俺の青春、消滅の危機
どうも、ちょこサイダーです。今日から小説家になろうにて投稿を始めていくので何卒、よろしくお願いします。カクヨムの方でも投稿させて頂いているので、良かったらそちらの方もご一読いただければ幸いです。
あ、言い忘れてましたが自分は18歳の超ど素人作家なので、何か読んでいて引っかかっる点や「ここ直すともっと読みやすくなる」など気になるところがあったらどんどん言って欲しいです!読者様の励みがやる気を奮闘させるので自分が飽きるくらい褒めてください。それでは、改めてよろしくお願いします。
四月の春、今日も桜は綺麗に舞い散っている。新しい人々との出会い、初々しい制服姿で朝の通学路を歩くことは期待に胸を馳せるほか、どこか不安を感じることであろう。例えば「友達できるかな?」や「高校の授業ちゃんとついていけるかな?」などなど。
しかしただひとりだけ、恐らく日本全国を探し回っても俺・早宮将が抱える悩みは他とは違う。
「友達作りを無事回避して、豊かで平和な高校生活を送れますように」
俺は学校に向かう途中、小さな神社でそうお祈りの言葉を告げた。普通なら意味不明な願い事に聞こえるが、一応それには理由がある。俺は小中と無事に学校を卒業してきたわけだが、彼の周りには誰1人友達はいなかった。
いわゆるモブキャラなのだ。それも全国でもかなり上澄み(不名誉)の方である、自信がある。クラスでは「こんな名前の人いたっけ?笑」と、存在すら気づかれないまま同じ場で愚痴られたことが毎年1回はある。しかし、俺は自分がモブであることに全く不満を抱いていない。
なぜなら、モブとして生きることこそが俺にとって平和と安泰を意味するからである。普通の一般人では彼の考え方に少しも賛同することはないだろう。それに対しても俺は不満を抱くことは無い。なぜなら俺は一般人ではなくモブだから。
なぜ俺がこんなにもモブとして生きることに強い拘りがあるのかと言うと.....
単純に人と接することが苦手だからだ。普通はそのコンプレックスを脱却するために、工夫をし何とか人との関係を築きたいと思うはずだが、俺はそうじゃない。本物のモブだから。
ただ諦めがついてしまったのだ。人と対話するだけでも物凄い労力を使い、それでも何とか人並みに喋れるのが精一杯。挙句にそんな自分は皆からからかわれる始末。ついに俺は─────全て絶ってしまった。
周りとの関係を築くことが悪いのだと自分で結論付け、誰とも関わらない道を選んだのだ。最初はもちろん寂しかった。元々少なかった友達も周りから消え、完全にモブと化す自分が情けないと感じた。
だが、もう慣れてしまったのだ。こんな生活をかれこれ10年近く続けている。常人ならこんな生活を耐えることは拷問以外の何者でもない。だが、俺は違う。なぜなら俺はモb...
そんな俺も今日から高校生だ。新たな人生の幕開けに期待と不安を胸にスタートを切る。
私立成川高等学校。偏差値75を誇る都内有数の名門校だ。スポーツも様々な分野で高い戦績を誇る強豪校でもある。
こんなレベルの高い高校にモブなんかが入れるのか?と疑問に思ってしまうのも無理はない。だが俺は頭は良い。何せ遊ぶ友達もおらず、日々勉強だけで時間を潰してきたからだ。
そんなこんなでこの成川高校に入学してきた。俺は緊張から来る堅苦しい体をほぐすように背筋を伸ばし、新たな人生を始める高校の第一歩を踏み出した。
「おはようございます!」
「「「おはようございます!!!」」」
入学式で生徒を出迎える校長先生の挨拶を受け、生徒たちもそれに返すように清々しい挨拶をすると、体育館中に大きく響き渡った。その後、校長先生特有の長々しい言葉を聞かされ
教室に入りみんなが席に着く。入学式の初日なので、やはり会話の声が少ない。俺からすればこれが普通なのだが、世間一般の人ならこの状況を嫌がるだろう。そういうところでは俺は無敵かもな。
教室に担任らしき人物が入ってきたことで、みんなの意識が一点に集中した。
「ようこそ、私立成川高等学校へ。この学校に入学できたのは、この場にいる君たち全員が努力し、無事勝利を掴み取った証だ」
担任の話を5分ほど聞いた後、真新しい教科書が続々と配られた。すると、俺が一番恐れていたイベントが.....
