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7.彼らは罠にはまった

(ベガ視点です)


「ミア!お前は私が愛するベガを、醜い嫉妬が理由で虐めた。お前のような心根の醜い者を王太子妃にはできない!よって今ここでお前との婚約を破棄し、このベガを婚約者にする!」

卒業パーティでカノープスが、私を抱き寄せながら大声で宣言した。

リゲルは証拠をもってくると連絡があったし、隣にいるカウスも頷いている。

(きゃあ、やったわ!)

ついにハーレムエンディングを迎えた。

ここからレグルスルートが開かれるのだ。

おまけに悪役令嬢が転落する様が見られるのだ、愉快でたまらない。

最後にミアの惨めな姿を目に焼き付けて、嘲笑ってやろうとして目を疑った。


ミアは笑っていた。


(何で?どうしてそんな目で見るのよ)

内心驚いた。

ミアはただ笑っているだけではない、明らかにこちらを見下す目をしていたのだ。

その様子に不安が湧き上がる。

(どういう事?普通は婚約破棄されたら、困るんじゃないの?)

たとえ政略で好意がなかったとしても、婚約破棄されれば瑕疵になる。それは避けたい筈だ。

「貴様、何を笑っている!俺に捨てられて、気でも触れたか!?」

カノープスが怒鳴りつけると、ミアは大きくため息をつくと、センスで顔を隠した。

「申し訳ありません、あまりにくだらない茶番だったので、つい笑ってしまいました」

「何ですって!」

「何だと、貴様!」

思わず言うと、冷たい目で睨まれた。

「だってどう見ても虐めていたのは貴方達で、被害者は私でしょう?人が来るたびに『私に虐められた』と言っていたけど、いつもケガをしている私と、無傷の貴方達を見れば、どちらが加害者で噓をついているか、誰が見てもわかりますわ。もうこの学園で、貴方達の主張をうのみにしている人間はいませんわ」

ミアの言葉に慌てて周囲を見回すが、誰もが私達に冷たい目を向けていた。

(そんな…)

こんな筈じゃなかった。もう少しだったのに。

計画が破綻して震えていると、突然カノープスが叫んだ。

「う、うるさいうるさい!俺は王太子だぞ、そんなもの俺の権力で黙らせれば、いいだけの事だ!カウス!」

カノープスの命令に、カウスが剣を抜いてミアに突きつける。

「………」

剣を突き付けられて動転しているのか、ミアは無言だった。

(何だろう…嫌な予感がする)

よく似た光景をどこかで見た気がするが、思い出せない。

考えている内に、3人のやり取りは進んでいた。

「貴様が罪を認めて、婚約破棄に応じるなら見逃してやる。さぁどうする?」

「お断りします。婚約破棄には応じますが、犯してもいない罪を認める気はありません。私は潔白です」

毅然とした態度ではっきりと拒絶する態度に、周囲は感銘を受けるが、逆にカノープスの怒りに触れた。

「ならば用はない、カウス殺せ!」

その言葉に、カウスが剣を振り上げる。

周囲から悲鳴が上がった。

私も思わず、目を閉じた。

けれどいくら経っても、ミアの悲鳴は聞こえなかった。

代わりにカノープス達の、戸惑った声が聞こえた。

「な、なんだ貴様、どこから出てきた」

「おい、離せ。何をする」

そっと目を開けると、カウスがレグルスに剣を奪われて拘束されていた。

「えっ?何で…」

突然の事態に疑問を覚えたが、すぐに気づいた。

(思い出した!これ、資料集に載ってたハーレムエンドのスチルだ)

(資料集では剣を持ったレグルスとカウスが並んで立っていたから、一緒になって断罪するものと思ってたのに、違ったの?)

混乱する私達を無視して、ミアとレグルスが親しげに話をしていた。

「全く君という人は…まっすぐで誇り高いところが魅力だが、何かあったらと思うと気が気じゃない。少しは自重してくれないか?」

「申し訳ありません。でもこれが私ですから、曲げるつもりはありません」

謝罪しながらも、これからも自分を曲げないと宣言するミアに、レグルスが苦笑する。

「やれやれ、我が婚約者殿は頑固だな」

そう言うと、こちらに向き直る。

「婚約者がいながら浮気を繰り返し、虐めた上濡れ衣を着せた挙句、殺害を図るとは…とんだ屑共だな。こんなのが王太子とは…世も末だ」

「申し訳ありません。おい、殿下達を拘束しろ」

レグルスの言葉に、誰かが謝罪する。

周囲を探すと、人垣をかき分けて兵士たちを率いたリゲルが現れると、兵士達に私達を捕らえさせた。

「な、何で…」

「おいリゲル、どういう事だ!?」

「くそっ、離せ!!」

突然の出来事にカノープスはリゲルに説明しろと叫び、抵抗したカウスは殴られて気絶したところを、縛り上げられた。

「貴方方を公爵令嬢である我が姉に対する侮辱罪、殺害未遂、違法薬物に手を出した罪で、投獄します」


それからは何を言っても聞いてもらえず、私達は王宮のの地下牢に放り込まれた。


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