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初めての投稿です。閲覧ありがとうございます。思ったことをただ書いてます。見ていただけたら嬉しいです。

プロローグ

 近年稀に見る大雪の中、電車に間に合うかと急ぎ足の青年。

改札を潜るとアナウンスが聞こえてくる。

階段を一段飛ばしで下っているその時、後数段というところで

滑ってしまった。周りの視線が痛い、顔をあげられない。

乗るはずの電車が行ってしまう。そして誰も気にかけない。

『カッコ悪…』心の中でそう呟く。

目の前で足音が止まる。

「カッコ悪くないです」甘く暖かい言葉が聞こえた。

赤らめた顔を少しずつあげるとそこにいた。

塩谷翔は結城舞華とその日出会った。


 見るからに年下の彼女に僕は少し戸惑った。

「誰ですか」彼女に思わず問いかける。すると、

「いやいや、お兄さんが盛大に転んでる一部始終を見てしまい起き上がれない程痛いのかなと思ったので」彼女は慌てて説明していた。

「お兄さんの声が聞こえたので…」『確かに転んだときアホみたいな声は出たかもしれないが言葉は発してないはず。』

「カッコ悪…そう聞こえたので」ちょっと待てよ、と言わんばかりに翔は起き上がった。

「わ!お兄さん大丈夫ですか!?そんな急に起き上がっちゃって」

「それより!声って、どういうこと?僕はその時何も言ってないしそもそも君は見てたって言った。なら近くにはいないはず、なのになぜ僕の声が聞こえたの?」僕は彼女の肩を掴み真剣な眼差しを彼女に向け言った。

「お兄さん、痛いです…」彼女は困った顔をしながら苦笑いしていた。

「あ、ごめんなさい!て、終電が!」僕は咄嗟に今の状況を理解した。普段は車なのに雪道が怖く電車にした日に限ってついてない。

「終わった。」僕が魂の抜けたような顔をしていると

「お兄さん、今のが終電だったんですか!?どどどどどうしよう…」

なぜ彼女までもが慌てるのか。

「あ、とりあえず僕は近くで泊まるところ探すので、ありがとうございました」立ち上がろうとすると足に激痛が走る。

『さっきので痛めたのか…とりあえずここは痩せ我慢で通すしか』

「我慢はダメですよ!家近くなので今日泊まっていきませんか?あ、家でよかったらですけど…」やっぱりこの子心を読んでる。どうしてかはわからない。だが僕の好奇心を擽る。

「それはすごく助かるけど、もちろん家族もいるよね?」

「いえ私独り暮らしですよ」独り暮らしかい!と突っ込みたくて仕方ない。

「君がいいなら僕は助かるけど、あ、そういえば自己紹介まだだったね。僕は塩谷翔、23歳。君は?」

「私は結城舞華、22歳です。とりあえず私のお家でいいですか?」僕はこくりと頷き、そして僕たちは舞華の家へと向かった。


 彼女、舞華はとても不思議な子だ。

身長は160くらい、髪はセミロングで落ち着いた服装だった。そこまでは普通だと思う。ただ僕の心にずっと引っ掛かって気になって気持ち悪いものがある。それは彼女が心を読んでいるということ。実際彼女自身に聞くまではわからない。ただ僕の情けない心の声が彼女に届いたのは真実だ。いや、それとも僕が勘違いしているだけで実際は口に出していたのか?いや、だとしたら駅の最後の会話の時は…

「寒いですねぇ。あ、ご飯ってもう食べました?」彼女の声で我に帰った。

「大丈夫ですか?もしかして、私のお家に行くの嫌でした?」彼女が不安気に僕の顔を覗き込む。正直彼女はとても清楚で可愛らしい。

「あ、大丈夫。そんなことないよ。むしろ僕みたいな地味なやつが君の家に行ってもいいのかい?」

「もちろんですよ!あと!君じゃなくて舞華って呼んでください!自己紹介したのに君って呼ばれると少し悲しくなります」彼女の少し寂しげな表情に僕は申し訳なく感じてしまった。

「それじゃ遠慮なく舞華って呼ばせてもらうよ。俺のことも翔でいいよ。タメ口で構わないし。固いのは嫌いだから」

「うーん。じゃあ呼び捨てはあれだから翔くんって呼ぶね、改めましてよろしくね」そんな話をしていると舞華の家に到着した。

「お邪魔します」玄関に上がると甘い暖かい石鹸のような香りが僕を包んだ。舞華と初めて会ったときの感覚と似ている。

「汚くてごめんね!適当に座ってて!わたし、お風呂沸かしてくるから!」そういうと彼女はお風呂場へと向かった。

何というかこの数時間でこんなに人間関係が進展したのは生まれて初めてだ。まず女の子の家なんて初めて、いや違うか。僕は目をつぶり過去を思い出そうとする自分を否定し始めた。

「いい加減認めないとな…」そう呟いて手を後ろに付こうとした瞬間、何か袋のようなもので滑ってしまい袋の中身が散乱してしまった。

「痛…今日はよく滑る日だなぁ…なんだこれ…」袋の中には大量の薬と水が入っていた。

「え…これって、舞華のなのか?」

「あー、見ちゃったかぁ」振り替えるとそこには舞華がいた。

「ごめん、そんなつもりじゃ。」咄嗟に理由を考えるが

「いいの。いずれ分かることだったから、それに」そういう彼女は少し微笑みながら、続けて「翔くん、お願いがあります。」

「な、なんだ急に」僕は慌ててしまっていた。そして彼女は

「私はあと1年しか生きれないんです。私と一緒に世界を知りに行きませんか?」彼女のその言葉に僕はフリーズしてしまったが、いずれこの一言が僕の一生分の思い出になることは想像もしてなかった。

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