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生きることに過酷で苛烈な世界。  作者: 慈架太子


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第3章 飛躍 力の獲得



彼女が兵士たちの間を通り抜けるたび、重武装の男たちが、まるでもともと命などなかったかのように、次々と物言わぬ肉の塊に変わっていく。 悲鳴も、怒号もない。 ただ、肉が泥を叩く重い音と、カレンが急所を撃ち抜く小さな音だけが、死の静寂の中に刻まれていく。


最後の一人が、恐怖で痙攣する手から剣を落とした。 その喉元にカレンの指が触れた瞬間、男の頸椎が音もなく断裂した。


二十人の兵士が全滅するまで、一分もかかっていない。 カレンは返り血一滴浴びることなく、死体の山の中心で静かに立ち止まった。その瞳には、かつての絶望の欠片もなく、極めて冷徹な「機能」としての輝きが宿っている。


「……終わったわ、ツカサ。次」


彼女は息一つ乱さず、館の奥を見据えた。


【ステータス(最新)】 名前: ツカサ レベル: 11 MP: 278 / 280


【同行者】 名前: カレン レベル: 4 HP: 85 / 85 MP: 35 / 55

俺はカレンの横を通り抜け、正面の巨大な扉に手をかけた。 扉の奥からは、怯える雑兵たちの気配ではなく、粘つくような、より強大な魔力の波動が漏れ出している。


「ああ。……行くぞ」



館の重厚な扉を念動でこじ開け、静まり返ったエントランスへと踏み込む。 カレンは先ほどまでの戦闘で得た「命を奪う感覚」を、まるで冷徹な計算式のように自らの肉体に刻み込んでいた。


その瞬間、彼女の全身から発せられる魔力の波動が一段と濃密に、鋭く変質する。


【レベルアップ!】 名前: カレン レベル: 4 → 6(2レベル上昇!) HP: 85 → 115 MP: 35 → 80(最大値 55→80)

「……ツカサ。見えるわ、壁の向こうにいる奴らの『鼓動』まで」


カレンの瞳は、もはや獲物を探す獣のそれだった。レベルが2上がったことで、彼女の念動はより微細で、より広範囲な知覚を可能にしていた。


「……五人。二階の踊り場に潜んでる。全員、殺していいわね?」


彼女は俺の答えを待たず、二階へと続く大階段を影のように駆け上がった。


扉の奥に潜んでいた伏兵たちは、悲鳴を上げることすら許されない。 カレンが通り過ぎるたびに、壁越しに、あるいは死角から、正確に心臓の鼓動だけが「停止」させられていく。


「……掃除完了。行きましょう、ツカサ」


階段の上から見下ろすカレンの表情には、もはや一抹の躊躇もなかった。 俺はアイテムボックス内の『銀嶺の星』が、館の最奥に反応して不気味に共鳴を強めているのを感じながら、彼女の後に続いた。



館の最奥、重厚な装飾が施された両開きの扉を**念動テレキネシス**で音もなく左右に割った。


そこには、豪華な玉座に深く腰掛けた老人がいた。街を裏から支配する組織『三枚刃』の首領だ。彼は手元に置いた魔導杖を握り、何事か口を開こうとした。命乞いか、あるいは虚勢か。


だが、その言葉が音になることはなかった。


「……五月蝿い」


カレンが右手を真っ直ぐに突き出す。 彼女の指先が、老人の眉間の数センチ先を鋭く指し示した。


点穿てんせん』――。


対象を「破壊」するための極限の集中。レベルが6に達し、より緻密な干渉を可能にした彼女の魔力が、老人の前頭葉を透過し、脳の深部……生命活動を司る「脳幹」へと直接叩き込まれた。


「…………ッ」


老人の見開かれた瞳から、一瞬で光が消え失せた。 声も、呻きも、痙攣すらもない。 生命のスイッチを物理的に引き抜かれたかのように、老人の体は玉座に座った姿勢のまま、ただの「物」へと成り果てた。


カレンは無感情に手を下ろし、死体となった老人の横を通り過ぎて、部屋の奥にある金庫へと歩み寄った。かつての怯えていた少女の面影はどこにもない。ただ淡々と、邪魔な障害を排除しただけの冷徹さがそこにあった。


俺はアイテムボックスを起動し、老人の足元に落ちた魔導杖と、部屋にある「価値のありそうなもの」を無言で吸い込んでいく。


【ステータス(最新)】 名前: ツカサ(内田 司) レベル: 11 MP: 278 / 280


【同行者】 名前: カレン 年齢: 16歳 レベル: 6 HP: 115 / 115 MP: 72 / 80

街の支配者が消えた。 夜明けの光が、死体だけが残った館に差し込み始めている。 自由都市ベラの均衡は、たった一晩で、たった二人の「念動使い」によって完全に崩壊した。


「ツカサ、次は? 追っ手が来る前に、この街の『全部』を奪う?」


カレンが振り返り、俺に問いかける。その瞳は、さらなる「力」の行使を求めているようにも見えた。



「……鬱陶しいな」


俺はアイテムボックスから、鈍い光を放つ魔導遺産『銀嶺の星』を取り出した。 これまで多くの血が流れ、領主や組織が血眼になって追い求めてきた「力」の象徴。だが、その存在のせいで追っ手は絶えず、カレンにも妙な影響を与え始めている。


「ツカサ……? それをどうするつもり?」


カレンが不思議そうに覗き込む。俺は答えず、その多面体の結晶を宙に浮かせた。


「こんなガラクタに振り回されるのは、もう終わりだ」


俺は**念動テレキネシス**の全出力を、一点ではなく「全方位からの圧縮」に回した。レベル11に達した俺の魔力が、目に見えるほどの歪みとなって空間を凝縮していく。


「――ついえろ」


消費MP 100。 凄まじい軋み音と共に、銀嶺の星に亀裂が走った。古代の英知だか何だか知らないが、所詮は物理的な構造を持つ物質に過ぎない。俺の念動が、その原子間の結合を強引に引き剥がし、内側から粉砕する。


