忘れられた遺跡
ガレオン船から、小型の上陸艇に分散して乗り込んだ俺たちは、漕ぎ手の懸命な働きで一艘も欠けることなくその島へと辿り着いた。
砂浜へと突っ込んだ上陸艇から、砂を蹴って砂丘を登ると前方の丘に、巨石が連なる光景を見つけた。
アブダルが単眼鏡で前方を見て、「五名、見張りがいるな」と言って俺に単眼鏡を差し出す。
のぞくと、巨石が連なる遺跡に、兵たちが立っていて周囲を警戒しているようだ。
「……ということは、本隊は別地か?」
「いえ――」
背後のパトレアが、砂丘に足を取られて苦労するイングリッドを助けながら口を開く。
「――神々と交信する装置を動かす心臓部分は地下です」
「また地下か……」
思えば、昔の人は地下へ地下へと深く掘ったから、土木技術が発達したのか?
考え過ぎか。
「アブダル、ここで待機してくれ。荷物はこっちで運ぶよ」
「馬鹿いうな。ここまできて待ってろはないだろ。また囮くらいには使えるぞ」
俺は苦笑し、拳を差し出すと拳をぶつけて応えてくれた。
「荷を頼む」
「まかせろ」
「わたしのご飯を最優先で頼むのだ」
イングリッドの依頼にアブダルが笑い、パトレアが目を丸くしていた。
彼女は俺に耳打ちする。
「本当に大食いなのですね?」
「そうだ」
ガノッザ卿が部隊を率いて、俺たちを守るように展開する。砂浜から丘まで約一キロメートルだろう。ただ、途中は森で見通しが悪い。
待ち伏せにあっても対応できるよう、斥候役の兵士たちが先に進む。
王子の側近から集められた精鋭による一個小隊十人は、ガノッザが細かく指示を出さなくてもテキパキとそれぞれの役目を全うする。俺はリズ王国の兵士は質が悪いと思っていたが、彼らを見ると、一部をみて全体をみたような気になるのはよくないと反省をした。
「リズ王国の兵にも、まともなのがいるんだな」
イングリッドは、俺が言わないでおいたことを口にした……。
ガノッザ卿が苦笑する。
「エドワード殿下が厳しくされるからだ……しかし、多くは王陛下のやる気なさで……ご引退するとのことで、来年には殿下が王だ」
「二世から三世ですね?」
パトレアの問いに、ガノッザ卿が頷く。
「うむ。半島が一枚岩となって、帝国と戦うために……重臣たちが王陛下を説得した。それに、引退したほうが楽ですよと誘ったのさ」
ガノッザ卿がそこで自嘲ぎみに笑うと、前方を指で指し示す。
「斥候からの合図だ。行こう」
俺たちは、森に入った。




