20話―違和感
遅くなりました。
2章開始です!
「おい、デセス。準備は出来たか?そろそろ時間だろ」
ドアの叩く音共に、リビのいつもの呼び声が聞こえてくる。
「ああ、少し待ってくれ。もうすぐ終わる」
「おう、わかった」
リビに軽く返事をし、目の前の鏡に映る自分をみる。
軽く紫がかった黒色の、フード付きの外套をはおい、白く美しいマフラーを巻いている姿が写っている。
自分の髪型が相変わらず整っていないことを、自らで軽く笑いリビの待っているドアへと手をかける。
「お! やっときたなぁ」
「あぁ、おまたせ。って、まて。お前なんでいるんだ? 関係ないだろう」
「せっかく同僚の大仕事前だと思って、門出を見守ってやろうと思ったのに、その言い草はないだろう?」
「門出を見守る……うん。一緒に着いてくるとかでは無いんだな?」
「お、着いてきて欲しかったか? 全く寂しがり屋だなぁ」
「いや、そういうわ」
「俺もそんな暇じゃないんだ。別のとこで仕事さ」
「軽く遮られた気がするが。お互い生きてまた会おう」
「おう! んじゃあ、俺はじいさんのとこ行くから、頑張れよ!」
「あぁ、ありがとう」
リビのおかげで多少気持ちも楽になり、軽い足取りでスィスィアの本部を後にする。
「たしか場所は、南に3kmの村だったな。思いのほか近いな」
俺なら加速も併用すれば3分とかからずに走れる。
「ひとっ走りするか」
ボソリと呟いた言葉と同時に、全身を加速させる。
目に入る風景が瞬く間に流れていく。
「こうも直ぐに着いてしまうと、大仕事って気もしないな」
俺が村に着くと同時に、村の人々は各々の家に入っていく。
相変わらず異形狩りは嫌われている。心の中でため息をつきながら辺りを見回す。
右腕が肥大化。
その特徴と合致する人物が、子供と女性を隣に歩いている。
「ふむ、まだ自我が残っているように思うが......」
軽く話してみるか。
「あのー、すみません」
「ん? 君は旅のお人かね?」
おおっと、異形自ら返事をしてくれるとは思ってなかった。子供は、いいとして。奥さん? の方はかなりの目付きで睨んできてるな。
「ええ、そうなんですが。どうも僕が来た瞬間に村の人が居なくなってしまって」
「おぉ、そうかそうか! それは災難だな! この村はあの異形狩りが多く通る立地でな。誰かが来ると異形狩りだと恐れて、皆家に入ってしまうのだよ」
「そういう理由で、たしかに異形狩りの拠点と近いですもんね」
何故こんなにも意識がちゃんとしている.....異形なのは間違いないが、ここまでしっかりと意識がある人を殺すのは気が引ける。
もう少し探ってみてからにするか。
「あぁ、そう言えばこの辺りで異形が出た。なんて話を耳にしたのですが、何かご存知です?」
隣から緊張が伝わってくる。
「残念だが何も知らないな。申し訳ない」
「いえ、気にしないで下さい。暫くここに滞在したいのですが、村の近くだったら大丈夫でしょうか?」
「それなら問題ないと思うぞ、この辺りは異形があまり出ないからその心配はいらないぞ」
「そうなんですね。それなら安心だ、色々とありがとございます」
異形になった本人だけが何も気づいていない。周りは恐らく異形になっていることは気づいている。家族ならば庇う理由もわかるが、村の他の人も普通に生活をしていた。
何かが引っかかる。
あの異形を殺すのが仕事ではあるが、それで終わりではない気がする。考えすぎかもしれないがもうしばらく見てみるか。
そう思い村の外れまで歩こうとしていた時。俺の耳に声が届いてきた。
「全くやめて欲しいぜ。この村に異形なんて居ないってのにさ」
「ああ、ほんとだよな。異形狩りのやつらは居るだけで不幸を撒き散らしていくからな」
「出てって清々したぜ」
異形が居ない、異形が居ることに気がついてないのか、それとも分からないようにされている。
一晩様子見て、とりあえず異形は殺しとくしかないか。それから原因を探すか。
挿絵とやらを入れてみました。不評だったら書き直し及び消します。