パリンッ! ――という、現実離れした高い音が館の中に響き渡った。


次の瞬間、結晶から溢れ出した膨大な魔力が光の奔流となって吹き荒れた。だが、それすらも俺は念動の檻で押さえ込み、虚空へと霧散させる。 数秒後、俺の手のひらに残ったのは、何の魔力も宿さないただの砂鉄のような灰だけだった。


「壊した……。あんなにみんなが欲しがっていたものを、そんなに簡単に……」


カレンが呆然と、俺の手からこぼれ落ちる灰を見つめている。


「欲しがる奴がいれば、奪いに来る奴がいる。壊してしまえば、ただのゴミだ。……これで、この街に俺たちを縛る理由はなくなった」


俺は灰を床に捨て、館の窓から外を見た。支配者を失い、象徴を失ったこの街は、これからさらなる混沌に包まれるだろう。だが、それは俺たちの知ったことではない。


【ステータス(変異)】 名前: ツカサ レベル: 11 MP: 178 / 280 称号: 遺産を砕く者(魔力抵抗が大幅に上昇)


【同行者】 名前: カレン 状態: 呪縛からの解放(魔力運用がより安定)

「行くぞ、カレン。この腐った街に長居するつもりはない」


「……ええ、ツカサ。どこへでもついていくわ」


俺たちは死体と灰だけが残された館を後にし、夜明けの街へと踏み出した。



館を出て、死体と灰に汚れきった街のメイン通りを歩いていると、路地裏の湿った闇から一人の女がふらりと姿を現した。


ボロボロの薄いドレスを纏い、肌には幾つもの痣と、不衛生な環境でついたであろう汚れがこびりついている。客を引く気力さえ失い、ただ崩壊した街の惨状を虚ろな目で見つめていた。その瞳は、俺が森で出会った頃のカレンと同じ、底なしの絶望に沈んでいる。


「……殺しに来たの? それとも、買うの?」


女が枯れた声で問いかけてくる。


「どちらでもない。……お前、その体では明日まで持たんぞ」


俺は女に向かって右手をかざした。


「ピュリフィケーション」


消費MP 5。 淡い光が女の全身を包み込む。彼女の肌にこびりついていた不浄な汚れや病原菌、体内に蓄積していた毒素や薬物の類が、音もなく霧散していった。


「……っ!? なに、これ……体が、軽い……」


女は自分の手を見つめ、驚愕に目を見開いた。痣は消え、くすんでいた肌には年相応の瑞々しさが戻っている。


「浄化と精製だ。汚れは落とした。……お前、動けるか」


「……ええ、動けるわ。信じられないくらい」


「生き延びたいなら、俺の後ろを歩け。ただし、脱落する奴に貸す肩はない」


女は俺の隣で冷徹な視線を向けるカレンを、そして俺を見た。 絶望に塗りつぶされていた彼女の瞳に、生きるための「執着」が灯る。


「……連れてって。何でもするわ。盾でも、毒見でも、夜の相手でも……死ぬよりマシなら何だって」


「効率が悪いわ、ツカサ。こんな女、足手まといになるだけよ」


カレンが不機嫌そうに、自分より少し年上の女を睨みつける。


「効率の問題じゃない。こいつの目だ。……まだ死んでない。死にたくないなら、使える駒になるまで鍛え上げるだけだ」


俺は女に名前を問うた。


「名前なんて、とっくに売ったわ……」


「……ならお前は今日から**『エレーナ』**だ。三文字だ、覚えやすいだろ」


エレーナは、その新しい名を喉の奥で噛みしめるように呟いた。


【ステータス】 名前: ツカサ レベル: 11 MP: 173 / 280


【同行者】


名前: カレン(16歳) / レベル:6 / 状態:念動(殺傷特化)


名前: エレーナ(19歳) / レベル:1 / 状態:浄化済・極度の空腹


俺はアイテムボックスから予備の外套と、ピュリフィケーション済みの清潔な干し肉を取り出し、エレーナに放った。


「食え。移動しながら魔力の練り方を叩き込む。……行くぞ」


「……はい。ツカサ様」


エレーナは干し肉を貪るように食らいながら、俺たちの背中を追って泥の街を後にした。



街を離れ、人跡稀な荒野で野営を始めた。 焚き火の爆ぜる音が響く中、俺はエレーナを正面に立たせ、冷徹に告げた。


「エレーナ、お前には徹底的に**念動テレキネシス**を叩き込む。媚びを売る暇があるなら、魔力で空気を掴め。それができなければ、次の街に着く前に捨てていく」


「……わかったわ。死ぬ気でやる」


エレーナは、カレンが最初にそうしたように、必死に指先に意識を集中させた。 元々、底辺で生き抜いてきた執念があるのだろう。彼女の魔力の練り方は粗削りだが、その指向性は驚くほど鋭かった。


「カレン、手本を見せてやれ。……それと、背後から近づく鼠どもの処理も任せるぞ」


「……ええ。ちょうど新しい『点』の打ち方を試したかったところよ」


カレンが冷たく微笑んだ瞬間、暗闇の向こうから下卑た笑い声が近づいてきた。 現れたのは、武装した数人の男たち。エレーナを「商品」として扱っていた女衒の用心棒どもだ。


「おいおい、勝手に俺たちの『極上品』を持ち出してくれちゃって……。死体になるか、その女を返すか選べよ、兄ちゃん」


先頭の男が下品に笑いながら歩み寄る。エレーナの肩が小さく震えたが、その瞳は恐怖ではなく、怒りと魔力で赤く燃えていた。


「エレーナ、実験台だ。教えた通りにやれ。……まずは、あいつらの『瞬き』を止めろ」


「……っ、やってみる!」


エレーナが右手を突き出す。 未熟な彼女の念動は、カレンのように急所を貫くには至らない。だが、俺が教えたのは「広範囲の拘束」――不可視の力で相手の顔面全体を圧迫する新技だ。


