表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
生きることに過酷で苛烈な世界。  作者: 慈架太子


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

1/6

第1章 覚醒 弱肉強食の世界で


「腹が減ったな……。だが、ここでは食事の匂いすら命取りになる」


俺――ツカサは、返り血で汚れた短剣の先を、死んだばかりの『灰色狼グレーウルフ』の毛並みで拭った。 足元には三体の狼の死骸。周囲を囲まれていたが、俺が指先をわずかに動かした瞬間、奴らの首はあらぬ方向に捻じ曲がり、絶命した。


「アイテムボックス」


唱えると同時に、空間に生じた歪みが狼の死骸を飲み込んでいく。 容量無限、時間停止。 この過酷な世界において、これほど頼りになる能力はない。 倒した獲物をその場で収納すれば、血の匂いに誘われて別の魔物や、あるいは魔物より質の悪い「人間」が集まってくるのを防げるからだ。


周囲の気配を『念動』の触手で探る。 半径五十メートル。風に揺れる葉の音、土の中を這う虫の振動。 そして――少し離れた茂みの影に潜む、ひどく濁った、殺意を孕んだ三つの鼓動。


「……また盗賊か」


俺は溜息をついた。 この世界は、本当に、救いようがないほどに苛烈だ。


前世の日本で、俺は三十五年の人生を歩んでいた。満員電車に揺られ、上司に頭を下げ、それなりに平穏な日常を送っていたサラリーマン、内田司。 それが高齢者の暴走運転によってあっけなく幕を閉じ、気づけばこの「剣と魔法」の地獄に放り出されていた。


三年前、前世の記憶を取り戻したとき、俺はこの世界の残酷さを骨の髄まで理解した。 両親を殺したのは魔物じゃない。同じ言葉を話す、同じ姿をした人間……盗賊だ。 彼らは金品を奪い、家を焼き、何の躊躇もなく俺から全てを奪った。 この世界では、弱者は生きているだけで罪であり、強者は奪うことで正義を証明する。


「おい、ガキ。今、変な魔法で狼を消したな?」


茂みから、汚れた革鎧を纏った男たちが姿を現した。 手には錆びた大剣と、人の脂でぎらついた斧。 冒険者ランクEの俺を見て、格好の獲物だと判断したのだろう。彼らの目には、俺が「人間」ではなく「歩く財布」か、奴隷市場に流す「商品」にしか見えていない。


「……見逃してやるから、今の魔法の種を教えろ。それと、持ってる物を全部ここに置け」


男が下卑た笑みを浮かべる。 前世の俺なら、恐怖で足が竦んでいただろう。 だが、今の俺は知っている。ここで命乞いをしたところで、彼らは面白半分に俺の指を一本ずつ切り落とすだけだということを。


「断る」


俺は短く答えた。 指先を微かに動かす。 この世界には火球ファイアーボール水球ウォーターボールといった魔法があるらしいが、俺が使うのはそんな生易しいものじゃない。


イメージするのは、不可視の力。 空間を握りつぶす、絶対的な拒絶の意志。


「なんだと? このガキ、死にたいの――」


男が言葉を切り上げることはなかった。 俺が『念動』で彼の喉仏を内側から粉砕したからだ。


ゴボッ、という鈍い音が響き、盗賊のリーダー格が崩れ落ちる。 残された二人の男の顔から余裕が消え、驚愕と、そして狂犬のような凶暴さが混じり合った。


「てめえッ! 殺してやる!」


彼らが踏み込んでくる。 俺は腰に下げた、攻撃力などたかが知れている短剣を抜いた。 だが、これは俺の手で振るうためのものではない。


「……行け」


俺の手を離れた短剣が、物理法則を無視して空中に静止し、次の瞬間、銃弾を超える速度で射出された。



放たれた短剣は、空気を切り裂く鋭い音さえ置き去りにして、正面から突っ込んできた男の眉間を貫いた。


「が、あ……」


男は自分の身に何が起きたのか理解する間もなく、背後の木々に縫い付けられるようにして絶命した。 残る一人は、仲間が瞬時に二人生死不明(、あるいは確定)になった光景に、ようやく自分の置かれた状況を正しく理解したらしい。


