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ゲームの国家と共に異世界転生  作者: 大陽
アウローラ王国編
16/19

ユリシアとの会談

◇天央歴1027年 3月13日 早朝 東京 冬宮邸



「・・・改めて見てみると、やっぱり美人だな」



 ユウキはそう言って、隣で眠っているレイラの金髪の頭を撫でる。


 ちなみに布団の中に隠された彼女の体は一糸纏わぬ姿となっており、ユウキも服こそ着ているが、ベッドには情事の痕跡が色濃く残っていることから、昨夜に何が行われていたかは一目瞭然だった。



「好みじゃないと思っていたけど、案外、知らなかっただけで、心の中ではレイラみたいなのがタイプだったのかもしれないな」



 彼女と肌を重ねたのは、これが初めてではない。


 先月の半ば頃、彼女との契約から数日程経過した頃にユウキが手を出して以来、こんな関係が続いている。


 最初は慣れない指導者としての職務に疲れていたことと彼女の神秘的な姿に思わず見惚れてしまった為に起きた過ちだと思っていたが、今思えば知らぬうちに彼女の虜になっていたのかもしれないとユウキは考えていた。



「・・・初めてだったな。こんなに長続きしたの」



 前の世界でユウキは中学や高校時代に何人かの彼女と付き合っており、その中には実際に肌を重ねた者も居たが、その何れも付き合いとしては長続きしなかった。


 それが何故なのかは今でも分からなかったし、死んだ今となっては分かっても仕方がないことだったが、ユウキにとってこれだけ絶対に手に入れたいと思える相手は本当に初めてだったのだ。



「しかし、それはそれとして、どう伝えようかな?レイラの妹さんのこと」



 ユウキはレイラの妹であるユリシアのことをどう伝えようか迷った。


 彼女の身柄は王都攻略時に王宮に突入した第7師団所属の歩兵部隊によって確保していたが、報告ではその時の彼女は粗末な服を着せられた状態で鎖で地下牢に拘束されていたらしい。


 仮にもクーデター側の象徴の扱いとは思えず、ユウキはどう対応して良いのか悩んだ。


 大方、クーデター側の首謀者であるセラビスという男と何か揉めてそうなったのだろうと当たりはつけていたが、だとすると彼女の扱いをどうすれば良いのか本格的に分からなくなっていた。



(一応、ユリシアの扱いは俺に一任されているけど、こんな扱いを受けていたと知れば、レイラも同情するかもしれないしな)



 ユウキはそう考える。


 まあ、同情したところでユウキに助命を嘆願するかどうかは微妙なところだが、どちらにしても一度ユウキに任せると言った以上、ユリシアの扱いをユウキに委ねる方針に変わりはないだろう。


 しかし、下手な判断をすれば彼女の心に傷を負うのは勿論、レイラのユウキに対する好感度は確実に下がることになる。



(面倒だな。こんなことなら、ユリシアの助命を事前に“契約”に入れてくれた方がやり易かったのに)



 そもそもユウキからすれば、個人的・公的問わずユリシアに何かされたわけでもないので、これといった負の感情は抱いておらず、それ故にどうしても彼女に対しての処置の内容はレイラの意見を尊重しがちになる。


 だが、以前レイラが言ったような『殺しても構わない』という言葉をそっくりそのまま受け取るのは不味いことくらいはユウキにも流石に分かっていた。


 ・・・なにしろ、情事の後の寝言で彼女は度々ユリシアの名前を口にしていたのだから。



「まあ、いずれにしろ、会談は予定通り行おう。幸い、軍のヘリでこっちに運べば、明日にはそれが可能になるだろうし。いや、疲れているだろうから、いっそのことこっちから出向くか」



 ややこしくなるといけないので、その事はレイラには黙っていよう。


 ユウキはそう思いながら、体液と汗を流すために一旦着替えてこの家の浴場へと向かおうとする。


 ──だが、この時、ユウキは気づかなかった。


 レイラがつい今しがた目を覚まし、ユウキの呟きを聞いていたことに。

















◇3月14日 昼 アウローラ王国 オルクス  


 謎の軍隊(ユウキ達)に占領された港町・オルクス。


 最初は得体の知れない存在に恐怖の感情を抱いていた住民達だったが、3日経っても特になんの危害も加えないこと、更には現在包囲下にある街とは違い、物流の遮断などは行われていなかったことであまり生活に支障が出ていないことが分かると、徐々に落ち着きを取り戻し、占領から1週間が経つ頃にはほぼ占領前と同じ生活を送っている。