「な、なんだ……!? 目が開かねぇ、顔が……!!」


女衒たちが顔を押さえて悶え始める。 そこに、カレンが影のように滑り込んだ。


「『三点穿さんてんせん』」


カレンの指が空を切る。 一度の動作で、男たちの両目と喉、計三箇所の急所が同時に「音もなく」陥没した。


「――ッ」


悲鳴さえ許されない。 三人、四人と、男たちが崩れ落ちていく。エレーナは自分の念動が「隙」を作り、カレンがそれを「収穫」していく光景を、恍惚とした表情で見つめていた。


「最後の一人は、お前が自分で始末しろ。エレーナ。……心臓を、直接握るイメージだ」


「……はい、ツカサ様」


エレーナは生き残った女衒の親玉に歩み寄り、その胸元に手をかざした。 「……あんたに触られるのは、もう、うんざりなの」


パキッ、と。 エレーナの不器用だが力強い念動が、男の肋骨を押し込み、その奥にある鼓動を強制的に停止させた。


男が物言わぬ肉塊に変わるのを見届け、俺は焚き火の薪をくべ直した。


【レベルアップ!】 名前: ツカサ レベル: 11 → 12 MP: 260 / 310


【同行者レベルアップ!】


名前: カレン / レベル:6 → 7


名前: エレーナ / レベル:1 → 3(初戦闘で急上昇) HP: 90 / 90 MP: 40 / 40


「……悪くない。エレーナ、お前はカレンの補助に回れ。二人で一人の首を、確実に、そして静かに狩る。それがこれからの俺たちのスタイルだ」


「……はい。ツカサ様。私、もっと強くなれる」


「……ふん、せいぜい頑張りなさいよ。新入り」


カレンはぶっきらぼうに言い捨てたが、その瞳にはエレーナを「戦力」として認め始めた色が混じっていた。 荒野の夜は更けていく。俺たちの旅路は、死体の山を築くたびに、より強固なものへと変わっていく。



「……片付けろ。痕跡は残さない」


俺がそう呟くと、転がっていた女衒たちの死体が、吸い込まれるように虚空へと消えた。俺のアイテムボックスは時間停止機能だけではない。ゴミを溜め込むにはこれ以上ない墓場だ。


「さあ、いつまでも死体を眺めてる暇はないぞ。次の訓練だ」


俺はエレーナとカレンを荒野の真ん中に立たせた。 カレンの精密な**『点穿』**は強力だが、多人数を相手にするにはどうしても隙ができる。そこで、エレーナの荒削りだが広範囲な念動で「場」を支配させることにした。


「エレーナ、お前は殺そうとするな。敵の四肢、あるいは視界を『面』で押さえつけろ。カレンはその隙に、最短距離で急所を撃ち抜く」


「……わかったわ。逃がさない、絶対に」 「……いいわよ。あんたが外さなければ、私が全部終わらせてあげる」


エレーナが不可視の念を広げ、仮想の敵を地面に縫い止める。そこへカレンが影のように踏み込み、音もなく「点」を打つ。 二人の呼吸が重なり、一つの**合体念動スキル『双影・点縛そうえい・てんばく』**が形を成し始めた。


【レベルアップ!】 名前: ツカサ / レベル:13 MP: 350 / 350


【同行者ステータス】


名前: カレン / レベル:8 / MP:105


名前: エレーナ / レベル:5 / MP:75


訓練の合間、立ち寄った行商人からある情報を買った。 エレーナがかつて親に売られ、地獄のような日々を過ごすきっかけとなった故郷の村――「リグ村」が、今、魔物の大群に襲われ壊滅の危機にあるという。


「……エレーナ。どうする」


俺が問うと、エレーナは無言で、だが白くなるほど拳を握りしめた。


「助けたいわけじゃない。……でも、あそこの連中が魔物に食われて死ぬのは許せない。私が、私のこの手で絶望させてやりたいの。私を売ったあの日と同じ絶望を」


「……ふん、いいだろう。カレン、進路変更だ。リグ村へ向かう」


「ええ。新しい連携技の、いいテスト場になりそうね」


数日後、俺たちが辿り着いた村は、無残な有様だった。 村の周囲を囲むのは、巨大な牙を持つ魔獣の群れ。そして、逃げ場を失い、家の中に閉じこもって震える村人たち。


「……あそこにいるのが、私を売った村長よ。その隣で腰を抜かしているのが、私の親」


エレーナの視線の先には、魔獣の咆哮に震え、神に祈る無力な老人たちがいた。


「よし、行け。魔獣を片付けるついでだ。……お前たちの『過去』に、自分たちの手でケリをつけてこい」


俺は腕を組み、二人の背中を見送った。



村の広場に、魔獣の咆哮と村人の悲鳴が響き渡る。 俺たちは、絶望の絶頂にあるその場所へ、死神のように音もなく降り立った。


「カレン、エレーナ。……無駄なく、静かに終わらせろ」


俺の合図と共に、二人が動く。 それはもはや戦闘ではなく、一方的な「清掃」だった。


エレーナが不可視の念を扇状に広げ、十数体の魔獣の足を地面に縫い止める。 「……動かないで。あんたたちの役目は、ここで死ぬことだけよ」


魔獣たちが混乱し、身悶えした瞬間、カレンの影がその間を縫うように走った。 「『双影・点縛』」


パキッ、パキッ、と乾いた音が連鎖する。 魔獣たちは、何が起きたのか理解する間もなく、脳幹や心臓を一突きにされ、次々と物言わぬ肉の塊へと変わっていく。


わずか数分。村を滅ぼしかけていた魔獣の群れは、一匹残らず絶命した。 俺はアイテムボックスを起動し、魔獣の死骸をすべて虚空へと飲み込ませる。


「……た、助かった……。神様、ありがとうございます……!」


震えながら家から出てきた村長と、エレーナの両親が、俺たちの足元に跪いた。だが、エレーナの瞳に宿っているのは慈悲ではない。氷のような殺意だ。


「……神様? 違うわよ。あんたたちが売った『商品』が戻ってきただけ」


エレーナがそう告げた瞬間、村人たちの顔から血の気が引いた。


「お、お前……あの時の……!? 助けてくれ、悪かった、あの時は仕方がなかったんだ!」


「……仕方がなかった、か。いい言葉ね。私も『仕方がなく』、あんたたちの命以外のすべてを奪うことに決めたわ」


俺は一歩前に出ると、**念動テレキネシス**で村中の家々の屋根を剥ぎ取り、隠されていた貯蔵庫や金庫を無理やり地面から引きずり出した。


「カレン、エレーナ。回収しろ。食料、金貨、家宝……針一本残すな」


「了解。……ふふ、あんなに大事そうに抱えてたのにね」 「ツカサ様、あちらの床下にも隠し財産があります」


二人は無言で泣き叫ぶ村人たちを無視し、村の全財産を俺のアイテムボックスへと放り込んでいった。 家々は壊され、冬を越すための蓄えも、未来を繋ぐための金も、すべてが消失した。


