魔獣
俺達はセントラルタウンを目指して、マウ村から出てからフェアリーフォレストに到着した。「やっと着いたな。」とラプラスの方に目を向けるとラプラスは顔は疲れ切っていて、腰を丸めてゆっくりと歩いていた。息はぜー、ぜーと切らしている。「ボクもう疲れたよ…ハルマ…」と呟くラプラスは今にも天に昇りそうだった。「休憩無しで朝から夜まで歩き続けたし、丁度暗くなってきたから休もうか。よく頑張ったな。」と俺達は村から調達してきたパンを食べて、テントを建ててから眠りについた。
突然真夜中に地響きが鳴り響いた。頭の中では危機察知能力であるブザーが反響している。ラプラスは目を擦りながらゆっくりと身体を起こしながら、「もー…ただでさえ疲れてるのに…」とぶつぶつ文句を言う。「仕方ないだろ、俺だって眠いし行きたくねえよ…行くぞ…。」と俺も続いて文句を言うと、バチーン!と音を立てながらラプラスがビンタして来た。「世界を救う様なやつが弱音はいてんじゃねぇ!!」とブチ切れている。「じゃあそれを支えるお前も弱音を吐くなよ…」とヒリヒリする頬を撫でつつ、切り替えて周りを見渡すと真っ直ぐに進んだ先に巨大な影が見えた。「まさか…あれが魔物…?」と呟くと「とりあえず行くよ」とラプラスが手を引っ張ってきた。
到着すると、そこには四足歩行の巨大な禍々しく黒く光る、曲がりくねった二本の角を立てた牛のようなモンスターが居た。その目線の先にはほぼ壊滅状態となった騎士団と思われる鎧を来た集団が居た。
中には魔獣に食い散らかされたと思われる兵士が居る。強烈な吐き気に襲われ、後ろを向き、込み上げたものを外へと放出した。「なんだよ、あれ…」と言うとラプラスは「あれはベヒーモスっていうみたいだね。ほんとはこんな所に生息はしないはずなんだけど…なんでだろうね…?と言った。「モンスターの情報を聞きたいんじゃねえよ!お前はこれを見て何も思わないのか!?」と叫ぶと、ラプラスは「じゃあ君はこのままビビってるだけだったらさらに犠牲が増えて行くことに対しては何も思わないのかい?ボクはその失われていく命を少しでも減らすためにさっさと戦うべきだと思うよ。そもそも罪のない人々を殺すのが許せないなんて大口叩いて旅を始めたのは君自身なのに、君が戦わなきゃ意味が無いじゃないか。しっかりしろよ。」といつになく真剣な表情でラプラスは語りかけた。そうか、俺はこういう人達を救うために戦ってるんだと立ち上がった。「すまない、ラプラス、俺が間違ってた。恐怖でどうかしてたのかもしれない。力を貸してくれ。」と頭を下げると、ラプラスはニコッと表情を崩すと「りょーかーい、じゃあラプラスジャックって言ってくれるかい?」と返事をした。
「ありがとう、じゃあ行くぞ!ラプラスジャック!」
叫ぶとラプラスが光に変わり、俺の脳内に吸い込まれた。その瞬間、身体が少し軽くなり、剣を抜いてみると通常時より軽く感じた。そして何よりも大きな変化が、魔獣の少し先の動きが読めるようになった事だ。「これがボクの能力、ラプラスジャック、ジャックした人間の能力を底上げして、少し先の未来を計算して導き出す。そして、それを使用者にヴィジョンとして映し出す。ボクは全力でサポートする。だから、君も全力で戦ってくれ。」とラプラスは言った。これなら戦える。ここにいる人達は全員救ってみせる。
「行くぞラプラス、討伐開始だ。」