻す。


「……裏を返せば、エリスも動けない。問題は、人間側が魔族対策を本格化させた、という事実……」


 メルクは魔石を取り出し、魔力を流し込む。

 淡い光が灯り、魔界にいるユノーへと繋がった。


『……メルク。状況を報告しなさい』


 ユノーの声は冷静で、威厳があった。

 メルクは膝をつくような姿勢で応じる。


「ユノー様。村周辺は完全に封鎖されました。大魔導士クロノスが本格的に動き、魔族対策を急速に強化しております」

『……クロノスが動いたのね』

「はい。あの者がここまで迅速に動くとは……正直、私の予測を超えておりました」


 ユノーの声が少し低くなる。


『言い訳は不要よ。あなたはエリスを追跡し、消すために派遣されたのだから』

「承知しております。しかし、現状は悪化しております。エリスの捜索と、人間側の警戒突破……二正面での対応は、効率が著しく低下します」

『弱音かしら?』

「いえ、状況の分析でございます。悠長に構えている時間は、もはや残されておりません」


 ユノーは短く息を吐いた。


『……よいわ。あなたの判断で動きなさい。ただし、エリスを取り逃がすことは許さない』

「御意」


 魔石の光が消えると、メルクは静かに目を閉じた。


「……急がねばならん」


 ◆


 時は2か月前に巻き戻る。

 エリスの側近・アーテーは、人化変身ヒューマナイズで踊り子の女に擬態し、ガラッシア共和国の首都・エースターで情報収集を行っていた。

 その肩には、ただの猫にしか見えない小さな生き物――エリスの使い魔・マケが乗っている。


「アーテー様、あっちの酒場……魔族の話題が出てるにゃ」


 アーテーは頷き、人間の冒険者たちの会話に耳を傾ける。


「大魔導士クロノスが、魔族の痕跡を発見したらしい」

「ソル村周辺でだってよ」

「三重結界とか、やりすぎじゃないのか?」

「他のところにも広げるつもりだそうだ」


 アーテーは眉をひそめた。


「……やはり、クロノスが動いたか」


 マケが尻尾を揺らす。


「しかもにゃ……クロノスが見つけた痕跡、あれは主様とメルクの使い魔のものにゃ」

「確かか?」

「間違いないにゃ。あの魔力の癖……わたし、何度も嗅いでるにゃ」


 アーテーの表情が険しくなる。


「……エリス様が飛ばされた場所の近くで、メルクが動いていたということか」


 マケはさらに続けた。


「それだけじゃないにゃ。主様本人が、その近くで戦ったのも感じたにゃ」


 アーテーは息を呑んだ。


「……エリス様が……?」

「にゃ。それに主様が戦いの跡を消したにゃ。つまり、主様はパーンと戦ったにゃ」


 アーテーは唾をのんだ。


「……エリス様のいる場所はわからないのか?」

「それが、主様に呼び掛けても、全然つながらないにゃ。こっちの世界で近いところにいるはずにゃのに。……困ったにゃ」


 アーテーは深く頷いた。


「ならば、我々も急がねばならない。エリス様の居場所を突き止め、メルクより先に合流する」


 マケは尻尾をピンと立てた。


「がんばるにゃ。わたしの鼻は伊達じゃないにゃ!」


 一人と一匹は再び町の雑踏へと消えていった。

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