「……これで、あんたたちは死なないわ。でも、明日からは私が味わったのと同じ、地を這うような絶望の中で生きていきなさい」


エレーナは、腰を抜かしたままの父親の顔を一瞥し、そのまま背を向けた。 命は救われたが、希望は一切残されていない。野垂れ死ぬよりも残酷な、終わりなき貧困への転落。


【レベルアップ!】 名前: ツカサ / レベル:14 MP: 410 / 410


【同行者ステータス】


名前: カレン / レベル:9 / MP:130


名前: エレーナ / レベル:7 / MP:100


「……気が済んだか」


「ええ。……もう、この場所には何も残ってないわ。行きましょう、ツカサ様」


俺たちは、すすり泣く村人たちの声を背に、夕闇の荒野へと歩み出した。 奪われた分を奪い返し、さらにその根元まで焼き尽くす。それが、俺たちの歩む「救済」の形だ。



村を徹底的に剥ぎ取った俺たちは、さらに北の未踏の地――深い霧に包まれた「黒死の森」へと足を踏み入れていた。


そこはかつて、エルフの一族が闇に堕ち、追放された場所。そして、カレンを「忌み子」として捨て、生贄に捧げようとした貴族家、ロートフェルト伯爵家が管理する流刑地でもあった。


「……ツカサ。私、決めたわ」


霧の中を歩きながら、カレンが静かに、だが鋼のような意志を込めて言った。エレーナの復讐劇を見届けた彼女の瞳には、かつてないほど昏い情念が渦巻いている。


「あいつらを……私を捨て、地獄に叩き落としたあの家を、根絶やしにする。家系図の一行目から最後の一人まで、私の念動で消し去ってやりたい」


「……いいだろう。お前の未練を断ち切るのが、お前をより鋭い刃にするならな」


俺が頷いたその時、霧の奥から鋭い殺気が放たれた。


「――止まれ。それ以上踏み込めば、お前たちの命を森の肥やしにする」


現れたのは、褐色の肌に銀髪をなびかせた一人の女、ダークエルフだ。 彼女の肢体は、これまでの二人とは異なり、極めて肉感的だった。身体のラインを強調する漆黒の皮鎧からは、豊かな重みを感じさせる爆発的な胸の双丘が溢れ出し、歩を進めるたびに、引き締まった腰つきと対照的な肉厚で大きな尻が、挑発的なほどに揺れる。


戦士としての強靭さと、男を狂わせるような淫靡な曲線が共存する、暴力的なまでの肉体美。


「……念動使いか。それも、これほど質の高い連中がこの森に来るとはな」


ダークエルフの女は、俺たちの力を一目で見抜いた。 彼女の周囲には、数十本の「黒い針」が魔力によって浮遊している。俺は一歩前に出て、彼女の放つ針を**念動テレキネシス**で無造作に叩き落とした。


「……なっ!? 私の針を、ただのデコピンみたいに……」


「その程度の玩具で俺たちを止められると思うな。お前、名は?」


「……**『ファロン』**だ。一族を伯爵家に狩られ、私一人だけが生き残った」


復讐の炎を宿した瞳で、彼女は俺を見上げる。その際、屈んだ姿勢で強調された豊かな尻の肉感が、霧の中で異様な存在感を放っていた。


「……目的は一致しているようだな。ファロン、俺の下につけ。お前のその『黒い針』、カレンたちの『点』と組み合わせれば、より確実に標的を仕留められる」


「……私に、あいつらを殺す力を貸してくれるというのか?」


「ああ。対価として、お前の命を俺の駒として使う。……拒否権はない」


ファロンは、地面に落ちた自分の針を見つめ、それから俺とカレンの圧倒的な魔圧を感じ取り、静かに膝をついた。豊かな胸が膝の上で重く沈み込む。


「……わかった。この命、復讐のために貴様に預ける。……あるじ


【ステータス(最新)】 名前: ツカサ / レベル:15 MP: 480 / 480


【一行の構成】


カレン(16歳): レベル10 / 状態:執念の覚醒


エレーナ(19歳): レベル8 / 状態:忠誠


ファロン(年齢不詳): レベル12 / 状態:ダークエルフ(狙撃特化)


「……いいわ、ファロン。あんたの針で、あの家の門番たちの目を全部潰してあげなさい。その身体も、囮としては最高に役に立ちそうね」


カレンが冷たく微笑む。


「掃除の準備は整ったな。……行くぞ。伯爵家の屋敷を、死体安置所に変えてやる」



ロートフェルト伯爵邸の正門。鉄格子の向こうでは、重武装の衛兵たちが退屈そうに周囲を警戒していた。


「……作戦通りにやれ。一秒でも長く生かしておく必要はない」


俺の合図で、ファロンが霧の中からゆっくりと姿を現した。 漆黒の皮鎧に包まれた暴力的なまでの肉体美が、月光に照らし出される。歩くたびに重く揺れる豊かな双丘と、皮鎧を食い込ませるほどに肉厚な尻。その場にいた衛兵たちの視線は、磁石のように彼女の曲線へと吸い寄せられた。