「ひっ……な、なんだ、今の……魔法か!? 詠唱もなしに、そんな――」


「死ねよ」


俺の口から出たのは、自分でも驚くほど冷淡な声だった。 情けをかける理由がない。ここでこいつを逃がせば、次に犠牲になるのは運悪く通りかかった行商人か、あるいはどこかの村の親子だ。この世界の「絶対悪」には、慈悲などという高価な代償を払う価値はない。


逃げ出そうと背を向けた男の脚を、俺は『念動』で地面に固定した。


「ぎゃああああっ! 足が、足が動かねえ!」


見えない巨人の手に掴まれたかのように、男の体は不自然な形で地面に張り付く。俺は一歩、また一歩と無機質に距離を詰めた。


「頼む、助けてくれ! 悪かった、金ならやる! 全部やるから!」


「いいよ。お前が死んだ後、全部俺がもらうから」


俺は右手を軽く握り込んだ。 男の首筋に不可視の圧力が集中する。 メキッ、と乾いた音がして、男の叫び声は唐突に途絶えた。


静寂が戻る。 立ち込めるのは血の匂いと、腐った泥のような盗賊たちの気配だけだ。


「……ステータスオープン」


視界の端に半透明のウィンドウが現れる。 経験値が入り、レベルが上がった。それと同時に、全身を心地よい熱が駆け抜け、戦いでわずかに消耗した魔力と精神的な疲労が完全に癒えていく。 レベルアップによる全回復。この世界のことわりから外れたこの仕様だけが、俺が「元日本人」であることを思い出させる。


「さて、片付けるか」


俺は淡々と、三人の死体に歩み寄った。 まずは木に刺さった短剣を『念動』で引き抜き、手元に戻す。汚れ一つついていない。


それから、彼らの懐を探った。 薄汚れた銀貨が数枚、質の悪い銅貨が数十枚。それから、誰から奪ったのかもわからない安物の指輪。 これら全てを、俺は『アイテムボックス』に放り込んでいく。


「靴、鎧、剣……予備のナイフもか」


死体から装備を剥ぎ取る作業に、もう躊躇はない。 この世界では、鉄の一片、革の一枚すらも貴重な資源だ。売れば金になるし、いざとなれば材料になる。何より、彼らがこれらを使って誰かを傷つけることは二度とない。


最後に、裸同然になった死体そのものも『アイテムボックス』に放り込む。 容量は無限だ。わざわざ穴を掘って埋める手間をかけるより、こうして空間の彼方に隔離してしまうのが一番確実な「痕跡消去」になる。


「……よし、終了」


数分前まで血生臭い殺し合いが行われていた場所には、今や踏み荒らされた草ともともとあった狼の血痕がわずかに残るだけだ。


この世界は苛烈だ。 奪わなければ奪われ、殺さなければ殺される。 俺は、自分が正義の味方だなんて思っていない。ただ、この不条理な世界で、前世の記憶という名の武器を持って、少しでも長く、少しでもマシな飯を食って生き延びたいだけだ。


「……腹が減ったな。次はもっと安全な場所で食おう」


視界の端に意識を集中し、心の中で念じる。 「ステータスオープン」


薄暗い森の風景に重なるように、半透明のシステムウィンドウが浮かび上がった。


俺は気配を消し、深い森の奥へと足を進めた。


【ステータス】 名前: ツカサ(内田 司) 年齢: 18歳 職業: 冒険者(ランクE) レベル: 6


HP: 85 / 85(全回復済み) MP: 160 / 160(全回復済み)


【固有スキル】


アイテムボックス: 容量無限 / 時間停止 / 劣化防止


前世の記憶: 現代日本の知識・倫理観


【取得魔法(独自開発)】


念動サイコキネシス: 消費MP 2?(出力に比例)


小石の投擲や鍵開けなど、出力を抑えた精密操作。


念動テレキネシス: 消費MP 2


対象の移動、固定、破壊。


【装備】


鉄の短剣


使い古された革鎧




「レベル……まだ6か」


上がったばかりの数値を見て、俺は小さく息を吐いた。 この世界の住人からすれば、18歳でレベル6、しかも魔物や盗賊を相手に立ち回れるのは「筋が良い」ほうに入る。だが、この苛烈な世界を一人で生き抜くには、あまりに心もとない数字だ。


