【第三報】巨大狼、村を襲撃
【速報】村を脅かす巨大狼が出現。依頼が掲示板に貼られ、村人たちは恐怖に震える。
少年リオを中心に、村は一致団結して立ち向かうが、掲示板様=斎藤悠真の力が試される時が来た。
ある晩、村の広場に貼られた依頼は「巨大狼退治」だった。紙を貼ったのは冒険者のリーダー、カイン。彼の顔には緊張が走っていた。
「ただの狼じゃない。森の奥で仲間を食い散らかした化け物だ」
村人たちはざわめき、子どもたちは怯えて母の背に隠れた。リオも不安げに依頼書を見上げる。母の病を救った薬草の奇跡を知る彼は、掲示板様にすがるような眼差しを向けていた。
俺は依頼の文字を見つめた。「巨大狼退治」。強化すれば確かに成功率は上がるだろう。だが、力を使うたびに胸騒ぎがする。過剰な強化は世界を歪める。
――それでも、村を守らねばならない。
俺は文字を「必勝・巨大狼退治」へと強化した。紙が淡く光り、冒険者たちの武器がわずかに輝きを帯びる。
翌朝、カイン率いる冒険者たちとリオは森へ向かった。リオはまだ少年だが、母を救った奇跡の力を信じていた。
森の奥で待ち構えていたのは、体長三メートルを超える灰色の狼。赤い瞳が光り、牙は鋭く、咆哮は森を震わせた。冒険者たちは恐怖に足をすくませたが、武器の輝きが彼らを奮い立たせた。
「掲示板様が見守ってくださる!」 「怯むな、必ず勝てる!」
戦いは激しかった。カインの剣が狼の肩を裂き、リオが投げた石が狼の目をかすめた。だが狼は強靭で、冒険者たちは次々と倒れかける。
その瞬間、リオが叫んだ。
「掲示板様! 俺たちに力を!」
俺の木の板に貼られた依頼が再び光を放ち、狼の動きが一瞬鈍った。カインはその隙を突いて剣を振り下ろし、狼は地に伏した。
村に戻った彼らは英雄として迎えられた。リオは血まみれの服のまま母の胸に飛び込み、村人たちは涙を流して抱き合った。
だが俺は震えていた。依頼を強化するたびに、力が増していく。まるで俺自身が世界の理を塗り替えているようだ。
その夜、焚き火の光に照らされながら、俺はふと記憶の断片を思い出した。
――斎藤悠真。
それが俺の名前だった。前世で、誰にも感謝されずに働き続け、机に突っ伏して死んだ男。
今、村人たちは俺を「掲示板様」と呼び、神のように崇めている。だが俺は斎藤悠真だ。人間だった自分を忘れてはならない。
村人の歓声の中で、俺は静かに決意した。
――この力をどう使うかは、俺自身が選ばねばならない。
ここまで読んでくださりありがとうございます。
掲示板様=斎藤悠真の記憶が少しずつ蘇り、物語は新たな局面へと進みます。次回は、村人たちの信仰がさらに広がり、神か悪魔かという問いが迫るでしょう。
――次回更新は 毎週日曜の昼14時。
休日のひとときに、掲示板様の続報をお楽しみください。




