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ゲームの国家と共に異世界転生  作者: 大陽
アウローラ王国編
18/19

アウローラ王国開拓計画

◇天央歴1027年 3月17日 朝 東京 首相官邸



「──さて、諸君。知っての通り、昨日の夕方頃、第7師団はアウローラ王国東部国境に到達した」



 オリジナルである日本のものとは少々違う作りの首相官邸の一室。


 そこではユウキが閣僚達を集めてある重要な会議を開いていた。



「進撃を優先した為にスキップした都市もあるのでまだ完全ではないが、これを以てアウローラ王国は完全に制圧したことを宣言する。そして、これからの事についてだが・・・まず各省から現状の報告をしてくれ」



 ユウキがそう言った直後、真っ先に手を上げたのは農林水産大臣──狩村だった。



「農水省です。現在国内では配給制が敷かれていますが、食料の備蓄や自給率が高いこともあってなんとか国民の不満は許容範囲内で治まっています」



 “転移”以降、この国では配給制が敷かれていたことは前に述べた通りであったが、幸いにして国内の治安は安定しており、大規模な暴動などは起こっておらず、精々スリや窃盗などが平時よりも少々多くなった程度で治まっている。


 流石に暴動まで行くとは思っていなかったが、治安が大幅に悪くなるのは避けられないと考えていた各省(特に治安機関)からすれば、これは良い意味で誤算だった。



「そして、アウローラ王国の食料徴収に関してですが、こちらはまだ完全に検地などが行われていないため、制圧した土地の詳しい収穫量などは分かりませんので、現地住民の感情などを考慮して暫くは“徴収”を行わず、検地が終わり次第、“徴収”を開始する方向に行きたいと思います」



 その言葉に、ユウキや各省庁の大臣は頷く。


 これは古今東西どの国でも最初は通る道だが、基本的に経済などがあまり発達していない国では農作物こそが税として納められている。


 アウローラ王国もその例外ではなく、ユウキ達はその年貢制度を利用してアウローラ王国の食料を税として徴収しようと考えていたのだ。


 ちなみに当初は早急なる徴収が必要だと思われていた為に徴収は占領直後に行われる予定だったのだが、転移から時間が経つにつれ、思ったより食料事情に余裕があることが判明し、このやり方に変更されていた。



「更に開拓計画に関してですが・・・こちらに関しましては事前に警備に関わる問題などを防衛大臣と話し合った結果、まず第一次開拓団は3万人。護衛として常備師団1つを追加派遣する予定となっています」


 

 3万人の開拓団。


 かつての満州などとは違い、たった2ヶ月程調査を行っただけの殆ど未知の土地にいきなり派遣する数としては多いが、これだけのリスクを犯さなければ“早急な食料生産”という国家事業を達成させることは出来ない。


 幾ら食料事情に余裕があると言っても、平時よりは治安が若干ながら悪化していることからも分かるように、その余裕は薄氷のものでしかないのだ。



「また移民に伴う現地住民の感情に関してですが、調査の結果、こちらは殆ど心配ないと本省では判断しています」



「・・・良ければ、そのような結論に至った理由を聞かせて貰っても良いか?普通に考えれば、こちらは大分彼の国の人間を殺している訳だから、反感を抱いても可笑しくないと思うが?」



「それについては私から説明致します」



 ユウキの疑問の声に対してそう名乗りを上げたのは、防衛大臣の松田だった。



「確かに21世紀の常識ではその国の人間を大量に殺した存在が現地の人間に歓迎されるということはほぼ有りません。しかし、それはあくまで我々が殺した事実を知っていればの話です」



「・・・通信技術か」



 松田の説明に、ある大臣はボソリとそう言った。


 そう、実は戦国時代などではその国の兵士を殺したからと言って現地住民が反感を抱くケースは現代と比べて少ない。


 何故なら、当時は通信技術などは全く発達しておらず、現地住民は出征した自分達の身内の兵士がどのように殺されたのか知る術が殆ど無かったが故に、占領者に対して反感を抱きにくかったのだ。