先ほどの戦闘でも、もし盗賊が十人以上いたら、あるいはもっと連携の取れたプロの集団だったら、今の俺のMPではガス欠を起こして殺されていただきだろう。


「魔法の消費MPも、今の最大値からすれば馬鹿にならないな」


念動で短剣を一振り操作するだけでも、集中力と魔力をじりじりと削られる感覚がある。レベルアップの全回復がなければ、今頃は激しい頭痛に襲われていたはずだ。


「……まずは、このレベルでできることを増やすしかない。イメージだ。もっと効率よく、もっと鋭く」


俺は自分の手のひらを見つめ、再び魔力を練り始めた。 小石を浮かせるだけの『念動』を、どうにかして「見えない針」のように鋭く、最小限の魔力で放てないか。 工夫しなければ、明日には俺の死体がアイテムボックスではなく、道端に転がることになる。


「サイコキネシスは、込める魔力次第で威力が変わる可変型。逆にテレキネシスは、一定の魔力で物体を動かしたり壊したりする基本型、といったところか」


今の俺のMP最大値は160。 無駄撃ちをしなければ、かなりの回数の操作が可能だ。だが、この「出力に比例」というのが曲者だ。焦って過剰な魔力を込めれば、あっという間にガス欠(MP切れ)を起こして、この苛烈な世界で無防備な晒し者になる。


「小石一つ投げるにしても、サイコキネシスで最速・最小の魔力効率を突き詰めないとな……」


俺は足元に転がっていた、親指ほどの大きさの石を凝視した。 **念動サイコキネシス**を発動。 消費MPを最小の「2」に抑えつつ、弾丸のような速度をイメージして指先で弾く。


シュッ、と鋭い風切り音を立てて放たれた石は、前方にある太い樹木の幹に深くめり込んだ。


「……悪くない。これなら、不意を突けばレベルが上の相手でも、喉元や目を狙って無力化できる」


この世界の両親を殺した盗賊たち。彼らは力こそがすべてだと笑っていた。 なら、俺はこの目に見えない力、前世の「知識」と「イメージ」を極めて、この不条理な世界を生き抜いてやる。


「さて……次は街だな。Eランクの若造が一人、この森から生きて戻れば、また余計な奴らに目を付けられるかもしれないが」


俺はアイテムボックスから、使い古されたボロ布を取り出し、返り血がついたままの革鎧を隠すように羽織った。目立たず、しかし牙を隠して、俺は街へと続く薄暗い街道へと歩き出した。


街道をしばらく歩くと、巨大な石造りの外壁と、そこへ吸い込まれる人の列が見えてきた。 この界隈を統治する領主の街、レムル。だが、安全を買うための場所というよりは、強者が弱者から効率よく搾取するための巨大な装置のような場所だ。


街の門:理不尽な通行税

門の前には、槍を杖代わりに怠そうに立つ二人の門兵がいた。 俺の順番が来ると、髭面の門兵が俺の薄汚れた格好と、胸元に下げた「E」ランクのプレートをねめつけるように見た。


「おい、ガキ。入街税だ。銀貨3枚出せ」


「……3枚? 昨日は銀貨1枚だったはずだ」


俺が低く問い返すと、門兵は鼻で笑い、槍の石突きで俺の足を小突いた。


「ああ? 今日から『若年冒険者特別保護税』が追加されたんだよ。嫌なら外で魔物の餌になるか、奴隷商に自分を売りに行くんだな。そっちの方がお似合いだぜ」


周囲の人間は関わり合いを避けるように目を逸らす。これがこの世界の日常だ。 俺は無言で、アイテムボックスから取り出した銀貨3枚を奴の手に放った。


「ケッ、運のいいガキだ。さっさと失せろ」


門を通り抜け、街の喧騒に紛れたところで俺は足を止めた。 振り返らず、意識を後ろに飛ばす。


念動テレキネシス


消費MP 2。 イメージするのは、奴が槍を握っている右腕の肘関節。そこを支点に、槍の自重と重力を一点に集中させ、逆方向へ「ねじる」。


「ぎゃああああああああっ!? 俺の、俺の腕がぁっ!!」


背後で、先ほどの門兵の絶叫が響き渡った。グシャリという生々しい音が人混みの向こうから聞こえる。 外傷はない。ただ不自然にねじ切れた関節。誰も、十メートル以上先を歩く若造が指先一つ動かさずにやったことだとは思うまい。