 ただ占領下の町なので、当然、幾つかの施設は接収されており、その内の1つである町を納めていた貴族の屋敷にてユウキと王都からヘリで連れてこられたユリシアは会談を行っていた。



「初めまして、ユリシアさん。俺の名前は冬宮ユウキ。よろしく」



「・・・ユリシア・エル・アテナです。よろしくお願い致します」



 ユウキの挨拶に、ユリシアは何処か元気がなさそうな声でそう返答する。


 ちなみに彼女の首には魔力を吸収するチョーカー型の魔道具が装着されており、これによって彼女は魔法を使えないようになっている・・・筈なのだが、魔力を感じ取る事の出来るユウキにはすぐに分かった。


 そのチョーカーで吸収出来ている彼女の魔力はほんの一部で、その気になれば彼女が攻撃魔法を行使することが出来ることを。


 おそらくユウキの部下は魔力を感じ取る事が出来なかった為にどうやってかは知らないが、調達した魔道具が彼女の魔力を完全に吸収しきれていないことを知らないのだろうとユウキは推察する。



(まあ、今、それを指摘するのもあれだな。幸い、襲い掛かってくる様子もないし、万が一、魔法で攻撃されたとしても魔法には詠唱だろうが、無詠唱だろうが予備動作がある。なんとかなるだろう)



 そう思いながら、ユウキは敢えて彼女が魔法を使えることを指摘せず、このまま会談を続けることに決めた。



「まず、なんであんたはあんなところに拘束されていたんだ?パッシェ公爵に担ぎ上げられた象徴だと聞いたが、聞く限り、それに相応しい扱いではなかったようだが・・・」



「・・・騙されたんです」



「は?」



「貴族の殆どがお姉様の排斥を画策している。だから、私がクーデターを起こせば、お姉様を保護することが出来ると。勿論、最初は半信半疑でしたが、政治に疎い私には判断する材料がなくて。お姉様に相談しようかとも思いましたが、全く会う機会がなく、そうこうしているうちにいつの間にかセラビスの口車に乗ってしまいました。でも、終わった後にそれが過ちであったことに気づいて」



「抗議したら、あのような格好で閉じ込められた。というわけか」



「・・・はい」



 そう言って、顔を俯かせるユリシア。


 それを見たユウキは、彼女が姉に対してしたことを後悔しているのは確かなのだろうと判断した。


 とは言え、彼女のした事でレイラがショックを受けたことは事実だ。



「なるほど、閉じ込められていた理由は分かった。それと君の姉は無事だよ。今は俺たちが保護している」



「えっ?本当ですか!?」



 ユウキの言葉にユリシアは驚き、次いで何処か安心したような顔になる。


 あんなことをしてしまって今更とも言えたが、ユリシアはクーデターが姉が逃げた時から、その安否を常に気にしていたのだ。


 そして、相手が得体の知れない集団とは言え、そんな大切に思っていた姉が取り敢えずは生きていると知らされたユリシアがそのような反応をしてしまうのも当然と言えば当然だった。



「良かった・・・」



「姉に会いたいか?」



「それは・・・」



 ユウキの問い掛けに、ユリシアは言葉に詰まった。


 本音を言えば会いたい。


 だが、あんなことを仕出かしてしまった自分に会う資格があるのだろうかという思いもあったのだ。


 そして、それを見たユウキは内心で彼女に突き付ける選択肢を2つに増やした。


 これではっきりとした声で『会いたい』と言えば、根本的には反省していないと見なして会わせないつもりだったが、今の彼女は自分の仕出かしたことと向き合って反省している。


 だからこそ、姉に会わせる選択肢を付け加えても良いと考えたのだ。



「・・・」



「・・・どうやら決心はつかないみたいだね。その上でこれからの事を話すけど、君には2つの選択肢を選んで貰う」



 ユウキは厳しい顔をしながら、ユリシアにそう告げ、その顔を見た彼女は何を言われるのだろうと不安な顔付きになった。


 だが、そんなユリシアを他所に、ユウキは選択肢を突き付ける。



「1つはこのまま姉に会わずにこちらの用意した土地で静かに暮らしていくという選択肢。ちなみにこの選択肢だと姉の方が会いたいと言うまで、姉妹の対面は出来ないから、それを留意してくれ」



 ちなみにこれは彼女が反省していないと見なした時に強制的に取らせる予定だった選択肢でもある。



「そして、もう1つ。それは──」



 その後に言われた言葉に驚いたユリシアだったが、結局は彼女はそれを呑み、その日の夕方には姉妹は1ヶ月振りの対面を果たすこととなる。

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