【第二報】薬草採取の奇跡、村人の信仰芽生える
【速報】村の少年リオが掲示板に貼った「薬草採取」の依頼が、思わぬ奇跡を呼んだ。
強化された依頼は常識を超える成果をもたらし、村人たちは「掲示板様」への信仰を深めていく。
これは、ただの木の板に転生した男が、神格化されていく過程を記録した第二報である。
その日、リオは母の病を治すために薬草を求めていた。小さな手で依頼書を貼り付ける姿に、俺はなぜか胸を突かれるような感覚を覚えた。
「薬草採取」――その文字を見た瞬間、前回の成功が脳裏をよぎる。俺は衝動に駆られ、文字を「大薬草採取」へと強化した。
森へ向かったリオは、夕暮れとともに戻ってきた。籠に溢れる薬草は、見慣れたものとはまるで違う。葉は厚く、香りは濃く、薬師が試すと効能は三倍以上だと断言した。
「これは奇跡だ!」 「掲示板様のお力だ!」
歓声が広場に響き渡り、リオは英雄のように担ぎ上げられた。母の病は癒え、村人たちは涙を流して喜んだ。
その夜、村の広場では急ごしらえの宴が開かれた。焚き火の周りで肉が焼かれ、酒が回り、子どもたちは歌を口ずさむ。リオは村人に囲まれ、母の笑顔を見て泣き笑いしていた。
だが、宴の中心にあるのは少年だけではない。人々は繰り返し俺の方へ視線を向け、祈りを捧げる者まで現れた。花を供える者、木板に触れて願いを囁く者――広場は小さな聖域のように変わっていった。
前世では誰にも感謝されず、ただ使い潰されるだけだった俺が、今は人々に必要とされている。胸の奥に温かいものが広がる。
しかし同時に、不安も膨らんでいった。
俺の力は人々を救うだけでなく、世界を歪める可能性がある。依頼を強化するたびに胸騒ぎがする。もし誤った選択をすれば、村を破滅へ導くかもしれない。
冒険者たちもまた、俺への信仰を口にした。
「掲示板様が見守ってくださるから、俺たちは勝てるんだ」 「次の依頼もきっと成功するさ」
その声を聞きながら、俺は木の板の身体を震わせた。
――俺はただの掲示板だ。だが人々は俺を神と見なしている。
その期待に応えるべきなのか、それとも距離を置くべきなのか。答えはまだ出ない。
だが確かに、村人たちの心に芽生えた信仰は、もう後戻りできないほどに広がっていた。
そして俺は知っていた。次に貼られる依頼が、村の運命を大きく揺るがすことになるだろう。
――次回更新は毎週日曜の昼14時。
休日のひとときに、掲示板様の続報をお楽しみください。