新魔法の開発:浄化の力

路地裏に入り、俺は自らの装備を見つめた。 返り血の匂い、泥、そしてこびりついた「死の気配」。これらは魔物を呼び寄せ、精神を蝕む。


「……イメージだ。まずは表面的な汚れを払い、それから本質を磨き上げる」


前世の記憶を頼りに、魔力に新しい「役割」を与えていく。


【新魔法開発】


ピュリファイ(清める): 消費MP 2


空間や対象に付着した「邪悪な気配」や「血の匂い」を、表面的な汚れと共に軽く祓う。


ピュリフィケーション(浄化・精製): 消費MP 5


対象から毒素や不純物を完全に分離し、本質のみを抽出・精製する上位魔法。泥水を真水に変え、粗悪な金属を磨き上げる。


俺は自分に『ピュリファイ』をかけた。 革鎧に染み付いていた嫌な匂いや泥が、さらさらと砂のように落ちていく。


さらにアイテムボックス内の盗賊の剣を取り出し、今度は上位の『ピュリフィケーション』をかける。 血錆びていた剣から赤黒い不純物が霧となって抜け出し、代わりに名工が打ち直したばかりのような、一点の曇りもない鋼の輝きが戻った。


「よし、これでいい。これなら足元を見られずに済む」


ギルド:整理された戦利品

換金所のカウンターに、浄化された剣を二本並べる。


「拾い物だ。状態は見ての通りだ」


鑑定士の老人は、眼鏡をずらして絶句した。 「……ほう。死体漁りの品にしては、随分と手入れが行き届いている。……いや、これは『精製』に近いな。まるで不純物がない。坊主、お前、誰かいい職人と知り合いなのか?」


「……たまたま、いい状態のを見つけただけだ」


俺は無表情を貫く。 魔法で余計な気配を消したおかげで、盗賊の持ち物だという証拠も、俺が殺したという生々しい痕跡も消えている。


「ふん……まあいい。合計で銀貨10枚だ。状態がいいから色を付けておいた」


門で取られた3枚を引いても、7枚のプラスだ。 レベルはまだ6。だが、現代の知識と「思ったことが具現化する」魔法、そしてこの理不尽を倍にして返す覚悟があれば、この過酷な世界でも戦いようはある。


俺は銀貨をポケットに放り込み、夜の帳が下り始めた街へと歩き出した。


【ステータス(魔法欄更新)】


念動サイコキネシス: 消費MP 2?(出力比例) / 精密操作


念動テレキネシス: 消費MP 2 / 移動・固定・破壊


ピュリファイ: 消費MP 2


ピュリフィケーション: 消費MP 5



ギルドを出た俺は、入り組んだ路地の奥にある、目立たない安宿『枯れ木亭』に銀貨を払って部屋を取った。 ギシギシと鳴る階段を上がり、鍵の建付けが悪い木の扉を開ける。部屋には硬いベッドと、ガタつく小さな机があるだけだが、一人になれる空間はこの世界では何よりの贅沢だ。


「……まずは、安全確保か」


ドアの隙間に**念動テレキネシス**で薄い魔力の膜を張り、誰かが触れればすぐにわかるように細工をする。これも一種のセンサーだ。


「よし。ステータスオープン」


現在のMPは、門での仕返しや魔法の開発、浄化に使った分を差し引いて残り130ほど。レベルアップでの全回復があったとはいえ、魔法を多用すればあっという間に底をつく。この「残弾数」の把握が、生死を分ける。


俺は椅子に深く腰掛け、大きく息を吐いた。 「……やっとメシだ」


机の上に、アイテムボックスから「それ」を取り出す。 前世、仕事帰りのコンビニで何気なく買っていた、陶器の器に入った温かい『牛丼』。 アイテムボックスの時間停止機能のおかげで、湯気が立ち上り、甘辛い醤油と肉の香りが狭い部屋いっぱいに広がる。


さらに、今日仕留めた『灰色狼グレーウルフ』の肉の塊を一つ取り出した。本来なら野生の肉は臭みが強く、寄生虫の恐れもあるが――。


「ピュリフィケーション」


消費MP 5。 魔法をかけると、肉からドロリとした黒い不純物と獣臭さが霧となって分離し、あとに残ったのは透き通るような赤身の極上肉だ。これを念動で薄く切り、アイテムボックスに保管していた熱いスープに潜らせる。