「な、なんだ……あのアマは……?」 「ダークエルフか? 凄まじい身体してやがる……おい、止まれ!」


衛兵たちが鼻の下を伸ばし、下卑た笑みを浮かべて歩み寄る。彼らがファロンの肉体に心を奪われ、完全に隙を晒したその瞬間。


「――終わりよ」


背後の闇から、カレンとエレーナの冷徹な声が重なった。 二人の**合体念動スキル『双影・点縛』**が発動する。エレーナが衛兵たちの視界と四肢を「面」で固定し、カレンがその眉間へと不可視の「点」を高速で撃ち込んだ。


「…………ッ」


悲鳴も、崩れる音さえない。 十数人の衛兵たちは、立ったまま魂を抜き取られたように静止し、次の瞬間、糸の切れた人形のように泥の上へ沈んだ。


「死体は一つ残らず回収しろ」


俺が手をかざすと、門前の死体すべてがアイテムボックスの闇へと吸い込まれていった。


屋敷の中へ侵入してからは、文字通りの「大掃除」だった。 逃げ惑う使用人、隠れていた親族、抵抗する私兵。そのすべてを、ファロンが放つ「黒い針」が正確に眼球を貫き、カレンたちが思考の中枢を破壊していく。


「一、二……十……。ツカサ、このエリアの『ゴミ』は片付いたわ」


カレンは無表情に告げ、ついに最上階の奥、かつて自分が閉じ込められていた部屋の扉を蹴り破った。 そこには、贅を尽くした椅子に座り、恐怖で失禁している中年男――ロートフェルト伯爵がいた。


「カ、カレン……! お前、生き返ったのか!? 悪かった、あの時はああするしかなかったんだ! 金ならいくらでもやる、助けてくれ!」


「……お父様。その汚い口、二度と開かないようにしてあげる」


カレンが右手をかざす。 伯爵が命乞いを続けようと口を動かした瞬間、彼女の念動が男の頭蓋を透過し、脳を直接掴んだ。


「お前が私に与えた絶望、そのまま脳に焼き付けてあげる」


「あ、が……あ、あ、ああ……っ!!」


伯爵の眼球が激しく震え、脳内に直接流し込まれた「恐怖の記憶」によって精神が内側から崩壊していく。カレンは男の意識を握りつぶすと同時に、その延髄を一点で粉砕した。 男は最期まで自分が何に殺されたのかも理解できず、絶命した。


「……満足か、カレン」


「ええ。……でも、まだ足りないわ。この『家』そのものを消さないと」


俺は頷き、**念動テレキネシス**の全出力を解放した。屋敷の支柱、壁、豪華な調度品。そのすべてを分子レベルで圧縮し、押し潰す。


ガガガガガッ! と凄まじい破壊音が響き、伯爵邸は内側から爆発するように崩落した。俺は落ちてくる瓦礫、そして屋敷の中にいた数百人の死体すべてを、アイテムボックスの巨大な闇へと飲み込ませていく。


数分後。 そこには、広大な更地だけが残っていた。 伯爵家に関わるすべての人間、歴史、そして建物。そのすべてが、この世界から物理的に消滅した。


【レベルアップ!】 名前: ツカサ / レベル:18 MP: 620 / 620


【一行の構成】


カレン(16歳): レベル13 / 状態:完全覚醒(「忌み子」の過去を消滅)


エレーナ(19歳): レベル11 / 状態:精鋭念動使い


ファロン: レベル14 / 状態:復讐達成・絶対服従


「……さあ、行くぞ。ここに俺たちの過去はもうない」


俺たちは、更地となった場所を一瞥もせず、新しい地平へと歩き出した。 俺のアイテムボックスの中には、一国を揺るがすほどの「死体の山」と、伯爵家の全財産が詰まっている。



伯爵邸を更地にした俺たちは、さらに標高の高い峻険な霊峰「グラズ連峰」へと足を踏み入れていた。ここは人跡未踏の領域であり、生息する魔獣もこれまでとは格が違う。


訓練、そして実益を兼ねた「狩り」の開始だ。


「……獲物が来たわ。前方、巨岩の影に三体。狂暴化したグレイ・ベアね」


ファロンが、霧の向こうを見据えて低く囁く。彼女の鋭い視覚は、ダークエルフ特有の夜目と経験に裏打ちされている。


「エレーナ、カレン。フォーメーションを組め。ファロンは遊撃だ」


俺の合図で、三人が散る。


「……逃がさない。『面縛めんばく』!」


エレーナが両手を広げ、地面を這うような念動を放つ。巨体の熊たちが突進しようとした瞬間、重力が増したかのように足元を固定され、その場に縫い止められた。レベルが上がった彼女の念は、今や巨大な魔獣の剛力さえ力ずくで押さえつける。


「……隙だらけよ。『点穿・三連』!」


カレンが影のように踏み込み、指先で空を三度突く。エレーナが固定し、自由を奪われた熊たちの眼窩から脳幹へ、不可視の衝撃が一直線に突き抜けた。


「――グガッ……」


咆哮さえ上げられず、二体の熊が絶命する。だが、残りの一体が怒り狂い、エレーナの拘束を強引に引き剥がしてカレンへと飛びかかった。


「……私の獲物を逃がすとでも思ったか?」


背後からファロンの声。 彼女の周囲に浮遊していた黒い針が、爆発的な双丘の揺れと連動するように高速射出された。針は魔獣の急所である喉と関節に正確に突き刺さり、その動きを完全に停止させる。


「仕留めなさい、カレン!」


「言われなくても……死ね!」


カレンの念動が、最後の一体の心臓を内側から破裂させた。


「……回収だ」


俺は一歩前に出ると、三体の巨体をアイテムボックスへと放り込む。肉、毛皮、そして魔石。すべてが俺たちの糧になる。


【トレーニング・リザルト】


カレン: 「点」の多重発動に成功。MPの消費効率が15%向上。


エレーナ: 「面」の拘束強度が向上。格上の魔獣を3秒以上完全に停止させた。


ファロン: 念動射撃の精度が極致に。カレンとの連携に迷いがなくなった。


【ステータス(最新)】


ツカサ: レベル20(大台突破)


