ギターキッズラプソディー
放課後の空は茜色で
靴ひもを結ぶ時間も惜しくて
僕は駆け足で帰る
流れる景色の中 胸の奥では
たったひとつの音が鳴り響いている
友達と遊ぶ事よりも
成績や将来の不安よりも
もっと大切で もっと熱い
名前のない衝動が僕を急がせる
ドアを閉めたら部屋はすぐにライブハウス
机の上に積まれたノートは照明に変わり
擦れたカーテンは観客のざわめきに見える
その真ん中に立っているのは
ストラトを抱いた僕自身
まだ誰も知らない無名の少年が
未来の幻影に向かって弦を鳴らす
その一瞬のために生きている
ペグを回す音は
小さな時計の針みたいにチクタク響く
調律の迷いは 未完成な自分の証拠
それでも構わない
未熟な音が いまの僕の真実だから
ストラトを抱えて眠れぬ夜を駆け抜ける
かき鳴らした音色は
少し高く 少し低く
まだ定まらない未来みたいに震えている
スラップの衝撃は
胸の奥で暴れる雷鳴
指先から放たれる稲妻が
街灯の影をも震わせて
孤独を塗り替えてゆく
学校帰りの濡れたスニーカー
狭い部屋に投げ捨てた教科書
代わりに手を伸ばすのは
安くてボロいアンプと
傷だらけの相棒だけ
コードはまだつたなくて
押さえた指が痛むたびに
悔しさが涙に変わるけど
爪弾く音は誰よりも
真っ直ぐな夢を語っている
その全部が物語になる
ギターキッズのラプソディー
やがてこの旋律は
夜を越えて 街を越えて
知らない誰かの心を揺らす
その日を信じて今日もまた
ストラトをかき鳴らす