「……美味い」


一口食べると、前世の記憶と今世の過酷な現実が混ざり合い、鼻の奥が少しだけツンとした。 この世界では、誰もが飢えと隣り合わせだ。街の広場では子供たちが泥のついたパンを奪い合い、大人は明日生きるための金を稼ぐために、誰かの喉を掻っ切る機会を窺っている。


そんな地獄のような世界で、俺だけが時を止めた故郷の味を噛み締め、魔法で精製した清潔な食事を摂っている。


「生き延びてやる。こんなクソみたいな世界に、タダで殺されてやるもんか」


牛丼を胃に流し込み、温かい茶で口をゆすぐ。 アイテムボックスには、まだ前世の食料のストックがある。だが、いつかは尽きる。それまでに、この世界の食材を『ピュリフィケーション』で最高の状態に変え、自給自足できるだけの力をつけなければならない。


食後、俺はベッドに横たわり、天井のシミを見つめながら指先で小さな魔力の弾を作っては消した。


レベルは6。 魔法は、念動と浄化。 手元には、奪い取った金と、まだ売っていないエンチャント付きの短剣。


「……明日は、もう少し効率のいい魔物の狩場を探すか」


意識が微睡みに沈む寸前まで、俺は『念動』の新しいイメージを練り続けた。 この苛烈な世界で、誰にも奪わせない「自分の居場所」を作るために。



翌朝、硬いベッドの上で目を覚ました俺は、意識を覚醒させると同時にいつもの儀式を行った。 「ステータスオープン」


朝の光が差し込む狭い部屋に、俺だけにしか見えないシステムウィンドウが展開される。


【ステータス】 名前: ツカサ(内田 司) 年齢: 18歳 職業: 冒険者(ランクE) レベル: 6(上限なし)


HP: 85 / 85 MP: 160 / 160(睡眠により全回復)


【固有スキル】


アイテムボックス: 容量無限 / 時間停止 / 劣化防止


前世の記憶: 現代日本の知識・倫理観


【取得魔法(独自開発)】


念動サイコキネシス: 消費MP 2?(出力に比例)


小石の投擲や鍵開けなど、出力を抑えた精密操作。


念動テレキネシス: 消費MP 2


対象の移動、固定、破壊。


ピュリファイ(清める): 消費MP 2


空間や対象の表面的な汚れ、邪悪な気配、血の匂いを祓う。


ピュリフィケーション(浄化・精製): 消費MP 5


毒素や不純物の完全な分離。本質のみを抽出・精製する。


【装備】


鉄の短剣(『ピュリフィケーション』済)


冒険者の革鎧(『ピュリファイ』済)


盗賊リーダーの短剣(魔力付与付き・秘匿中)


「MPは全快。体調も万全だ」


レベルアップ時の全回復は強力だが、こうして一晩眠ることでもMPは回復する。 昨日、門兵の腕を折った感触がまだ右手に残っているような気がしたが、『ピュリファイ』のおかげか、精神的な澱みはほとんどない。


俺はアイテムボックスから、昨日『ピュリフィケーション』で毒抜きと精製を済ませておいたウルフの肉のサンドイッチを取り出した。昨日、安宿の厨房でこっそり焼いておいたものだ。 時間停止のおかげで、パンは焼き立てのように香ばしく、肉はジューシーなままだ。


「……さて、いつまでもこの街に居座るわけにもいかないな」


門兵の一件がいつ俺に結びつくかわからない。この世界では、証拠がなくても「怪しい」というだけで首が飛ぶこともある。 ランクEの依頼を受けつつ、この街の門兵や衛兵が手の出せないような場所へ活動範囲を広げる必要がある。


俺は短剣を腰に差し、使い古されたボロ布の外套を羽織った。 身なりを整え、ステータス画面を閉じる。


「まずはギルドだな。昨日の門兵の相方がどう動いているか、確認しておかないと」


俺は部屋を出ると、階段を下りて不気味な静けさを保つ朝の街へと踏み出した。



ギルドに入ると、朝特有の熱気と酒の臭いが混じり合った空気が鼻をついた。 昨日の今日だ。門の騒ぎが伝わっているかと思ったが、冒険者たちの話題の中心はもっと別の、血生臭い「利益」の話だった。


「――おい、聞いたか? 南の街道で暴れてた『黒牙くろきば』の連中、昨日どこかの凄腕に主要メンバーをやられたらしいぜ」 「おかげで残りのカスどもがパニックになって森に逃げ込んだらしい。ギルドが緊急で掃討依頼を出してるぞ」