「今日からそれを活用し勉強を始めてもらう。だがその前にまずは自己紹介からだ。勉強だけしててもつまらないからな。交流を深めよう」
いえ.....先生。勉強だけしててもつまらなくないです。交流なんか深めなくても十分満足できます。なんて俺しか思ってない事口に出せるかって話だ。嫌でも目立ってしまうこの状況、何とか打開せねば。
その解決方法はシンプルだ。やり方は、くそつまらない自己紹介をするだけで済む。これだけで周りは興味は湧かず「つまんねーな」と内心心の中で思って無事にこのイベント終了するというわけだ。
前の人が自己紹介をし終えたところで、いよいよ次は俺のターンだ。気を引き締め、なるべく目立たないような自己紹介を心がける。
「え、えー.....っと、早宮、将です。好きな食べ物はカレーライスです。よ、よろしくお願いします」
よーし!耐えたか?コミュ障すぎて入りから結構グダったけどなんとかやれた。やれやれ、何気ない些細な場面で俺の青春ライフは大きく変わってしまうからな。下手に目立たずにこれからも過ごしていこう。
そして4時限目までは何事もなく、俺は当たり前に友達を作らずに教室の端で静かに座っていたが、もう周りは既に打ち解け合ったのか会話の声は始めの頃に比べ、かなり大きくなった。
昼休憩に入ったところで、母さんが作ってくれた弁当を手にする。高校初の弁当は唐揚げ弁当だった。母さんが作る唐揚げは世界で一番美味いと言っても過言では無い。口の中で衣がサクッとした瞬間、香りとともに柔らかい肉が口全体に姿を現す。この時の柚子胡椒がピリッと辛さで刺激されるのが絶妙に─────────
「へぇ〜、弁当カレーじゃないんだ?」
「.....」
いかん、唐突に話しかけられたことに対し驚きのあまり無視してしまった。いや、このまま話を続ければ直ちに俺の学校計画が全て台無しになる。ここは無視を貫き通すしか.....。
「え〜?無視?なんで無視するの〜?なんでなんで〜?」
「な、なんですか?僕に何か用が?」
この女、ちょっとウザイかもしれない。そもそも、俺みたいな人間に積極的に関わろうとするのは間違いなく物好きだ。下手に出ると面倒くさそうだな。ここは穏便に必要最低限の会話で乗り切るしかない。
「いや〜、大した用じゃないんだけどね?自己紹介の時さ?カレーが好きって言ってたじゃん?」
なんで一々俺の面白さ0の自己紹介の内容なんか覚えてんだよ.....。
「それでね?今日絶対弁当カレーだな!って確信して見に来たのに、全然違うから思わず質問しちゃった」
てへぺろ、みたいな表情で俺の事をキラキラ見てくるが俺はその時どういう対処が適切なのか全く分からなかった。今までコミュニケーションを怠った弊害が生じたな。ここで会話を強制中断しても、ヤバい奴認定され悪い方で目立ってしまう。
「そ、そもそも俺がカレー好きだからって、学校にカレーを持ってくるって考えはおかしいですよね」
「え?そうかな?」
すると何なら突然、たまたま空いていた隣の席を俺の隣にくっつけた。弁当箱を元々持っていたのか俺の横で開けてくる。
なんでわざわざ女子のお前が俺みたいなモブの隣に座るんだよ!余計目立つだろ!
「ほら!私はカレーだよ?だって私が一番好きなのカレーだから!」
「な、なるほどですね。学校初日は自分の好物を持っていきたいというのは理解できますが、それでも全員がそういう考えじゃないっていうのも考えるのが当たり前ですよ」
「ふ〜ん、そうなんだ」
「聞いてないし.....」
まあ、会話を終わらせるのが俺の目的だったんでちょうどいいか。さっさとご飯を食べ終えこの場から離れないと、色々と誤解を招きそうなこの状況はかなりまずい。
「ねえ早宮くん?私の名前覚えてないでしょ?」
10年近く名前を覚えられずに生きてきた身からすると、流石に体が硬直してしまった。人と関わることがない分、人の名前を覚えるのは無駄だと思いもちろん、彼女の名前も覚えていない。そんな中、彼女は俺の名前を覚えていてくれていた。
「す、すみません.....。覚えてないです」
「あははっ!苦手そうだもん早宮くん!私の名前は朝比奈陽沙莉!今日からよろしくね」
この出会いが俺のモブとして生きるはずだった未来を大きく変えた。