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跡地

作者: 杏



「あっ。水筒、部室に忘れたかも」

「まじか。部室もう閉めとったよね」

「鍵当番の子にもらいに行かなきゃやん。ごめん、自転車の所で待っとって」

「わかった。幽霊とかに攫われんごつ気をつけてねー」

「アハハっ、出らんど」

 

 もう午後の6時半ごろになっていた。周りはほとんど暗い。鍵当番の子に聞くともう先生に返してしまったらしく、先生に鍵を借りる時に少し小言を言われた。体育館から部室に行くまでの廊下は暗く(体育館の中は入口以外暗かったけれど)冷や汗が出そうになった。実際、後ろの方から何かに見られている気がした。早足で部室に行き急いで電気を付ける。今まで緊張していた分、安心感がどっと来た。ロッカーの上に置いてあった水筒をバックに詰め込み急いで部室を出た。部室の鍵をかけまた早足で入口を目指した。途中バスケットコートに白い(ちょうど成人男性の身長と同じくらいの高さ)ものがぼうっと立っていた。立っているというより居るという感覚に近かった。幽霊。さっきの会話がふっと頭によぎった。いやそんなこと無いだろう、ただの見間違い、そうただの錯覚だ。けれども、学校という場所には七不思議(うちの学校には無いけれども)の噂がある。それに学校が建っている土地にもそう思わざるを得ない出来事が起こったからかもしれなかった。それが余計に私を不安にさせた。

 うちの学校の隣には収容所がある。今でも収容所にいる入所者との交流会が定期的に行われており、よく学校で講演会などが開かれていた。そして、学校が建つ前、ちょうどテニスコートがある場所に収容所専用の刑務所があった。そこに入っていた人達は特別、金を盗んだり、人を殺したりなどのことをしたわけではなかった。ただ、収容所を逃げ出そうとしたのを捕まっただけであった。収容所内の環境は酷く、患者が患者を看病しているという状態だった。収容所で働いている人もいたが当時近付いただけでも移るという噂が染み込んでおり誰も患者に近付きたがらなかった。収容所には2メートル程の高さの壁で囲われており、この高い壁を到底越えられる人はいなかった。大抵の人が逃げるところを捕まえられ監禁室や刑務所に入れられた。そして、そこから出られずに死んでいった。そうしたことからか、学校内で怪奇現象のような話をよく聞く。

 そういえば、教室でテニス部の子が話していたことを聞いたことがあった(盗み聞いたようなものだけれど)。


「昨日の部活終わりやばかったけん。なんか、ボール一個無くなっててジャン負けでうちがコート行ったんだけどさ、コート入った瞬間から寒気とか吐き気とかがガチやばくて、なんかめっちゃ目線感じるし一瞬死ぬんかって思っちゃったよね。もう夜にあそこいくのは一生無理だわ」

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