俺は平然を装いながら、掲示板へと歩み寄った。 人だかりの隙間から、新しく張り出された羊皮紙を睨む。


【緊急掃討依頼:『黒牙』の残党狩り】 内容: 南の森へ逃走した盗賊団残党の抹殺。 報酬: 首一つにつき銀貨2枚。リーダー格の情報、または拘束は別途加算。 備考: 盗賊による被害届が多数。死体、または証拠品の持ち帰りを条件とする。 推奨ランク: D?E(数押しでの参加を推奨)

「……都合がいいな」


俺は迷わずその依頼の紙を引き剥がした。 昨日俺が始末した三人組は、その『黒牙』とかいう集団の一部だったわけだ。残党が森に隠れているのなら、俺にとってはただの「経験値」と「戦利品」の塊が森に落ちているのと同じだ。


それに、昨日の「証拠品(アイテムボックス内の死体)」を、この依頼の成果として堂々と提出できる。死体漁りの疑いを晴らすには絶好の隠れ蓑だ。


「受付。この依頼を受ける」


受付の女性に紙を差し出すと、彼女は俺のランクプレートを見て少し眉をひそめた。 「ランクE……。ツカサさん、お一人ですか? 相手は追い詰められた盗賊です。何人いるか不明ですが、死ぬ気で襲ってきますよ」


「……逃げる足だけは自信がある。無理そうならすぐに引き返すさ」


適当な嘘をついて手続きを済ませる。 ギルドを出る際、背後から「死にたがりのガキが」という嘲笑が聞こえたが、無視した。今の俺が興味があるのは、自分のレベルを上げ、この過酷な世界で「安全圏」を広げることだけだ。


街の門へ向かうと、そこには昨日俺が腕を折った門兵の相方が、血走った目で通行人を検問していた。


「おい! お前、昨日この門を通ったか!?」 「い、いえ……私は今日初めて……」


怒鳴り散らしている相方を横目に、俺は『ピュリファイ』で気配を薄め、視線を合わせることなく通り抜ける。奴が必死に探している下手人は、今まさにその横を涼しい顔で通り過ぎていった。


森の入り口に到着し、周囲に人がいないことを確認してから、俺は一度ステータスを確認した。


「ステータスオープン」


【ステータス】 名前: ツカサ(内田 司) 年齢: 18歳 職業: 冒険者(ランクE) レベル: 6(上限なし)


HP: 85 / 85 MP: 160 / 160


【固有スキル】


アイテムボックス: 容量無限 / 時間停止 / 劣化防止


前世の記憶: 現代日本の知識・倫理観


【取得魔法(独自開発)】


念動サイコキネシス: 消費MP 2?(出力に比例)


小石の投擲や鍵開けなど、出力を抑えた精密操作。


念動テレキネシス: 消費MP 2


対象の移動、固定、破壊。


ピュリファイ(清める): 消費MP 2


空間や対象の表面的な汚れ、邪悪な気配、血の匂いを祓う。


ピュリフィケーション(浄化・精製): 消費MP 5


毒素や不純物の完全な分離。本質のみを抽出・精製する。


【装備】


鉄の短剣


冒険者の革鎧


盗賊リーダーの短剣(秘匿中)


「よし。やるか」


俺は指先を軽く鳴らした。 **念動サイコキネシス**で浮かせた小石を数粒、手のひらの上で転がしながら、俺は盗賊たちが潜む死の森へと足を踏み入れた。



薄暗い森の奥、鳥の鳴き声すら途絶えた一角に、焚き火の煙が細く立ち上っていた。


俺は**念動テレキネシス**で周囲の枯れ葉をわずかに浮かせ、足音を完全に殺しながら接近する。茂みの隙間から覗くと、そこには五人の男たちがいた。昨日仕留めた連中と同じ、下卑た「黒牙」の紋章を身につけている。


「……クソッ、カシラたちはどうしちまったんだ。あの三人が戻らねえなんて、ありえねえだろ」 「騎士団の奴らに見つかったのか? それとも、もっとヤバい魔物か……」


男たちは落ち着きなく周囲を警戒し、互いに疑いの視線を向けている。仲間を信じられず、死の恐怖に怯える。自業自得だが、この世界の「絶対悪」らしい無様な光景だ。


キャンプの隅には、彼らがどこかの商隊から奪ったのだろう、頑丈な木箱がいくつか積まれていた。その中の一つ、一際豪華な装飾が施された箱から、微かに魔力の波動を感じる。