カレン: レベル15


エレーナ: レベル13


ファロン: レベル16


夕刻、俺たちは洞窟を仮宿に決め、野営の準備を始めた。 焚き火の明かりに照らされたファロンの身体は、訓練の熱で汗ばみ、漆黒の皮鎧が肉厚な尻と豊かな太ももに一層食い込んでいる。


「……ツカサ様。今日の私の働き、満足いただけたでしょうか」


ファロンが俺の傍らに跪く。重い胸が膝の上で形を変え、彼女の忠誠心(と、それ以上の情念)が入り混じった視線が俺を捉える。


「ああ、悪くない。お前たちの連携は、一国の騎士団を相手にしても引けを取らないだろう」


俺はアイテムボックスから、浄化した魔獣の肉を取り出し、三人に与えた。


「さあ、食え。明日はさらに山奥へ入る。……そこには、伝説の古龍が眠っているという噂だ」


「……片付けろ。だが、一人だけ生かしておけ。あの白金色の法衣を纏った女だ」


俺の指示で、カレンが動けなくなった一人の女を引きずってきた。王国の「聖女」セシル。魔力を封印する首輪を嵌められ、力なく膝をついているが、その瞳にはまだ折れない光が宿っている。


「……殺しなさい。あなたたちのような大罪人に、教えを説く舌は持ち合わせていません」


「威勢がいいな。だが、お前の舌が動くのは王都の弱点を吐く時だけだ。……ファロン、こいつを黙らせておけ。後でじっくり『教育』してやる」


ファロンが艶然とした笑みを浮かべ、魔力の糸で聖女を拘束する。 だが、その時――。


ズズズ……と、霊峰全体が激しく震動し始めた。 これまでの大規模な念動の行使、そして何百人もの騎士の命を奪った余波が、山の深部で眠っていた「古の主」を揺り起こしたらしい。


「……来るわ。地底から、とんでもない魔力……!」


カレンの言葉と共に、山肌が弾け飛び、漆黒の外殻に覆われた**『地竜アース・ドラゴン』**が姿を現した。全長数十メートル。岩盤を噛み砕く顎と、山をも揺るがす咆哮。


「……ちょうどいい。腹を空かせているようだな」


俺は不敵に笑い、アイテムボックスを開放した。


「エサの時間だ。……食え。これまで溜め込んできた『ゴミ』どもをな!」


俺の頭上に、巨大な闇の口が開く。 そこから、伯爵邸の兵士、女衒、聖騎士団……これまで俺たちが殺し、アイテムボックスに溜め込んできた数千もの死体の雨が、地竜の頭上に降り注いだ。


「ガ、アアアアアアッ!?」


突然降ってきた大量の肉に、地竜が狂ったように喰らいつく。だが、それこそが罠だ。


「カレン、エレーナ、ファロン! 喰らっている間が最大の隙だ。……最大火力で叩き込め!」


「了解。……『極・点穿』!」 「逃がさない。……『地脈圧潰じみゃくあっかい』!」 「……糸に絡まり、肉ごと削げなさい。『終焉の絞鎖』!」


エレーナが地竜の四肢を大地ごと固定し、ファロンの魔力糸が巨体を雁字搦めに切り刻む。そこへ、カレンが地竜の眉間一点に、溜めてきた魔力のすべてを「点」として叩き込んだ。


――ドォォォォォォン!!


地竜の硬質な頭蓋が内側から爆発し、巨体が沈む。 俺は崩れ落ちる地竜の死体と、まだ地面に残っていた死体の残滓を、今度はまとめてアイテムボックスへと回収した。


【レベルアップ!】 名前: ツカサ / レベル:25 MP: 900 / 900


【一行の構成】


カレン: レベル21 / スキル:『神速の点』


エレーナ: レベル19 / スキル:『重力監獄』


ファロン: レベル22 / スキル:『絶影の糸』


セシル(聖女): 拘束・尋問中


「……ふぅ。お疲れ様、みんな」


カレンが額の汗を拭い、俺の元へ戻ってくる。ファロンは乱れた胸元をそのままに、聖女セシルの髪を掴んで引き立てた。


「さて、聖女様。地竜すら屠る俺たちの力が理解できたか? ……さあ、お前の知っている『王都の心臓』の場所を教えてもらおうか」


俺たちは、もはや山さえも完全に掌握した。



俺は、地竜が這い出てきたことで剥き出しになった巨大な岩盤と、辺りに散らばる聖騎士団の残骸を見下ろした。要塞を築いて王を気取るなど、俺の性分じゃない。欲しいのは、いつでも、どこへでも、この圧倒的な暴力を持ち運べる「足」だ。


「カレン、エレーナ、ファロン。……こいつを浮かすぞ」


俺はアイテムボックスから、地竜の死骸と伯爵邸から奪った強固な石材、そしてこれまでの戦いで得た大量の魔石を取り出した。


「城を作るんじゃない。……俺たちが乗る『移動拠点』だ」


俺の指揮の下、三人の念動が交差する。 エレーナが広大な岩盤の重力を中和し、ファロンの魔力糸がバラバラの石材と地竜の骨格を強靭に繋ぎ止める。そしてカレンが、それらの接合点に魔力を固定し、崩れないよう「点」で縫い合わせる。


数時間の作業を経て、霧の中から異様な物体が浮上した。 それは優美な城ではない。地竜の骨を竜骨とし、岩盤と石材が複雑に組み合わさった、全長五十メートルほどの**『空飛ぶ巨大な岩塊』**――浮遊移動要塞だ。


「……すごい。本当に浮いてるわ、ツカサ」 「これなら、どこにいても誰にも邪魔されずに訓練ができるわね」


カレンとエレーナが、浮かび上がった岩の甲板に飛び乗る。 俺は拘束された聖女セシルを物言わぬ荷物のように放り込み、自らもその「艦橋」となる最上部に立った。


「これからは、この『岩塊』が俺たちの家だ。……地上に這いつくばる連中を見下ろしながら、次へ行くぞ」


【ステータス(移動拠点確保)】 拠点名: 無銘(浮遊岩塊) 動力: 念動(四人の魔力供給) ツカサ: レベル25 / MP 900 聖女セシル: 捕虜(精神汚染度 10%)

