表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
心臓ひとつ、ココロはふたつ!? 魔力暴走の果てに見習い白魔導士男子、女魔王様と半分ずつ融合してしまいまして……  作者: 冬馬
第一章 見習い白魔導士男子、女魔王様と半分ずつ融合してしまいまして……
10/61

第十話 綱渡りの女子会

 翌朝。

 アレスとエリスの意識がゆっくりと重なり、ひとつの「核」へと収束していく。


「……ふぅ。アリス、起きたよ」


 鏡の前に立つのは、金と黒紫が溶け合った髪、左右で色の違うオッドアイの少女――アリス。

 そして今日は、エプロン姿となり、蒼い髪留めと、オルフェの腕輪を身につけている。

 腕輪はアリスの姿でも効果は継続し、融合体の膨大な魔力を穏やかに抑えてくれる。


「これがないと……魔力が溢れちゃうからね」


 アリスは腕輪をそっと撫でた。


「まずは……お茶を沸かして……」


 アリスはアレスの記憶を頼りに、慣れた手つきで茶葉を量り、湯を沸かす。


「ヴィーナ、クッキー持ってくるって言ってたし……私は別のものを作ろう」


 アリスは少し考え、アレスの記憶にあるレシピを引き出す。


「……マドレーヌにしよ。甘さ控えめで、紅茶にも合うし」


 エリスの美意識とアレスの家庭的な知識が混ざり、アリスは器用に生地を混ぜ、型に流し込む。


(……なんか、楽しい)


 オーブンに入れると、ふわりと甘い香りが部屋に広がった。

 

 ◆


コンコンッ


「アリスちゃーん、来たよー!」


 表から聴こえた声に、アリスはびくっと肩を揺らした。


(は、早い……!)


 慌ててエプロンを外し、髪を整えて玄関を開ける。


「ヴィーナ、おはよう」

「おはよー! 今日も可愛いね、アリスちゃん!」


 ヴィーナはにこにこしながら、アリスの全身をじーっと見つめた。


「ねえアリスちゃん。その腕輪……昨日つけてなかったよね?」


 アリスの心臓がドキッとした。


(やば……!)


 だが、昨日頑張って設定の擦り合わせをした成果か、アレスの焦りとエリスの冷静さが混ざり、自然な返答が口をつく。


「これは……旅の途中で使っていた魔力調整の腕輪なの。昨日は荷物の中にしまったままで……」


 ヴィーナの目がきらりと光る。


「魔力調整……? アリスちゃんって、魔法使えるの?」

「少しだけ、ね」

(危な……! でも嘘じゃない……!)


 アリスは内心で冷や汗をかきながらも、笑顔を保った。

 部屋に入ったヴィーナは、テーブルに並んだマドレーヌを見て目を丸くした。


「わぁ……アリスちゃん、これ作ったの?」

「うん。旅の途中で覚えたの」

「すごい……! いい匂い……!」


 ヴィーナは嬉しそうにマドレーヌを手に取る。


「アリスちゃんって、料理上手なんだね。なんか……形とかもアレスの作るお菓子みたいだし」


 アリスの背中に冷たい汗が流れる。


(やばい、やばい、やばい……! アレスの記憶で作ったから、そりゃ似るのよ……!)


 しかし、アリスは自然に微笑んだ。


「えへへ……そうかな。優しい味って言ってもらえると嬉しいな」


 ゆったりとした表情でありつつ、内心では気が気でないながらも、アリスはヴィーナへ席につくよう声を掛けた。


 ヴィーナはクッキーの袋を開けながら、目を輝かせた。


「ねえアリスちゃん、好きな人っているの?」

「えっ……す、好きな人……?」


 アリスの胸がどきりと震える。


「うーん……まだ、かな……旅ばっかりで、そういう余裕がなくて」

「そっかぁ。でもアリスちゃん可愛いし、絶対モテるよ!」

「そ、そんなことないよ……!」


 この気持ちは、褒められ慣れてない、エリスの性格だ。


(なんで照れてるの、私……!?)


 ヴィーナはさらに畳みかける。


「じゃあさ、好きなタイプは? 優しい人? 強い人? 頼れる人?」


 アリスは思わず口元に手を当てた。


(優しい……強い……頼れる……それって……)


 アリスは一呼吸置いて唾を飲み込み、ゆっくりと答えた。


「……優しい人、かな」

「わぁ、アリスちゃんらしい!」


 次はファッションの話題。


「その髪留め、すっごく綺麗……! 見たことない珍しい模様だね」

「ありがとう。大事な人にもらったの」

「大事な人……!」

(またその反応……!)


 アリスは笑いながらも、内心で何度も悲鳴を上げていた。


 ふたりともお腹いっぱいになったころ、ヴィーナがふとアリスの腕輪を見つめた。


「ねえアリスちゃん」

「な、なに……?」

「昨日、アリスちゃんが歩いていった先って……このアレスの家しかなかったんだよね」


 アリスに緊張が走った。


(やば……!)

「アレスとは……どういう関係なの?」


 アリスは――それでも花が満開になるような表情で微笑んだ。


「アレスは……わたしにとって、大切な人の……家族みたいな存在、かな」


 ここまで口にして、アリスは自問自答した。


(家族みたい……? 誰の!?)


 アリス自身も分からない。だが、言葉は自然に出てきた。

 ヴィーナはしばらくアリスを見つめ、やがて、ふっと笑った。


「そっか。アリスちゃんとアレスって、てっきり、もう恋人みたいな、そういう関係じゃないのかなって思ってた。でも、家族かぁ。アリスちゃんのホントの気持ちが分かってよかった」


 危なかった、とアリスは胸を撫で下ろした。


 ◆


 女子会は無事に終わり、アリスはヴィーナを途中まで送っていくことになった。


 (……疲れた……)


 しかし、胸の奥はどこか温かい。


「女子会って……楽しいんだね」


 アリスのつぶやきに、ヴィーナもうなずく。


 だが――

 その背後には、魔界から迫る「追跡者」の影が近づきつつあった。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