「(あれが隠し財宝か……。まともに戦ってもいいが、MPを温存して効率よく片付けるか)」


俺は意識を集中し、ステータスを確認する。


「ステータスオープン」


【ステータス】 名前: ツカサ(内田 司) 年齢: 18歳 職業: 冒険者(ランクE) レベル: 6(上限なし)


HP: 85 / 85 MP: 160 / 160


【固有スキル】


アイテムボックス: 容量無限 / 時間停止 / 劣化防止


前世の記憶


【取得魔法(独自開発)】


念動サイコキネシス: 消費MP 2?(出力比例)


念動テレキネシス: 消費MP 2


ピュリファイ: 消費MP 2


ピュリフィケーション: 消費MP 5


【装備】


鉄の短剣


冒険者の革鎧


よし。まずは、奴らの注意を逸らす。


俺は**念動サイコキネシス**を発動し、反対側の茂みに向かって大きめの石を全力で射出した。


――ドォォン!


「な、なんだ!? あっちか!」 「いたぞ! 殺せっ!」


三人が叫び声を上げながら、音のした方へ駆け出していく。残されたのは、焚き火のそばに座り込む見張りの二人だけだ。


「……死ね」


俺は立ち上がると同時に、腰の短剣を**念動テレキネシスで射出した。 音もなく空を飛んだ刃が、一人目の後頭部を正確に貫く。崩れ落ちる男に気づこうとした二人目の喉元には、地面から浮かせた鋭い枝を念動サイコキネシス**で突き立てた。


声すら上げさせない、一方的な屠殺。 駆け出した三人が戻ってくる前に、俺はキャンプの中央へと躍り出た。


「アイテムボックス」


略奪された木箱に手を触れ、一瞬で空間の狭間に放り込む。中身を確認する時間は後でいい。 さらに、倒した二人の死体と、彼らが持っていた武器もすべて回収する。 ピュリファイをかける暇はないが、アイテムボックスに入れれば匂いも痕跡も遮断できる。


「おい、どうなってる! 誰もいねえぞ!」 奥から三人が戻ってくる気配がする。


俺は冷ややかに笑い、地面に落ちていた焚き火の薪を数本、空中に浮かび上がらせた。


「……ここからが本当の『残党狩り』だ」



戻ってきた三人の盗賊は、自分たちのキャンプがもぬけの殻になっている光景に目を見開いた。 残してきたはずの仲間二人の姿はなく、守っていたはずの略奪品も、焚き火の薪すらも消えている。


「な、なんだ……!? 消えた? 荷物も、あいつら(仲間)も……!」 「おい、あっちに誰かいるぞ!」


一人が木陰に立つ俺の姿を認めた。だが、彼らが剣を構えるよりも早く、俺は冷徹に意識を集中させた。


「……まずは一人」


**念動テレキネシス**を発動。 消費MP 2。 イメージするのは「回転」。右端の男の頭部を、不可視の巨大な手が強引に、そして一瞬で180度捻じ曲げる。


――メキッ。


嫌な乾いた音が森に響き、男は糸の切れた人形のように崩れ落ちた。首が不自然な方向を向いたまま、ピクリとも動かない。


「ひ、ひぃっ!? な、なんだ今の音は! 魔法か!?」 「てめえ、何をしやがった!」


パニックに陥り、闇雲に剣を振り回しながら突っ込んでくる残りの二人。俺は冷静に、彼らの動きを観察する。


「……二人目」


再び、念動テレキネシス。消費MP 2。 今度は左から来る男の首を、正面から捉え、そのまま真後ろへとへし折る。 男は悲鳴を上げる間もなく、首の骨を砕かれ、突進の勢いのまま地面に突っ伏した。即死だ。


「あ……」


最後の一人は、もはや声も出ないようだった。隣で仲間が次々と、触れられもせずに首を折られていく光景に、完全に精神が折れている。腰が抜け、後ずさりしながら必死に手を振った。


「ま、待て! 助けてくれ! 俺はただ命じられただけで――」


「この世界に、そんな言い訳を聞く耳を持ってる奴はいないだろ」


俺は右手を軽く握り込んだ。 念動テレキネシス。消費MP 2。 男の首を、まるで雑巾を絞るように力任せにねじ切る。


ボキッ、という鈍い音と共に、男の命は呆気なく途絶えた。 五人。全員、殲滅完了だ。


静寂が戻った森の中で、俺は深く息を吐き、浮き上がったステータスを確認した。


「ステータスオープン」


【ステータス】 名前: ツカサ(内田 司) 年齢: 18歳 職業: 冒険者(ランクE) レベル: 7(上昇!)


