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絶望が溢れるこの世界で  作者: ハデス
1章
8/21

8話―死体



エスペの話を聞いていた時、唐突に爆発音が響いてきた。最後までちゃんと話を聞いていたかったがこんな状況だとそれは叶わないだろう。


「準備は出来たか?」


「うん、大丈夫だよ。えっと、とりあえず爆発音のした方に向かうってことでいいのかな?」


「あぁ、そうしようと思うが、異形がそこに集まってる可能性もあるから、基本は逃げることを優先する」


「わかった、メルもちゃんと着いてくるんだよ」


「ワゥ!」


俺たちは爆発音のした方に向かって走り出す。音がしたのは森の方向だ。おそらく森の中だろう。


森の中か...獣の異形なら相手のテリトリーであるこの場所で戦うのは、相当厳しくなるだろう。


「エスペ、もし異形と出会ったら、直ぐに幻惑を使ってくれ、なるべく戦闘は避ける」


「わかった」


森の中を少し進んで分かったことがある。明らかにこの一帯に異形の気配が多い。気配は多いのだが、全く見つけられない。流石に相手のテリトリー内で一方的に有利にはなれないか...。


それのせいでだいぶ森を進む速度が落ちている。相手の数すら分からない状況で戦闘になってしまうと環境も相まって勝ち目は薄くなる。進むのが遅くなっても安全をとるべきだろう。


「一旦軽く休むか、これだけの緊張で長時間動き続けるのは危険だ」


「そうだね、昨日の果実残ってるのデセス食べる?」


「いや、俺はいらない。メルにあげてくれ」


「はーい」


「休んでるとはいえ気を抜きすぎるなよ?」


「メルがこの辺りには何もいないって言ってるから大丈夫だと思うよ」


「メルの言ってる事がわかるのか?」


「なんとなくはわかるよ?」


「爆発音のあったとこまでメルに案内してもらうことはできるか?」


「ワォッ」


「いいって言ってるよ」


「じゃあ、しばらくしたらメルの案内で改めて進もう」


「はーい」


あの話をした後だからだろうか、それとも過去を共有したからだろうか。少しエスペとの距離が縮まった気がする。

エスペの口調も変わってるが...あれが素なのだろう。


それと、まさかメルの言ってる事が分かるとは...。俺は全く分からないぞ。


メルもあんなに懐いてはいるが、つい最近までは野生で生きる狼だったはずだ。この森ではメルの方がわかる事が多いだろう。


そう思いながらメルの方を見ると、エスペと果実を食べながらじゃれあっていた。

地味に癒される......いや、ちゃんとしよう。


「よし、そろそろ行こうか。メルお願いできるか?」


「ワォン!」


鳴き声が心做しか犬に近づいてる気がする。


「エスペも大丈夫か?油断はするなよ」


「了解」


爆発音のあった所まで約数十分、直線距離は遠くはないが、恐らく安全なルートを選んで進んでくれたのだろう。


メルの案内のおかげで、道中異形と遭遇することは一切なかった。おかげでそこまで神経を使うことなくここまで来れたわけだが。


「エスペ、臭わないか?」


「血の匂い.....目的地がすぐそこで間違いないみたい」


「間違いないはないが...何があることやら」


そんなことを話していた俺らの目には異様な光景が映っていた。


森だった場所にあるえぐれた地面に、辺り一帯に付着してある血液。その上所々に得体の知れない何かが落ちていた。


「デセス、これ......肉片?」


「あぁ、十中八九そうだろう。こっちには指がある」


それを見ながらエスペは口元を抑え前かがみになる。


「気持ちはわかる。辛かったらメルと一緒にさっきの森に入っててもいいぞ」


「ううん、大丈夫」


「無理はするなよ」


エスペが頷いたのをみて改めて辺りを見渡す。


地面に落ちている肉片の中には、明らかに形のわかる物が混ざっている。

人の指や、腸のようなもの、明らかに人間の白骨。


様子を見るに人間が内側からの爆発によって殺された。しかも熱を伴うか。


「デセス、これって異形のせいなのかな...?」


「俺もそれは考えていたところだ。上位の異形ならありえるが...森で炎を伴う攻撃の異形がいるとは思えない」


「やっぱりそうだよね...ていうことは」


「ワオゥ!ワオゥ!」


「ん?メルどうした?」


吠えだしたメルの方に目を向けると


「あれってシーニじゃない?」


体の左半分が爆発に巻き込まれたのか焼きただれて倒れている。

左腕は火傷跡以外にも抉れて骨までみえている部分もある。

しかし、右半身はまったくもって無傷だ。


「生きてはいなさそうか...」


「この外傷なら厳しいとは思うけどまだ生きていてもおかしくはなかったはず」


「パートナーの死亡か...」


「やっぱり試験の失格判定になると」


「即座に死亡、しかも敵は異形だけではないということか」


ただのサバイバルでは無いと思ってはいたが、敵は異形だけではなく参加者も敵になる可能性がある。

今はまだ下位の異形しかいないが、上位の異形が出てきたら倒せるかどうかも分からない。

参加者の中にもともと組織である【スィスィア】が仕込んだ人間がいるか、それともただ人を殺したいがためにこの試験を受けた人がいるか。


「デセス、考え事してるところ悪いけど、早めにここから動いた方がいいかも」


「あぁ、すまない。とりあえずもといた方に戻るか」


シーニの死骸を後ろに、もといた方向に向かう。

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