俺の念動一つで、巨大な岩塊がゆっくりと、だが確実に王都とは逆の方向……さらなる「力」が眠る極北の地へと動き出した。


「さて、セシル。……静かになったところで、お前の知っていることをすべて話してもらおうか」


俺は岩の甲板に座り込み、ファロンに命じて彼女の服を剥ぎ取らせた。逃げ場のない空の上。ここからは、俺たちの独壇場だ。



浮遊する岩塊の甲板。周囲を雲海に囲まれた、逃げ場のない監禁室で「教育」を始めることにした。


「セシル。お前のその清らかな『聖属性魔法』は、神の恩寵などではない。ただのエネルギーの指向性だ」


俺は拘束された彼女の目の前で、**ピュリフィケーション(浄化)**を発動させる。淡い光が彼女の肌を撫でるが、それは癒やしではなく、彼女の体内にある魔力回路を強引に書き換えるための前準備だ。


「……っ、やめて! 私の信仰を汚さないで……!」


「信仰など、物理的な衝撃の前には無力だ。……カレン、こいつの脳内の『枷』を外せ。ファロン、魔力の流れを逃がさないよう糸で固定しろ」


カレンが冷徹に指先をセシルの眉間に当て、**『点穿』**を微弱に放ちながら脳の深部を刺激する。同時に、ファロンの魔力糸がセシルの四肢の経絡に食い込み、強制的に魔力の循環を加速させた。


「あ、ああああ……っ! 体の中に、何かが……!!」


聖女の清廉な魔力が、俺たちの念動によって泥臭く、しかし力強い「意思」へと捻じ曲げられていく。俺は彼女の手を取り、無理やりその指先を空中に向けさせた。


「祈る必要はない。神に頼らず、お前の意志そのもので空気を掴め。……それが**念動テレキネシス**だ」


数時間に及ぶ凄惨な「再教育」。 やがて、セシルの瞳から光が消え、代わりにどろりとした執着の色が宿った。彼女は震える指先で、近くに落ちていた石ころを見つめる。


ガタッ、と石が宙に浮いた。


「……できた。私の、意志で……」


「そうだ。神の奇跡など借りずとも、お前自身の力が世界を動かしたんだ」


セシルは呆然と自分の手を見つめ、それから俺を見上げた。彼女の聖属性魔法は念動と混ざり合い、**『浄化の念』**へと変質していた。対象を癒やすのではなく、対象の存在そのものを「不浄」として念動で削り取る、矛盾した殺戮の力だ。


【新メンバー加入!】 名前: セシル レベル: 18 スキル: 聖念動(浄化と破壊の複合) 状態: 精神崩壊・再構築完了(ツカサへの絶対依存)


【一行の構成】


カレン: 攻撃特化


エレーナ: 範囲拘束


ファロン: 切断・狙撃


セシル: 浄化・防壁


「……ツカサ様。私を、導いてください。もう、神の声は聞こえません。貴方の声だけが、私の真実です」


セシルはボロボロになった法衣を脱ぎ捨て、俺の足元に額を擦り付けた。カレンがそれを見て「また女が増えたわね」と不機嫌そうに鼻を鳴らす。


「歓迎するわ、元・聖女様。ここでは神様じゃなく、ツカサ様を満足させるのが唯一の教義よ」


ファロンが、自身の豊かな肉体をセシルに見せつけるように、彼女の首を愛撫する。


「……さて、四人揃ったな。連携の精度をさらに上げるぞ」


空飛ぶ岩塊は、極北の吹雪く空へと速度を上げた。もはや、地上に俺たちの敵になれる存在はいない。



極北の空、吹き荒れる吹雪の中で、俺たちは「四人同時連携」の最終調整に入っていた。 眼下には、王国の辺境を守る強固な砦が、岩塊を撃ち落とそうと対空魔法の準備を進めている。


「陣を敷け。……実験開始だ」


俺の号図と共に、四人が岩の甲板の上でそれぞれの位置につく。


「……神の加護ではなく、私の意志で。『聖念防壁ホーリー・ヴェイル』!」


中心に立つセシルが、浄化の魔力を練り上げた念動を全方位に展開する。砦から放たれた数多の魔法攻撃が、彼女の展開した黄金色の障壁に触れた瞬間、霧散するようにかき消されていく。かつての聖女は、今や俺たちの絶対的な「盾」となっていた。


「盾は完璧よ。……次は私の番ね。『重力監獄グラビティ・プリズン』!」


エレーナが岩の甲板を強く踏みしめる。彼女の念動が砦全体を覆い尽くし、重力を数十倍に跳ね上げた。逃げ惑う兵士たちは、その場に這いつくばることもできず、自らの重みで骨を軋ませている。


「逃がさないわ。……『千条の絞鎖』」


ファロンがその豊かな双丘を揺らしながら、指先を繊細に動かす。エレーナの重力で身動きが取れなくなった兵士たちの首筋や関節へ、不可視の魔力糸が容赦なく絡みつき、一気に引き絞られた。


「……最後は、私が全部消してあげる。『神速・万点穿ばんてんせん』!」


仕上げはカレンだ。 極限まで研ぎ澄まされた彼女の念動が、空中で万を超える「点」へと分裂し、地上のあらゆる生命反応を正確に撃ち抜いた。


「…………ッ」


断末魔すら聞こえない。 わずか数秒。王国の誇る辺境の砦は、一人の死体も残さず、すべての生命活動が完全に停止した「静寂の廃墟」へと変貌した。


俺は手をかざし、その広大な砦の物資、武器、そして山をなす死体すべてをアイテムボックスへと回収した。


【究極連携・陣形確立!】


セシル(盾): 全魔法・物理攻撃を無効化。


エレーナ(縛): 広範囲の機動力剥奪。


ファロン(断): 精密な多重切断。


カレン(滅): 高速・広範囲の急所穿刺。


【ステータス(大台突破)】


ツカサ: レベル28 / MP 1050


カレン: レベル23


ファロン: レベル23


エレーナ: レベル21


セシル: レベル20


「……完璧だ。これでお前たちは、一国の軍隊を相手にしてもかすり傷一つ負わん」


俺がそう告げると、四人はそれぞれ異なる表情で俺の元へ集まってきた。カレンは誇らしげに、エレーナは安堵したように。ファロンは妖艶な笑みを浮かべ、セシルは心酔しきった瞳で。