HP: 98 / 98(全回復!) MP: 190 / 190(全回復!)


【固有スキル】


アイテムボックス: 容量無限 / 時間停止 / 劣化防止


前世の記憶: 現代日本の知識・倫理観


【取得魔法(独自開発)】


念動サイコキネシス: 消費MP 2?(出力比例)


小石の投擲や鍵開けなど、出力を抑えた精密操作。


念動テレキネシス: 消費MP 2


対象の移動、固定、破壊。


ピュリファイ(清める): 消費MP 2


空間や対象の表面的な汚れ、邪悪な気配、血の匂いを祓う。


ピュリフィケーション(浄化・精製): 消費MP 5


毒素や不純物の完全な分離。本質のみを抽出・精製する。


【装備】


鉄の短剣(『ピュリフィケーション』済)


冒険者の革鎧(『ピュリファイ』済)


盗賊リーダーの短剣(魔力付与付き・秘匿中)


「レベル7……。やはり効率がいいな、盗賊狩りは」


レベルアップの光に包まれ、戦闘で使ったわずかな魔力と精神的な疲れが霧散していく。 俺は淡々と、転がっている三人の死体を『アイテムボックス』に放り込んだ。これで、今回の依頼の「証拠」と、彼らから奪ったばかりの「隠し財宝」が手元に残った。


「さて……あの豪華な箱、何が入ってるか楽しみだ」



巨木の太い枝の上に座り、俺はアイテムボックスから先ほどの装飾箱を取り出した。 周囲の気配を『念動』の触手で探るが、今のところ追手はない。


「まずは中身だ。……ピュリフィケーション」


消費MP 5。 箱にかけられていたであろう物理的な罠や、盗賊たちの脂ぎった汚れを魔法で一掃する。カチリと小気味よい音を立てて蓋が開いた。


中には、この世界の相場なら一生遊んで暮らせるほどの金貨の袋。だが、俺の目を引いたのはその奥に鎮座していた二つの品だった。


一つは、禍々しいほどの魔力を放つ黒い表紙の**『無詠唱の極意:魔力操作編』**という名の魔導書。この世界の魔法使いが詠唱に頼る中、イメージで魔法を具現化する俺にとっては、そのロジックを補強する劇薬のような知識だ。


もう一つは、銀色の滑らかな金属球。表面には複雑な幾何学模様が刻まれている。 「(なんだ、これは……)」 触れた瞬間、球体は俺の魔力に反応して、まるで生き物のように形を変え、数個の小さな刃へと分離して俺の周囲を浮遊し始めた。


「……なるほど。**念動テレキネシス**で操るための専用の『核』か」


俺のステータス画面に、新たな項目が追加される。


【ステータス】 名前: ツカサ レベル: 7 MP: 185 / 190


【新規取得アイテム】


未知の魔導書: 魔法構築速度上昇、魔力効率改善(読了により反映予定)


銀嶺のシルバー・スフィア: 念動操作専用の形状可変魔道具。


「いい収穫だ。だが、ゆっくり読んでいる暇はないな」


感覚を研ぎ澄ませると、ここから数百メートル先、さらに深い森の奥から複数の「濁った気配」が流れてくる。 奴らの仲間……本隊か。 仲間が戻らないことに気づき、移動の準備を始めている。


「逃がすわけがないだろ。根絶やしにすると決めたんだ」


俺は木の上から音もなく地面へ降り立った。


今の俺はレベルアップ直後で万全だ。 MPもほぼ最大。 この苛烈な世界で、略奪と殺戮を繰り返すゴミどもに、次の朝を迎える権利なんてない。


「……掃除の時間だ」


俺は新調した銀の刃を従え、森の深部へと影のように滑り出した。


俺は気配を殺したままその場を離れ、近くの巨木の枝の上へと飛び移った。


「……ふん、こんな目立つもの、持っているだけで厄介事の種だ」



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