HLA
序文
ヒトの第6染色体の短腕の遺伝子座により
支配される白血球の細胞膜に存在する抗原。
検査する事によって移植の際の拒否反応の防止、
法医学での親子鑑定、人類遺伝子分野等に
用いられる。
詩記
舞台の上に兄妹がただ2人
同じ台詞を抱いて立つ
遺伝子という台本は父と母の筆跡で
HLAの行間に愛も孤独も綴られる
似ている声が重なり
あなたはわたしで わたしはあなたで
かつてはそうだった 幼い頃 遊んだ記憶
いつの間にか大人になって憎しみ合うようになった
一致しなかった6桁の祈り
兄妹だと言われた日から
本当に兄妹かと問い続けた
血を交わさぬ愛があるように
血を分けても遠い存在がある事をようやく知った
悔しさを誰のせいにも出来ないが
こちらは舞台を降りる決断をした
愚妹と罵った日々
同じ幕が開く度に
父母を裏切った我々はやっぱり似ていると知る
もし昔に戻れたなら
そうだな 君の兄の役目はしないよ
まっぴらごめんだ
接続詩
人の中の知られざる地図
あなたをあなたたらしめる名も無き標
見えぬ鍵が扉を選び
拒絶と受容のあわいで燃える
すれ違う運命たち
互いを知らず 既に識っている
私の中のあなた
あなたの中の誰か
すれ違いざま 細胞が泣いた
愛しても似ていなければ
命は沈黙を選ぶ
だけど一致は奇跡 引き裂きの先に
それでも抱き締めるように生は還る
名も無い祈りの中で
今日も誰かの中の誰かが
命を繋ぐ
結文
魏の曹植の有名な七歩詩(五言絶句)で
「豆を煮て羹を作る為、豆殻を燃やして汁をとる。
釜の下で豆殻が燃え、釜の中で豆が泣く。
元は同じ根から生まれたのに、どうしてそんなに急いで痛めつけ合うのか」(意訳)
というのがありますが。これは兄の曹丕に向けて書いた詩ですが、私の実の妹は大切な母の葬儀でトラブっちゃったら絶縁も仕方無いですね。偉大なる兄の影に怯えながら生きていくんでしょう。親父と私の葬式には出なくて良いからね。




