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【速報】転生したら村の掲示板だった件  作者: 空色とーくん


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3/5

【第三報】巨大狼、村を襲撃

【速報】村を脅かす巨大狼が出現。依頼が掲示板に貼られ、村人たちは恐怖に震える。

 少年リオを中心に、村は一致団結して立ち向かうが、掲示板様=斎藤悠真の力が試される時が来た。

 ある晩、村の広場に貼られた依頼は「巨大狼退治」だった。紙を貼ったのは冒険者のリーダー、カイン。彼の顔には緊張が走っていた。


「ただの狼じゃない。森の奥で仲間を食い散らかした化け物だ」


 村人たちはざわめき、子どもたちは怯えて母の背に隠れた。リオも不安げに依頼書を見上げる。母の病を救った薬草の奇跡を知る彼は、掲示板様にすがるような眼差しを向けていた。


 俺は依頼の文字を見つめた。「巨大狼退治」。強化すれば確かに成功率は上がるだろう。だが、力を使うたびに胸騒ぎがする。過剰な強化は世界を歪める。


 ――それでも、村を守らねばならない。


 俺は文字を「必勝・巨大狼退治」へと強化した。紙が淡く光り、冒険者たちの武器がわずかに輝きを帯びる。


 翌朝、カイン率いる冒険者たちとリオは森へ向かった。リオはまだ少年だが、母を救った奇跡の力を信じていた。


 森の奥で待ち構えていたのは、体長三メートルを超える灰色の狼。赤い瞳が光り、牙は鋭く、咆哮は森を震わせた。冒険者たちは恐怖に足をすくませたが、武器の輝きが彼らを奮い立たせた。


「掲示板様が見守ってくださる!」  「怯むな、必ず勝てる!」


 戦いは激しかった。カインの剣が狼の肩を裂き、リオが投げた石が狼の目をかすめた。だが狼は強靭で、冒険者たちは次々と倒れかける。


 その瞬間、リオが叫んだ。


「掲示板様! 俺たちに力を!」


 俺の木の板に貼られた依頼が再び光を放ち、狼の動きが一瞬鈍った。カインはその隙を突いて剣を振り下ろし、狼は地に伏した。


 村に戻った彼らは英雄として迎えられた。リオは血まみれの服のまま母の胸に飛び込み、村人たちは涙を流して抱き合った。


 だが俺は震えていた。依頼を強化するたびに、力が増していく。まるで俺自身が世界の理を塗り替えているようだ。


 その夜、焚き火の光に照らされながら、俺はふと記憶の断片を思い出した。


 ――斎藤悠真。


 それが俺の名前だった。前世で、誰にも感謝されずに働き続け、机に突っ伏して死んだ男。


 今、村人たちは俺を「掲示板様」と呼び、神のように崇めている。だが俺は斎藤悠真だ。人間だった自分を忘れてはならない。


 村人の歓声の中で、俺は静かに決意した。


 ――この力をどう使うかは、俺自身が選ばねばならない。

ここまで読んでくださりありがとうございます。

 掲示板様=斎藤悠真の記憶が少しずつ蘇り、物語は新たな局面へと進みます。次回は、村人たちの信仰がさらに広がり、神か悪魔かという問いが迫るでしょう。


――次回更新は 毎週日曜の昼14時。

休日のひとときに、掲示板様の続報をお楽しみください。

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