 まあ、直接害された場合は話は別だったが。



「はい。その通りです。そして、人間というのは知らない存在を激しく憎むことは難しい生き物です。このまま身内が死んだ原因をうやむやにしておけば、現地住民が反感を抱くことは無いでしょう。・・・まあ、現地に派遣された人間が直接現地人に暴力を振るったりすれば話は別になるでしょうが」



「そういうもんか。まあ、ダイソー平原での空爆の事は一部の人間しか知らないし、そういうことならこのままこちらが黙っておけば大丈夫そうだな」



「ええ。そして、話を元に戻しますが、現地住民との融和方法に関しては一応案があります」



「ほう?じゃあ、聞かせてもらおうかな」



「はい。これは法務省と厚生労働省の人間も交えて決めた方針なのですが、現地人の女性に開拓団の男性を紹介して婚姻関係を結ばせ、特典としてその現地人にはこちらの人間と同じ無料医療サービスを受けさせられるようにしようと考えています。これは男性側が現地人の娘から性病などを移されないようにするためにも必要です」



「ふむ。形を変えた見合い制度か。まあ、悪くはないが、見知らぬ怪しげな人間との見合いなど乗ってくるか?」


 

 ユウキはそこを疑問に思った。


 現代では『古臭い』『結婚を強制する悪しき伝統』などと言われることもある見合いだが、ユウキ自身は見合いの事を『1つの出会い方』だと捉えており、それほど悪く思ってはいない。


 しかし、それは見知った人間同士で行うことで、全く見知らぬ人種との見合いを受ける人間など、例え特典があったとしてもそれほど居るとはユウキには思えなかった。



「分かっております。なので、奴隷にされた女性や何らかの事情で体を売っている女性などもこの見合いを受けさせたいと思います。・・・そういった人達は家族の元に帰れないケースも多いでしょうし。勿論、本人が希望するなら家族の元に帰して上げるつもりでいますが」



「・・・」



 ユウキは目を瞑りながら、2ヶ月間のアウローラ王国での旅を思い出す。


 確かに旅を行う中でユウキはそういった女性を多数見てきた。


 救えるだけ救ってきたつもりだが、流石に全員救うには至らず、悔しい思いもしてきたのだ。


 だが、この見合い制度ならば、そういった人間も救うことが出来るかもしれない。


 勿論、拒絶する人間も居るだろうが、それでも現状の生活から抜け出したいと考えている人間くらいは救える筈だ。



(そう考えるとこの見合い制度は悪くないが、もう一押し必要だな)



 ユウキはそう考え、狩村はこんな提案をする。



「農水大臣」



「はっ」



「君の言う制度は基本的に素晴らしい。だが、1つ見落としているな」



「・・・何が、でございましょうか?」



「この見合い制度を受ける男性側にも選ぶ権利はあるという点だ。そして、当たり前だが、男という生き物は基本的に子持ちの女や不細工な女、脛に傷を持った女は選びたがらない」



 そう、この計画を説明した際、狩村は男の方が必ず見合いを受けるという前提で話していたが、現実はそう甘くはない。


 幾ら独身で嫁の宛がないとはいえ、変な女を結婚する相手に選ぶ男はそれこそ一部の特殊な性癖を持っている男性くらいしか居ないだろう。



「だから、最初は結婚ではなく、最初は現地での愛人として女性を紹介する。それで男性側が良ければ、結婚相手とする。これなら受ける奴も居るだろう」



「しかし、それだと仮に愛人の状態のまま男性側が子供を作った時、その子供を認知する可能性は低くなるのでは?」



「その場合は保育所に預ければ良い。・・・元からそういう施設を作る予定はあったのだろう?」



「はい、それは勿論。現地での妊娠ラッシュが起こることを見越して、多数の保育所を開設するつもりでいましたが・・・」



「だったら、それを使う。・・・ああ、それと、アウローラ王国の女性とこちら側の男性の組み合わせだけでなく、その逆のケースも考えておいてくれ。そうでないと、男女差別になってしまうからな」



「分かりました。しかし、その件は私だけではなんとも言えませんので、あとで法務大臣や厚生労働大臣などと話し合いたいと思います」



「うむ。よろしく頼むぞ。で、他に話はあるか?」



「いえ、特には」



「では、次は私からよろしいでしょうか?」



 そう言って手を挙げたのは、外務大臣──佐藤だった。

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