2.姉と妹と弟とスパイ
「早耳ね」
とりあえず、2人を部屋に入れてドアを閉める。
部屋に入るなり、リゲルが詰め寄ってくる。
「大丈夫でしたか、姉上?あのバカ2人に言いがかりをつけられたと、聞きましたが?」
「大丈夫よ。あからさますぎて、言いがかりだと周囲にも分かる位だったから」
微笑みながら、2人に席を勧めてお茶を用意させる。
2人とも憤慨しながらも、大人しく席に着いた。
「大体リゲル、貴方何やってたの!?あのバカ2人が、お姉様に絡むのを許してしまうなんて!」
スピカが席に着くなり、お茶を一気に煽ったかと思うと、リゲルに食ってかかった。リゲルがバツが悪そうに、反論する。
「う…ゴメン。殿下が書類仕事をサボってバカ女と出て行ってしまったので、代わりに仕事する羽目になった。筋肉を道連れにするので、精一杯だった…」
「「あぁ…」」
私とスピカは、遠い目をする。
そういえば昼間言いがかりをつけられた時、もう一人の馬鹿もとい、騎士団長子息のカウス=アウストラリスはいなかった。
「筋肉バカを引き留めたのは、よくやったわ。あのバカがいたら逆切れして、お姉様に切りかかって来たでしょうから」
スピカが、ふんと言いながら言う。
「あぁ…すごく疲れたよ。それで姉上、いつまでこんな茶番続けるんですか?」
疲れた様子で項垂れていたリゲルが、思い出したように顔を上げて言う。
その言葉に、スピカもこちらに注目する。
「そうですわお姉様、もう不貞の証拠は十分揃ってますわ。そろそろ向こうの有責で、婚約破棄をしてはいいんじゃないでしょうか?」
その言葉に、微笑んで誤魔化す。
「ごめんなさいね2人共。証拠は十分だけど、今は時期じゃないわ。悪いけどもう少し我慢してもらえるかしら?」
「「時期?」」
私の言葉に2人共、不満そうな顔をする。
「時期ってお姉様、婚約破棄に時期を言うなら早い方が良いでしょう?遅れれば遅れるほど、次の婚約が難しくなりますわ」
「そうですよ、僕もあの3馬鹿を抑えるの、そろそろ限界ですよ?下手をすると姉上に言われてスパイしてるのがバレて、僕まで排斥しかねない。そうなったらあの3人が野放しになります。被害が拡大しますよ」
スピカとリゲルが、憤慨して詰め寄る。よほど不満が溜まっているようだ。
「ごめんね2人共、でもそう長くはないわ。私の予想では、もう少ししたら落ち着くから」
「…お姉様は、何か考えがあるという事ですね」
「…分かりました。姉上がそこまで言うなら、よほど勝算があるのでしょう。姉上に従います」
私の言葉に、2人が渋々と言った感じで、承諾する。
その様子を見ながら、お茶に手を付ける。
(アレが出るのは、そろそろだろうけど…さて、向こうはどう出るかしら?)
次からしばらくベガ視点です。