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Sterbephase(詩記)  作者: 敬愛


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85/102

日本文明の開化

まだ現実と呼ぶには頼りなく影よりも扱いやすい出来事達は

指一本で思い通りの形に折り畳める気がしていた 


心の中の部屋に招き入れては都合の良い椅子に座らせ好きな角度から眺めていた 

ある日事実は呼び鈴も鳴らさず玄関の扉を押し開けるように驀地に現前した 

しかもこちらが寝起きの眼を擦る暇も与えず冷たい輪郭のまま足元に影を落とす


思い込みで塗った夢はどれも紙のように破れた 

そのとき初めて私は自分の中に育ててきた考えという温室の

ガラスが割れる音を聞いた 

花のように飾っていた信念も触れれば散る埃だったことを知った 

事実はこちらの都合に合わせてくれる優しい客ではなかった 

静かで重く沈黙の中でこちらを見つめ続けるだけの動かしようのない存在だった


私は観念の柔らかい寝床から無理やり引き剥がされ

むき出しの床に立たされたまま訊きたくもない問いを突きつけられた 

それでもお前は自分の思い通りに世界を折り曲げられるつもりでいるのかと 

答えは出ない しかし胸の奥でさざめく何かがゆっくりと形を変え始める 

敗北のようでもあり出発のようでもありただただ静かな痛みを伴った生の予感であった


そして思う 

もし世界が思い通りに曲がってしまうものなら

私はきっと一生自分の影の形すら知らずに終わっただろう 

抗い難い現実の重みが時に残酷であってもそれを受け止めた瞬間にだけ

人はほんの少しだけ自分の輪郭を取り戻す 

痛みは道標だ ゆっくりでいい この確かな重さとともにまだ前へ進む 

私なりの終わり方は私なりの始まり方と同義だ

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