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Sterbephase(詩記)  作者: 敬愛
海

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57/157

ギターキッズラプソディー

放課後の空は茜色で

靴ひもを結ぶ時間も惜しくて

僕は駆け足で帰る

流れる景色の中 胸の奥では

たったひとつの音が鳴り響いている

友達と遊ぶ事よりも

成績や将来の不安よりも

もっと大切で もっと熱い

名前のない衝動が僕を急がせる


ドアを閉めたら部屋はすぐにライブハウス

机の上に積まれたノートは照明に変わり

擦れたカーテンは観客のざわめきに見える

その真ん中に立っているのは

ストラトを抱いた僕自身

まだ誰も知らない無名の少年が

未来の幻影に向かって弦を鳴らす

その一瞬のために生きている


ペグを回す音は

小さな時計の針みたいにチクタク響く

調律の迷いは 未完成な自分の証拠

それでも構わない

未熟な音が いまの僕の真実だから


ストラトを抱えて眠れぬ夜を駆け抜ける

かき鳴らした音色は

少し高く 少し低く

まだ定まらない未来みたいに震えている


スラップの衝撃は

胸の奥で暴れる雷鳴

指先から放たれる稲妻が

街灯の影をも震わせて

孤独を塗り替えてゆく


学校帰りの濡れたスニーカー

狭い部屋に投げ捨てた教科書

代わりに手を伸ばすのは

安くてボロいアンプと

傷だらけの相棒だけ


コードはまだつたなくて

押さえた指が痛むたびに

悔しさが涙に変わるけど

爪弾く音は誰よりも

真っ直ぐな夢を語っている

その全部が物語になる

ギターキッズのラプソディー


やがてこの旋律は

夜を越えて 街を越えて

知らない誰かの心を揺らす

その日を信じて今日もまた

ストラトをかき鳴らす

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