貴族のパーティ
マナーは幼少期にみっちり叩き込まれた。
変装、変声術は暗殺者になるときにみっちり叩き込まれた。
『今回の作戦で重要なのはテメェだ。』
『オレは礼儀の一つも知らんし、顔がいかつすぎて、注目を浴びてしまう。これはさすがにいかんのでな』
『たのむぞ?ドレスはやるから。地味だし。大丈夫だろ?』
「・・・地味とはなんだ。地味とは。」
『岩砕き』から言われたことを思い出したら、少しイライラしてしまった。反省反省。
「にしても豪華だな・・・」
伯爵家ともあって、家は豪邸、庭はきちんと手入れされている。庭は気分悪くなった時に出られるよう、直通でつながっている。警備が心配になるが、そこは、門の外に一周ぐるりと兵を配置、シフト制の見回りでなんとかなっているみたいだ。
「地面近くばかり気にしているから空から侵入してもバレない。」
ということで木伝いに庭へ侵入成功。そこから、くるっと回って飛び降りた。
「ふう・・・」
「すごい・・・・」
えっ?見られてた??
余談ではあるが、貴族は基本的に仮面をかぶっている。だから、一応問題ないのだが・・・・
まずいのはそこじゃなくて・・・・うん、なんでターゲットがいるのかな?ねえ。
ターゲット本名:ストジャルナ・フォン・ズーセッヒカイティン
役職:伯爵家長男。次期当主。10歳(備考:殺害予定日は社交デビュー、つまり、お披露目会)
お披露目会を抜け出すわんぱくな主役がいるんだねえ・・・・
護衛はどったのかな?
「これはこれは。ストジャルナ様。わたくしのことはご内密に。」
「それは命令ですか?」
「いいえ?どうしても守ってほしい約束・・・ですかね?」
少年は分かりやすく目をキラキラと輝かせた。
「はい!本の主人公も言ってますしね!約束は守らなければならないのだ、と!もちろん守りますからね!」
元気だなあ・・・・・この子を殺さないといけないのか?ほんとうに?
「あ、できれば僕のことも話さないでくれませんか?」
まあ・・・さすがに伯爵家長男がこんなわんぱくだと知られたらまずいのだろう。
「ええ。もちろん。わたしの約束も守ってもらうのですから。」
「ありがとうございます!!」
「いいえ、ではわたくしはこれで失礼いたします。」
彼が一つうなずいたのを見て、すぐにパーティー会場へ入った。
・・・なんとかやり切った。本っ当につかれた・・・・まだ仕事あるけど
ちなみに紺と紅の両面色違いで仕立ててもらったドレスと仮面は、簡単に色を変えることができるので楽でいい。あとは、会場の貴族たちとのらりくらり話しつつ、いろいろ仕込んだら『岩砕き』の襲撃を待つだけでいい。
(襲撃時に隣に誰もいなかったら、なお完璧だな。うん。)
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ドンっと音がして、扉が一気に開いた。
(遅かったな『岩砕き』のやつ)
「ここは占拠する!テメェら全員一つにまとまりやがれッ!!」
ざわざわとどよめきが広がり、貴族たちが右往左往している。しかし、そういう時も冷静沈着な人はいるもので・・・
「なぜそうする必要があるのですか?」
「話す理由があると思うか?」
「そうですか・・・・元王国騎士団団長、アドリア伯爵夫人の名に懸けて、者共、やっておしまいなさい!!」
次、10分後。