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新技術を発表したあの会社の株価は爆上がり間違いなし!

 何でもパイライト化合物を利用した新しい太陽電池が開発されたらしい。会社の休み時間、友人の藪沢がはしゃいでいた。ただ、彼が環境問題だとかに興味があるのかと言うと実はそんな事は全くない。彼は株をやっていて、「買っても良い」と思える会社の株を探していたのだ。

 「他の連中にも教えてやらにゃ」

 そう言うと、彼はスマートフォンにその情報を打ち込み始めた。彼は金融売買のコミュニティに参加しているのだ。その情報を仲間内で共有しているのだろう。

 因みに、彼が仲間想いの殊勝な奴なのかと言うと、そんな事は多分ない。株というやつは買う人が多ければ多い程価値が上がっていくのだ。すなわち、その彼の情報発信で他の人もその会社の株を買えば素早く株を買う彼はそれだけ利益を上げられるのである。

 

 「パイライト化合物の太陽電池ねぇ……」

 

 僕はなんとなくそれに胡散臭いものを感じていた。ペロブスカイト太陽電池なら聞いた事があるけど、そんな太陽電池は聞いた事がなかったからだ。もし本当に画期的な技術なら他でもっと研究開発されて、とっくに話題になっているのじゃないだろうか?

 それでちょっとネットで検索して調べてみたのだ。すると、新しい技術でも何でもなく、発電効率が悪いので、ずっと前に切り捨てられているといったような記事を見つけた。もちろん、こっちの記事が間違っている可能性もあるのだけど、世間でほとんど騒がれていない点を考えると、こっちの方が正しいような気がする。

 だから僕はこう言ってみたのだ。

 「おい、藪沢。その会社の株を買うのは待った方が良いぞ」

 はしゃいでいた彼は、“邪魔するな”と言わんばかりのきつい視線を僕に送って来た。親切で言ってやっているのに……

 「そのパイライト化合物の太陽電池とやらな、どうもインチキっぽいぞ。まったく大したもんじゃないないって記事が出ていた」

 僕はスマートフォンの画面を見せつつそう言った。ところが彼はそれに「ほー、そうか、ありがとうな」なんて気のない返事をするのだった。僕は気を悪くする。お礼くらい言ってくれても良さそうなもんだ。

 「お前な、危うく損をするところだったんだぞ?」

 だからそう文句を言ってやったのだ。すると彼は当然のように、

 「何を言っているんだ? 俺はこのまま株を買うよ」

 なんて驚いた事を言う。

 「は? 何を言っているんだ? インチキだって教えてやっただろう?」

 僕の疑問の声に彼は「インチキでも関係ないんだよ」などと返す。

 「は?」

 「インチキだろうが、なんだろうが、皆が株を買えば株価は上がるんだぜ?」

 「いや、バレれば下がるだろう?」

 「バレればな。だが、その前までは上がり続ける。良さげな頃合いを見計らって売れば儲けられる」

 彼はニヤリと笑った。

 

 ……つまり、彼はインチキを承知でそれに乗ると言っているのだ。

 

 僕は詳しくは知らないのだけど、他にも似たような事例はあるらしい。ある会社は定期的に「全固体電池の開発が進んでいる」といったような発表をするらしい。そしてその度に株価が上がる。しかし、それから何の音沙汰もなくなる。毎回そうらしい。

 一時的にしろ、株価を上げる為に発表しているのでは?

 という疑念が当然沸くのだけど、それでは投資家達が騙されているのかと言うと、そんな事はどうやらないらしく、「嘘っぽいな」と分かった上でそれに参加しているのだとか。

 うーん、と思う。

 一体、何を信じれば良いのだろう?

 

 ……まぁ、個人的には、できれば敬遠したい世界だ。

ちょっと前に、韓国で開発されたと報じられた常温常圧超伝導ですが、これもどうやら投資関連の詐欺っぽいという話がありました(嘘か本当かは分かりません)。

色々と嘘情報や印象操作まみれですね、この世の中は

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