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絶望が溢れるこの世界で  作者: ハデス
1章
15/21

15話―理由



「ぅ、ここは...」


「おはようございますぅ」


「あ、あなたは...!」


「はいはい、先程は急に失礼しましたぁ。しかしこちらも、貴方たち程の手練相手ではどうも正面からでは辛いのでぇ」


目の前には先程襲ってきた男が白衣姿で椅子に座っていた。


「デセス!!デセスは無事なの!!?」


「ほぉ、この状況でもパートナーの方を心配するとはぁ。えぇ、殺してはいませんがぁ、かなり強いしびれ毒を盛りましたのでぇ。動けているかは知りませんねぇ。貴方が死んでいないのでぇ、恐らくはまだ生きているとはおもいますよぉ」


安堵に少しばかり落ち着きを取り戻す。


体の痺れはまだ治りきっていないが、身体を動かせない程ではない。と、いっても、手は後ろで縛られ、更にそれを柱に固定されてるとなると、動くのは無理そうだ。


はぁ、ほんとに迷惑かけてばかりだなぁ


クラウンが出た時、私は何も出来ずにただ蹲っていた。その上、いなくなって尚、身体が萎縮し切っていて動けないでいた。


その見張り中にこの目の前にいる男からの襲撃。もしも私が動けていれば、そう考えずにはいられなかった。


「おぉ、怖い怖い。そんなににらまないでくださいよぉ」


男は特に怖がった素振りも見せずにこう続ける。


「そうそう、もうわかってるとは思いますがぁ。貴方を殺すのが私の目的でしてぇ。しかしですねぇ、貴方ほどの女をただ殺すのは勿体ないのでぇ。少し楽しませてもらいますよぉ」


「くっ、誰がお前なんかと」


「貴方の拘束には才を用いていますのでぇ。抵抗はできないですよぉ。それにしても顔の傷はなかなかに勿体無いですよねぇ。身体こそそこまででも、お顔はなかなかにそそられますよぉ」


「話し方といい気持ち悪いわね」


幻惑を使おうとするが、この男相手には全く効果を示さない。




―相手が私のことを全く信用していないもしくはとても信用している場合に発動することが出来るわ


デセスにはそう説明していたっけ。


信用しているのは文字通り。でも信用していない方は少し違う意味がある。


私に対して油断せずに隙を見せず敵対してくる場合には、私の才はよく効く。


隙がない程よく効く。普通は戦闘においてこれほどいいことは無いが。

これが中々に厳しい制約となっている。


私は女で、身長もあまり高くない。体格も良くない。一見すると弱そう。


これが普通の私を見た一般の感想だろうか。そうなると私との戦闘に手を抜くようになる。異形でも人でも動物でも。


手を抜かれると、舐めてかかられると。私の才は機能しなくなる。だからこそ普段は容姿を断定しづらく、警戒されやすいように顔を一切見せないような格好をしているわけだ。


それには女性としては悲しい胸も一役買っているわけだが、こっちは私ももう少し欲しいなと。



そんなこと考えてるときでは無い。


この男は私に対して油断しきってる。だからこそ幻惑は効果を示さない。もしも武器があり戦闘が可能なら、この油断は付け込む隙として現れていたかもしれない。


とはいえ、この状況じゃ私には何も出来ないか...


デセスが来てくれることを信じるしかない。そうなると私に出来ることは、


「ねぇ、貴方も試験の参加者なの?」


「えぇ、そうですよぉ」


「パートナーはいないの?」


「あぁ、パートナーの方には邪魔だったので昏睡状態にさせてもらってますよぉ」


「そこまでして何がしたいの......?」


「何がしたいか気になりますかぁ。いいですよぉ、冥土の土産にお話してあげますぅ」


そう言い椅子に深深と座り男は話し始める。


「【才】と言うものは面白いものでしてぇ。人には必ず1つだけ【才】が与えられますぅ。誰からかは知りませんけどねぇ。ここまでは貴方もご存知でしょぉ?」


「えぇ、知ってるわ。それが何故こんなことをする理由に?」


「まぁ、焦らず聞いてくださいよぉ。時間稼ぎも出来てちょうどいいのでしょう?」


「っ...!えぇ、そうね」


「私はこれまで【才】の研究をしていてですねぇ。不思議に思っていたのですよぉ。異形狩りの人は何故2つ以上の【才】を使えるのかについてなんですけどぉ」


「2つ以上?しかも異形狩りの人が?何故そんなことを知っているの?」


「えぇ、えぇ、普通は知りませんよねぇ。簡単ですよぉ。聞きましたぁ」


「聞いた...?異形狩りに聞いたの?」


「いえいえ、異形狩り及び異形についての情報を集めている人物に、ですよぉ」


「そんな人が.....」


「その人物によると、全ての異形狩りが2つ以上の【才】を使うらしいのですよぉ」


「その理由が人を殺す目的に繋がってるって事ね」


「察しがよろしいようでぇ。試して見たんですよぉ。1人奴隷を買いましてねぇ。殺してみたら驚くことにその奴隷の【才】の使い方が手に取るようにわかって、使えるようになっていたんでよぉ」


「なるほど...それで試験に乗じて人を殺そうと......でもそれって同じように奴隷を買って殺せばいいんじゃない?」


「いえいえ、奴隷の人々の【才】はお世辞にも良いものではありませんからねぇ。それに比べ異形狩りの試験を受けるほど、良い【才】を手に入れられるなら、この試験を受ける理由には十分ですねぇ」


「理由は分かった、けどそんなつまらない理由で殺すなんて......」


「つまらない?昔から才が使えないからと親にすら捨てられた俺からすれば十分な理由なんだよ!」


急に声を荒らげてそう返してきた。


「っ!」


「すみませんねぇ、取り乱しましたぁ。さぁ、お仲間も来ないようですし、そろそろ楽しませてくださいなぁ」


そう言い私に近ずいてくる。


ゆっくりと。


「いや、こないで」


「抵抗されるのも中々いい、奴隷は抵抗しませんからぁ」


その手が私の方に触れようとした時。

私の目の前に銀色の影が走る。


「ワウッ!!!グルルルル!!」


「メル!!来てくれたのね!」


「ほぉ、可愛らしいお仲間がもう1人、いや、もう1匹いらっしゃったとはぁ」


そう言いながら男は手を後ろにまわし注射器のようなものを手にする。


「それではその可愛らしいお仲間を先に殺しますかねぇ!!」

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