「ツカサ様、次は……王都の心臓部へ、このまま突っ込みますか?」


セシルが俺の腕に自身の体を預け、熱い吐息と共に問いかける。


俺たちの乗る巨大な岩塊は、血の跡一つ残さぬまま、猛吹雪の向こう側へと姿を消した。


「――そこまでだ、異端の念動使い!」


光の中から現れたのは、これまでの騎士たちとは格の違うプレッシャーを放つ少年だった。王国が禁忌の儀式で召喚した勇者、ハルト。 その背には六枚の光翼が羽ばたき、手にした聖剣からは、視界を焼き切らんばかりの神聖な魔力が溢れ出している。


「僕はこの世界の人々の願いを背負っている。君たちの独善、ここで僕が断ち切ってみせる!」


勇者が空を蹴り、光速に近い速度で岩塊へ肉薄する。カレンが迎撃のために指先を向けるが、勇者の周囲に展開された「多重神聖結界」が、彼女の念動を弾き飛ばした。


「……ッ!? 私の『点』が、届かない……!?」


「カレン、下がれ! こいつは今までのゴミとは違う!」


俺は椅子から立ち上がり、自らの念動で正面に不可視の壁を幾重にも展開した。勇者の聖剣と俺の念動の壁が激突し、大気が悲鳴を上げるような衝撃波が王都全域に吹き荒れる。


「エレーナ、ファロン、セシル! 連携だ! 一瞬でもいい、こいつの『聖域』を抉じ開けろ!」


「わかったわ……ッ! 『地脈圧潰・最大出力』!」 「私の糸で……光の翼を搦め取ってあげる! 『終焉の絞鎖』!」 「神の力なら、私の浄化が通用するはずです……! 『逆聖・浄化』!」


エレーナが重力で勇者の機動を削ぎ、ファロンの魔力糸が黄金の翼に絡みつく。さらにセシルが、同属性の魔力をぶつけることで勇者の結界に一時的な「綻び」を作った。


「――今だ、カレン! 叩き込め!」


「……逃がさない! 『極・点穿・螺旋らせん』!!」


カレンの全魔力を込めた一撃が、勇者の結界の綻びを突き、その胸元の装甲を粉砕した。


「ぐはっ……! バカな、聖剣の加護が……剥がされるなんて……!」


勇者が血を吐き、空中へと吹き飛ぶ。だが、彼は空中でもがきながらも、再び聖剣を強く握り直した。その瞳には、まだ折れない不屈の意志が宿っている。


「……まだだ……まだ、終わらせない……!!」


ようやく、まともに「殺し合う」価値のある敵が現れたようだ。



「……往生際が悪いな。だが、その足掻きが最後だ」


俺は冷徹に指を鳴らす。勇者が聖剣を振りかざし、再び光の弾丸となって突撃してくる。その直線的な軌道は、今の俺たちにとって格好の獲物でしかない。


「カレン、エレーナ、ファロン、セシル。――囲え」


俺の号令が飛ぶ。


「逃がさないわ。……『次元重力檻ディメンション・ケージ』!」 エレーナの念動が、勇者の周囲の空間を立方体に切り出し、重力を全方位から中心に向けて収束させた。勇者の体が空中の一点に固定され、光の翼がひしゃげる。


「ぐっ、身体が……動かない!? 聖剣よ、空間を裂け――」


「……その輝き、邪魔よ。『終焉の絞鎖・万重』!」 勇者が剣を振るうより速く、ファロンの魔力糸が数万、数十万の束となって勇者の全身を雁字搦めにした。鎧の隙間、指の一本一本、そして聖剣を握る拳までが、念動で研ぎ澄まされた糸によって、肉に食い込むほど強固に縛り上げられる。


「あ、ああ……っ、剣が、動かせない……!」


「……不浄な祈りは私が断ち切ります。『聖念封絶』!」 セシルが黄金の障壁を逆位相で展開し、地上から勇者に注がれる民衆の「祈り(魔力)」を完全に遮断した。供給源を断たれた勇者の光が、見る間に衰えていく。


「さあ、仕上げよ。……なぶり殺してあげる。『千点穿・遅延ディレイ』!」


カレンが右手をかざすと、勇者の周囲に無数の「魔力の針」が生成された。だが、彼女はそれを一気に放たない。一秒に一箇所、勇者の急所をあえて外し、神経が集中する場所だけを正確に、ゆっくりと貫いていく。


「ぎ、あああああぁぁぁぁぁっ!!!」


王都の全住民が見守る空の上で、希望の象徴である勇者が、目に見えない檻の中でなぶり殺しにされていく。一突きごとに光がこぼれ、勇者の悲鳴が王都に響き渡る。


「……勇者なんて、中身を解体してしまえばただの人形ね」


カレンは残酷な笑みを浮かべ、最後に指先を勇者の眉間へ向けた。


「さよなら、偽物の英雄様」


ドシュッ――。


最後の「点」が勇者の脳幹を貫き、全ての光が消失した。糸に吊るされたまま、絶命した勇者の死体が虚空に浮いている。


俺は椅子から立ち上がり、その死骸へと手を伸ばした。 「……よくやった。これで終わりだ」


俺は勇者の死体、そして手から滑り落ちた聖剣を、まとめてアイテムボックスへと放り込んだ。


【戦闘終了:完全勝利】 名前: ツカサ / レベル:40(一気に上昇!) 獲得品: 勇者の死体(特殊素材)、聖剣グラム(神造兵装)


【一行の構成】


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