5.家族の団欒
いいね。ありがとうございます。
~1年後~
「お父様、リゲル、スピカ。ただいま戻りました」
1年の留学を終えて久しぶりの我が家に戻ると、3人が喜んで迎えてくれた。
「おかえりなさい、お姉様」
「お久しぶりです、姉上」
「1年ぶりだが、元気そうで何よりだ」
「ありがとうございます。お父様たちもお変わりないようで、何よりです」
そう言って礼をすると「積もる話は、晩餐の時にしよう」という事になった。
「向こうでの暮らしは、どうだった」
「はい。我が国とは法律も価値観も異なっていて、最初は戸惑いましたが、見習う点は多かったです」
「大国というのは知ってるけど…どんなところが違うんですか?」
スピカが、目を輝かせて聞いてくる。異国に興味があるようだ。
「そうね、まず大きな建物が多いわ。1つの屋敷にたくさん部屋を作って、1人ずつ住むんですって」
「まぁ!想像つかないわ」
スピカが目を丸くする。隣でリゲルもちょっと驚いたようだ。
「それはずいぶん珍しいですね。家族でもないのに同居なんて、諍いの元になりそうなのに」
リゲルが驚いた様子で言うと、私も同意した。
「そうね、でも人口が多くてどうしてもそうなってしまうんですって。あとは…貴族王族は公然と妾や愛人を持てるんですって」
笑顔でナイフとフォークを動かすと、スピカ達もそれに倣った。
「それもビックリだわ!妃同士や後継問題で揉めそうなのに…」
期待していた異国のイメージと違ったのか、スピカがちょっと落ち込む。
リゲルは気にせず、質問してきた。
「それはやっぱり確実に血筋を残すためですか?それも善し悪しですね」
「そうね」
話が途切れたところで、話題を変える。
「ところで殿下達は、どうなの?」
聞いた途端、リゲルが思いっきり渋面になる。
「毎日仕事をサボって、姉上の悪い噂を流してます。今までの3馬鹿の行状を知る3年は信じてませんが、2年は知らないので半信半疑、新入生は相手が王子という事もあって、かなり信じてます」
「何よそれ!何でそんなことになるの!?」
隣でスピカが憤慨すると、リゲルが嫌そうに耳を抑える。
「隣で喚かないでくれない?思いっきり耳元で、キンキンするんだけど?」
「あ…ゴメン」
今のは自分でも悪いと思ったのか、スピカが赤くなって反省する。
でもすぐに立ち直って、リゲルに詰め寄る。
「それよりも何でそういう事になるの!?本人不在なのに、虐めなんて出来る筈ないじゃない」
「隣国から人を使って、虐めているそうだよ」
呆れたように言って、リゲルがグラスを手に取る。
「はぁ?そんな無茶苦茶な事、真に受けてるの?新入生ってバカなの?脳みそないの?」
「あと隣国から、嫌がらせの手紙を送ってるんだって。姉上、だいぶ暇人に思われてるみたいですよ」
自分で聞いておいてなんだが、予想以上のバカバカしさにため息が出た。
そこに先ほどまで黙っていたお父様が、口を開いた。
「ミア、もういいんじゃないか?ここまで人をコケにしているんだ。不貞の証拠もつかんでいるし、向こうの有責で婚約破棄できる。これ以上我慢する必要はないだろう」
「そうですわお姉様、お姉様は十分耐えました。最後の学院生活くらい、有意義に過ごしましょう!」
「そうですよ」
お父様の意見に、リゲルとスピカも賛同する。
「すみません、もう少し…」
言葉を濁すと、3人が不服そうな顔になった。
「待てというなら、きちんと理由を言いなさい。何も言わず『待て』では、納得いかんぞ」
お父様が言うと、リゲルとスピカも無言で頷いた。
(そろそろ潮時…いえ、ちょうど良いタイミングかも)
そう思って、口を開いた。
「わかりました、実は…」
次からしばらくベガ視点です。