EP4-2:既存キャラの交流に出しゃばる新キャラは鬱陶しい
マジかよ。
臆病にも程があるだろ、と二階子ちゃんは心の中で理不尽な悪態を吐く。これどうすんの。AED? この廊下にそんなものは無いし、元の廊下に転がしとけば誰かが何とかするかな? でも、最近は女の子にAEDを使うのは社会的リスクが大きいとかなんとか…… 潔く御陵様に連絡を取って何とかして貰おうか。あの御方なら人一人の命くらい本当にどうとでもしてしまうけれど、さすがに良い顔はしないんじゃないか。怒られるかなぁ……
そもそも、こんなやり方で言い含める必要なんてなかっただろう。何様のつもりだったのか。知らず知らずのうちに一般人を見下すようになっていなかったか? こんな、力を見せつけて脅すような手口、あのいじめっ子どもと何が違うんだ。いつから私はこんな傲慢なバケモノに……
「あのー、悠長に考え事をしていられる状況ではないかと」
「きゃっ!?」
喋った。夏水が。
いや、夏水ではない。声は夏水の肩の辺りから聞こえた。何事かと思って見やると、髪を結んだゴムのフェルト飾りがゆらゆら蠢いている。
「あ、どうも。初めまして。私、赤い雀と申します。朱雀と呼んで下さって結構」
「は、はぁ。どうも」
え…… 何? と思って見ていると、髪留めから外れたフェルト飾りが「ぽん!」とばかりに模様に過ぎないはずの羽を広げて、二階子ちゃんの顔の先でホバリングを始めた。あら可愛い、と思わずにはいられない見事な造形だが、え……何? 本当に、何? 悠長に自己紹介をしていられる状況でもないと思うけど……
「知ってます? 朱雀とか鳳凰とかって、実は不死鳥とは関係ないんですよ。混同されるのはあのファイヤーバード鳳凰編の影響が大きいと思うんですけどね。かの十二天将朱雀の御利益は不老不死とは何の関係も無い弁舌とかですし。だからこの子の蘇生もこうやって正攻法で…… うおでっかっ」
呆然としている二階子ちゃんの前で、赤い雀とやらは何やらぶつぶつ呟きながら夏水の懐に潜り込むと、ホッピングを繰り返すように胸骨圧迫を始めた。この10グラムもなさそうなフェルトの塊風情がそんな重労働を? と思いきや、いかなる奇跡の御業か、夏水は忽ちひゅうっ、と息を吹き返した。
あ、ああ、良かった。二階子ちゃんは未だに状況の全てが呑み込めないまま、とりあえず最悪の事態が避けられたことに安堵して廊下にへたりこんでしまう。
「ふぅ…… 最近の中学生は大したものですな。私、今後も『窮鳥、懐に入らば猟師も殺さず』を座右の銘として生きていく所存です」
「はぁ…… あの、ありがとうございます。えっと…… 貴方は、御陵様の?」
落ち着いてみればこの毛玉、確かにあの黄泉祇の異常なほど強大で異質なほど濃密な霊力を感じる。だとすればこの毛玉、土御門家の十二天将・朱雀を一笑に伏すレベルの強大な式神であってもおかしくない。なにせあの怪物と来たら、伝統も実績もある陰陽道の大家・土御門の一族を、『千年経っても晴明を越えられない連中』と鼻で笑っていたのだから。
「ええ、ほんの手遊びでは御座いますが…… おっと、お嬢様にはご内密に。訴えられても困りますからな」
そう言うと、赤い雀は身を翻してゴム紐にくっつき、ただのフェルトの塊に戻ってしまった。時を同じくして、夏水がうっすらと目を開ける。二階子ちゃんは慌てて夏水の頭を支えた。状況が理解できずに変に動くと冷たい廊下で頭を打ちかねない。
夏水は、二階子ちゃんの頭部を恐る恐る見上げ、そこにグロい変なモノじゃなくて愛らしい少女の顔がついていることを確認すると、ひゅうう~~~~~~っと長い息を吐き出して、言った。
「心臓、止まるかと思ったよ……」
「それ、ひょっとして持ちネタだったりする?」
次回はまた不定期更新となります
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